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【JRはどこへ】(番外編) 地域の為に走る企業に――唐池恒二氏(『JR九州』相談役)インタビュー

20240429 03
「鉄道が嫌い」と、ずっと言ってきた。その私が作ったのが『ななつ星in九州』だ。社内では「社長の道楽」と言われ、運輸部長だった古宮洋二・現社長にも「儲かりません」と反対された。大手旅行会社に説明しても「そんな高い列車に乗る人はいない」と酷評された。『JR九州』が発足して間もない頃、熊本県を走るSLの企画を任されたことがあった。当時は、昔の客車を再現するような、鉄道マニアに向けたアイデアが常道だった。私がターゲットにしたのは、普段はマイカーを使っていて、鉄道に殆ど乗らない家族連れだった。鉄道を使わない人達の心理を理解しなければ、顧客は増えないと考えたからだ。ななつ星も、いわゆる鉄道好きを狙った列車ではない。民営化直後、JR九州が「まだ見ぬお客さまに会いに行こう」とやり続けた延長線上にある。全ての路線が赤字だったから、目の前にいないお客を呼びこむ必要があった。JR九州の民営化後の経営は厳しく、石井幸孝・初代社長は「国鉄時代のやり方では会社が潰れるぞ」と言っていた。国鉄時代は管理職と現場の組合員が対立し、職場は荒れていた。JR九州になって直ぐ、小売り大手の『丸井』に修業に出された。初出社するとロッカーに花が飾ってあり、廊下を歩くと社員が皆、挨拶してくる。「これが民間会社か」と感動した。JRに戻ってから、挨拶だけでもと真似した。少しずつ職場が変わっていった。北海道、四国、九州のJR3社は“三島会社”と呼ばれ、本州3社と区別されていた。「本州だって島だろう」と腹が立ち、「見返してやる」という気持ちが仕事の原動力となった。株式上場を前にした国土交通省の調査で、ななつ星等を通じて、地域と一体となって盛り上げていることが評価された。業績を上げることは勿論必要だが、それだけでなく、地域の為に存在している企業ということが大事だ。嘗て多くのローカル線が敷設された時代は、公共交通の選択肢がほぼ鉄道しかなかった。これから20~30年後を考えると、鉄道の在り方を本気で考える時期に来ている。実は、地方のローカル線の赤字の絶対額は小さい。県庁所在地のような路線で、それなりに人が乗る為に廃止できない路線のほうが赤字額が大きい。路線を廃止してバスに転換するのは、地元への説明といった労力を含めて、物凄いコストがかかる。短期的にみたら寧ろ廃止しないほうがよい。其々の地域に適した交通は何なのか。20年、30年と将来を考えて、地元と共に議論していく必要がある。


キャプチャ  2023年6月1日付掲載

テーマ : 鉄道関連のニュース
ジャンル : ニュース

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