■ 2016年に躍進したのは町田・横浜FC・札幌など2016年のJ2で開幕前の期待値を大きく上回る結果を残したチームと言うと表1を見ると分かる通り、町田・横浜FC・札幌・山口・水戸あたりを挙げることが出来る。特に昇格初年度の町田は26.0%の人が降格圏(21位以下)に予想していているが、最終的には7位でフィニッシュした。J1ライセンスの問題で昇格プレーオフに参加する権利は無かったが、終わってみると6位の岡山と全く同じ勝ち点「65」を稼いでいる。
逆に開幕前の期待を大きく下回ったのは千葉・金沢・長崎・山形・東京V・北九州あたりになる。中でも北九州は開幕前の時点では昇格候補の1つと言われており、223名の平均予想順位では7.86位。J2の22クラブの中ではC大阪→清水→松本山雅→千葉→山形に次ぐ6番目タイだったことを考えると予期せぬ大低迷だったと言える。2016年の開幕前の評価では札幌や岡山や愛媛FCなどよりも高い評価を受けていた。
表1. 2016年の開幕前の予想(223名)と最終結果
ランク | クラブ名 | 平均予想順位(開幕前) | 最終順位 | ± | 自動昇格(2位以内) | PO圏内(6位以内) | 降格圏内(21位以下) |
票数 | (%) | 票数 | (%) | 票数 | (%) |
1 | 町田 | 18.11 | 7 | 11.11 | 0 | 0.0% | 4 | 1.8% | 58 | 26.0% |
2 | 横浜FC | 16.40 | 8 | 8.40 | 0 | 0.0% | 6 | 2.7% | 32 | 14.3% |
3 | 札幌 | 8.52 | 1 | 7.52 | 11 | 4.9% | 60 | 26.9% | 0 | 0.0% |
4 | 山口 | 16.89 | 12 | 4.89 | 0 | 0.0% | 5 | 2.2% | 44 | 19.7% |
5 | 水戸 | 17.63 | 13 | 4.63 | 0 | 0.0% | 0 | 0.0% | 35 | 15.7% |
6 | 岡山 | 8.91 | 6 | 2.91 | 4 | 1.8% | 65 | 29.1% | 1 | 0.4% |
7 | 京都 | 7.86 | 5 | 2.86 | 16 | 7.2% | 90 | 40.4% | 1 | 0.4% |
8 | 徳島 | 11.74 | 9 | 2.74 | 2 | 0.9% | 20 | 9.0% | 4 | 1.8% |
9 | 群馬 | 19.46 | 17 | 2.46 | 1 | 0.4% | 2 | 0.9% | 97 | 43.5% |
10 | 松本山雅 | 4.57 | 3 | 1.57 | 61 | 27.4% | 178 | 79.8% | 2 | 0.9% |
11 | 清水 | 3.38 | 2 | 1.38 | 86 | 38.6% | 204 | 91.5% | 0 | 0.0% |
12 | 熊本 | 16.86 | 16 | 0.86 | 0 | 0.0% | 0 | 0.0% | 24 | 10.8% |
13 | 愛媛FC | 9.99 | 10 | -0.01 | 5 | 2.2% | 42 | 18.8% | 1 | 0.4% |
14 | FC岐阜 | 19.56 | 20 | -0.44 | 0 | 0.0% | 0 | 0.0% | 104 | 46.6% |
15 | C大阪 | 1.72 | 4 | -2.28 | 186 | 83.4% | 218 | 97.8% | 0 | 0.0% |
16 | 讃岐 | 15.57 | 19 | -3.43 | 0 | 0.0% | 2 | 0.9% | 17 | 7.6% |
17 | 千葉 | 6.01 | 11 | -4.99 | 42 | 18.8% | 143 | 64.1% | 2 | 0.9% |
18 | 金沢 | 15.88 | 21 | -5.12 | 0 | 0.0% | 0 | 0.0% | 20 | 9.0% |
19 | 長崎 | 9.02 | 15 | -5.98 | 3 | 1.3% | 48 | 21.5% | 2 | 0.9% |
20 | 山形 | 6.98 | 14 | -7.02 | 16 | 7.2% | 108 | 48.4% | 0 | 0.0% |
21 | 東京V | 10.07 | 18 | -7.93 | 4 | 1.8% | 46 | 20.6% | 2 | 0.9% |
22 | 北九州 | 7.86 | 22 | -14.14 | 9 | 4.0% | 97 | 43.5% | 0 | 0.0% |
■ 戦力差が非常に小さくなってきたJ2リーグ数年前までは「J1は18チームの戦力差がほとんどなくてどこが優勝するのか分からない。」と言われていたが、近年は優勝候補と中位候補と降格候補の3グループにくっきりと分けられることが多い。浦和や鹿島やG大阪や川崎Fなどが残留争いに巻き込まれる可能性は低くて、甲府や新潟などが優勝争いに加わる可能性も同様に低かったので、「近年のJ1は比較的予想のしやすいリーグになっている。」と言える。
対して昨今のJ2は戦力差が小さい。もちろん、2016年に当てはめるとC大阪や清水などは資金力があってこのクラスのチームが残留争いに巻き込まれる可能性はゼロに等しいレベルだったが、『J3降格の心配をしなくても大丈夫』と言えるクラブは数クラブのみ。その反対で『上位争いに顔を出す可能性は限りなくゼロに近い。』と言えるクラブはごくわずか。J1よりもはるかに拮抗したリーグになっている。
なので、開幕前の評価があまり高くなかったチームがプレーオフ争いに顔を出すことは珍しくないし、逆に開幕前にまずまずの評価を受けていたチームが残留争いに巻き込まれることも珍しくない。極めて予想の難しいリーグになっており、2016年の北九州のように多くの人が上位に予想したチームが最下位になってJ3に降格することもあり得ない話ではない。ある意味ではスリリングで面白いリーグになって来た。
■ 実績のある監督を招聘したツエーゲン金沢とFC岐阜ほぼ間違いなく2017年シーズンも低評価を覆して躍進するチームと高評価を受けていたのに低迷してJ3降格の危機を迎えるクラブが出てくると思うが、今シーズンのJ2は例年以上に下位候補(あるいは降格候補)と呼ばれるクラブが精力的な動きを見せており、実績のある優秀な監督の招聘に成功したり、違いを出せる選手の補強に成功している。結果として中位グループと下位グループの差はより一層縮まっている。
中でも柳下監督の招聘に成功した金沢と大木監督の招聘に成功したFC岐阜の2チームは興味深いチームになりそうな雰囲気がある。普通に考えると昨シーズンは21位で入替戦に回った金沢と残留圏ギリギリの20位でJ2に生き残ったFC岐阜の2チームは降格の有力候補に挙げられるが、どちらのチームもポジティブな要素がたくさんある。見せ場なく下位に沈んで2016年と同様の苦しいシーズンになることは考えにくい。
金沢は期限付き移籍だったFW中美とMF秋葉が残留が確定。さらにはストライカーのFW佐藤洸(長崎)の獲得に成功した。J2の他の多くのクラブと同様でゴール前の迫力不足が課題に挙げられるチームなので実績のあるストライカーを補強できたのは非常に大きい。他にもDF石田崚(磐田)、FW垣田(鹿島)、MF宮崎幾(新潟)など若くて有望な選手を期限付きで獲得。昨シーズンに続いて有望株を積極的に集めている。
一方のFC岐阜はMF庄司(山口)、MF野澤(FC東京)、MF永島(京都)、DF福村(清水)の獲得に成功した。いずれの選手もパスサッカーで生きるタイプの選手なので大木新監督のやりたいサッカーに合った選手を獲得できている。さらには2014年と2015年に攻守の要として活躍したMFヘニキ(ボタフォゴ)の再獲得に成功。仮にMF庄司とMFヘニキがWボランチを組むようだとJ2では屈指のWボランチになる。
気になるのはMFレオ・ミネイロ、FWエヴァンドロ、MF田中達(→熊本)が退団したことである。今シーズンのFC岐阜は1人で仕掛けることが出来るドリブラーが攻撃の中心を担ったが、現状ではMF田中パウロ淳一くらい。同様にCFも駒不足が顕著である。これから数日の間に補強のニュースが入ってくるのは間違いないと思うがドリブラーやフォワードの補強次第で魅力的なチームに様変わりする可能性がある。
■ 有言実行か?ビッグマウスか?その他では群馬も興味深いメンバー構成になりつつある。服部監督が契約期間を残しながらチームを去ることになったのは大きな問題と言わざる得ない部分で、大卒1年目ながら中心として活躍したFW瀬川祐(→大宮)とMF中村駿(→山形)を失ったのは痛手と言えるが、守備的なポジションはGK清水慶とDF高瀬がレンタル延長でチームに残ったので2016年シーズンと似たようなメンバー構成になるだろう。
主力の流出に悩まされているのは例年通りであるが守備的なポジションの流出が最小限にとどまっているのは不幸中の幸い。そして、近年はMF江坂やFW瀬川祐など大卒で獲得した選手が活躍してきているので「大卒で加入する選手には良い環境である。」ということが広まっているのか、FW岩田(明治大)、MF高井(日本体育大)、MF出岡(関西学院大)、DF藤原雅(流通経済大)という4人の大学生の獲得に成功した。
中でもMF高井に注目が集まる。メディアに誇張されたところもあると思うが『最初は試合に出れるところに行って、2年目でJ1に行きたいという考えがある。』という発言で話題になった。賛否両論だったが、「注目されてナンボ」の世界であり、期待と批判とプレッシャーが集まることを見越して意図してそういう発言をしたのであれば大したものである。J2のクラブの場合、普通のコメントでは見向きもされない。
有言実行で1年目からMF江坂やFW瀬川祐のようなセンセーショナルな活躍を見せてJ1のクラブに引き抜かれるのか?はたまた、群馬というチーム自体をJ1に導くようなスーパーな活躍を見せるのか?は気になるところ。関東大学サッカーリーグで得点王に輝いた選手なので前目のポジションで起用されると思うがMF山岸祐がいて、MF高橋駿がいて、MF鈴木崇(元町田)もいるので、ポジション争いは熾烈である。
2016/12/29 【J2】 ちょっと気の早い2017年シーズンの展望 (上) (自動昇格争い中心)
2016/12/29 【J2】 ちょっと気の早い2017年シーズンの展望 (中) (プレーオフ争い中心)
2016/12/30 【J2】 ちょっと気の早い2017年シーズンの展望 (下) (残留争い中心)
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