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【地方銀行のリアル】(49) 三十三銀行(三重県)――2行合併“視界不良”の船出



20210430 09
御三家、三種の神器、三位一体――。日本では古来、3という数字はとりわけ縁起が良いとされてきた。抑もが奇数。偶数のように割り切れず、縁が切れないことを想起させる上、最初の奇数である1と最初の偶数である2を合わせた3は“調和を表す”とも言われる。3の読みである“みっつ”が“満(充)つる”に通じるという語呂合わせからも、好まれて使われるようだ。そんな3に満ち満ちた銀行が今年5月1日、船出する。『三重銀行』と『第三銀行』が持株会社『三十三フィナンシャルグループ』の下で合併して誕生する『三十三銀行』だ。行名ばかりではない。新銀行の初代頭取に就任する予定の三重銀行頭取兼三十三FG社長の名前は渡辺三憲。新銀行発足と共に特別顧問に退くとはいえ、旧大蔵省出身で第三銀行現会長の名前は谷川憲三。まさに三尽くしといったところか。尤も、こうした縁起物の数字とされる3も、旧日本海軍関係者らの間では蛇蝎の如く忌み嫌われていたという。末尾に三の付く潜水艦で不幸な事故が相次いだ為だ。実際、伊号第三(※伊三)潜水艦は1928年に座礁事故を起こした上、1937年には潤滑油タンクの爆発事故で18人が死傷。伊五三は1936年に伊五六と接触事故を起こし、伊六三は1939年に僚艦の伊六〇と衝突して沈没するという憂き目に遭っている。こうした中でも“禍々しさの極み”とも言われているのが、伊号第三三潜水艦だ。

何しろ、就役から3ヵ月後の1942年に艦首を珊瑚礁にぶつけて応急修理中に注水ミスで自沈。水中から引き揚げられ日本本土に回航されて本格修理を終えた1944年、今度は訓練中に急速潜航を行なった際、ディーゼルエンジンの吸気弁から浸水して沈没と、二度も沈没しているからだ。しかも、最初の事故での犠牲者が33人(※後者は102人)というのだから、偶然にしては出来過ぎだろう。だが、伊三三が招き寄せた凶事はこれにとどまらなかった。終戦後の1953年、沈没した伊予灘から引き揚げられ、『日立造船』(※現在の『ジャパンマリンユナイテッド』)の因島工場で調査中、前部魚雷発射管室を開けたところ、内部に充満していた有毒ガスが噴出。立ち入ったエンジニアらが死亡したのだ。犠牲者は3人。こうなると最早、3も33も呪われた数字というしかない。そんな“因縁”をも呑み込んで始動する新銀行は、2020年9月末実績の単純合算で預金量3兆7513億円、貸出金量2兆7943億円。三重銀行、第三銀行単独では現在、預金・貸出金とも地銀102行中70位前後にとどまっているが、合併により預金で38位、貸出金では37位のランクにまで浮上する。本店は四日市市にある三重銀行本店に置き、第三銀行の岩間弘頭取が代表権のある会長に就任。三重銀行現会長で旧『住友銀行』出身の種橋潤治氏は、谷川氏と同じく特別顧問に就く。社外を除く取締役は11人で構成。うち三重銀行出身が6人と多数派を占める形となる。基幹系システムは、合併と同時に第三銀行が利用する『日立製作所』提供のシステムに統合する計画だ。その新銀行が掲げるのが“質の高い地域ナンバーワン銀行”。事業承継やM&A、ビジネスマッチング等法人向けの手数料ビジネスを成長戦略の基軸として収益力を強化。域内トップバンクである『百五銀行』(※本店は津市)を凌駕する存在を目指していこうというもので、「徒に貸出金量を追い求めることはしない」(渡辺氏)という。金融界は2013年から続く異次元緩和の真っ只中。況して、新銀行が主戦場とする東海地区は“名古屋金利”や“岐阜金利”といった言葉にも象徴されるように、全国的にも貸出金利の水準が低いことで知られる。既に三重銀行の総資金利鞘は直近3期連続マイナス。第三銀行も2020年3月期は遂に逆鞘へと転じた。預貸金ビジネスに頼っていては収益の底上げは望めないというわけだろう。とはいえ、百五銀行の背中は遠い。三重銀行と第三銀行のコア業務純益は、2020年3月期の単純合算で88.9億円(※前期比18%減)。これに対し、百五銀行は132.72億円(※同6%減)で、そこには50億円近い実力差があるからだ。

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テーマ : 地域のニュース
ジャンル : ニュース

【地方大学のリアル】(16) 名古屋大学(愛知県)――有力教授“論文不正疑惑”の衝撃



20210430 07
不正の存在を前に黙する人々は、不正の共犯者に他ならない――。イギリスの政治学者、ハロルド・J・ラスキの言葉である。東京の大学で有機化学の研究をする大学教員が語る。「有機化学界隈が震撼する問題だが、今のところ様子見をしている研究者が多く、皆、口が重い」。渦中にいるのは、名古屋大学大学院理学研究科の伊丹健一郎教授(※左画像)。同大トランスフォーマティブ生命分子研究所(※ITbM)拠点長の他、『科学技術振興機構(JST)』の重点プログラムである『伊丹分子ナノカーボンプロジェクト』の総括も務めている。“震撼する問題”とは、伊丹教授が責任著者となった論文における不正疑惑である。STAP細胞捏造や高血圧治療薬『ディオバン』の臨床データ操作等、科学界の不正は後を絶たない。細かいものも無数にあるが、有機化学研究者が仰天したのは、伊丹教授が押しも押されもしない“スター研究者”だったからだ。名大という学校だからこそ、同教授が現在の地位につけたという側面がある。伊丹教授は京都大学工学部で化学を学び、そのまま大学院に進み、1998年に京大で博士号を取得した。その後は母校で助手(※現在の助教)を務めていたが、2005年にノーベル賞学者の野依良治氏に名大にスカウトされた。野依氏は、自身の後継者となる研究者の発掘に乗り出し、白羽の矢が立ったのが伊丹氏だった。伊丹氏は2007年まで野依特別教授の下で准教授を務め、2008年には30代という若さで教授の座に上り詰めている。同じく京大工学部から名大に移り、若くして教授になった野依氏の経歴をなぞったようだ。伊丹教授が野依氏の後継者であることは名大だけでなく、有機化学界全体の認識である。

国からのお墨付きも得ている。2007年度から始まった世界トップレベル研究拠点プログラム(※WPI)は、文部科学省の直轄事業として、世界から先端研究者を集めた拠点にしようというもの。そして、伊丹教授が拠点長を務める名大のITbMは、2012年にWPIに採択された。年間7億円程度の運営費が保証され、国内最高レベルの環境にある。そして、WPIのプログラム委員会の現在のトップは野依氏が務め、採択された2012年当時も同氏は委員の一人であった。当然、伊丹研は科研費等も潤沢で、関西のある大学教授は伊丹氏について「研究費を配る側の人間という印象」と語る。これが、今回の不正について他の研究者の口が重い一因だろう。伊丹氏が重点的に取り組んできたのはナノカーボン分子に関する研究。炭素原子からなる筒状物質であるカーボンナノチューブ(※CNT)や、サッカーボール状に炭素原子が結合したフラーレンの部分構造のことだ。ナノカーボンは次世代半導体材料として期待される。しかし、意図したものを人工的に合成するのは難しい。例えばCNTの場合、鉛筆の芯のようなグラファイトに放電等を加えれば作成できる。しかし、その直径や構造が単一ではない上、特定の大きさのCNTを分類することさえ容易ではない。半導体材料として使う為には、特定のサイズのCNTだけを作る必要があるが、放電等で作るトップダウン式では困難だ。そこで世界の研究者が取り組んでいる合成法が、炭素を含む小さい分子を集めて組み立て、目的のナノカーボンを合成するボトムアップ式プロセスだ。けれども、材料となる分子の多くは、人間に都合よくは反応してくれない。伊丹教授は2017年、ボトムアップ式のCNT作成に欠かせないカーボンナノベルト(※CNB)の合成に、世界で初めて成功している。これは、CNTを組み立てる際に土台となるパーツで、約60年前に存在が提唱されていたが、これまで誰も合成できなかった。そして今回、問題となっているのは2019年に科学誌『ネイチャー』に掲載されたグラフェンナノリボン(※GNR)の合成に関する論文だ。伊丹教授らは昨年11月に1本の論文を撤回するとネイチャー側に伝え、今年2月には新たに2本の論文も撤回したのだ。GNRは、炭素原子が金網のように繋がったシート状のグラフェンと呼ばれる化合物を、細いテープのように切り取った分子のこと。GNRはその幅や長さによって半導体や光応答の性質を持つことが知られており、従来のシリコン材料を凌駕する可能性を持つ画期的な次世代ナノカーボン分子だ。GNRもまた、ボトムアップ式の合成法が求められてきたが、前述した伊丹研の論文はこれを解決した上、特定の幅や長さ、エッジ(※縁)の構造のGNRを精密合成できるという内容だった。取り下げ理由や各種検証によると、「データが不正に操作され、恰も合成が可能であるかのように捏造した疑惑が濃厚」(前出の関西の大学教授)なのだ。

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テーマ : 教育問題
ジャンル : ニュース

中国でワクチン接種拒否者が続出…集団免疫獲得の障害に



20210430 06
先月中旬時点で既に4種類の国産新型コロナワクチンが承認され、約6500万人が接種済みの中国だが、思わぬ問題が発生している。接種拒否者が続出し、集団免疫が達成できない恐れが出てきているのだ。医療従事者の他、サービス業や運輸業関係者といった優先度の高い対象者への接種がほぼ一巡し、対象は高齢者や基礎疾患を持つハイリスク群に移ったが、安全性への懸念から様子を見る人が相次ぐ状況だ。現状で政府は強制接種といった方策は打ち出していない。政府は安全性を訴えたが、肝心のデータを示さず、却って不安を増幅させる結果になった。接種を忌避している人数等は明らかになっていないが、対応からは焦りが滲む。都市部では、日本の町内会にあたる居民委員会が社区単位で接種業務を担っている。社区住民のワクチン接種率が責任者の評価に直結する為か、北京では「接種に応じれば卵パックをプレゼントする」「レンタル自転車の利用をサービスする」等、あの手この手のキャンペーンも始まったが、効果は今一つだ。

          ◇

日米豪3ヵ国と共に先月12日、初の『QUAD』首脳会議に臨み、ミャンマーのクーデターに“重大な懸念”を表明してみせたインドだが、裏でミャンマー軍政との密約が疑われている。インドに逃れてきた難民の一部を、軍政の求めに応じ、送還した例がある模様だ。また、自治体に対して難民流入を阻止するように通達も出されているという。インド北東部には、1962年の中印国境紛争の激戦地であるアルナチャルプラデシュ州が存在する。インドは1988年、ミャンマーの学生運動を支援し、ミャンマー軍との関係が悪化。その結果、インド北東部の武装勢力が四半世紀に亘ってミャンマーに逃げ込んで聖域を得てきた歴史がある。そして、こうした武装勢力の背後には中国の影がちらつく。インドとしては、2年前に漸く和解したミャンマー軍との関係を悪化させたくないという思惑がある。

          ◇

韓国軍の兵力57万人のうち、兵士30万人は徴兵制(※兵役期間18ヵ月)により徴集され、毎年20万人が入れ替わる。しかし、少子化で兵役適齢(※20歳)の男子は33万人(※昨年)に減少し、15年後は20万人を下回る。その為、軍は今後、志願制に移行する構想を進めている。但し、志願兵20万人(※任期2年)の給与を下士官の9割に想定すると、人件費予算は現行徴兵制の年間15.8兆ウォン(※約1兆5800億円)から29兆ウォンに跳ね上がるとの試算があり、難しい。現在志願制の女性兵士の徴兵制への切り替え案や、徴兵と志願を併用するプラン等も並行して検討されているが、妙案はない。

          ◇

中国が2月初め、海警局に、外国船への武器使用を認める海警法を施行したことは、日本だけでなく、台湾をも緊張させている。台湾は、これまで平時でも有事でもないグレーゾーン事態に対処する為、日本の海上保安庁に当たる海洋委員会海巡署(※海巡署)の第二海軍化を進めてきた。中国の海警法施行で世論の追い風が吹いており、艦船の大型化や重装備化に、更に拍車が掛かりそうだ。台湾の海巡署は、中国海警局船を相手とする領海警備に加えて、排他的経済水域(※EEZ)や領海を侵犯して悪事を働く、様々な中国船の取り締まりを担当している。

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テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

【ときめきは前触れもなく】(73) 春宵のいたずら

https://dot.asahi.com/wa/2021042100028.html?page=1


キャプチャ  2021年4月30日号掲載

テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

【佐藤祥子の「力士、燃ゆ」】(02) 照ノ富士(伊勢ヶ濱部屋)――序二段から大関復帰の快挙

「大横綱でも味わったことのない楽しさを味わっているのかも。相撲人生を2回楽しんでいるというか――。新十両になった時とか、番付が上がっていく時って、皆、嬉しくて心に残っていると思うんです。それを自分は2回楽しんでいる」。これは2019年末の言葉だ。序二段まで陥落した元大関の照ノ富士が、幕下優勝を果たして十両復帰を確実にした。喜びを内に秘め、「目標は未だ先にある」と、更に表情を引き締めていたものだ。入門から5年目、2015年の5月場所で幕内初優勝を果たし、晴れて大関に昇進。横綱を掴み取る日を夢見ていた大器は、両膝に怪我を負いながらも約2年間、大関を張り続けた。しかし、病魔が192㎝の巨体を蝕んでいく。「体のことをまるで考えていなかった」。暴飲暴食も祟り、糖尿病や肝炎、腎臓結石を患い、休場が続く。あれよあれよという間に番付は急降下し、衰えた筋肉と浮腫んだ顔に往年の勇姿の面影はなかった。しかし、浴びるほどに飲んでいた酒を断ち、ひたすら治療とトレーニングに勤しみ、雌伏の時を送っていたのだった。2019年3月場所、序二段の土俵で復活を果たすと、同年11月場所では幕下、翌年1月場所には十両、7月場所では幕尻ながら幕内優膝を果たすミラクルを見せつけた。そして来る3月場所は、二度目の大関取りの場所となるのだ。元大関が序二段まで番付を落とし、大関に復帰することになれば大相撲史上初、歴史を塗り替える快挙となる。稀有な復活ドラマの裏には、この2月にやっと挙式し、お披露目できた夫人の支えもあった。「きっと、90%の人が『照ノ富士はもう終わりだ』と思っていた筈。でも、奥さんを始め、10%の人が復活を信じてくれていた。辛い時に誰が一緒にいてくれたのか――周囲が見えるようになりました。変わらず応援してくれていた人に対し、『もう一回、絶対にやってやります』との思いだけなんです」。強引に投げを打つ、嘗ての荒っぽさは消え、じっくりと落ち着いて相手を仕留める相撲に変わった。因みに、大関・朝乃山との幕内対戦成績は無敗でもある。地獄を覗き見た男は、今、心技体の“心”を更なる強靭な武器とし、再び土俵に這い上がってきたのだ。


佐藤祥子(さとう・しょうこ) 相撲ライター。日本相撲協会認定・相撲健康体操指導員。1967年生まれ。週刊誌記者を経て、1993年からフリーに。著書に『相撲部屋ちゃんこ百景』(河出書房新社)・『知られざる大鵬』(集英社)等。


キャプチャ  2021年4月号掲載

テーマ : 大相撲
ジャンル : スポーツ

【変わる不動産市場】(04) 猫の額から抜け出したい

20210430 05
中国で営業職に就く32歳の戴永雪。上海市の西の外れに夫と住むシェアハウスの広さは、僅か8㎡だ(※左画像)。浴室とトイレは共用で台所もなく、狭い部屋のカウンターに炊飯器と電磁調理器を並べる。5歳の息子がいるが、とても一緒には住めない。息子は江蘇省揚州市の実家に戴の両親と暮らす。夫婦の収入は歩合で安定しないが、「小学生になったら少しでも良い教育を」と、来年には隣接する蘇州市花橋鎮に小さなマンションを買いたいと思っている。浙江省杭州市のトラック運転手である王少華は、休日もほぼ取らず、働き詰めで貯蓄をしている。出身は安徽省。地元に残した妻子と老親が暮らす家は煉瓦とコンクリートの粗末な造りで、冬の寒さは耐え難い。貯金は安徽省に家を買う為のものだ。中国国家統計局によると、先月の新築住宅は主要70都市の内、62で前月比値上がりした。上海や北京の中心部では、平均的な家族用で1500万元(※約2億5000万円)を超える物件も多い。

大都市から離れても家を持つのは簡単ではない。過剰開発やバブル懸念も囁かれる中で、需要を支えるのは戴や王の「少しでも快適に過ごしたい」という根源的な欲求だ。不動産価格の上昇を生み出すのが実需なら、恩恵を受けているのは地方財政だ。中国では地方政府が最終的に土地を売却する。中国を代表する大都市の広東省広州市、福建省福州市、陝西省西安市の昨年の総収入に占める土地売却の割合は50~60%台に上る。中国全体の売却額は8兆4142億元と、日本の国家予算を上回る規模だ。市況が崩れれば、金融システムのみならず、財政も破綻する。ここ数年、各地で不動産の販売条件は厳しくなった。銀行は当局の指示で不動産融資を絞り始め、広州市は4月に住宅ローン金利を引き上げた。政府が崩さないと感じるからこそ、中国人の心理には土地神話が宿る。ただ、綻びも見え始める。上海から南に車で2時間30分。深圳の再来を謳う新都市、杭州湾新区には開発が頓挫した大規模マンションや戸建て住宅が並ぶ。生産年齢人口は2013年をピークに減少に転じ、新たな街を創り出す程の力は失われつつある。不動産市場は盛り上がるが、各地でバブルの足音も近付いている。 《敬称略》 =おわり

                    ◇

伴百江・和田大蔵・原欣宏・張勇祥・堤健太郎・松本萌が担当しました。


キャプチャ  2021年4月17日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【変わる不動産市場】(03) 虎の子売却「止むに止まれず」

20210430 04
大阪城の麓にある太閤園(※右画像)。『同和鉱業』(※現社名は『DOWAホールディングス』)創始者の藤田伝三郎が1910年頃に建てた拘りの邸宅は戦後、結婚式や宴会場として使われたが、6月末で営業を終える。保有する『藤田観光』が売却を決めたからだ。「止むに止まれなかった」。藤田観光社長の伊勢宜弘は無念さを隠さない。新型コロナウイルスの影響で訪日観光客や出張者が急減。ホテル事業が主力の藤田観光の2020年12月期は200億円超の最終赤字を計上。自己資本比率も1%台まで低下した。伊勢は増資も検討したが、「予想額に届かずに断念」し、300億円超の特別利益と引き換えに、創始者に関わる優良資産の売却を迫られた。藤田観光だけではない。アパレル大手の『オンワードホールディングス』は名古屋市に持つ約3200㎡の土地や事務所を、『三陽商会』は銀座の旗艦店ビルを売却した。

コロナ禍で業績が悪化した企業は資金確保の為、虎の子の不動産を手放さざるを得なくなっている。不動産取引が活発な背景には売り手となっている企業の存在がある。『都市未来総合研究所』によると、事業会社の1~3月の不動産売却は前年同期比で6割増えた。背に腹は代えられぬ売却だけでなく、時代の変化に合わせた有効活用も広がる。一つは本社の見直しだ。『電通グループ』の出社率はコロナ禍で今年は2割以下にとどまる。都内の本社ビルは1997年に旧国鉄の汐留貨物駅跡地を落札し建設、劇場や商業施設を備えたランドマークだ。それでも9000人の従業員が皆、出社する時代ではなくなり、「本社ビルを含む非事業資産の見直しを進める」と社長の山本敏博は利用を続けつつ、売却の検討に入った。巣ごもり消費の拡大で需要が高まる物流施設。不動産サービス大手の『JLL』によると、昨年の国内不動産投資で物流施設の割合は3割強と過去最高だ。用地取得の競争は激しさを増す。「土地の入札価格は高くなり過ぎている」。『芝浦機械』と物流施設を共同開発する『三井不動産』の専務執行役員、三木孝行は新たな開発手法に自信を見せる。芝浦機械の相模工場(神奈川県座間市)は、横浜市や川崎市にも近く物流拠点として優れており、今秋から敷地面積約14万㎡の4割部分を使い、建設を始める。芝浦機械にとっても収益源の多様化に繋がる。不動産を経営にどう生かすかも重要になっている。 《敬称略》


キャプチャ  2021年4月16日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【変わる不動産市場】(02) 「融資の蛇口が緩んできた」

20210430 03
「最近、金融機関からローンを引っ張れているそうですね。うちの物件も買いませんか?」――。個人で不動産業を営む玉川陽介の元には、ここ1~2ヵ月、不動産仲介会社から営業が相次ぐ。2月末に大阪の投資用マンションをほぼフルローンで購入。立て続けにマンション計4棟を総額約14億円で購入した。玉川は学生時代にIT企業を興し、その売却資金を元手に不動産投資にのめり込んだ。保有不動産は100億円を超え、“プロ大家”と呼ばれる。ここ数年は金融機関の不動産向け融資姿勢が厳しく、玉川も投資し難かったが、「融資の蛇口が少し緩んできた」と話す。2018年のシェアハウス運営会社の破綻等で縮小していた不動産向けマネーが、コロナ禍を機に再び膨らみ始めた。『日本銀行』によると、銀行による個人の貸家業向け新規融資額は、2020年10~12月期に約4年ぶりに前年同期比プラスに転じた。大規模な金融緩和で溢れたマネーの一部が流れ込む。

超低金利で運用難の中、投資家は少しでも利回りを得ようと必死だ。『三菱地所』傘下の運用会社『TAリアルティ』がアメリカで運用する不動産ファンドでは、2020年10~12月期、過去最大の資金が集まった。出し手の多くは日本の金融機関や年金基金だ。「国内だけでは運用資金の振り向け先を賄えない」。ある金融機関は明かす。不動産投資ではリスク管理の為、現地を訪問する投資家が多いが、今回はビデオ会議だけで出資が決まった。1社あたりの投資額は最大で100億円超に上るようだ。物色の矛先は、売るに売れず“負動産”と呼ばれて見向きもされなかった物件にまで及ぶ。会社勤めする傍ら、投資やブログで副収入を得ているUSK(※ハンドルネーム)は昨年夏、神奈川県横須賀市の築60年の戸建てを月1万円で借りた(※左上画像)。所有者が処分に困っていたのをウェブサイトで見つけた。休日を使い、庭の手入れから床や壁紙の貼り替え、壁のペンキ塗りまで自分でやった。借り手を募ったところ、在宅勤務に伴って郊外物件を探していた30代の夫婦に転貸することが決まった。家賃は月5万円強。工事費用を含めても1年足らずで元が取れるという。「どこに投資のチャンスが眠っているかわからない」と自信を深める。機関投資家から個人まで、高まる不動産投資熱。そこにはどこか危うさも見え隠れする。 《敬称略》


キャプチャ  2021年4月15日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【変わる不動産市場】(01) さよならニューヨーク

コロナ禍で一変した不動産市場。買い手と売り手の今を描く。

20210430 02
アメリカでマンハッタンに次ぎ人口密度が高いニューヨーク市のブルックリン。ロブ・リゴーリとニコールの夫婦は先月初め、コネティカット州に家を買い、ブルックリンを離れることを決めた。きっかけは新型コロナウイルスだ。出社から在宅勤務に変わり、「狭いアパートで夫婦揃って働くのはしんどかった」。新居は其々の仕事部屋があるだけでない。2人がぶつからず料理ができるキッチンもあり、飼い犬も初めて自分の庭を持てた。それでも月々の住宅ローン返済額は、ブルックリンのアパートの家賃の半分で済む。全米最大の都市であるニューヨークに異変が起きている。2019年から前年比で住む人が減り始めた。2年連続減は1980年以来40年ぶりだ。ニューヨーク市のアパート家賃は全米でも最高水準だ。マンハッタンで2LDKの家賃は平均4000ドル(※約44万円)を超える。ただ、人気の一因だった通勤環境の良さというメリットは、コロナ禍で薄れつつある。“脱ニューヨーク”の波及で、郊外や州外の不動産取引は活況だ。コネティカット州の不動産屋は、「15年間の仕事の中で経験したことがない」と嬉しい悲鳴を上げる。ロブ夫妻は今回、物件が不動産サイトに売りに出た日に連絡を入れたが、既に6人が買い手として手を挙げていた。家を見る暇もなく、翌日に募集価格を7%上回る提案を出して落札した。

低金利が続き、住宅ローンが組み易くなった消費者の購入意欲は高まっている。連邦住宅金融庁(FHFA)が公表した1月の全米の住宅価格は、1年前に比べ12%上昇した。特に過熱するのは、通勤という制約がなくなり、住む場所を選ぶ条件の一つになっている税金が安い地域だ。所得税がゼロのフロリダ州。投資ファンドのブラックストーン等ウォール街の金融機関が部門や本社の移転先に選んだこともあり、引っ越す富裕層も目立つ。不動産大手の『ダグラスエリマン』によると、マイアミに近い州内有数の高級住宅地、パームビーチの3月のマンションの販売契約数は1608軒と、前年同月の5倍超になった。昨年5月にニューヨーク州北部の田舎町、クーパーズタウンに家を購入したエミリー・ビギン。「老後は生活に便利なニューヨーク市でと思っていた」が、引っ越して約1年、人が重なるように暮らす生活は人間的ではなかったと気付いた。22年住んだブロンクスに「もう未練はない」という。コロナ禍は働き方を変え、大都市からの移転を引き起こした。個人の需要増に加え、経済危機を防ぐ為に各国の中央銀行がとる金融緩和によって、投資マネーが不動産に流入し、価格上昇を招いている。『経済協力開発機構(OECD)』によると、昨年10~12月の加盟37ヵ国全体の住宅価格は過去最高となった。1年で7%近くも上がるのは1989年以来、約32年ぶりだ。日本でも、昨年の首都圏の新築マンションの平均価格(※『不動産経済研究所』調べ)が2年連続で上昇し、バブル期の1990年以来となる6000万円台となった。需要が旺盛な半面、コロナ禍で供給が減ったことで価格が押し上げられている。昨年11月に千葉県いすみ市に中古の戸建て住宅を購入した長谷竜也。コロナ禍で出社が減る中、東京都から出ていくことを決めた。中古の住宅価格は高止まりするが、子育ての環境も考えると、東京で家賃を払い続けるよりは魅力的に映った。東京近郊の人気は高い。神奈川県海老名市や千葉県浦安市等の新築マンションは短期間での完売が目立つ。不動産ベンチャーの『ワンノブアカインド』によると、一定の取引がある中古マンションの坪単価上昇率は、2月時点で埼玉県三郷市と千葉市花見川区が2位と都内周辺が多い。一方で、都内志向の39歳の男性は「共働き世帯でも手が届かない」と諦め顔だ。夫婦揃って大手企業に勤め、家計は余裕があるほうだと自認するが、将来の値下がりリスクを考えると、中々購入の決断はできない。都内では一部の富裕層でなければマンションを買えず、“住宅格差”が広がり始めている。 《敬称略》


キャプチャ  2021年4月14日付掲載

テーマ : 経済ニュース
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【WEEKEND PLUS】(109) カネはあっても撤退戦は苦手…小川彩佳アナの不倫夫、火消しコンサルタントを雇うも鎮火せず

20210430 01
2月上旬、“180億円夫の「産後不倫写真」”として文春砲の直撃を受けたのが、小川彩佳アナウンサーの夫であり、実業家で医師の豊田剛一郎氏。その数日後には不倫相手の女性が『週刊ポスト』に登場し、赤裸々にその関係を語った。その後も、小川アナが離婚を考えていると報じられたり、不倫経験者である俳優の石田純一が自身の『YouTube』チャンネルで話題にしたり、更にテレビ関係者からは「ドラマ化したら面白い」なんて話まで聞かれたりと、騒動は尾を引いているようだ。最近では『NEWS23』(TBSテレビ系)でメインキャスターを務める小川アナの番組降板説まで出る始末。「夫の豊田さんの“火消し工作”が全く役立たなかったらしい」と語るのは、あるワイドショーのデスクだ。「豊田さんは“180億円”と書かれたように、かなりの資産家とあって、知人の経営コンサルタントに工作を依頼したそうなんです。そのコンサルはメディアにも出たことがある人で、インターネット上の炎上対策の専門家としてもコメントしたりしていたのに、今回は何ひとつ効果を出せなかったらしいです」。実際、このデスクにはマスコミ関係者から事前に「『豊田氏がマスコミ対策に出るから、番組で扱うな』との話になるかもしれない」という話が届いていた。しかし、「『例えば大口の広告を入れる代わりに黙らせるとか、そういうことがありそうだ』と覚悟していたら、何もなかった」という。思えばこの不倫報道は、小川アナの古巣である『テレビ朝日』でさえも朝のワイドショーが軒並み採り上げた程で、各メディアで遠慮のない報道が目立った。「カネはあるんだから、豊田さんの動き次第では後追い報道を半分以下にできたと思う。そのあたり、ベンチャー企業のやり手とはいっても、リスクマネジメントの力が全くなかったということを露呈した感じ」(同)。豊田氏はこのスキャンダルで医療ベンチャー会社の代表から降格し、新株予約権の未行使分16億円相当を放棄する代償を払った上、更に会社の評判も落ちて株価も急落。元衆議院議員を父に持つエリートの顔は泥に塗れたままだ。


キャプチャ  2021年5月号掲載

テーマ : 芸能ニュース
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George Clooney

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