イギリスの公共放送『BBC』が取り上げた、『ジャニーズ事務所』の創業者・ジャニー喜多川氏による、過去数十年に及ぶ、所属する未成年タレントへの加害の問題の核心は、そうした忌まわしい性犯罪の出来事をこれまで隠蔽してきたジャニーズ事務所という、日本最大の芸能事務所のガバナンス能力にあります。日本を代表する大企業のCMに所属タレントを輩出する存在でありながら、「あれは創業者のやったこと」と知らぬ存ぜぬとの、まるで他人事の如き言い訳が許されるのかということです。現在の藤島ジュリー景子社長や白波瀬傑副社長は、恰も自分は創業者のジャニー喜多川氏とは関係ない立場にいた如くに装っていますが、実態はそうではありません。この連載で明らかにしたように、ジュリー社長さま御一同は運命共同体で、スキャンダルの隠蔽に取り組んできています。今日のジャニーズ事務所の芸能界における大きな存在感、影響力を考えれば、現在の企業経営責任者であるジュリー社長さまは、“一片のビデオコメント”で済ませることなく、メディアの前で、質疑応答で納得のいくまでの説明責任を果たすべきでございましょう。それが、日本を代表する企業のCM出演のタレントを派遣してきた芸能事務所の社会的責任でございます。また、今回のジャニー喜多川氏の性加害で最も大きな問題であると指摘しなければならないのは、日本のテレビ局の“報道しない自由”の在り方です。
普段、芸能人の色恋沙汰や闇営業といったスキャンダルには、ドブにはまった野良犬を死ねとばかりに容赦なく、朝から晩まで叩くくせに、ジャニー喜多川氏による性加害には“見ざる・言わざる・聞かざる”の三猿となって無視してきたことです。“皆様のNHK”でさえも、本来なら大きく取り上げるべきこの日本最大の芸能プロダクションのジャニー喜多川氏による性加害の忌まわしき出来事を、殆ど報じることなくやり過ごしてきました。私がジャニー喜多川氏の未成年少年への性加害を取り上げたのは1988年でしたが、それから30年余りもジャニー喜多川氏は、80歳を超えてもなお、未成年少年への“掘って掘って掘りまくる”性炭鉱夫の、世界の性犯罪史上類を見ない程の性加害を続けたのです。このことがトラウマとなり、人生を棒に振ることになったのは、北公次氏のみではありませんが、そうした気の毒な年端もいかない未成年の被害者を生んだのは、取りも直さず、“長いものには巻かれろ”のジャニーズのバター犬となって、臭いものに蓋をしてきたテレビ局の責任でもあります。若しこれが未成年の少女であっても、同じようにないものとしたのか、未成年少年だったからなかったことにして済ませていたのか、その公共の電波を預かるテレビ局のモラルが厳しく問われているのです。
村西とおる(むらにし・とおる) AV監督。本名は草野博美。1948年、福島県生まれ。高校卒業後に上京し、水商売や英会話教材のセールスマン等を経て裏本の制作・販売を展開。1984年からAV監督に転身。これまで3000本の作品を世に送り出し、“昭和最後のエロ事師”を自任。著書に『村西とおるの閻魔帳 “人生は喜ばせごっこ”でございます。』(コスモの本)・『村西とおる監督の“大人の相談室”』(サプライズBOOK)等。
2023年6月1日号掲載
テーマ : 人生を豊かに生きる
ジャンル : 心と身体