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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿IV』(創元推理文庫)

 エドワード・D・ホックの『サイモン・アークの事件簿IV』を読む。
 早いものでオカルト探偵サイモン・アークの日本版短編集もこれで四巻目となる。以前の三冊は著者ホックが自らセレクトした短編集だったが、ホック亡き後の四巻目は、訳者の木村二郎氏が編んだものだ。収録作は以下のとおり。

The Hoofs of Satan「悪魔の蹄跡」
The Judges of Hades「黄泉の国の判事たち」
The Hour of None「悪魔がやって来る時間」
The Dragon Murders「ドラゴンに殺された女」
The Treasure of Jack the Ripper「切り裂きジャックの秘宝」
The Unicorn's Daughter「一角獣の娘」
Robin Hood's Race「ロビン・フッドの幽霊」
The Man Who Boxed Forever「死なないボクサー」

 サイモン・アークの事件簿IV

 フランスのミステリ作家ナルスジャックの言葉に、「推理小説とは、恐怖を推理が静める物語」みたいな言い方がある。さしずめサイモン・アークの事件簿などは、この言葉を見事に実践した物語だといえるだろう。なんせ探偵役は御年二千才を数えようかという正体不明の悪魔ハンター。その彼が怪奇色に彩られた事件の謎を論理的に解き明かしていく様は、まさに推理小説の醍醐味である。ただ、ホック作品の場合、静めるほどの恐怖成分がやや不足気味なのが残念なところだ。

 とはいえ木村氏のセレクトは、事件の発端や設定に魅力的なものが多く、雰囲気はすこぶるよい。
 ホック自身のセレクトも悪くないのだが、どうしても著者ゆえの思い入れがあるせいか客観的な評価とずれてしまいがちである。そういう意味では四巻目といっても内容的にはしっかりしたもので、まだまだ楽しめる作品が残っていることを感じた次第。もちろんホックのアベレージの高さあってのことだけれど。

 マイ・フェイバリットは、まず「黄泉の国の判事たち」。”わたし”の父と妹の自動車事故を扱った作品だが、非常にシンプルながらアイディアが秀逸。
 修道院での殺人事件を捜査する「悪魔がやって来る時間」は腰砕け気味のトリックながら、修道院に潜む”悪魔”の存在がドラマチック。個人的にはこれがベスト。
 「ドラゴンに殺された女」は湖でドラゴンに襲われるという突拍子もない事件の謎を解く。この設定だけでも引き込まれるがオチも上手い。
 興味はそれぞれ異なるが、どれもホックの欠点ともいえる淡白さが最小限に抑えられた佳作である。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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