イゴール・マカロフ:G20の政策顧問団は、アメリカの身勝手な「ルールに基づく国際秩序」にうんざりしている。
<記事原文 寺島先生推薦>
Igor Makarov: G20 policy advisors are tired of America’s self-serving ‘rules-based international order’
The ‘Global South’ is starting to question whether Western countries, and primarily the US, should be allowed to continue dictating the international agenda
「グローバルサウス」は、西側諸国、特にアメリカに国際的な課題を決定させ続けることを許していいのかどうかを疑問視し始めている。
筆者:イゴール・マカロフ(Igor Makarov)
イゴール・マカロフ:高等経済学院(HSE)の准教授、気候変動経済学の研究・教育ラボの責任者そして、HSEの現代世界経済の編集長。
出典:RT 2023年5月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月12日
美術家が、G20外相会合に先立ち、インドのニューデリーでG20のロゴを描いている© Arrush Chopra / Getty Images
私は、先週ムンバイで行われたThink 20の臨時会議に参加した。Think 20は、G20のための「アイデア銀行」を自称し、シンクタンクや高レベルの専門家を集めて、G20に関連する政策課題について議論する。
そこで出される提案は決して些細なものではない。現在、世界は一連の同時的な構造的危機に直面している:経済、債務水準、持続可能な開発目標、そして、それらとは別に、気候変動がある。とりわけ、世界はグローバル・ガバナンス(一国では解決できない世界規模の課題への対応)の危機にも直面しており、その基本的な構造は(今とは)異なる時代(国々の力の均衡が異なり、異なる目標を持っていた時代)に開発された。
主な批判の対象は国際金融機関だった。問題は、それらが先進国によってどれだけ効果的に運営されているかではなく(これも大いに議論されている)、共通の目的のために大量の資金を集める任務に十分に対応できていないことだ。世界には多くの持続可能な開発課題に対処するための金融資産は十分にあるが、それらを必要な場所に向けることができていない。
関連記事:数十人の死者と何万もの避難者:インドのムンバイ州の民族間闘争の中で起こったこと。
例えば、過去5年間における先進(主に西側)世界における資本コストは1.5-2%だったが、アジアでは8%、アフリカでは16%、サハラ以南のアフリカでは22%だった。西側での金融政策の引き締めは、途上国にとって状況をさらに悪化させるだけだ。国際金融機関の役割は、貧しい国々に援助を提供することよりも、世界中の十分な民間の貯蓄を開発事業に振り向けるために、投資家のリスクの一部を引き受けることだ。
たまたま出されたインドの不満は、世界銀行が自国インドの3兆ドル(米ドル換算)を超える経済に対して雀の涙(たった数十億ドル)の資金提供しかしていないことだ。
2つ目の必要性はデジタル化だ。焦点は、サービスや公共インフラのデジタル化(産業に利用できる欧米とは対極的)に置かれている。これが機能する例として、インドで開発されているデジタルIDシステムがある。このシステムは銀行口座とつながっている。その結果、南アジアの国でのデジタル取引は中国よりも4倍多く、米国と西ヨーロッパを合わせたよりも11倍多くなった。
その目的は2つある。1つは、より多くの人々(特に女性)を経済活動に参加させることを容易にすること。もう1つは、技術革新を促進することだ。途上国は、中国の成長モデルであったような西側の産業を受け入れることがますます困難になるため、技術革新は特にサービス部門を通して構築される必要がある。さらに、新たな技術によってグローバル企業がますます外注を行えるようになるため、この傾向が強まっている。
関連記事:アンドレイ・スシェンツォフ:EUの新加盟の東欧諸国が、EUを支配してきた手法
多国間主義は不可欠だ。ただし、問題は一方ではアメリカ、もう一方では中国がそれにどの程度準備ができているかということがある。
アメリカは次の選挙の結果やその過程そのものに関心があり、世界規模の問題にはそれほど関心を持っていない。一方、中国は中国中心の形式である「一帯一路構想」などの形でこれまでに問題解決に参加してきた。ある参加者がロシアを批判し、世界秩序を乱していると攻撃しようとしたが、ブラジルの議長によって厳しく非難され、その後インドの議長にも同様に反論された。
一般的に、ムンバイでの「ルールに基づく秩序」という話題は、だれの目にもうんざりするものだった。わずか数年の間に私が見てきたのは、代表者たちがこのような秩序の危機を宣言する姿勢から、だれが実際にルールを作るべきかと主要な人々問う姿勢への明確な変化だ。
全般的な印象として、2022年から2025年までのインドネシア、インド、ブラジル、そして南アフリカのG20の連続した議長国(彼らの間で非常に活発なやり取りがある)は、これらの国々によって新たな言説を形作るために最大限に活用されるだろう、ということがある。もちろん、これは自動的にはグローバル・ガバナンスの改革にはつながらないが、これらの変化への持続的な圧力となるだろう。
Igor Makarov: G20 policy advisors are tired of America’s self-serving ‘rules-based international order’
The ‘Global South’ is starting to question whether Western countries, and primarily the US, should be allowed to continue dictating the international agenda
「グローバルサウス」は、西側諸国、特にアメリカに国際的な課題を決定させ続けることを許していいのかどうかを疑問視し始めている。
筆者:イゴール・マカロフ(Igor Makarov)
イゴール・マカロフ:高等経済学院(HSE)の准教授、気候変動経済学の研究・教育ラボの責任者そして、HSEの現代世界経済の編集長。
出典:RT 2023年5月15日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年6月12日
美術家が、G20外相会合に先立ち、インドのニューデリーでG20のロゴを描いている© Arrush Chopra / Getty Images
私は、先週ムンバイで行われたThink 20の臨時会議に参加した。Think 20は、G20のための「アイデア銀行」を自称し、シンクタンクや高レベルの専門家を集めて、G20に関連する政策課題について議論する。
そこで出される提案は決して些細なものではない。現在、世界は一連の同時的な構造的危機に直面している:経済、債務水準、持続可能な開発目標、そして、それらとは別に、気候変動がある。とりわけ、世界はグローバル・ガバナンス(一国では解決できない世界規模の課題への対応)の危機にも直面しており、その基本的な構造は(今とは)異なる時代(国々の力の均衡が異なり、異なる目標を持っていた時代)に開発された。
主な批判の対象は国際金融機関だった。問題は、それらが先進国によってどれだけ効果的に運営されているかではなく(これも大いに議論されている)、共通の目的のために大量の資金を集める任務に十分に対応できていないことだ。世界には多くの持続可能な開発課題に対処するための金融資産は十分にあるが、それらを必要な場所に向けることができていない。
関連記事:数十人の死者と何万もの避難者:インドのムンバイ州の民族間闘争の中で起こったこと。
例えば、過去5年間における先進(主に西側)世界における資本コストは1.5-2%だったが、アジアでは8%、アフリカでは16%、サハラ以南のアフリカでは22%だった。西側での金融政策の引き締めは、途上国にとって状況をさらに悪化させるだけだ。国際金融機関の役割は、貧しい国々に援助を提供することよりも、世界中の十分な民間の貯蓄を開発事業に振り向けるために、投資家のリスクの一部を引き受けることだ。
たまたま出されたインドの不満は、世界銀行が自国インドの3兆ドル(米ドル換算)を超える経済に対して雀の涙(たった数十億ドル)の資金提供しかしていないことだ。
2つ目の必要性はデジタル化だ。焦点は、サービスや公共インフラのデジタル化(産業に利用できる欧米とは対極的)に置かれている。これが機能する例として、インドで開発されているデジタルIDシステムがある。このシステムは銀行口座とつながっている。その結果、南アジアの国でのデジタル取引は中国よりも4倍多く、米国と西ヨーロッパを合わせたよりも11倍多くなった。
その目的は2つある。1つは、より多くの人々(特に女性)を経済活動に参加させることを容易にすること。もう1つは、技術革新を促進することだ。途上国は、中国の成長モデルであったような西側の産業を受け入れることがますます困難になるため、技術革新は特にサービス部門を通して構築される必要がある。さらに、新たな技術によってグローバル企業がますます外注を行えるようになるため、この傾向が強まっている。
関連記事:アンドレイ・スシェンツォフ:EUの新加盟の東欧諸国が、EUを支配してきた手法
多国間主義は不可欠だ。ただし、問題は一方ではアメリカ、もう一方では中国がそれにどの程度準備ができているかということがある。
アメリカは次の選挙の結果やその過程そのものに関心があり、世界規模の問題にはそれほど関心を持っていない。一方、中国は中国中心の形式である「一帯一路構想」などの形でこれまでに問題解決に参加してきた。ある参加者がロシアを批判し、世界秩序を乱していると攻撃しようとしたが、ブラジルの議長によって厳しく非難され、その後インドの議長にも同様に反論された。
一般的に、ムンバイでの「ルールに基づく秩序」という話題は、だれの目にもうんざりするものだった。わずか数年の間に私が見てきたのは、代表者たちがこのような秩序の危機を宣言する姿勢から、だれが実際にルールを作るべきかと主要な人々問う姿勢への明確な変化だ。
全般的な印象として、2022年から2025年までのインドネシア、インド、ブラジル、そして南アフリカのG20の連続した議長国(彼らの間で非常に活発なやり取りがある)は、これらの国々によって新たな言説を形作るために最大限に活用されるだろう、ということがある。もちろん、これは自動的にはグローバル・ガバナンスの改革にはつながらないが、これらの変化への持続的な圧力となるだろう。
- 関連記事
-
- 子ども殺しネタニヤフが国連演説を始めると議場から退出者続出 (2024/10/06)
- 南半球18カ国は、ウクライナ紛争の「永続的な解決」を求めて共同声明 (2024/10/05)
- 西側はRTを沈黙させるのに躍起だが、グローバル・サウス(南側諸国)は声を上げて反撃している。 (2024/10/04)
- 欧米の取り締まりが続く中、MetaがRTを禁止: ここ数年の動向のまとめ (2024/09/20)
- 「NATOが核保有国ロシアに侵攻。世界は第三次世界大戦がはじまったことに気づいていない」。 (2024/08/27)
- ビクトリア・ヌーランドが7月11日を第三次世界大戦開始日に見据える。 (2023/07/23)
- ローマクラブ『成長の限界』の著者が世界人口の86%削減を促進 (2023/07/17)
- イゴール・マカロフ:G20の政策顧問団は、アメリカの身勝手な「ルールに基づく国際秩序」にうんざりしている。 (2023/06/12)
- 広島におけるインド首相モディ氏:世論、政治、現実 (2023/06/11)
- 道化師王子ゼレンスキーのサウジアラビアと日本への「托鉢」旅 (2023/06/06)
- ナチス・ドイツは敗北した…しかしファシズムは一時的に停止したに過ぎなかったことを、ウクライナでのNATOの代理戦争が示している (2023/06/01)
- ブラジルのルーラ大統領の訪中が示したのは、ラテン・アメリカはもはや米国の「裏庭」ではないという事実だ。 (2023/04/29)
- パンデミックの影響、露制裁の反動で、G7の経済力はBRICSに追い越された! (2023/04/27)
- BKL(モスクワの最新地下鉄)に見る多極性構造:「ニューコイン」列車に乗りながら (2023/03/29)
- ジョージアの「外国の工作員排除」法案廃案事件から、世界が冷戦時代に回帰している様が見える (2023/03/29)