【ドイツ総選挙2025】(下) 住宅無償提供、募る反感

今月23日に投開票されるドイツ連邦議会(※下院)総選挙は、難民・移民政策が主要な争点になっている。難民・移民に対する反感がドイツ社会で強まっている為だが、背景には難民による凶悪事件が相次いでいることに加え、住宅不足の問題もある。
「この辺にはスーパーマーケットもカフェも無い。80人もの外国人が暇を持て余して不満を溜めたら、何が起きるかわからない」。西部ゾーリンゲンの実業家、ダニエル・イワノビチさんは取材に不安を訴えた。近所で計画される難民用宿舎新設に反対する住民運動の中心メンバーで、昨年初めに建設中止を求めて市を提訴した。この宿舎は市中心部から約5㎞の山間に建てられる予定で、80人を収容できる。
ドイツには、受け入れた難民を各自治体に割り当てる制度がある。ゾーリンゲン市の昨年1月の発表によると、それまでホテルや旧税務署、別荘等の計1000室超を難民用に確保してきたが、空きはほぼ無かった。そこへ昨年は新たに難民約700人の割り当てが見込まれ、宿舎の建設が必要になったという。
こうした難民の“飽和”はドイツ各地で起きている。背景にあるのが住宅不足だ。ドイツは移民や難民の流入で人口が増え続ける一方で、資材の高騰や、高齢化に伴う労働者不足で住宅の建設が追いついていない。そんな中で難民には無償で住まいが提供されることに、国民の間では反発もある。
また、難民の為にアパートやホテルを借り上げたり、宿舎を新設したりする費用が自治体の財政を圧迫する。ヒルデスハイム大学が昨年5月に発表した約800自治体を対象にした調査結果によると、22%が「緊急事態だ」と回答した。高齢化が進むドイツでは、移民については労働力として肯定的に捉える人が今でも多いとされる。
だが、住居に加えて生活費やドイツ語習得等の支援も必要な難民を巡っては、特に景気低迷が続く近年、反感が高まり易くなっている。ドイツは2015年以降、内戦下のシリア等から押し寄せた難民を当時のアンゲラ・メルケル首相が積極的に受け入れた。現在、ドイツで暮らす難民は300万人超に上り、人口の4%を占める。