募金の一部経費使用はそんなに悪いことなのか? 名張市仏教会の運営を「けしからん」と断じた朝日新聞の歪曲報道
昨年12月19日付の朝日新聞伊賀版朝刊に、こんな見出しが躍った。『募金一部“経費”使用』『市に寄付の名張仏教会』『県共同募金会「あってはならぬ」』。まるで不正経理の印象を与える見出しだが、記事の全文は次の通りだ。
読者の多くは嘸かし驚かれたことだろう。「朝日新聞は仏教会いじめなのか」と。要するに、三重県の名張市仏教会が歳末募金を行い、寄せられた募金の一部を経費として使用したことについて、指弾している訳だ。名張市仏教会の各寺院が“歳末たすけあい募金”として集めた約150万円のうち134万円余を市共同募金会などに18日、寄付した。差額の16万円弱は「必要経費」と説明。県共同募金会は、寄付を募る団体などが一部でも集めた金を使うことは「あってはならない」との見解だが、市仏教会の柴田篤彦会長(栄林寺住職)は「40年近い慣行で、今の集め方を変えたら募金が成り立たなくなる」と話している。募金は毎年、市仏教会に所属する各寺が檀家や信徒に呼びかけて集め、釈迦が悟りを開いたとされる12月8日の“成道会”の法要の際、回り持ちにしている会場の寺で集計する。今年は加盟42寺院の檀信徒から総額149万7088円が集まった。18日は柴田会長らが亀井利克市長を訪ね、たすけあい募金に104万396円、自然災害支援基金に30万円の計134万396円を寄付。亀井市長は、「厳しい時代に毎年、コンスタントにご厚意をいただきありがたい」とし、柴田会長は「協力する人は減っているが、何とかある程度の金額にできた」と述べた。昨年も総額148万2910円に対し、寄付額はたすけあい募金106万2046円、自然災害支援基金30万円で12万円余の開きがあった。差額の使途について市仏教会は、封筒の印刷代や地元紙に出す謝礼広告代、成道会の会場使用料などの雑費と説明している。一方、県共同募金会(津市)の担当者は「明文化された規定はないが、浄財が一部であっても経費として使われることは、あってはならない」とし、封筒なども窓口となる市社会福祉協議会などで用意されるべきだとしている。 (中川史)
歳末の募金活動は、全国各地の仏教会で地域貢献活動として取り組まれている。慈善活動とは言え、募金を集めるにも事務用品代や広報活動等に経費がかかるのは当然だ。中には名張市仏教会と同様に、集まった募金の一部を経費に充てている仏教会もあるだろう。しかし県共同募金会は、そんなことは「あってはならぬ」と言う。本当か? 募金活動は何から何まで手弁当で行わなければならないのか? 報道を検証していくと、募金と経費をどう考えるべきかが見えてきたのだ。名張市仏教会の柴田会長に取材を申し込んだが、「仏教会としての正式なコメントは避けたい」という。ただ、仏教会は激しく動揺しているという。「経費については従来から公表していることなので、檀信徒の皆さんは記事に驚きはしましたが、批判等はありません。しかし、所属寺院の落胆は大きい。理事会では、『今年は市への寄付は控えてはどうか?』という意見も出ています」。当然ながら、ショックは隠せない。一方、三重県共同募金会は朝日新聞社から、このような取材を受けたとのことだ。「ある人が共同募金会への寄付を名目に不特定多数からお金を預かって、募金を集める過程の経費を募金から差し引き、残ったお金を寄付しました。こうした行為についてどう思いますか?」。これに対して、記事中の「あってはならない」というコメントがなされた訳だ。寄付を受ける側の名張市社会福祉協議会事務局へも取材した。「こうした記事が出たことについては、仏教会や檀信徒の皆さんに誠に申し訳ないと思っています。県共同募金会としても、仏教会の活動を批判するつもりは全くありませんから、記事に関しては不本意です。仏教会さんへは、取り急ぎ県共同募金会共々、取材内容についての説明とお詫びに伺いました。名張市仏教会さんからは毎年、100万円を超す寄付を戴いています。これは、名張市社協に戴く寄付金全体の凡そ3分の1にもなります。一般からの募金額が減少傾向になる中、本当に有難い。仮に、記事の影響で仏教会さんからの寄付が戴けないようなことになると、これまで行ってきた養護施設の支援や高齢者の見守り活動等が継続できなくなります。地域にとって大損失です」。一体、どういうことなのか? 名張市仏教会がショックなのは当然だが、社協・県共同募金会共に報道に不本意とは?