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【WEEKEND PLUS】(510) ひめゆりの記憶を繋ぐ…ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳館長、戦争の悲惨さを克明に



20240628 06
今月上旬。沖縄県糸満市の『ひめゆり平和祈念資料館』では、修学旅行で訪れた中学生達がメモを取りながら展示を見て回っていた。有名な『ひめゆりの塔』と同じ敷地内にあり、多くの学生や観光客らが足を運ぶ。コロナ禍前までは元ひめゆり学徒達が来館者を迎えていたが、その姿はもうない。

第二次世界大戦末期の沖縄戦で日本軍による組織的戦闘が終結して、今日で79年。証言員として沖縄戦の体験を館内で語ってきた30人のうち、21人が世を去り、存命の元学徒達も90代半ばとなった。「彼女たちがいてこその資料館だったので、寂しさはある。コロナ禍が落ち着いたので『また戻りませんか?』と声をかけたが、『もう無理よ』という答えだった」。館長の普天間朝佳さん(64、左画像、撮影/喜屋武真之介)は残念がる。

資料館がオープンしたのは1989年。今日の沖縄慰霊の日で開館35年を迎え、これまでに約2400万人が訪れた。普天間さんは八代目で、初の戦後生まれの館長だ。

ひめゆりは、1945年に沖縄戦が始まった頃、那覇市安里で校舎を共有していた沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の愛称だった。両校には教員等を志す13~19歳の女子生徒達が県内各地から集まり、勉強や部活動に励んだ。だが、アメリカ軍の上陸が迫ると、15歳以上の上級生は日本軍の要請で戦場に駆り出された。丘に掘られた病院壕で約2ヵ月間、重傷を負った兵士達を看護した。

手術場では痛みに耐えきれず暴れる患者を押さえ、壊死を防ぐ為に切断された手足を壕の外に運んで捨てた。食事の運搬や兵士の遺体の埋葬も生徒達の仕事で、砲弾が飛び交う中を走り回った。

沖縄本島中部に上陸したアメリカ軍は南北に分かれて進攻した。首里(※現在の那覇市)にいた日本軍(※第32軍)の司令部は、アメリカ軍が迫ると本島南部へ後退。女子生徒達も南部の壕へ移ったが、その後になって軍から病院の“解散”を告げられた。爆撃の中に放り出される形となり、両校から動員された240人(※教師18人を含む)のうち、半数以上の136人(※教師13人を含む)が命を落とした。当時、編成された9つの女子学徒隊の中で、動員数、犠牲者数共に際立って多い。

ひめゆり学徒隊の悲劇は、戦後間もない1950年頃から小説や映画等で繰り返し紹介され、全国的に知られるようになった。1946年建立のひめゆりの塔には、1960年代以降、日本本土から観光客が押し寄せた。だが、生き残った元学徒達の多くは長い間、体験を公にすることはなかった。

その理由を普天間さんはこう語る。「『生きるも死ぬも一緒に』と誓い合った学友達が目の前で亡くなっていき、戦後、彼女達は『生き残って申し訳ない』という思いを抱いた。友達のご遺族と出会うのが怖くて、隠れるように生きていたという話も聞きました」。

元学徒達や両校の卒業生らが資料館建設に踏み出したのは1980年代。戦後40年近くが経ち、「亡くなった学友や先生の為にも戦争の実相を後世に伝えたい」という思いが次第に強くなった。卒業生でつくる同窓会が資金集めに奔走し、元学徒達は意を決して学友達が亡くなった壕に入り、遺品や遺骨を集めた。

迎えたオープンの日。雨天にも拘わらず、遺族や卒業生らが次々と訪れ、元学徒達が出迎えた。亡くなった生徒と教師の写真が並んだ展示室で涙を拭う来館者もいた。後日、普天間さんは、元学徒で七代目館長の島袋淑子さん(96)からこう聞いた。「実は、あの日を迎えるのが怖かったのよ。ご遺族にどう思われるかと。展示を見たご遺族が『これで、皆と一緒にいられるね』と喜んでくれて、私もほっとして涙が出てきた」。

普天間さんは戦後の1959年、同県中城村で7人きょうだいの末っ子として生まれた。沖縄戦では県民の4人に1人が亡くなったとされる。普天間さんの祖父や叔父、いとこら6人も本島南部で命を落とし、一緒に行動していた母と当時3歳だった姉はどうにか生き延びた。「母が生きたおかげで自分がいる」と思う。

琉球大学を卒業後、那覇市役所の職員や、地元の新聞社が発行する副読紙の記者等を務めたが、どれも長続きしなかった。29歳の時、開館を控えた資料館が職員を募集していることを新聞で知り、採用試験を受けた。「ここなら、やり甲斐のある仕事ができる筈だ」という予感があった。

開館時の職員は普天間さんら2人だけで、元学徒達は無報酬で館の運営や展示の説明等様々な仕事を担った。「私も結構忙しくて、『大変なところに来てしまった』と思った。でも、彼女達が60歳前後になって、慣れない仕事を一生懸命やっている姿を見ると、弱音は吐けなかった」。

館長は代々、沖縄戦を体験した元学徒らが務めていたが、2018年、普天間さんは館長を任された。「それまでの館長の存在の大きさを感じていたので、荷が重いと思った。でも、高齢となった体験者にこれ以上頑張ってもらうわけにはいかないというのが、一致した意見でした」。元学徒の思いが詰まった資料館。ところが、普天間さんが館長に就任して程なくして、存続の危機に直面する。

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テーマ : 歴史
ジャンル : 政治・経済

【石井聡の「政界ナナメ読み」】(44) 党首討論に見る野党結集の限界

前回の小欄で“うわべ”ばかりの政治が横行していることを指摘した。その象徴ともいえ、国会形骸化の極みと言うべきものが党首討論である。岸田文雄政権での初開催を巡り、19日の党首討論は“首相は衆議院解散に言及するか”等と注目を集めたが、問題の本質はそういうことではない。

党首討論は毎月1回の開催を与野党が申し合わせてきたものの、そのルールは顧みられない。抑も、平成12年頃に党首討論が始まった当初は、毎週水曜日に開催することが定められた。衆参の憲法審査会の活動が一部野党の遅延戦術で停滞しているのも問題だが、それに勝る形骸化と言えるのではないか。

イギリスのクエスチョンタイム等を参考に、党首間の討論で国会の活性化を図るという触れ込みで導入されたものの、この体たらくの状態が続きながら大きな問題とならないのは、与野党双方に党首討論開催への意欲が欠如しているからに他ならない。

小気味のいい発言ぶりが最近注目される国民民主党の榛葉賀津也幹事長が、また面白いことを言った。同党の玉木雄一郎代表の討論時間が質問答弁を合わせて3分間しかないことについて、「今時のカップラーメンだって4分、5分が当たり前ですよ」と指摘したのだ。待ち時間3分の製品は今でもあるなと感じつつ、憤るのは尤もだと思った。

実は、党首討論が低迷する理由の一つは、時間配分等を巡る運営方法にもある。正味45分間の開催時間自体が十分かという問題はおいて、仮にそれを首相と野党第一党の党首が使い切るとしても、骨太の議論を深めるには足りるとは言えまい。況してや、それを立憲民主党(※26分)、日本維新の会(※12分)、日本共産党(※4分)、国民民主党(※3分)で分け合う。子供から見てもナンセンスだ。

何故、野党側は1人の党首に時間を集中させないのか。その分、別の機会に中小政党を中心に登壇させる方法も考えればよかろう。そうした運営改善にどれだけ注力されてきたのかは疑問だ。維新や国民民主は形骸化する党首討論に見切りを付け、これを廃止する法案を国会に提出したこともある。

それも一案だが、時間配分の改善により少しは集中した議論が可能になるし、時間を譲った政党が出番を求めて開催を促すことにもなろう。それらも難しいなら、予算委員会を舞台に首相の出席を求めて集中審議を多用するのも有効だ。

国会形骸化は野党の非力化にも結び付く。野党間の連携が弱い状況は、抑も二大政党制をイメージして導入した面もある党首討論にそぐわない。そうした勢力が仮に衆院選を通じて与党を上回ったとしても、果たしてどれだけ政策を強力に推進できるのか。尤も、纏まりの悪い野党を前に、自民党もあまり偉そうなことは言えない。

経済財政運営の指針となる今年の『骨太の方針』を巡り、党内のいわゆる財政再建派と積極財政派の双方が、同じ日に岸田首相に対して提言を出した。政党内に多様な意見が存在して議論を戦わせるのはよいが、政権与党内での基本的な対立構図は続いたままだ。首相に直訴する前に、党内機関での意見調整がどれだけ図られていたのか。与野党共に政局一辺倒ではなく、政策本位の議論に立ち戻る意識が欠かせない。 (本紙特別記者 石井聡)


キャプチャ  2024年6月21日付掲載

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

【佐藤祥子の「力士、燃ゆ」】(40) 62年ぶり開催で見せた大相撲の底力

4月16日、春巡業の合間に『能登半島地震復興支援・勧進大相撲』が両国国技館で開催された。実に62年ぶりとなる勧進相撲とは、江戸時代から行なわれ、寺院や神社等の建立や修繕等の為に観客から見物料を取って、それに充てるものだ。『日本相撲協会』広報部の西岩親方(※元関脇・若の里)は言う。「入場料約3000万円と、売店でのグッズの売り上げも、全て義援金として寄付することになっています。今日は大盛況でホッとしました」。

協会御挨拶には春日野事業部長(※元関脇・栃乃和歌)の他、被災地・石川県出身の大鳴戸親方(※元大関・出島)、竹縄親方(※元関脇・栃乃洋)、同じく富山県出身の朝乃山、石川県出身の大の里、遠藤、輝、欧勝海が勢揃い。関取によるのど自慢や、元高見盛(※東関親方)等の若手親方達による取組も。

凡そ7000人のファンの中には、石川県や富山県から足を運び、束の間の笑顔を求めた被災者もいた。祖父が被災し、未だ避難所生活を送っているという大の里は、「予定されていた七尾巡業がなくなってしまいましたが、こういう場を設けていただき、嬉しいし、本当にありがたいです」と目を輝かす。力士達其々が思いを込め、写真撮影や握手会等、ファンサービスに勤しんでいた。

中でも圧巻だったのは、呼出し・利樹之丞が作詞し、春日山親方(※元関脇・勢)が朗々と歌い上げた相撲甚句(※力士が歌う七五調の囃子歌)だ。

♪力合わせて 祈るは復興を ハー北陸能登は良いところ 海山街良し 人も良し 天下泰平 団欒の ようやく迎えた正月を 令和六年元日に 突如襲いし大地震 多くの犠牲と被災者に 心からお見舞申します 辛く悲しい被災地へ 力の士 四股踏んで 天地を鎮めて願うのは 相撲と同じく前向いて 歩み止めない復興を 欧勝海には輝に 遠藤 大の里 朝乃山 土俵で元気を故郷に すもう王国 ご当地へ これから国技が恩返し 江戸から伝わり蘇る 能登半島地震復興支援 ここに勧進大相撲 皆々様のお気持ちに 厚く御礼申します 日本相撲協会一同は 北陸の再生ヨーホホイハー 支えますョー

割れんばかりの大拍手。大相撲の底力を垣間見て、皆、加賀の地に思いを馳せた。


佐藤祥子(さとう・しょうこ) 相撲ライター。日本相撲協会認定・相撲健康体操指導員。1967年生まれ。週刊誌記者を経て、1993年からフリーに。著書に『相撲部屋ちゃんこ百景』(河出書房新社)・『知られざる大鵬』(集英社)等。


キャプチャ  2024年6月号掲載

テーマ : 大相撲
ジャンル : スポーツ

【欧州議会選2024・右派急伸】(下) 軽妙に強硬論、若者支持

20240628 05
体育館内に、小気味よいテンポでポップスの曲が絶え間なく流れていた。先月24日、フランス北部のエナンボーモンで開かれた右派ポピュリズム(※大衆迎合主義)政党『国民連合』の選挙集会。ワイシャツの両袖をまくし上げたジョルダン・バルデラ党首(28)が壇上で白い歯を見せた。

党の実質トップに君臨するマリーヌ・ル・ペン前党首(55)に抜擢され、1年半前に党首の座に就いた。若さと清新さを前面に押し出したアピール手法が奏功し、中高年に偏っていた党の支持基盤は、一気に若年層へと広がった。軽やかな身のこなしとは対照的に、演説内容は重苦しい。家計が苦しいのはEUの失政、治安悪化は移民の流入が原因だと主張し、「移民の洪水でフランスが消し去られないよう、投票しよう」と呼びかけた。

演説に怒声や絶叫はない。軽妙に聴衆を笑わせながら、どこまでも洗練された語り口で強硬論を繰り出すスタイルだ。演説後はマリーヌ氏と並んで笑顔を振りまき、若者達と自撮りの記念撮影に応じていた。

フランスでは81議席を争う今回の欧州議会選で、国民連合は大きく議席数を増やすとみられている。大きな要因の一つに、イメージ戦略の成功がある。国民連合は1972年、マリーヌ氏の父ジャンマリー・ル・ペン氏によって設立され、2018年までは『国民戦線』を名乗っていた。一部の熱狂的支持を集めたものの、国民の大半からは極端な人種差別集団として白眼視された。

マリーヌ氏は2011年に党首に就任した後、党の穏健化を推し進める。EU脱退や移民追放といった極端な主張を封印し、治安や経済格差の問題に焦点を絞る。自宅で飼い猫と戯れる様子をSNS上で発信するようにもなり、嘗ての邪悪なイメージは薄らいだ。欧州メディアは、これを“フランス極右の脱悪魔化戦略”と呼ぶ。

党内では「中核的な支持者を失う」として反対論もあったが、結果的には大幅な支持拡大に繋がった。党幹部としてそうした戦略の一翼を担ってきたクリストファ・ジュレック上院議員(38)は、右派急伸の要因について「何も特別なことはしていない。グローバル化の弊害について、市民と徹底的に対話してきただけだ」と涼しい顔だ。

昔を知る党員の多くも変化を歓迎している。国民戦線時代の1980年代から支持してきたという元貿易関連会社員のヤン・フリポさん(93)は、選挙集会でバルデラ氏の登壇を待ちながら、「集会といっても、昔は関係者が数人来るだけだった。今は若者が大勢いて本当に嬉しい」と頬を緩めた。

マリーヌ氏の戦略に倣ったのがオランダ自由党だ。イスラム教の礼拝所(※モスク)や聖典『コーラン』を禁止するという従来の公約を凍結することで穏健化イメージを確立し、昨年11月の総選挙で第一党に躍進した。イタリアのジョルジャ・メローニ首相の影響も大きい。独裁者ベニート・ムッソリーニ支持勢力の流れを汲む筋金入りの右派だが、2022年10月の首相就任後、一貫して国際協調路線をとってきた。

2月のEU首脳会議では、ウクライナ支援案に反対するハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相を説得し、現実的妥協点を探る役回りを演じてみせた。こうした姿勢が、欧州全体の有権者に安心感をもたらしたことは間違いない。ただ、全ての右派勢力が同じではない。ドイツ等では、右派が一層右傾化することで支持拡大に繋げているとの見方もある。右派の穏健化が進んだフランスやイタリアでも、どこかで逆回転が始まらない保証はない。

          ◇

(ブリュッセル支局)酒井圭吾/(ベルリン支局)中西賢司/(ロンドン支局)尾関航也・蒔田一彦が担当しました。


キャプチャ  2024年6月9日付掲載

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

【欧州議会選2024・右派急伸】(中) 反戦、穏健保守層が共鳴

20240628 04
先月下旬、ドイツの右派政党『ドイツのための選択肢(AfD)』が集会を開いた北西部ハノーバーの市民会館一帯は、異様な雰囲気に包まれていた。「ドイツは武器をウクライナに送り過ぎだ」。市民会館では、壇上の弁士が語気を強めると、約250人の支援者から喝采が上がった。屋外ではデモ隊が“反AfD”のシュプレヒコールをあげ、警察が出動する騒ぎになっていた。

弁士は「貧しいドイツ人は空き瓶回収で生活しているのに、政府は外国の支援に大盤振る舞いをしている」と畳みかけ、約2時間半に及んだ集会は熱を帯びていった。支援者の女性(65)は「武器供与の資金は国民に回すべきだ」と訴えた。

11年前に結党したAfDは、反ユーロや反移民等を旗印にじわじわと支持を拡大し、ハノーバーのような二大伝統政党の地盤・旧西ドイツ地域にも浸透している。欧州議会選の筆頭候補であるマクシミリアン・クラー氏は取材に対し、「(軍事支援の)財政負担やドイツ兵が(直接戦闘に)巻き込まれる危険性を強調するつもりだ」と語った。

ドイツは、欧州を戦火に陥れたナチスの歴史から、国際紛争への軍事関与に消極的だった。ロシアの侵略前は、兵器供与を求めるウクライナに対し、ヘルメット5000個の提供を表明して顰蹙を買った。だが、侵略後、安全保障政策の“大転換”を宣言したオラフ・ショルツ首相は、ウクライナへの支援内容を段階的に引き上げ、軍事支援はアメリカに次ぐ規模となった。

戦後の平和主義を重んじる国民の不満の一部が右派勢力に流れ込んでいる。クラー氏は最近、「ナチス親衛隊(※SS)の全員が犯罪者だとは言えない」と発言して、猛批判を浴びた。にも拘わらず、支持に大きな陰りが見えないのは、反戦主張等に共鳴する穏健保守層が下支えしているのが一因だろう。

今月6日発表の世論調査でAfDの支持率は14%で、伝統保守政党『キリスト教民主同盟(CDU)』に次ぐ2位につける。人口約3万人の南西部、ブレッテン。中世の面影が残る広場での約80人の地元支援者が集まったAfD集会では、付近に約400人のデモ隊が陣取り、「ナチスは帰れ!」と叫んでいた。

だが、遠巻きに様子を見守っていた夫婦は、「この小さな町では大っぴらに言えないが、AfDに投票するつもり」と打ち明けた。CDUに近い立場だったが、同党のアンゲラ・メルケル前首相による中東難民の大量受け入れや、脱原発への転換に失望したという。妻(62)は、「戦争がエスカレートしているのが心配だ。軍事支援に反対する保守政党はAfDだけ。自分の意見を代弁してくれる党は他にない」と話した。

戦争か、平和か――。ウクライナへの支援疲れが広がる欧州で、右派勢力が極端な争点を示し、不満票を取り込もうとしている。オーストリアの極右・自由党は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とEUの執行機関『欧州委員会』のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が抱擁する絵に、〈EUの狂気を止めろ〉と書き込んだ選挙ポスターを貼り出した。

オーストリアは戦争に関与しない“永世中立”を掲げる。政府は軍事支援はしていないが、ゼレンスキー氏にオンラインの議会演説を認める等、ウクライナ寄りの姿勢を示す。有力誌『プロフィル』のロベルト・トライヒュラー副編集長は、「自由党は政府を“反中立”として描こうとしている」と語り、中立性を重視する国民の不安を煽ろうとしていると分析する。

親露国のハンガリーも同様だ。ビクトル・オルバン首相率いる右派政党『フィデス』は、レストランのウェイターに扮した野党指導者がフォン・デア・ライエン氏の注文を受け、戦争を運んでくるというポスターを用意した。世論調査では、自由党とフィデスは何れも支持率で他党を引き離し、トップにつけている。


キャプチャ  2024年6月8日付掲載

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

【欧州議会選2024・右派急伸】(上) 難民問題、不安吸い上げ

6日に投票が始まった欧州議会選挙では、右派勢力の伸長が予想される。背景を追う。

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スウェーデンの首都ストックホルムから北に約60㎞のウプサラ。15世紀に北欧最古の大学が創設された都市のショッピングセンターで昨年6月、銃声が響いた。何者かの乱射により、居合わせた少年1人が負傷した。敷地内を走るバスにも複数発の銃弾が撃ち込まれ、悲鳴が上がった。3ヵ月後には市内の別な場所で爆発事件があり、20代の女性が巻き添えで死亡した。

地元メディアによると、何れの事件も犯罪組織の抗争に関係する。イラク出身のクルド人が率いる犯罪組織が分裂し、勢力争いを繰り広げている。実際、国内の発砲事件数は2017年の281件から、2022年は391件と急増した。銃犯罪の死亡者数は2017年の36人が、2022年は62人になった。

全ての銃犯罪に難民が関わっているわけではないが、ウプサラの学生ジェニファー・ジェビエツキさん(19)は「10年前にこの状況は想像もつかなかった。大量の難民受け入れは国益に適わない」と訴えた。難民や移民を受け入れてきたスウェーデン伝統の寛容性は揺らいでいる。

“反移民”を掲げる右派勢力のスウェーデン民主党は、治安悪化への市民の不安を巧みに吸い上げる。「発砲や殺人事件が日常茶飯事となった。我々はあまりに難民に寛容過ぎたのだ」。欧州議会選に、右派会派『欧州保守改革(ECR)』に加わる民主党から出馬する警察官のマリア・ロサンデル氏(51)は語気を強めた。

2010年に国政で初議席を得た民主党は、治安への懸念増加と並行して支持を伸ばす。2022年のスウェーデン議会選では第二党に躍進し、政権に閣外から協力する。欧州議会選でも前回選の3議席からの上積みを狙う。

EU域内への不法移民・難民数は昨年、100万人を超え、“欧州難民危機”と呼ばれた2015年の規模に並んだ。各国の右派勢力と支持者は、地中海をボートで渡ってくる不法移民の映像をSNS上で流し、市民の視覚に危機を訴える。この数年で、オランダやスペイン、ポルトガル、フィンランド等、EUに加盟する3分の1以上の国で、“反移民”を掲げる政党が国政選挙で躍進した。

市民生活や社会への不安の増大は、右派のポピュリズム(※大衆迎合主義)戦略を後押しする。ドイツでは2022年末、約130年に亘って陶磁器を作ってきた老舗メーカーが生産中止に追い込まれ、地元に衝撃が走った。同年2月に始まったロシアのウクライナ侵略で、欧州向けのロシア産天然ガス供給が減少し、器を焼く燃料のガス価格が6倍に跳ね上がったのが要因だ。

『エッシェンバッハ』のブランド名でディナーセット等年750万点を手がけてきたが、自主再建を断念し、東南アジア企業への事業譲渡を決めた。60代の経営者、ロルフ・フローバインさんは「ウクライナ危機がなければ…」と悔しさを滲ませた。侵略で欧州の電気料金は約8割高騰し、企業経営を圧迫する。2020年のコロナ禍以降、卵の価格は4割、パンや肉、野菜も其々3割上がった。市民生活は打撃を受けている。

“オランダのドナルド・トランプ”と呼ばれる極右・自由党のヘールト・ウィルダース党首は、昨年11月の下院選で、インフレの原因を「移民への手厚い保護」「政府とEUの自由貿易政策」と単純化し、不満を煽った。支持者は右派指導者を、エリートであるEUや政権に対峙する“市民の代弁者”と信じる。第一党に躍進した選挙結果は、右派勢力にポピュリズムの集票力を改めて知らしめた。

右派勢力は一様に、EUが進める気候変動対策『欧州グリーンディール』についても猛批判する。農薬や家畜の飼育に関する厳しい規制は、農家経営を圧迫する。各国で農民デモが相次ぎ、今月4日にブリュッセルで行なわれたデモには、複数国の右派勢力幹部が集結し、ステージでEU批判を繰り広げた。フランスの農家、ディディエ・ハマーさん(57)は右派勢力の反EUに同調する。「我々に未来を提供しない政策はいらない」。


キャプチャ  2024年6月7日付掲載

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

【ゆがむ選挙】(下) 法規制、高いハードル

https://www.yomiuri.co.jp/election/20240613-OYT1T50016/


キャプチャ  2024年6月13日付掲載

テーマ : 選挙
ジャンル : 政治・経済

【WEEKEND PLUS】(509) 上川陽子外務大臣の失言を嬉しがる茂木敏充幹事長と岸田文雄首相に高まる批判

20240628 02
静岡県知事選の応援演説での上川陽子外務大臣の“失言”への岸田文雄首相と茂木敏充幹事長の対応に、自民党内から批判が出ている。先月18日、上川氏が自民党推薦候補の当選に向け、「うまずして何が女性でしょうか」と述べたと『共同通信』が速報した。発言には「不適切だ」との声がある一方で、「報道は発言の切り取りだ」と上川氏擁護の声もあった。ただ、茂木氏は記者団との懇談で、「どこをどうとっても“失言”だ。今までは地味だったけど、今回のように注目されたらこうなるよね」と頬を緩めて語った。ある閣僚経験者は、「ポスト岸田のライバルかもしれないが、喜ぶより知事選への影響を考えるのが幹事長の仕事だろう」と吐き捨てる。上川氏の発言撤回を受け、岸田首相も記者団に「誤解を招く表現は避けるべきだと私も思う」と語った。その為、官邸内からは「首相も内心、上川さんの“失言”を喜んでいるのではないか」という声が漏れ伝わる。


キャプチャ  2024年6月号掲載

テーマ : 政治のニュース
ジャンル : ニュース

【WEEKEND PLUS】(508) 元議員の叙勲でざわつく公明党…“辞退”のルールは空文化へ

20240628 01
公明党の元衆議院議員で、法務副大臣や財務副大臣を務めた富田茂之氏(※右画像)が、春の叙勲で旭日大綬章を受章したことに、党内で小さな波紋が広がっている。同党として叙勲辞退を申し合わせていたからだ。嘗ては公明党の議員経験者も叙勲を受けていた。同章を受章した竹入義勝元委員長が1998年に『創価学会』と公明党の政教一致の実態を暴露し、池田大作名誉会長の怒りを買い除名されたのを契機に、「池田先生も叙勲されていないのに弟子が貰うとは何事か」(学会関係者)ということで叙勲辞退に至った。例外はあり、学会員の松あきら元経済産業副大臣らが受章しているが、2018年の松氏受章の際には党内に摩擦を生み、党幹部は「受章を目立たないようにするのに大変だった。嘗ての勲二等だったのも幸いした」と振り返る。富田氏は創価高校二期生の学会員。受章は大きく報道された。ただ、叙勲は天皇から授与されることもあり、公明党として表立って非難すれば天皇制の否定に繋がりかねない面もある。党関係者は、「辞退の申し合わせも紳士協定に過ぎない。池田先生も亡くなり、歯止めがなくなった」と呟いた。


キャプチャ  2024年6月号掲載

テーマ : 政治のニュース
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【木曜ニュースX】(510) 共同通信イスラマバード支局で中堅記者が“無断帰国”した理由

20240627 03
『共同通信』イスラマバード支局で人事を巡るトラブルが発生した。発端は今年2月、中堅のY記者が赴任したことだという。パキスタンには情勢が不安定な地域があり、取材には領収書の出ないカネが必要になる。その為、同支局では緊急時に使える資金を代々の担当者に引き継いでいるが、Y記者は「こんな裏金は使えない」と拒否。その上、隣国のアフガニスタンに入ることを極端に恐れ、最後は「現地スタッフに殺される」と言って、勝手に帰国したというのだ。その後、同支局は後任が決まらず、現在はバンコク支局長がカバーしているという。


キャプチャ  2024年6月号掲載

テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
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