元エンジニア副住職が考案したハイテク御朱印の効果
御朱印にスマートフォンを翳すと、携帯の画面にお寺の最新情報が表れる! 副住職の考案したハイテク御朱印が、注目を集めている。長野県塩尻市にある浄土宗善立寺の小路竜嗣副往職(30)が作った『御朱In』だ。左の写真で小路副住職が手にしている御朱印の右下には、QRコードと呼ばれる四角のマークが印刷されている。スマートフォンでこのバーコードを読み取ると、善立寺のFacebookのページが表示される仕掛け。「ツイッターでも話題になり、9000を超える反響がありました」と小路副住職は嬉しそうに話す。背景には、元エンジニアならではの着眼点がある。小路副住職は兵庫県の在家の生まれ。信州大学工学部に進学し、善立寺の1人娘に出会ったのが縁だ。卒業後は『リコー』に入社し、エンジニアとしての勤務を経て、僧侶の道へ。一昨年、善立寺の副住職に就いた。寺務のデジタル化等を手掛ける中、目を向けたのが御朱印だ。「御朱印はお寺と参拝者を繋ぐものですが、参拝者は御朱印を集めれば集めるほど、1ヵ寺1ヵ寺の印象が薄れる。お寺も御朱印をお渡しするだけでは、その後のご縁を結び辛い。双方の困り事を解決する手立てが、誰でも無料で作成できるQRコードでした」と振り返る。更に、QRコードと併せて近距離無線データ通信(NFC)のシールも作成。完成したのが、集めるだけではない、お寺の最新情報も取り出せる『御朱In』だ。「以前に比べてデジタル化の敷居が下がり、小さなお寺でもお金をかけず、伝えたいことが発信できるようになりました。布教にも僧侶の学びにも、様々な局面で活用できたらと思っています」と話す小路副住職。布教の可能性は、いつだって無限大なのだ。
2016年7月号掲載