fc2ブログ
探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ジョン・ディクスン・カー『ニューゲイトの花嫁』(ハヤカワ文庫)

 久々にジョン・ディクスン・カーを読了。ものは『ニューゲイトの花嫁』。

 物語の舞台は十九世紀初頭のロンドン。英国史上、最も悪名高いと呼ばれるニューゲイト監獄に、殺人容疑で死刑を待つ男がいた。男の名はダーウェント。実は身に覚えのない罪で投獄され、もはや罪を晴らす手段もなく、諦めの境地で日々が過ぎる。
 その彼を訪ねてきた一人の令嬢キャサリン。彼女は祖父の遺産を継ぐため、遺言どおり二十五歳前に結婚しようと、死刑を控えたダーウェントを相手に選んだのだ。了承すれば礼金がもらえ、思いを寄せていた女性にも金を残すことができる。ダーウェントはそう考えて結婚を承諾する。
 だが、結婚式の夜、ナポレオン敗北に伴って情勢は大きく変化した。ダーウェントは貴族の一員となり、刑務所からも釈放され、一転、自由の身となったのだ。復讐に燃えるダーウェントは真犯人を突き止めるべく行動を開始するが……。

 ニューゲイトの花嫁

 物語作家にとって歴史物は特別な魅力があるようで、ミステリの世界でもコナン・ドイルをはじめとして、数々の先達がいる。カーはその中でもとりわけ真剣に歴史物に取り組んだ一人。後期に多くの作品を残している。
 本書はその嚆矢となる一冊でもあり、それだけにカーの魅力が満載という印象。アクションにロマンス、そして何よりミステリ要素がいい案配でミックスされている。以前に読んだ『喉切り隊長』もそうだったが、ドタバタや恋愛といった要素がミステリ作品以上にサービス過剰気味なのに、逆にしっくりくるのが面白い。カーの場合、やりすぎてイラッとすることも多いのだが(苦笑)、これは歴史物ならではの効能だろう。
 ただ、それでも主人公がスーパーマンすぎるとか、ヒロインとの関係が調子よすぎないかとか、登場人物の造型については気になるところもちらほら。

 ミステリ部分はさすがである。単に味つけにとどまらず、真犯人の意外性、多重構造的な真相など、カーの本領発揮といってよい。ガチガチの謎解きとまではいかないけれど、プロットは練られているし、伏線もけっこう念入り。
 上で書いたような弱点もいくつかあるけれど、カーのファンはもちろん、娯楽小説として十分楽しめるレベルではなかろうか。

関連記事

Comments

« »

01 2025
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

ツリーカテゴリー
'; lc_cat_mainLinkPart += lc_cat_groupCaption + ''; document.write('
' + lc_cat_mainLinkPart); document.write('
'); } else { document.write('') } var lc_cat_subArray = lc_cat_subCategoryList[lc_cat_mainCategoryName]; var lc_cat_subArrayLen = lc_cat_subArray.length; for (var lc_cat_subCount = 0; lc_cat_subCount < lc_cat_subArrayLen; lc_cat_subCount++) { var lc_cat_subArrayObj = lc_cat_subArray[lc_cat_subCount]; var lc_cat_href = lc_cat_subArrayObj.href; document.write('
'); if (lc_cat_mainCategoryName != '') { if (lc_cat_subCount == lc_cat_subArrayLen - 1) { document.write(' └ '); } else { document.write(' ├ '); } } var lc_cat_descriptionTitle = lc_cat_titleList[lc_cat_href]; if (lc_cat_descriptionTitle) { lc_cat_descriptionTitle = '\n' + lc_cat_descriptionTitle; } else if (lc_cat_titleList[lc_cat_subCount]) { lc_cat_descriptionTitle = '\n' + lc_cat_titleList[lc_cat_subCount]; } else { lc_cat_descriptionTitle = ''; } var lc_cat_spanPart = ''; var lc_cat_linkPart = ''; lc_cat_linkPart += lc_cat_subArrayObj.name + ' (' + lc_cat_subArrayObj.count + ')'; document.write(lc_cat_spanPart + lc_cat_linkPart + '
'); } lc_cat_prevMainCategory = lc_cat_mainCategoryName; } } //-->
ブログ内検索
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
ブロとも申請フォーム
月別アーカイブ