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【JR・栄光と苦悩の30年】(15) 日本の鉄道を襲う2大課題…地震・テロ対策の万全度

高い安全性を誇る新幹線だが、新潟県中越地震での脱線(2004年)や東海道新幹線放火事件(2015年)等、事故も少なからず起きている。天災やテロへの対策は、どこまで進んでいるのか?

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「若し、新幹線に乗車中、巨大地震が起きたら」――。誰しもが一度は抱いた不安ではないだろうか? 新幹線は時速300㎞近くで走っているだけに、脱線すれば重大事故に繋がり易い。2004年の新潟県中越地震で『JR東日本』の上越新幹線が脱線したのは、JR関係者に大きな衝撃を与えた。地震の揺れだけで新幹線が脱線したのは初めてだったからだ。それまでは、(地震による)高架橋の崩壊や、レールの歪みの“2次被害”で脱線することしか想定されていなかった。新潟県中越地震による脱線を機に、南海トラフ地震のリスクがある『JR東海』が、巨大地震による脱線防止対策の強化に乗り出した。最も期待されている対策が、脱線防止ガードだ。JR東海は、これまで脱線時の被害が大きくなり易いトンネルの入り口付近等に脱線防止ガードを設置してきたが、今年2月に「東海道新幹線全線(※上下線のレール合計1072㎞)に敷設する」と発表した。2100億円の巨額投資である。JR東海の実験によれば、脱線防止ガードでほぼ脱線を防ぐことができるが、万一脱輪しても、レールから車両が飛び出し、トンネル等に衝突するのを避ける機器がある。この機器は、東海道新幹線の全車両に搭載済みだ。地震では伝達速度が速いP波(初期徴動)を捉え、大きなエネルギーを持ったS波(本震)が来る前に新幹線を減速させる技術も必要不可欠だ。緊急停車で重要なのは、初期微動をキャッチして即時に本震の危険度を判断する能力だ。工事の微振動や小さな地震で一々新幹線を止めていては、輸送に差し障りがあるからだ。

『鉄道総合技術研究所』によれば、最新機器は初期微動が来てから2秒後にを止めるべきかを判断する。これを1秒まで縮める技術が既に開発されており、実用化に向けた準備が進められている。地震対策では当然、2011年の東日本大震災の教訓も生かされている。東日本大震災は、鉄道が津波の直撃を受けた世界初のケースだった。東北地方の太平洋沿岸部で盛り土が流されてレールが歪んだり、電柱が傾いたりしたことを踏まえ、JR東日本等は土木構造物の補強を行っている。因みに、列車運休の最多要因は豪雨である。雨で列車が止まり、運転再開の見通しがわからないまま待つのは、イライラするものだ。列車の運休は、降雨量が規制値を超えたかどうかで判断される。降雨量は、15~20㎞毎に設置された雨量計で見ている。つまり、電車の運休を判断する基準は、きめ細かなデータには基づいていない。降南量を細やかに推定して、降雨状況から洪水や土石流が起きる場所と時間を精緻に予測できれば、安全性も輸送効率も格段に高まる。このシステムには、日本の技術の枠が集められている。例えば、経営危機にある『東芝』等が製造する高性能レーダーだ。積乱雲等を3次元で把握でき、ゲリラ豪雨の予測には欠かせない。更に、山や谷の地形を予めデータ入力しておき、雨水の流れ等を予測する技術も最先端のものだ。この予測の精度が高まれば、電車を不必要に長く止めなくて済むし、災害発生まで時間がある場合は、危険箇所を早めに通過させてリスクを回避することもできる。実は、この仕組みは新幹線を輸出する際の売りにもなる。鉄道総合技術研究所等が開発中で、来年度から試験運用が始まるという。同研究所防災技術研究部の太田直之部長は、「インドやアメリカから話が来れば、水害等を予想するノウハウで貢献できる」と話す。自然災害への対策が一定の成果を上げている一方、出遅れているのがテロ対策だ。2015年には、東海道新幹線でガソリンに火を付けて焼身自殺を図った男性と、その煙に巻かれた女性の2人が死亡。新幹線がテロに弱いことが露呈してしまった。2020年に東京オリンピックを控え、テロ対策の強化は急務だ。だが、テロ防止に最も有効な乗客の手荷物検査の実施は、「駅に来れば直ぐに新幹線に乗れるという利便性が失われる」(JR東海関係者)。JR東海は、東京-大阪間を最短2時間30分で繋ぐ『のぞみ』を、1時間に10本運転する“のぞみ10本ダイヤ”に象徴される大量で高密度な輸送を重視している為、現状の対策は監視カメラの設置や警備員の増員等に留まる。特に標的になり易い新幹線を持つJR各社は、ある程度の利便性を犠牲にしてでも、テロ対策を充実させるべきだ。東京オリンピックまでに残された時間は短い。


キャプチャ  2017年3月25日号掲載

テーマ : 鉄道関連のニュース
ジャンル : ニュース

【オトナの形を語ろう】(35) ごっそり金を持つ男たちの共通点とは何か?

金というものは誠に厄介なものであるが、金の正体がある程度わかれば、健気にも見えるし、可愛いくも見えるものだ。私は以前、金に代わるものが何かないものかと考えたが、これが適当なものが見つからないのだから、やはりこの世の中において厄介なものであるのだろう。ごっそり金を持つ男が、私にこう言ったことがある。「伊集院さん、金を可愛いと思わなあきまへん。金は生きもんです。金に向かって『コイツ、しょうもないヤツらや』と思えば、金のほうがそっぽを向いてしまいますわ。『可愛い』と思うたら、いつまでも手元に置きとうなるのが人情だっしゃろう。可愛い子がぎょうさんいてたほうが楽しゅうおますがな。金を手元に残すコツは、それでんがな」。聞いていて、如何にも納得が行くような、それでいて愛嬌がある言葉に聞こえるが、実際、男がやっていることは、本業の金貸しもそうだが、血も涙もない取り立てをして、のし上がってきただけなのである。「アイツの懐に入ってしまうと、金は1銭も外へ出て来ぃへん。アイツのガマ口(※財布のこと)は、入る時だけ開いて、あとは一切開かへんのや」。男を批判する言葉を聞いて、少し愉快には思えたが、実際、その男に金を借りて、尻の毛まで抜かれた相手はたまったものではなかったろう。

金をごっそり持つ人々には共通点がある。それは先ず、並大抵のケチではないという点だ。無駄な金の使い方は一切しないし、必要以上の暮らしをすることもない。何故、そうなるのか? それは、金を増やすことが何より楽しい、嬉しいからである。次の共通点は、顔付き・目付きが、普通の人とどこか違っている。卑しいとまでは言わないが、少なくとも品性は無い。「品性? そんなもん持って何になりまんの? 品性って、1個いくらになりまんの?」くらいは平然と言うだろう。確かに、品性は金に換算し難いものだろう。彼らに言わせれば、品性どころか、家族・兄弟も換算すれば、無価値になるのかもしれない。況してや、愛や恋…友情等というものまで、不要のものとなるのかもしれない。それらは、この欄で、これまで私が語ってきたことで、人生で大切なものであったのだから、私の手元に金が残る筈がない。だからと言って、私は金を持つ人を否定はしないし、彼らは彼らで、他の人間ができなかったことを、それまでの人生と、今も日々やり続けているのだろう。扨て、この手の雑誌で、ごっそり金を持つ人間の話をしても、それは何の役にも立たないだろう。読者の大半は、取り敢えず、今の金の足りなさを嘆いている者のほうが多いだろうし、今の局面を打開するのに役立つことを知りたいのだろう。金に関して言えば、「金欠病に打開策は一切無い!」。それが結論だ。例えば、事細かく「こことあそこを節約すれば…」等と話しても、それができないから金がないのであるから、無駄である。

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テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

【Test drive impression】(31) 『スバル WRX STI TypeS』――新型WRX STIにがっつり試乗! 一体、どこが変わったのか?

嘗ては『世界ラリー選手権(WRC)』で3度のチャンピオンに輝いた『インプレッサ』の血を引くのが、『スバル』の『WRX STI』。モータースポーツの血を色濃く受け継ぐこのモデルは、現在もニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦し、国内の全日本ラリー選手権でも活躍。また、アメリカで絶大な人気を誇っている『ラリークロス』でも注目されているのだ。そんなWRX STIが大幅改良を受けて、6月20日から発売された。7月10日、伊豆の修善寺にある『日本サイクルスポーツセンター』で最速試乗したので、リポートしよう! 抑々、スバルは自社のモデルを1年に1度改良して、アップデートすることを伝統としている。これは年次改良と呼ばれ、マニアの間では“年改”と略されて親しまれている。因みに、年改毎に車両の型式名の末尾のアルファベットが変わっていき、登場したての場合はA型、そしてB・C型と進み、ファンはこの型式で呼ぶ。で、今回のモデルはD型で、ファンはそんなD型WRX STIのことを“VAB(※これが車種固有の型式)のD型”と呼ぶのだ。気になる今回の年改は、いつにも増して細かく手が入っている。

変更があったところをざっと記してみると、245/35R19サイズのタイヤ&アルミホイール、電子制御マルチモード“DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)”を新構造に、ブレーキキャリパーは黒から蛍光イエローに変更して、『ブレンボ』製ブレーキも強化。他にも、サスペンションをリファインしているのは勿論、何とガラスの板厚を増す等して静粛性向上も図っている。更に、新たな『レカロ』製のバケットシートをオプション設定に加え、赤いシートベルトまで与えた。また、見た目もよりアグレッシブになっており、フロントはバンパー下部により大きな開口部を設けている。そしてインテリアでも、ハンドルやシフトレバー周辺にハイグロスブラックの塗装を施して、スパルタンながらも上質な雰囲気を漂わせるようになった。そんなWRX STIを走らせて驚いたのは、意外にも乗り心地だった。19インチという大きなタイヤ&アルミホイールを履けば、通常は乗り心地は悪くなる。なのに、WRX STIは滑らかな感覚さえ伝えてくる。尤も、これこそがサスペンションをリファインした効果だろう。これに加えて、新たに19インチとなったタイヤを、『横浜ゴム』のアドバンスポーツV105へと変更したことも大きい。ヨーロッパのスポーツモデルも採用するこのタイヤにしたことで、更に高いクオリティーの乗り味が生まれた。

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テーマ : 新車・ニューモデル
ジャンル : 車・バイク

【有機EL&半導体バブル】(06) 「タッチセンサーに新たな商機」――出口敏久氏(『住友化学』副社長)インタビュー

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――どのような製品を作っているか?
「小型ディスプレイ(※スマートフォンやタブレット端末)向けには、偏光板とタッチセンサーを製造している。この内、タッチセンサーでは、ガラス製とフィルム製双方を供給できる。将来に向けては、カバーガラスの代替部材であるウインドーフィルムも計画している」

――住友化学は液晶ディスプレイ部材も提供していた。有機ELはどうビジネスモデルが違うか?
「高級液晶ディスプレイでは、タッチ機能が液晶に内蔵されている“インセル型”が主流だった。これに対して、有機ELは構造上、内蔵するのは難しく、外付けが中心となっている。これは、タッチセンサーメーカーにとっては大きなビジネスチャンスだ」

――ガラス製とフィルム製、タッチセンサー其々の用途は?
「ガラス製のタッチセンサーは、平面のディスプレイ用なのに対して、フィルム製は曲げられるディスプレイ用だ。今後、フィルム製タッチセンサーの霊要が増えると判断し、韓国拠点の生産能力を来年1月から現行比で3倍強に増強する」

――需要増を見込む根拠は?
「スマホやタブレットを折り畳む、或いは巻物状にするという要望が、デバイスやディスプレイメーカーからある。折りたたみ式ディスプレイは、広げた際に折り目が残るといった技術的課題があり、現在は量産段階ではない。しかし、当社はデバイスやパネルメーカーと協力して、折りたたみ式にも対応できるフィルム製タッチセンサーを開発している。韓国拠点の生産能力増強は、この技術も織り込んだ上でのものだ」

――曲げられるという点では、過去にも湾曲したスマホがあったが、市場では受け入れられなかった。
「湾曲しているスマホやテレビは、曲げた状態を固定したものだ。今後のアピール点である“曲げられる”とは、自由自在に折り曲げる、或いは丸めることだ」

――平面用のガラス製タッチパネルの設備は増強しないのか?
「当社は既に世界需要の7~8割を供給できる能力があり、十分だと考えている」

――住友化学の強みは?
「有機EL層の上にある表面部材を一括してセット供給できることだ。パネルメーカーは、材料や装置を多様なサプライヤーから調達し、これらのすり合わせ技術により製品を開発する。それには多くの手間と時間がかかる。偏光板とタッチセンサーを別々のサプライヤーから調達すれば、すり合わせが必要だ。しかし、当社は偏光板とタッチセンサー、その他の部材を一体化したモジュールとして供給することが可能であり、パネルメーカーは開発を迅速に行うことができ、延いてはコスト削減に繋がる」

――今年3月期は、偏光板・タッチセンサーとも販売価格が下がっている。技術が陳腐化して、他社との価格競争に巻き込まれる“コモディティー化”の懸念はないか?
「コモディティー化が起きるのは、普及期から成熟期にかけての時だ。成熟期になれば、ある程度、価格の下がり方が緩やかになってくる。事業環境が厳しいことは事実だが、適切に技術力・コスト競争力を保てば、成熟期を過ぎても利益を確保できる。当社も、今後はスケールメリット等でコストダウンは可能という見通しがある。足元の不規則な途中経過だけで判断しないで、最後まで見てほしい」 (聞き手/本誌 種市房子)


キャプチャ  2017年6月13日号掲載

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
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【Global Economy】(47) 原油低迷、“3R”の圧力…協調減産でも上向かぬ不可解相場

産油国の減産にも拘わらず、原油価格が上昇基調を辿らない。不可解な相場は今後も続くのか? 行方を読み解くキーワードは、“Revolution(革命)”・“Rate of interest(金利)”・“Rupture(断交)”の3つのRだ。 (本紙経済部長 天野真志)

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■第1のR…革命
「革命の凱歌が聞こえてくる」――。ある石油トレーダーは、現在の原油相場をこう言い表す。『石油輸出国機構(OPEC)』諸国とロシア等の産油国は5月、年初から6月までとしていた原油の協調減産を2018年3月まで延長すると決めた。生産を抑え、原油価格を引き上げる狙いがある。だが、国際指標のテキサス産軽質油(WTI)の相場は1バレル=45ドル前後と、減産開始前より1割ほど安い水準で推移している。減産に参加していないアメリカで、シェールオイルの増産が続いていることが一因だ(※グラフ①)。OPECは今年1月から、日量120万バレルを目標に減産に取り組んできた。ただ、OPEC内でも、政情不安を理由に減産を免除されたナイジェリアとリビア、経済制裁解除後のシェア(市場占有率)回復を図るイランは、計50万バレルほど増産している。これに加え、アメリカはシェールオイルの生産を40万バレルほど増やしており、OPECの減産効果を弱めている(※グラフ②)。アメリカは2010年以降、イラン一国の生産にほぼ匹敵する日量約400万バレルのシェールオイル増産を実現した。シェールオイルは、アメリカをサウジアラビアに並ぶ最大の産油国へと押し上げ、1つ目のR、“Revolution(革命)”を世界の石油市場に齎した(※グラフ③)。アメリカの『エネルギー情報局(EIA)』は、「シェールオイル等の生産が8月に日量558万バレルに達し、過去最高水準になる」と予測する。採算価格の低下とドナルド・トランプ政権の姿勢が、増産の追い風になると見ている。シェールオイルは嘗て、1バレル=70ドル前後の相場でないと採算が取れなかった。それが今は、技術革新で40ドル前後にまで下がり、安値でも利益が出るようになった。地球温暖化防止に関する『パリ協定』からの離脱を決めたトランプ政権は、環境規制を緩め、国内の資源開発に力を注ごうとしている。既に公有地で石油やガスを探査する認可手続きの迅速化等に着手した。更にトランプ大統領は、国産のシェールオイルやガスを活用し、アメリカを資源輸入国から輸出国へ転換する取り組みにも前向きだ。6月にはポーランドへのガス輸出を始めた。ポーランドは、ロシアからのガス輸入に燃料の多くを依存しており、東欧でのロシアの資源輸出攻勢を牽制する動きと見られている。シェール革命の凱歌は鳴り止まず、原油価格に下げ圧力をかけ続けそうだ。

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■第2のR…金利
相場を占うには、2つ目のR、“Rate of interest(金利)”の影響も見逃せない。市場には、油が必要な人だけでなく、多くの投資家も参加し、巨額の投機資金が流れ込む。WTIの生産層は1日30万バレル前後だが、将来を見越した先物取引が加わる為、実際の取引は1日10億バレルほどに膨らむ。この為、原油価格は、需給とは別に、金融市場の動向に大きく左右される。ドルで取引されることから、特にアメリカの金利に敏感だ。『連邦準備制度理事会(FRB)』が利上げの検討を本格化させ、金利が上向くと、価格は逆に下落する傾向が見られる(※グラフ④)。金利上昇でドル高が進めば、原油を買うドル資金を調達する費用は膨らむ。将来の利上げを見込んだ投機筋は、コストがかかる原油より、他の投資商品を買うようになり、原油価格を低下させると考えられる。FRBは今月26日の『連邦公開市場委員会(FOMC)』で、利上げを目指す政策の現状維持を決めた。金利の先高感が原油の上値を重くする状態に、当面、変化は無い。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【労基署ショックが日本を襲う】第2部(06) Why Japanese people!! ここがヘンだよ日本人の働き方

外資系企業の社員からしてみると、日本人の働き方や日系企業の人事制度には理解できない部分もあるようだ。外資系企業の働き方から、日本が見直すべき点を炙り出す。

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■何でそんなに無駄に長く働くの?
「日本人は早く帰って子供と遊んだりしたくないの?」――。日本で外資系企業に勤めるある外国人は、“勤勉な”日本人に対し、こんなシンプルな疑問を常々抱いている。日本では、政府が労働時間に上限規制をかけなければならないほど長時間労働が横行している訳だが、果たしてそれは何故なのか? 冒頭の外国人に言わせると、日本人と外国人では時間に対する考え方が違うらしい。日本人は、「会社にいる時の時間は会社の時間だ」と考えている節がある。一方で外国人は、「私の時間はあくまでも私のもの。会社にいる時は、会社に私の時間をあげている」という感覚でいるという。なるほど、この考え方でいけば、大切な自分の時間を無駄に会社に捧げる気にはなるまい。だからといって、外国人がいつでもプライベートを優先させているかといえば、そうでもない。外国人は、「報酬は人ではなく、その人の仕事の成果に対して支払われる」との思いが強い。その分、仕事に対する責任感も強いから、責任を全うする為、或いはより良い結果を出す為、必要とあらば勿論、残業もするのだという。日本人のように“何となく”“上司に付き合って”無駄に残業するという発想が無いだけだ。

■長期雇用? アメリカには“定年制”という概念すら無い!
外資系は日系企業と違って、長期雇用を前提としていない。職を確保できるか否かは実力次第で、期待された結果を出せなければ、最悪の場合、解雇される。日本のある外資系金融機関の様子をご紹介しよう。先ず評価の仕方だが、定量的な評価項目だけで約50もある。その上、定性的には何人もの同僚による360度評価が徹底されている。この評価を基に、社員はボーナスの金額と次年度のベース給を会社と交渉するのだが、中には交渉が折り合わず、怒って辞める人もいるらしい。一方、解雇は毎年、評価が完全に終わる前の秋~冬に行われる。情報漏洩防止な等の意味合いで、クビを言い渡されたら席には戻れない為、その時期になると念の為、自席に置いてある食べ物を処分する社員もいるのだとか。外資系企業は雇用に流動性があるから、年俸に拘らなければ再就職先は比較的見つけ易い。たとえ前職で解雇されていたとしても、「偶々その雇用期間のパフォーマンスが悪かった」と捉えられることが多く、柔軟だ。職場への愛はあっても会社への忠誠心は無いから、ステップアップの為の転職も日常的にある。因みに、実力主義を極めているが故、外資系企業には“定年制”という概念が無い。これぞまさに“終身”雇用の仕組みかもしれない。

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【儲かる農業2017】(19) 「農業は私のライフワーク。農業者の思いに応えたい」――小泉進次郎氏(自民党農林部会長)インタビュー

昨年11月に政府が纏めた『農林水産業骨太方針』では、守旧派の抵抗に遭い、農政改革が一歩後退したように見える。自民党農林部の小泉進次郎会長は、この局面をどう乗り切るのか?

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――丁度1年前の本誌インタビューでは、自民党農林部会長として農政改革にどのように挑むのか、意気込みについて語って頂きました。その際に小泉議員は、3つの公約(※①補助金漬け農政とは決別する、②農協改革の手を緩めない、③生産者起点から消費者起点へ転換して世界で稼ぐ体制を構築する)を掲げています。其々の改革の手応えは如何ですか?
「そうですね。僕の実感では、『農業者の意識が本当に変わってきたな』と感じています。僕の地元、神奈川県三浦市の農家さんと話すとね、開口一番で『おい、進ちゃん。肥料が安くなったぞ』って言ってくる。こんな声が聞かれたことは、これまで無かったよね。そして、彼は何て言ったと思います? 『次は段ボール(の値下げ)を宜しく』って言っていた。僕に『宜しくね』と言うのではなくて、農業者の皆さんが農協に対して『高いものは高い』とちゃんと言わなきゃ駄目ですよね。でも、農家さんの口から資材やコストの話が出るなんてね。こんな会話が自然にできるようになったことに、農政改革の手応えを強く感じています。改革のフェーズは、公約①の政治、公約②の農業団体まで進みましたが、最終的には、農家自身が改革を求めていく世界にならないといけません。そうした意味で、公約③の生産者が世界で稼ぐ体制の構築は、未だ道半ばです。でも、手段は考えていますよ。今後、経営の質の向上や世界で稼ぐ手段として、国際認証(グローバルGAP)の導入を積極的に進めていきたいと思っています。この3月にはオリンピック・パラリンピックの食の調達基準が決まりますが、日本では国際認証を取得している農家って殆ど無いんです。特に若い世代の農業人材の育成も兼ねて、農林高校ではグローバルGAP取得の義務化を進めていきたいですね」

――経営マインドのある農家が増えてきたということですよね。但し、担い手農家の農政改革への理解度がちぐはぐな印象を受けることがあります。例えば、本誌の農家アンケートによれば、『JA全農』が商社・メーカー機能を縮小させることには賛成なのですが、農協から信用事業(金融事業)を分離させることには反対の意見も多いのです。
「なるほど。かなり凸凹な議論が多いですよね。僕、この一連の農協改革の議論が、嘗ての郵政民営化の議論と似ていると感じることがあるんですよ。当時も、民営化反対のキャンペーンの1つに、『民営化すると郵便局が無くなる』というのがあったじゃないですか。今回も一緒。『一連の農協改革を進めると農協が無くなる』と勘違いしている人が大勢いる。『農協は必要ない』なんて一言も言っていないのに。農協は信用事業を譲渡しますが、代理店としての機能は残ります」

――小泉議員は農政改革を政治主導で進めてきたことは確かですが、補助金からの脱却はできていないのではないでしょうか? アメリカの離脱が必至の『環太平洋経済連携協定(TPP)』予算にせよ、コメ農家向けの補助金メニューにせよ、相変わらず補助金政治は続いている印象を受けますが?
「色んなご指摘はあると思いますけど、予算の使い方はだいぶ変わったと思います。一時的に農家を救済するだけの一過性の“死に金”から、“生き金”になるお金の使い方をするようにしました。敢えて俯瞰した立場で話をしますが、厚生労働省の予算は30兆円です。一方の農林水産省の予算は2兆円です。農水省15個分の予算が厚労省で使われている訳ですよね。それを思うと、『医療や社会保障にお金を使う国から、健康な食を取り戻して、食生活から真に健康になっていくことで社会保障費を抑制できるんじゃないか?』と思います。勿論、予算ありきの農政では駄目なんだけれど、着実に将来に繋がるタネは必要です。僕はこれまで、農業のイノベーションは軽視されてきたと思います。人工知能(AI)が搭載された自動収穫ロボットとかね。もっと投資していくべきだと思います。トヨタ自動車が長野県でジビエの移動式解体処理車を販売しているんですが、折角トヨタがやってくれるんだったら、王道のトラクターとかコンバインとかも造ってほしいですよね。トヨタだったら幾らの農機ができるんだろうか? そうなれば、農機の寡占4社体制に揺らぎを与えられます」

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テーマ : 経済・社会
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【ここがヘンだよ日本の薬局】(12) “疑義照会”の裏に潜む薬剤師と医師の不健全な関係

「薬剤師は医師が処方した薬を出しているだけ」――。一部の薬局では、それが事実として罷り通っている。薬剤師側から見ると、義務を果たしたくても果たせない苦しい事情もある。薬剤師が医師の“言いなり”となっている現状をレポートする。 (取材・文/フリーライター 永井孝彦)

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薬局の窓口で、「先生は何て仰っていましたか?」と尋ねられたことはないだろうか? 穏やかな口調だったとしても、その言葉の向こうには、薬剤師と医師との間に流れる深くて暗い川が見えるかもしれない。本題に入る前に、薬剤師の仕事を確認しておこう。調剤薬局で働く薬剤師の業務は、大きく3つに分けられる。1つ目は、処方箋に従って患者に薬を提供すること。2つ目は、患者に薬の飲み方を説明し、また薬が適正に服用されているかを確認して、服薬指導をすること。3つ目は、処方箋の内容に疑問が生じれば、疑義照会をして、誤りがあれば正すこと。何れも、患者の安全の為には重要な業務だが、薬剤師自身が実感する労働負荷には濃淡がある。1つ目の薬の提供は、薬の種類と数量を間違えなければいいのだから、慎重さは求められるものの、心理的な負担は無い。一方で、薬剤師の収益のベースとなるのが、この業務だ。例えば、月に2000回を超える処方箋受付や、特定の医療機関に関わる処方箋受付が70~90%を超えないような、即ち大病院の門前薬局ではない一般的な調剤薬局の場合、処方箋受付1回につき、報酬点数は41点。ジェネリック医薬品の調剤数量が75%以上の薬局なら22点が加算されるので、合計63点。棚から薬を出して、袋に詰めると、調剤基本料として630円の収入になるのだ。東京郊外の街で薬局を経営する薬剤師が言う。「はっきり言って、調剤基本料はおいしい。でも、薬局にはそれなりの設備投資や人件費が必要な訳だから、高過ぎるという批判は当たらないと思う」。2つ目の服薬指導は、人と対面しての業務だが、相手が患者なので、心理的負担はそれほど無い。「ただ、『病院で診察を受けてきている筈なのに、どうしてそんなに病気のことを俺に聞いてくるの?』っていう患者さんはいるよね。お年寄りが多いから、なるべく文句を聞くようにしているけどさ」(同)。服薬指導に対しては、薬剤管理料の中の薬剤服用歴管理指導料が報酬となり、点数は38点ないし50点だ。

3つ目の疑義照会は、端的に言えば医師のミスを見つける作業がベースとなる。その為、薬剤師にとっては心理的負担が大きい。しかも、患者を副作用等の薬害から守る最後の砦とも言える作業なので、責任も重い。「薬のプロフェッショナルとして、処方箋のチェックが一番大事な仕事だと思う。薬の準備ができるのを待っている患者さんからは、机に向かってただボーッとしているように見えるかもしれないけど、慎重にチェックしているんだよ。処方箋のミスって結構あるんだよね。うちは1日に5枚くらいの処方箋を扱うけど、必ず1~2枚はミスが見つかる。義務だから疑義照会はするけど、医者のミスを指摘する訳だから、気は進まない。言葉を選んで話すことも多いよ」(同)。薬剤師の仕事は医師の処方箋があって成り立つので、薬剤師はどうしても医師に遠慮しがちになるのだ。患者の安全を守るという大義の前では、立場の違いによって円滑なコミュニケーションが妨げられるようなことはあってはならない筈だが、現実はそうではない。門前薬局ではなくても、多くの薬局は、主に立地条件を理由として、特定の病院と関係性を深めることになる。病院と薬局が密接に結び付いている場合、医師の機嫌を損ねてしまったことにより、薬局が経営難に陥ることも考えられるのだ。中部地方の薬局に勤務する薬剤師が打ち明ける。「開業内科と開業皮膚科の間にある薬局で働いています。毎日のように疑義照会をしていますが、一番多いのは処方箋の期限切れですね。それを指摘しても迷惑そうな口調になることもあるから、処方内容については、副作用の危険が大きい等、余程おかしいものでない限り、問い合わせることは難しいです。患者さんに話を聞いてみて、『この症状なのにこの薬を出すか?』と感じることもあるのですが、処方権は医師にありますから、こちらから『間違っている』とは指摘できません」。仮に、処方の誤りを指摘したことで医師と薬剤師の関係が悪くなったとしても、立地条件が良ければ患者はその薬局を利用するのだからいいではないか――。そう考えることもできそうなものだが、「それでも気を使わざるを得ない」と、この薬剤師が続ける。「友人の医者から聞いたのですが、あからさまに『○○薬局に行きなさい』と指定する医者がいるそうです。裏でバックマージンがあるのかもしれないですけど。ということは、患者に対して、特定の薬局に行かないように指示することもできる訳ですよね。そう考えると、医者には逆らえませんよ」。そうは言いながらも、処方薬による薬害が稀なのは、薬剤師が肝心なところでは疑義照会を行っているからだろう。『日本医療機能評価機構』の調査によると、疑義照会によるヒヤリハット(※重大事故に至っても不思議でない事例の発見)の解決件数は例年、15%前後で推移している。1年間の総処方箋枚数が8億枚、疑義照会率が2.7%として計算すると、疑義照会件数は約2160万件。その内の15%がヒヤリハットだとすると、年間300万件強の処方が薬剤師のチェックによって安全を保たれていることになる。同機構は典型的な事例も示しているが、中には「初回アンケートで『肝疾患がある』と回答した患者に、疾患禁忌の医薬品が処方されており、医師に伝えた上で該当の薬を削除」といった、医師の不注意では済まされないような重大な処方ミスも多い。薬剤師の疑義照会によって救われている生命も、少なからずあることだろう。

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テーマ : 医療ニュース
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【東京五輪後の地方経済を読み解く】(10) 日本が本当に分権化する為には都道府県を廃止すべきだ

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“平成の大合併”による市町村合併の先に見据えられていたのは“道州制”だった。道州制の議論が政治的課題として浮上するのは、2005年、都道府県合併が可能になるよう地方自治法が改正されたことだ。法改正により、合意に達すれば都道府県は合併できるようになった。翌2006年には、内閣府の地方制度調査会が「道州制を導入することが適当」と答申を出し、第1次安倍政権では道州制推進本部を設置して担当大臣まで置かれていた。2010年の参院選では、自民党・公明党・みんなの党が道州制の導入を公約に掲げている。『日本経団連』・『日本商工会議所』・『経済同友会』といった財界も、2012年に『地域主権と道州制を推進する国民会議』を開催し、道州制の導入を盛んに訴えていた。しかし、2012年12月の第2次安倍政権が誕生する総選挙の直前の11月、町長や村長からなる『全国町村会』の強い反対があった。「現在の道州制論議は、国民的な議論がない中で、道州制の下での町村の位置づけや税財政制度など、道州制が町村や町村仕民にどのような影響をもたらすのか明らかにされないまま、あたかも今日の経済社会の閉塞感を打破しうるような変革の期待感だけが先行していると言わざるをえない」「道州制は税源が豊かで社会基盤が整っている大都市圏への富の集中を招き、地域間格差は一層拡大する」「町村にとって存亡にも関わる危機」と、反対の立場を鮮明にした(『道州制の何が問題か』)。これを受けた形で、2014年10月、自民党道州制推進本部の佐田玄一郎本部長が、『道州制推進基本法案』を事実上、白紙撤回したのだ。

更に、この道州制に対しても、嘗ての地方分権推進の牽引役で、平成の大合併の“失敗”を認める東京大学の西尾勝名誉教授は否定的だ。2015年3月、国の統治機構に関する調査会の参考人質疑において、西尾氏は自身を「道州制の慎重論者だ」と述べた上で、「道州制議論には反対だ。何でも自治体に権限を下ろせばいいというものではない。国に残す権限と地方自治体に下ろす権限の分け方をしっかり考えるべきだ」とした。その上で、「『自治体数が多過ぎるので、更なる合併を進めよう』という議論は非現実的。平成の大合併の失敗を繰り返すことになり、地方自治体からの反発は避けられない」としたのだ。このトーンダウンの背景には、平成の大合併を合併特例債という(※実は激辛な)アメを使って押し進めた総務省と、その出先機関と化した都道府県への地方の反発があるようだ。更に、市町村合併への危惧の声も大きくなった為だろう。しかし抑々、市町村の合併と道州制の議論は目的の違うものであった筈だ。市町村合併は行政の効率化、最適な行政規模を維持することで、サービスレベルの全国的な均一化を目指した一方で、道州制は行政の効率化と共に、中央省庁の縦割りの規制行政からの脱却、広域な行政需要に対応することが求められた為ではなかったか? 例えば、日本は道路整備が進み、大型ショッピングモールを中心にしたモール生活圏ができ、市町村どころか府県境を感えて生活に影響を及ぼしている。「現行の都道府県は、1871年から1880年頃にかけて、明治維新の廃藩置県によって定められた制度。当時、日本には自動車(や飛行機)等は殆ど無く、鉄道が漸く敷設されつつあった時代だ。その頃、人が1日に行動する領域は、平均で6㎞ほどだろう。昭和の(市町村)大合併の頃は、自治体の規模も学校まで徒歩30分圏内が想定されていた。現代は買い物エリアさえ自動車を利用し、20~30㎞圏内まで延びている。通信も発達し、瞬時に世界を繋ぐことも可能だから、市町村の在り方の議論を深めないといけないし、明治時代の都道府県の範囲では狭く、大胆な合併が必要ではないか」。そう言うのは、埼玉県狭山市長から衆議院議員(自民党)となり、第1次安倍政権で総務副大臣や内閣官房副長官等の要職を歴任した、地方行政に詳しい大野松茂氏だ。また大野氏は、都道府県は明治次代以来、“中央集権”的な性質が変わっていないという。「多くの都道府県は、地方交付税交付金にに頼らなければいけません。その為、国に対して報告義務がある。制度面から実質的なコントロールを受け易い体質になっている。これでは、地方の歴史や伝統を踏まえた“地方分権”が行えないのではないか」。現在の中央集権の枠組みの中で、求められる“地方創生”を行うことができるのか――。 (取材・文/本誌編集部)


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【徹底解剖!東京都庁】(10) 敢えて管理職に背を向ける都庁職員の“出世回避”事情

実力主義で誰もが出世できる都庁だが、その実、多くの職員は“幹部”への出世に消極的だ。薄れる帰属意識と組織の変容を、管理職昇任試験の実態から読み解く。 (取材・文/本誌編集部)

20170731 06
組織の中で出世して、然るべきポストに就き、収入をアップさせたい――。それは、多くの社会人が抱く1つの目標である。戦後、成長時代を続けてきた時代の日本で、“出世”はサラリーマンの大きなモチベーションだった。係長・課長・部長と駒を進め、給与もアップしていく実感をある程度平等に配分していたのが、日本の公務員制度であり、それは良くも悪くも日本社会のメンタリティーに馴染んだシステムだったと言える。しかし、成熟の時代に入り、仕事に対する価値観も変わった。“自分の時間”の価値が高くなり、組織への帰属意識が薄まると、“出世”という目標も色褪せたものになってきたのである。「都庁でも10年ほど前から、その傾向は顕著になっています」とベテランの職員が語る。「現行の都庁の管理職試験制度は、美濃部亮吉知事時代の1970年代に整備されたもので、『学歴を間わず合格すれば、高卒でも東大卒でも同じステージに立てる』という考えは、学閥形成や情実人事を排するフェアな思想として、多くの職員に支持されたのです。1970年代には1万人以上が昇進試験を受験していましたが、その後、受験者数は下がり続け、更に職員数が減ったこともあって、今では上司が部下に受験を勧め、何とか受験率を維持するのも仕事の1つになっています」。実力主義の都庁では過去、高卒ながら交通局長やトップの副知事にまで登り詰めたOBも実在する。言ってみれば、大手商社や金融機関で高卒入社のサラリーマン社長が誕生したようなものだから、これはかなり凄い話である。「2004年、当時、都市計画課の次席(※係長級)だった黒田慶樹さんが紀宮さまと婚約した際、『せめて管理職の課長級に格上げするべきではないか?』との声が上がりましたが、結局、『原理原則のほうが大事だ』ということで、“2階級特進”とはなりませんでした」(同)。

民間企業の社員であれば一気に部長まで昇進してもおかしくないくらいの出来事だったが、これが都庁の組織風土なのである。これほど実力主義には拘りを持ってきた都庁だが、どうして職員が“出世したくない”状況に陥ってしまったのか? 「昇進試験を受けなくても、最終的に課長代理まで行ければ生活に困るようなことはないこと。それから、現場で専門的なスキルを身に付けてくると、関係機関との調整に追われる管理職の仕事に面白味を感じられなくなってきます。熱心に仕事をすればするほど昇任試験の準備は難しくなり、筆記試験が得意なタイプが上に行く。そうなると、益々職員の間にシラケムードが広がります。女性職員の場合、下手に突っ走ることで、結婚や出産ができなくなるという不安もあります。そして、これが意外に大きいのですが、今、出世している幹部たちが、上ばかり見る“ヒラメ系上司”として尊敬されていないことがあります。これらが全て、職員の出世欲を減退させる原因になっていると思います」(同)。確かに、出世できれば年収は上がり、退職金も増え、最終的に天下りもできる。しかし、それ以上に嫌なのは、やりたくもない仕事をさせられることである。特定分野に精通し、芸術的な仕事ぶりでやり甲斐を満たしているようなタイプは、敢えて「管理職になりたい」とは思わない。また、舛添騒動から小池知事誕生以降は、都庁幹部が直接、マスメディアから名指しで批判を受けるケースも多く、『余程の待遇でもなければ、こんなリスクを受け入れて働くことなどできない』という思いも広まったようだ。都庁では複数のタイプの昇任試験を設定しており、それは大きく言って2つに分かれる。国家公務員のキャリア組のような“新幹線”に乗って、ゆくゆくは部長・局長を狙っていこうとする難関系の主任級職選考A・管理職選考Aと、「試験は好きではないが、平均レベルまでは行きたいので受けるか」という“準急電車”の主任級職選考B・課長代理級職選考である。主任級職選考Aは、入都後5年で受けられ、Bは40歳以上で受けられる。Bのほうは教養問題の筆記試験が無く、最も負担が大きいとされる“教養試験対策の勉強”が必要ないという点が特徴だ。2015年の例で言えば、主任級職選考Aで合格者数は751人、合格率は30%強。上昇志向の強いグループは、いつの時代にも一定程度いて、新幹線コースの受験者数はそれほど減っていない。しか、しBのほうは合格率こそ37%と高いが、753人しか受験していないので、合格者は278人しかいない。ペーパーテストではなく、人物重視の流れはあらゆる場面で強まっているとはいえ、やはり、役所の幹部になる為には、知識や教養を問うペーパーテストで高得点を取らなければならない。「筆記試験は大学受験で最後にしたい」というタイプは意外に多く、これが“受験回避”に繋がっている側面はあると思われる。

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