【風俗嬢のリアル】(12) シズカの場合――苦しみを味わう旅の終わり
シズカは股間を押さえて叫ぶのであった。「本番はできないんです!」「この店、できない子いるの? 初めてだよ」。客は急に不機嫌になると、部屋から出て行ってしまった。ここは岐阜県岐阜市。広島を出たシズカは、奈良のゲストハウスで暫く休養した後、岐阜市内にある人妻デリへルへ移動していた。シズカにとって、日本一周最後の県である。しかし、客層は最悪だったようだ。「『愛撫が多いな』と思ったら、普通に脚をポーンと開かれて、そのまま生で入れようとするんです。結構いるんですよ。断ったら『じゃあ帰る』って、プレイの途中で帰ったお客さんが2人もいました」。驚いたことに、今回、シズカが働く岐阜の人妻店では、ゴム付きで本番行為をしたり、ピルを飲んで生でする女の子が大半を占めるという。勿論、違法行為な為、店側がそれを強制することはないが、黙認していることは確かなようだ。「店長に『本番強要が凄い』って話したら、『俺がお客さんでもそういう気持ちはわかるよ』って肩を持つんですよ。『もう何を言っても無駄だ』と思って。一番人気の子も同じ部屋にいたけど、私の話が聞こえていた筈なのに黙ったままなんです」。店の料金は100分1万8000円ほどで、女の子の取り分はその約半分だ。たった1万円ほどの金額で生本番するとは、信じられない安さである。病気のリスクを考えれば、あまりにも無防備だ。「この店だけなのか、岐阜全体なのかはわからないですけど、ちょっとこれは異常だと思いました」。
あまりにも常識となっているせいか、とある老人客に至っては、入れ歯を外した口をふがふがさせながら、「どうせ若い男にはヤラせるんだろ!」と悪態をついてきたという。勿論、相手はシズカが処女であることなど知る由もない。「大変だったんですよ。最初の3日間で『もう岐阜は来たくない』って思っちゃったもん。勿論、中にはいいお客さんもいましたけどね」。何回目かの本番強要で、シズカは思わず客の前で泣いてしまった。「『ごめんなさい、本番できないんです。岐阜の人って、やっぱりそういう方多いんですか?』って聞いている間に涙が出てきて。お客さん的にはそれで泣いたと思っているんだろうけど、岐阜に来てからの積もり積もったものが、偶々その時、バーッとでてきちゃったんですね」。流石の客も、泣かれたらそれ以上は言えない。「俺のほうこそ、イクの遅くてごめんね」と思いやりを見せて、プレイは終了。散々な岐阜のデリへルであったが、それでもシズカは2週間勤め上げた。私と会った日は最終日の為、シズカもほっとした顔をしていた。大都市であるJR名古屋駅から電車で20分ほどで着くJR岐阜駅は、北口を出ると灰色のビル群を背に黄金の織田信長が高所から見下ろしており、南口を出ると西日本最大級のソープランド街である金津園が存在する。ソープが盛んな街で、デリへルは影を潜めているのかと思いきや、「私も最初そうなのかなと思ったんですけど、案外忙しいです。岐阜市内に、デリへルだけで何百とあるみたいですよ。お客さんに聞いたら、『金津園に行くよりデリへルのほうが本番できるし、安いし、素人っぽくていいんだ』って」。デリへル業者は、金津園とはエリアの違う岐南インター付近に集中しており、ラブホテルもその周辺に点在しているという。「うちの店は提携するラブホがあるから、いつも同じところを使っているんです。お客さんとプレイを終えて出てきたら、駐車場にスタッフさんが待機していて、お金だけ渡して『じゃ次、何号室ね』。大体、1日3人なんで、同じラブホを行ったり来たり。看板のネオンが半分切れたような古いラブホで、何人かのお客さんは廊下を歩く時、『何かここ怖いんだよ』って言っていましたね。私は霊感が無いからわからないけど」。客が途切れるとシズカは待機所へ戻り、他の女の子たちと一緒に予約が入るのを待つ。昼出勤と夜出動で女の子の毛色はだいぶ変わるらしく、昼は所帯染みたリアル人妻、夜は如何にも風俗嬢といったギャルが多いという。シズカは日によって、どちらも出勤していた。店のホームページを見ると、年齢層は10代から40代と人妻店の割に幅広く、タイプも様々である。「結構修整するんですよ、このお店」。見ると、シズカの写真は縦長に加工されたのか、脚と頭が伸びて別人のようになっていた。