【人が集まる街・逃げる街】(150) 埼玉県さいたま市浦和地区…自然や公共施設が充実した住みよい街
浦和に住む知人が数人いるが、彼らはどこに住んでいるかを聞かれると、皆やや誇らしげに「はい、浦和です!」と答える。浦和市は嘗て埼玉県の県庁所在地だったが、2001年に平成の大合併で旧大宮市や与野市と共にさいたま市となり、現在では浦和区等になっている。埼玉県外の人間からすれば、浦和と大宮には大きな違いなどないようにも思えるが、浦和在住の多くの人が「大宮ではなく浦和です」と胸を張るのだ。それだけ惹きつけられるものがあるのだろう。浦和は、江戸時代には中山道の浦和宿として栄えた。地域の殆どが大宮台地上にあって地盤が安定しており、明治以降は別荘地としても評価が高かった。多くの人が押し寄せるきっかけとなったのは、1923年の関東大震災だと言われる。難を逃れた人々が東京や横浜からやって来て、この頃から人口が増加し始める。移住の理由には、安定した地盤に加え、東京へのアクセスの良さ、下水道整備率の高さ、教育環境の充実が挙げられた。また、現在の南区にある自然豊かで美しい別所沼近辺には、多くの画家が集結。神奈川県鎌倉市と並んで、画家の街と言われるようにもなったという。浦和の住み心地はどうだろうか。『SUUMO』が発表した『住みたい街ランキング2020』の関東版で、浦和は10位。同じ埼玉県の街では大宮が4位なので、県下では2番目の人気ということになる。大宮は大規模商業施設等が集積し、住むというよりも買い物や遊びのイメージが強い。
一方の浦和では、駅から降り立つと、街全体に気品と余裕が漂っているようにも感じる。浦和駅周辺には『伊勢丹』浦和店を始め、『浦和コルソ』や『浦和パルコ』等の商業施設がある。西口の側には県庁や市役所等行政機関が整然と並び、『埼玉県立近代美術館』等緑豊かな環境も用意されている。東口の側には『浦和駒場体育館』や、サッカーで有名な『浦和駒場スタジアム』、『さいたま市営浦和球場』等のスポーツ施設が豊富に整備されている。住宅地としての評価は地価にも表れ、浦和区内住宅地の平均地価は今年の公示価格で35万2000円/㎡と、さいたま市内屈指の高水準だ。とりわけ住宅地の最高地価上位5地区の内、4地区が高砂、岸町、前地等浦和区内の住宅地で、最高価格の高砂2丁目は97万9000円/㎡にもなる。2015年には上野東京ラインが開通、宇都宮線・高崎線で東京駅まで直通25~30分程度となったこともあり、浦和駅周辺の高層マンション建設は多い。新築マンションの分譲価格は坪当たり400万円前後にまで高騰している。駅西口南高砂地区では、市街地再開発事業の一環として、地上27階建てのタワーマンションの建設も発表された。1階から4階は商業施設や公共施設、5階から上は『野村不動産』や『三菱地所レジデンス』等によって約530戸の住宅が分譲される予定だ。豊かな環境に恵まれ、充実した公共・商業施設を擁する浦和は、これからもその地位を高めていきそうだ。テレワーク時代を迎え、新たに“働く”為の機能を備えた時、この街の評価は更に高まっていくだろう。
牧野知弘(まきの・ともひろ) 不動産事業プロデューサー。1959年、アメリカ合衆国生まれ。東京大学経済学部卒。『第一勧業銀行』(※現在の『みずほ銀行』)や『ボストンコンサルティンググループ』を経て、1989年に『三井不動産』に入社。『三井不動産ホテルマネジメント』に出向した後、2006年に『日本コマーシャル投資法人』執行役員に就任し、J-REET(不動産投資信託)市場に上場。2009年に『株式会社オフィス・牧野』、及び『オラガHSC株式会社』を設立し、代表取締役に就任。2015年に『オラガ総研株式会社』を設立し、代表取締役に就任。著書に『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』(祥伝社新書)・『2020年マンション大崩壊』(文春新書)等。
2020年11月28日号掲載
一方の浦和では、駅から降り立つと、街全体に気品と余裕が漂っているようにも感じる。浦和駅周辺には『伊勢丹』浦和店を始め、『浦和コルソ』や『浦和パルコ』等の商業施設がある。西口の側には県庁や市役所等行政機関が整然と並び、『埼玉県立近代美術館』等緑豊かな環境も用意されている。東口の側には『浦和駒場体育館』や、サッカーで有名な『浦和駒場スタジアム』、『さいたま市営浦和球場』等のスポーツ施設が豊富に整備されている。住宅地としての評価は地価にも表れ、浦和区内住宅地の平均地価は今年の公示価格で35万2000円/㎡と、さいたま市内屈指の高水準だ。とりわけ住宅地の最高地価上位5地区の内、4地区が高砂、岸町、前地等浦和区内の住宅地で、最高価格の高砂2丁目は97万9000円/㎡にもなる。2015年には上野東京ラインが開通、宇都宮線・高崎線で東京駅まで直通25~30分程度となったこともあり、浦和駅周辺の高層マンション建設は多い。新築マンションの分譲価格は坪当たり400万円前後にまで高騰している。駅西口南高砂地区では、市街地再開発事業の一環として、地上27階建てのタワーマンションの建設も発表された。1階から4階は商業施設や公共施設、5階から上は『野村不動産』や『三菱地所レジデンス』等によって約530戸の住宅が分譲される予定だ。豊かな環境に恵まれ、充実した公共・商業施設を擁する浦和は、これからもその地位を高めていきそうだ。テレワーク時代を迎え、新たに“働く”為の機能を備えた時、この街の評価は更に高まっていくだろう。
牧野知弘(まきの・ともひろ) 不動産事業プロデューサー。1959年、アメリカ合衆国生まれ。東京大学経済学部卒。『第一勧業銀行』(※現在の『みずほ銀行』)や『ボストンコンサルティンググループ』を経て、1989年に『三井不動産』に入社。『三井不動産ホテルマネジメント』に出向した後、2006年に『日本コマーシャル投資法人』執行役員に就任し、J-REET(不動産投資信託)市場に上場。2009年に『株式会社オフィス・牧野』、及び『オラガHSC株式会社』を設立し、代表取締役に就任。2015年に『オラガ総研株式会社』を設立し、代表取締役に就任。著書に『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』(祥伝社新書)・『2020年マンション大崩壊』(文春新書)等。
2020年11月28日号掲載