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エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿V』(創元推理文庫)
エドワード・D・ホックの『サイモン・アークの事件簿V』を読む。オカルト探偵サイモン・アークを主人公にした日本オリジナルの短編集、その第五巻である。
1950年代から2000年代に書かれたものから八篇をセレクトしているが、これで一応、サイモン・アーク短編集は打ち止めとなるようだ。全作紹介といかなかったのは残念だが、もともと傑作選の意味合いで始まったものだけに、これは仕方あるまい。
収録作は以下のとおり。
Street of Screams「闇の塔からの叫び」
The Case of the Naked Niece「呪われた裸女」
Flame at Twilight「炙り殺された男の復讐」
The Lost Pilgrim「シェイクスピアの直筆原稿」
The Mummy from the Sea「海から戻ってきたミイラ」
The Witch of Park Avenue「パーク・アヴェニューに住む魔女」
Ark in the Desert「砂漠で洪水を待つ箱船」
The Scaring Bell「怖がらせの鈴」
さまざまな探偵を創りだしたホックだが、サイモン・アークの大きな特徴は、主人公が悪魔を探し求めて旅を続けている悪魔ハンターであるということ。当然ながら事件には怪奇趣味があふれるのだが、その謎をオカルト的にではなく、あくまで本格ミステリとして論理的に解決するのがミソ(ときにはホラーテイストのまま終わる物語もないではないが)。
他のシリーズと差別化するという点においては、本格としての要素より、怪奇趣味が強い方が主旨に合うだろうけれども、両立できればなおよし、である。実際、シリーズの魅力は、この怪奇趣味と本格ミステリのほどよいバランスにあると思う。
そういう意味では、海岸に流れ着いたミイラの謎という魅力的な冒頭の「海から戻ってきたミイラ」がまずおすすめ。読者に先を読ませにくく、ミイラの意味も納得の一篇。自称魔女との対決を描く「パーク・アヴェニューに住む魔女」もオカルト趣味と論理のバランスが悪くない。こちらもおすすめ。
個人的ベストはまったく先を読ませないストーリーの妙で読ませる「砂漠で洪水を待つ箱船」。ただ、これについてはオカルト的な味つけがほとんどないのが惜しい(笑)。
まあ、さすがに五巻ともなると突出した作品はないけれど、トータルでは良質の短編集である。次はそろそろレオポルド警部を進めてもらいたいところだが、さてどうなるか。
1950年代から2000年代に書かれたものから八篇をセレクトしているが、これで一応、サイモン・アーク短編集は打ち止めとなるようだ。全作紹介といかなかったのは残念だが、もともと傑作選の意味合いで始まったものだけに、これは仕方あるまい。
収録作は以下のとおり。
Street of Screams「闇の塔からの叫び」
The Case of the Naked Niece「呪われた裸女」
Flame at Twilight「炙り殺された男の復讐」
The Lost Pilgrim「シェイクスピアの直筆原稿」
The Mummy from the Sea「海から戻ってきたミイラ」
The Witch of Park Avenue「パーク・アヴェニューに住む魔女」
Ark in the Desert「砂漠で洪水を待つ箱船」
The Scaring Bell「怖がらせの鈴」
さまざまな探偵を創りだしたホックだが、サイモン・アークの大きな特徴は、主人公が悪魔を探し求めて旅を続けている悪魔ハンターであるということ。当然ながら事件には怪奇趣味があふれるのだが、その謎をオカルト的にではなく、あくまで本格ミステリとして論理的に解決するのがミソ(ときにはホラーテイストのまま終わる物語もないではないが)。
他のシリーズと差別化するという点においては、本格としての要素より、怪奇趣味が強い方が主旨に合うだろうけれども、両立できればなおよし、である。実際、シリーズの魅力は、この怪奇趣味と本格ミステリのほどよいバランスにあると思う。
そういう意味では、海岸に流れ着いたミイラの謎という魅力的な冒頭の「海から戻ってきたミイラ」がまずおすすめ。読者に先を読ませにくく、ミイラの意味も納得の一篇。自称魔女との対決を描く「パーク・アヴェニューに住む魔女」もオカルト趣味と論理のバランスが悪くない。こちらもおすすめ。
個人的ベストはまったく先を読ませないストーリーの妙で読ませる「砂漠で洪水を待つ箱船」。ただ、これについてはオカルト的な味つけがほとんどないのが惜しい(笑)。
まあ、さすがに五巻ともなると突出した作品はないけれど、トータルでは良質の短編集である。次はそろそろレオポルド警部を進めてもらいたいところだが、さてどうなるか。
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