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世界最大の興行権: オリンピックで誰が儲けるのか

Business News

RT 2018年2月9日

トービー・メルビル/ロイター

第23回冬期オリンピックが韓国の平昌で開かれている。これをローマ人(彼ら自身古代オリンピックの大ファンだった)が「誰のためになるか」または「誰が儲けるのか」と糺した視点から見てみよう。
もっと明確に言えば、誰のお金でオリンピックが回っているのかということだ。
現在世界でIOCほどおいしいお金儲けマシーンはない。ドル箱となる名称権やシンボル権を売って。しかしまず一般に考えられている思い違いを検討しよう。

一般通念:
IOCは、やや国連と似ている。つまりIOCは、それぞれの参加国、つまり各国オリンピック委員会によって支払われる料金によって成り立っている。

真実:
IOCは本質的にスイスにある非営利の私的機関である。IOCは自分のことを次のように誇らしげに言う。
   ...全く私的財源による組織として、IOCの商業的協賛事業は、オリンピッ
   ク開催やオリンピックのあらゆる組織運営上で貴重なものである。

一般通念:
IOCとオリンピック主催者は、オリンピックの準備費用や開催費用を分担する。


(開会式の花火、平昌オリンピックスタジアム フィル・ノーブル/ロイター)

真実:
オリンピックは世界最大の興行権である。応募都市は、大会に必要なものがすでに準備できていることをIOCに認めさせなければならない。つまり、すべての関連費用をもつことだ。必要とされるのは、ただIOCの自由裁量なのだ。それと引き替えに、成功した入札者はオリンピック競技を招致する権利が得られる。経費のうまい汁は、いつも各国組織委員会が負担されることになる。競技施設、選手や役員の宿泊、輸送手段、競技期間の食事など、などが含まれるが、それだけではない。
IOCが生む唯一最大の費用は、競技のテレビ放映権でもたれる。

一般通念:
きっと利益は、オリンピック主催者とIOCによって分割される。

真実:
違います。IOCが試合に関連した販売権をほとんどもっていて管理している。現場のオリンピック施設やチケット販売からの収入は分割される。しかしそれらは主要な収入源からすれば小さいのです。販売権からの主な利益は、いつもIOCに直接行きます。

一般通念:
主要な収入源でいえば、競技は主に超国家企業によって引き受けられる。その超国家企業の宣伝を競技場のポスターやテレビで絶えず見ることになるのですね。

真実:
yesでありnoでもある。IOCと連携し、商品にオリンピック競技場の特許権を表示する権利を持つために、オリンピック協賛権(TOP)プログラムを買わなければなりません。現在ほとんどアメリカを本拠とする13の大企業が、「IOCに競技場のために支払っています」。それらはその特権のために年間数億ドルを支払います。

(キム・ホンジ/ロイター)

しかしTOP(オリンピック協賛権)プログラムは、重要なのですが、IOCにとって資金源としては2番目なのです。TOPからのお金はすべてIOCの金庫に直接入りますが、大会主催者はそれには無関係であると述べましたが。
...だからもしチケット販売が収入源の小さなものであるなら、また強力なコカコーラ、P&G、Visaからのお金でさえ、IOCの主要財政源と比較すれば小さなものであるとすれば・・・どうでしょう。誰がIOCの狩猟財政スポンサーなのでしょう。
答えは簡単です。NBCユニバーサルです。そのアメリカのメディア複合企業がIOCにオリンピック競技の全収入のなんと40%あまりを出しているのです。それは単純な数学です。ニューヨークに本部を置く企業が、IOCにアメリカ市場のテレビ放映権として2014年から2020年まで4回のオリンピックに43.8億ドル支払ったのです。もちろん2018年の平昌オリンピックを含めて。もしくは1回平均11億ドル(契約は夏季、冬季オリンピックの区別はありません)を支払ったのです。アメリカ人がローザンヌに進んで送っているお金の額にびっくりしている人々にとって、もう一つさらに印象的な数字があります。2014年早々、NBCとIOCは、2032年までの次の6回のオリンピックに77.5億ドル、もしくはそれぞれの大会に13億ドル支払う契約を延長したのです。NBCがそんな巨大な投資の見返りをどうやって受けるのだろうか(テレビ市場支払われた最高額)。しかし事実は、アメリカ人はオリンピック運動の巨大な「株主」なのです。それは「支配株」と呼ばれるかもしれない。

(オリンピック組織委員会)

しかしそれだけではありません。IOCはヨーロッパの放送局と個別に交渉することにうんざりし、ヨーロッパ全体をひとまとめにして放映権を売り出すことに決めました。ヨーロッパ人は交渉してみましたが失敗して、IOCの好みを満たすことになりました。放映権はもう一つのアメリカ基盤の巨大メディア、ディスカバリー・コミュニケーションズに行ってしまいました。その取引はIOCにとってNBCのように甘い汁ではありませんが、決して不満足な数字でもありませんでした。メリーランド基盤の企業が2018年から2024年の4回のオリンピックに13億ポンド(現在のレートで約16億米ドル、もしくは1種目ごとに4000万ドル)支払いました。
ディスカバリーは当時、ヨーロッパの放送局各社に少しずつ放映権を再販売し始めました。それはヨーロッパ放送局各社をさんざん苦労させました。しかし再び、それは別の話なのです。世界の他社は、NBCやディスカバリーと比べて、ずっと少ないお金を支払っている。それは公的には公表されていませんが。いろいろな概算が示されている。アメリカやヨーロッパ以外のIOCの二つの最大のもうけ口は、日本と中国のテレビ放映権で、オリンピック放映権所有者に2億5千万ドルと各「オリンピックの4年」ごとに1億2千5百万ドル支払っている。概してIOC収入の最近の内訳は次のようになる。
・73%の放映権
・18%のオリンピック協賛(TOP)プログ ラム販売権
・5%の他の収入
・4%の他の権利

次の大会のIOC全体収入は(低く見積もっても)20億ドルと見積もられた。それはIOC幹部が近くのスイス銀行の金庫に入れることになるのだろうか。もちろん違う。大部分のお金は貧困な国々のスポーツ発展やユース・オリンピックのような儲からない競技開催のために援助される。しかしIOCはその文書の中で控えめに述べている。「収入の10%そこそこは機構維持のために使われる」。しかしそれは決して少額ではない。
さらに重要なのは、最近、高額入札者に売られるこれら主要な収入源増大を、IOCが明らかに隠していることだ。入札者が誰であり、入札者がどこから来ているかを。結局それは企業活動と類似し始めている。その中で主要投資家は、運営「もしくはその他」へのさらなる要求を増大させている。「国際オリンピック活動」とはそんなものなのだ。

<記事原文>
https://www.rt.com/business/418322-olympic-games-money-profits/

<新見コメント>--------------------------------
オリンピックがスポンサーの意向で歪められている報道をどきどき見る。

例えばフィギュアスケートが午前中に開催され、転倒する選手がたくさん出たとか、ジャンプで日にちをまたいで競技が行われたとか。
    東アジアの昼間は、フィギュア人気の高い米国の夜にあたり、
    深夜は欧州の夕方になる。最近の五輪はIOCが掲げる「アス
    リートファースト(選手第一)」ではなく、巨額のテレビ放映権
    料を支出する欧米の視聴者を意識した「顧客第一」と言うの
    が実態だ。     (毎日新聞 クローズアップ2018)
https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20180227/ddm/035/050/024000c

これらすべてがアメリカのゴールデンタイムにリアルに放映できるためにあるとは驚きだ。スポンサーの意向だけが優先され、競技するものはそのためにどんな悪条件でも競技しなければならないということだ。

2020年の東京オリンピックも真夏の一番競技環境の悪いときに実施されるという。そして競技時間もスポンサーの意向が反映され、選手にとって無理な日程が組まれるのだろうか。グローバル企業は、株入主のため利益を最大限にすることを飽くなく追求し、それによって犠牲になる庶民のことは視野に入らないようだ。出資比率40%余りのNBCは筆頭株主にあたり、その意向は絶対的であることをこの文章は示している。

もう一つオリンピックの果たす役割がある。日本では北朝鮮核・ミサイル問題が、国内問題(森友・加計など)を国民の視線からそらしたように、オリンピックが国民の目をナショナリズムに向ける役割を果たしていることだ。安倍晋三がかくもオリンピックに熱を上げるのは、国民の目線を国内矛盾からそらすのに大きな役割を果たすからだ。

かつてナチスドイツが第一次世界大戦の敗戦の苦しみの中で徐々に勢力を伸ばし、1936年ベルリンオリンピックでは、国内矛盾から目をそらせ、国民の意識高揚を謀ろうとしたことは有名です。アテネからの聖火リレーが始まったのもこのベルリンオリンピックからだということです。

観戦型スポーツの果たす役割を、私たちは注視しておかなければならない。チョムスキー『チョムスキーの「教育論」』(「観戦型スポーツ」の役割)から見てみよう。
     <スポーツが社会の脱政治的な人々に果たす役割>
     だったら何が残っているのでしょうか。そうです、唯一残って
    いるのがスポーツなのです。そこで、あなたは多くの知識・思考・
    自信をスポーツにつぎ込むのです。そしてそれが、社会におい
    て概して多数の人々が果たす基本的機能のひとつでもあると考
    えます。つまり、本当に重要なことに関係しないように、人々を
    遠ざけるのがスポーツの役割なのです。(p.378)

      「観るスポーツ」が持つ別の役立つ機能がまだ他にもあります。
    一つは、それらは「ショービニズム(好戦的盲目的愛国主義)」を
    築き上げる素晴らしい方法になることです。このような完全に非
    理性的な忠誠心を、まだ小さな頃から育て上げ、それを見事に
    他の分野に移行させるのです。(p.378)

        しかし肝心なのは次の点です。何か意味のない共同体に対す
    る非理性的忠誠心というこの感覚は、権力への従属訓練、すな
    わち「ショービニズム」のための訓練なのです。 (p.379)

      権威主義的態度に対して、実際、これ以上に根本から貢献す
    るものを想像するのは困難です。多くの知能を総動員し、かつ
    人々の関心を他の重要事から遠ざけるという事実を考えると、
    なおさらです。      (p.379)                    

チョムスキーはスポーツの他にも「メロドラマも他の領域で同じ役割を果たしています」と書いています。これらが戦時の危機的状況で使われるばかりか,日常的にも人々の関心を引きつけ、「本当に重要なことに関係しないように」しているのです。ここにもメディアによる民衆の意識操作の典型があることを忘れてはならない。

だから私たちは、超国家企業による横暴な振る舞いに気づくと共に、政権やメディアによる意識操作にも注意しておかねばならない。

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