【Global Economy】(348) 子供とSNS、アメリカで模索…自殺やいじめ懸念で規制進む
アメリカで子供のSNS利用を規制する州が増えている。SNSの過度な利用が子供の自殺やいじめを引き起こしているとの懸念が背景にある。SNSの規制は言論の自由の侵害に繋がるとの見方もあり、差し止め訴訟も相次ぐ。SNSとどう向き合うべきか、手探りの状況が続いている。 (ニューヨーク支局 小林泰裕)
フロリダ州では先月25日、14歳未満の子供がSNSのアカウントを保有することを禁じる法案が成立した。14~15歳は保護者の同意が必要となる。SNS事業者に対しては利用者の年齢確認の徹底や、14歳未満のアカウントの削除を求め、違反した場合は1件あたり最大5万ドル(※約770万円)の民事罰を科す。多くのSNSでは利用年齢を13歳以上とする等、年齢制限を設ける。だが、実際には年齢を偽って利用する子供も多いとみられている。ロン・デサンティス州知事は、「SNSは様々な形で子供達に害を与えている。この法律により、親が子供を守る能力が強化される」と強調した。『全米州議会議員連盟』によると、昨年は全米の少なくとも12州で、子供のSNS利用に関する規制が導入された(※①)。今年は約30州で同様の法案が審議される見通しだ。訴訟も相次ぐ。アメリカの42の州・区の司法当局は昨年10月、『メタ』を相手取り、子供や若者の精神面に悪影響を与えたとして、一斉に提訴した。ニューヨーク市は今年2月、中国発の動画共有アプリ『TikTok』等の運営会社を提訴した。どちらの訴訟も、損害賠償や不適切なサービスの差し止め等を求めている。背景には、SNS依存による若者の心の健康への悪影響や自殺の増加が社会問題になっていることがある。
『全米疾病対策センター』の2020年の発表によると、2009~2018年の間にアメリカの14~18歳の若者の自殺率は10万人あたり6.0人から9.7人に6割増加した。アメリカの保健当局は昨年、1日3時間以上をSNSに費やす子供は、鬱病等心の健康の問題を抱えるリスクが2倍になると警鐘を鳴らした。2021年の調査では、10代の子供は1日平均3.5時間をSNSに費やしているという。アメリカの調査機関『ピューリサーチセンター』の昨年の調査によれば、アメリカの13~17歳のうち、インターネットを「ほぼ常に」使用と回答したのは46%に上った。2014~2015年調査の24%から倍増した(※②)。SNSの使用率は、『YouTube』が93%で最も多く、TikTokが63%で続いた(※③)。こうした状況を受け、大手SNS企業への風当たりが強まっている。今年1月には、メタ・『X』・『スナップ』・TikTok・『ディスコード』のSNS大手5社のCEOらがアメリカ議会上院司法委員会の公聴会に呼び出され、議員から厳しい追及を受けた。メタのマーク・ザッカーバーグCEOは、「全てのことを申し訳なく思う。皆さんの家族が苦しんだことは誰も経験するべきではない」と謝罪した。対策として、メタは『インスタグラム』と『フェイスブック』で10代の若者に対し、自傷行為や暴力、摂食障害に関する投稿へのアクセスを自動的に制限する仕組みを導入すると発表した。TikTokは18歳未満の利用者に対し、1日の利用時間を60分に制限する機能を導入すると発表した(※④)。尤も、SNS企業は売上高の大部分を広告収入が占める。メタは売上高の95%超、YouTubeを運営する『アルファベット』(※『グーグル』の親会社)も70%超が広告収入だ。フロリダ大学のアンドリュー・セラパク氏は、「SNS企業にとって、利用者を増やし、多額の広告収入を得る為には若年層の利用拡大が不可欠だ」と指摘し、「その為、SNS企業が打ち出している対策の多くは、只のPR活動に過ぎない」と批判する。
フロリダ州では先月25日、14歳未満の子供がSNSのアカウントを保有することを禁じる法案が成立した。14~15歳は保護者の同意が必要となる。SNS事業者に対しては利用者の年齢確認の徹底や、14歳未満のアカウントの削除を求め、違反した場合は1件あたり最大5万ドル(※約770万円)の民事罰を科す。多くのSNSでは利用年齢を13歳以上とする等、年齢制限を設ける。だが、実際には年齢を偽って利用する子供も多いとみられている。ロン・デサンティス州知事は、「SNSは様々な形で子供達に害を与えている。この法律により、親が子供を守る能力が強化される」と強調した。『全米州議会議員連盟』によると、昨年は全米の少なくとも12州で、子供のSNS利用に関する規制が導入された(※①)。今年は約30州で同様の法案が審議される見通しだ。訴訟も相次ぐ。アメリカの42の州・区の司法当局は昨年10月、『メタ』を相手取り、子供や若者の精神面に悪影響を与えたとして、一斉に提訴した。ニューヨーク市は今年2月、中国発の動画共有アプリ『TikTok』等の運営会社を提訴した。どちらの訴訟も、損害賠償や不適切なサービスの差し止め等を求めている。背景には、SNS依存による若者の心の健康への悪影響や自殺の増加が社会問題になっていることがある。
『全米疾病対策センター』の2020年の発表によると、2009~2018年の間にアメリカの14~18歳の若者の自殺率は10万人あたり6.0人から9.7人に6割増加した。アメリカの保健当局は昨年、1日3時間以上をSNSに費やす子供は、鬱病等心の健康の問題を抱えるリスクが2倍になると警鐘を鳴らした。2021年の調査では、10代の子供は1日平均3.5時間をSNSに費やしているという。アメリカの調査機関『ピューリサーチセンター』の昨年の調査によれば、アメリカの13~17歳のうち、インターネットを「ほぼ常に」使用と回答したのは46%に上った。2014~2015年調査の24%から倍増した(※②)。SNSの使用率は、『YouTube』が93%で最も多く、TikTokが63%で続いた(※③)。こうした状況を受け、大手SNS企業への風当たりが強まっている。今年1月には、メタ・『X』・『スナップ』・TikTok・『ディスコード』のSNS大手5社のCEOらがアメリカ議会上院司法委員会の公聴会に呼び出され、議員から厳しい追及を受けた。メタのマーク・ザッカーバーグCEOは、「全てのことを申し訳なく思う。皆さんの家族が苦しんだことは誰も経験するべきではない」と謝罪した。対策として、メタは『インスタグラム』と『フェイスブック』で10代の若者に対し、自傷行為や暴力、摂食障害に関する投稿へのアクセスを自動的に制限する仕組みを導入すると発表した。TikTokは18歳未満の利用者に対し、1日の利用時間を60分に制限する機能を導入すると発表した(※④)。尤も、SNS企業は売上高の大部分を広告収入が占める。メタは売上高の95%超、YouTubeを運営する『アルファベット』(※『グーグル』の親会社)も70%超が広告収入だ。フロリダ大学のアンドリュー・セラパク氏は、「SNS企業にとって、利用者を増やし、多額の広告収入を得る為には若年層の利用拡大が不可欠だ」と指摘し、「その為、SNS企業が打ち出している対策の多くは、只のPR活動に過ぎない」と批判する。