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【棚橋弘至の「プロレス社長奮闘記」】(22) 推し活隆盛の今こそ地道なPRが効いてくる!?

ご存知の方もいるかもしれませんが、映画『エイリアン』シリーズ等を手掛けたリドリー・スコット監督の渾身の大作『グラディエーターⅡ~英雄を呼ぶ声~』(※公開中)のプロモーションに『新日本プロレス』も参加しました。10月の両国大会で僕と海野翔太、エル・ファンタズモが剣闘士の甲冑を着て試合に入場、公開直前のイベントにも登場しました。

言ってしまえば我々も現代の剣闘士。甲冑姿がとても似合っていましたね(※自賛)。今回のような大作に関わって改めて思ったのは、映画はプロモーションにかける規模と熱量が段違いだということ。ハリウッドから有名俳優に来てもらう、各界の著名人にPRに参加してもらう等、やはりスケールが違います。

そんな活動のひとつの仕掛けとして、新日本プロレスの選手を起用してもらえるのは、とてもありがたいことです。もう18年も前ですが、2006年に初めてIWGPヘビー級チャンピオンになり、最初に始めたのがプロモーション活動でした。プロレスの地上波での放送が深夜になり、会場への動員も思うように増えない。新日本プロレスが“冬の時代”と呼ばれていた頃のこと。

その時のプロモーション活動といえば、地道に飲食店を回って大会ポスターを張らせてもらって、チケットを手売りしたり、ラジオで大会の宣伝をしたり、新聞やタウン誌の取材を受けたり…。文字通り地道に頑張ってはいましたが、長い間、結果は実らない。厳しいものでした。

そこから、「こうした活動も大事だけど、もっと僕がテレビにバンバン出て有名になって、誰もが知っているプロレスラーにならねば」と考えるようになり、積極的にテレビに出演。新日本プロレスのV字回復の一端を担ったと自負しています。ただ、今は“テレビに出る”だけでは観客動員に直結しない難しい時代だと感じています。家族でテレビを見ることも少なくなり、趣味も多様化して、「この人、テレビで見た」だけでは、会場まで足を運び、お金を払ってもらえません。

一方で現代は“推し活”隆盛の時代でもあるわけで。逆に今こそ足を使った地道なプロモーションが効いてくる筈! ここに戦略的なSNSの活用、映画・テレビ・イベント等多媒体への積極的な参加を重ねていけば光明が見えるのではないか。そんな思いで多種多様なPR活動に参加しています。

今回のタイアップの話に戻りますが、こんなありがたい機会って意外にないんです。作品を全力でPRしつつ、映画ファンに「こんな選手がいるのか」と知ってもらう。動員アップに直結しないかもしれませんが、こうした活動を通じて、一度でも試合に足を運んでもらえたら…。剣闘士宛らの魅力的な試合で、お客さんをローマ市民の如く熱狂させる自信がありますよ!(笑)


棚橋弘至(たなはし・ひろし) 『新日本プロレスリング』代表取締役社長兼レスラー。1976年、岐阜県生まれ。立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入寮。得意技はハイフライフロー。著書に『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』(飛鳥新社)・『カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの“復活力”』(マガジンハウス)等。


キャプチャ  2024年12月17日号掲載

テーマ : プロレス
ジャンル : スポーツ

【前略・北関東の山の上から】(22) 「今年こそは熊を仕留めたい!」…狩った鹿を食い繋ぎ野営をする作戦に

「単独で熊を獲る」。その悲願を達成すべく、山歩きの日々が続いている。11月23日。この日の目的地は、人里から7時間歩いた山奥のM沢。そこは師匠の服部文祥さんが昔よく通っていた猟場で、近くに公道も林道も無い為、人の出入りが無く、鹿は多くいるが警戒心が薄い。いわゆる鹿天国だ。

猟期が始まってから未だ熊に出合えていない私は、「このM沢の裏の山で鹿を獲る。その鹿の匂いに引き寄せられた熊を撃つ。それまでは鹿を食べながら居続ける」という作戦でいた。熊は“3㎞先の餌の匂いも嗅ぎ取れる”そうな。

野営道具が入ったザックを背に、鉄砲を手に、朝7時狩猟登山開始。秋が深まった山の色みは、たった3色。樹皮と岩肌の白、苔と針葉樹の緑、地面を埋め尽くす落ち葉の茶色がひたすら続く。30分おきくらいに「ピィッ!」と鹿に鳴かれるが、目的地までまだまだ距離がある為、鉄砲は構えない。

9時半。川の横で大きな頭骨を拾う。牙が大人の指ほど太い。熊だ。山中で熊の骨を拾うのは初めて。周辺にも様々な骨が転がっている為、半年以上前にここで自然死したのだろう。ごつい犬歯を抜いて、緊急時用の医療ポーチに仕舞う。「帰って欲しい人がいたらあげよう」。

11時。笹しか生えていない裸の山の頂上で小休止。もう冷え切ったコーヒー150㎖くらいとカロリーメイト半パックで昼食を済ませ、立ち上がりざまにサクマドロップを口に放り込む。その甘味を楽しみながら、北側に面する寒々しい針葉樹林帯の斜面を下る。さっきまで登ってきた南側斜面が体感温度で10℃くらいあったろうか。一日の殆どが日陰のここは吹き上げる風も冷たく、0℃くらいに感じる。足元にはうっすら積もった雪が目立ち始める。

歩き始めて4時間半。ここまでは、林業従事者が木々に結んだピンクテープを目印に進んでこれた。しかし、この先は20年前に服部さんが結んだオレンジテープしかなく、それが結ばれた木も今や倒木や朽ち果てた木になっている。今回私は、その目印を結び直すつもりでいた。普段着ている狩猟用ベストのポッケからオレンジテープを取り出し、千切っては結び、千切っては結びを繰り返しながら山を上下する。

進行方向に、季節外れの発情鳴きをする牡鹿がいた。通常、鹿の発情期はもう終わっている。10月中旬くらいからひと月弱あるが、優秀な雄は10月20日くらいには複数頭の雌を従えてハーレムを形成している。牡鹿の鳴き声を度々耳にしながら谷を下りると、谷底で「俺は男だあー!」と叫ぶように鳴く小さな三段角の若鹿がいた。

こっちに気付かず鳴き喚く若造を見て、「ああそうだった。自分が10代後半の頃、同年代の女の子は皆、20代中盤とか30代の男に惹かれていて『何でだ!』って憤っていたっけ」と青臭い青春期を思い出したりしていた。

13時50分頃、最後の難所の崖を登り切る。M沢まであと少し。首からぶら下げていた鉄砲を両腕で持ち直し、「狩猟に気持ちを向けよう」とフッと短く息を吐いた瞬間、30mほど先で何かが動いた。同時に「ピィッ!」と鹿の警戒音。ここで獲ることができれば、今夜は焼肉だ。


東出昌大(ひがしで・まさひろ) 俳優・ファッションモデル。1988年、埼玉県生まれ。大学中退後、宝飾デザイナーを目指し、ジュエリーの専門学校に進む。2006~2011年までパリコレクションで『ZUCCa』や『ヨウジヤマモト』等にモデル出演。2012年公開の映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。この作品をきっかけにファッションモデルとしての活動を辞め、俳優に転身。主な出演映画に『クローズEXPLODE』・『コンフィデンスマンJP』シリーズ・『スパイの妻』等、テレビドラマは『あまちゃん』『ごちそうさん』(NHK総合テレビ)・『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)・『あなたのことはそれほど』(TBSテレビ系)等。


キャプチャ  2024年12月17日号掲載

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

【今週の信用情報】(10) 武田薬品の“失われた10年”&船井電機の“救世主”に元環境大臣

社長就任から10年間で手にした報酬総額は150億4000万円――。江戸時代に創業の『武田薬品工業』は240年以上の歴史を持つ。2014年、初の外国人社長として鳴り物入りで就任したのが、世界最大級の製薬会社『グラクソスミスクライン』出身のクリストフ・ウェバー(57)だ。しかし、ウェバー氏が率いる武田はこの間、凋落の一途を辿っている。

「グローバル化路線を敷いたウェバー社長は2019年、創業家の反対を押し切り、アイルランドの製薬大手であるシャイアーを6兆8000億円で買収しました。日本企業による過去最大の買収案件として話題になりました。しかし、世界13位のメガファーマとなったものの、市場は『図体がでかくなっただけ』と冷淡で、株価は6000円台から4000円台へと急落しました」(経済アナリスト)。

一方で、『武田コンシューマーヘルスケア』(※現在の『アリナミン製薬』)をアメリカの投資ファンド『ブラックストーングループ』に売却する等、中核事業の切り売りも図った。そのM&A戦略が財務の悪化を招いたという。

「更に、ウェバー社長は大規模なリストラも断行しました。その結果、武田の“創薬力”が著しく低下しました。年間700億円以上を売り上げた高血圧症薬のアジルバは特許が2023年に切れ、1000億円弱の売上をもたらす胃潰瘍薬のタケキャブも2031年には特許切れに。武田は、それら稼ぎ頭を補う新薬を生み出せていません。新薬開発には最低でも10年かかります。武田にとって、ウェバー政権はまさに“失われた10年”だったわけです」(同)。

          ◇

FUNAIブランドで知られる、中堅AV機器メーカーの『船井電機』。廉価のテレビが主力商品だが、中韓勢に押され、赤字が続いている。目下、それに追い打ちをかけるような緊急事態が勃発中である。抑も、船井電機は創業者の船井哲良氏が1951年に興したミシン問屋がルーツ。長男は医師の道を選び、2017年に没した父から受け継いだ船井電機株を2021年に処分した。『秀和システム』という出版社がTOBによって船井電機を完全子会社化し、上場廃止に。

「昨春に持株会社制へ移行し、船井電機は船井電機HDの傘下に入りました。その両社の社長には秀和システム代表の上田智一さんが就きました。続けて船井電機HDは、本業とは縁遠い脱毛サロンチェーンのミュゼプラチナムを買収しました。40億円弱と見られる買収資金は大阪府大東市にある船井電機の本社ビル等を抵当に入れ、用立てられたのです」(船井電機関係者)。

ところが、僅か1年で、割引クーポンサービスを手掛ける『KOCジャパン』という企業にミュゼを売却。更に1ヵ月後には『TNCアセットマネジメント』なる貸金業者に転売された。

「一方で、ミュゼはインターネット関連企業のサイバーバズに対し、ウェブ広告の代金22億円が未払いでした。船井電機HDが債務保証をしていた為、今年9月初め、船井電機株の9割超を仮差押えられるはめに。尚且つ、船井電機からミュゼ側に50億円近い資金の流出も発覚したのです。その結果、“特別背任”に問われる可能性が生じた上田さんは船井電機HD、船井電機共々、9月27日付で社長を退任しました」(同)。

代わって、『日本政策金融公庫』の上野善晴元専務が船井電機の社長に、会長には原田義昭元環境大臣が起用された。原田氏に訊くと、「『前の経営陣を総取っ替えするので、新しい経営陣と会社の立て直しをしてほしい』と依頼されました。過大投資の問題があって、その修正を図っていこうと考えています」。事件化の様相か。


キャプチャ  2024年10月24日号掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【村西とおるの「全裸で出直せ!」】(264) 多くの男がお金以上にこの世で愛するのは、たった一人の母親

高校1年の時です。母親が唐突に「町のキャバレーで働こうと思うんだが、どうだっぺ?」と聞いてきたのです。お年頃のガキでしたので、福島県の田舎なれども、そこがどういう場所であるかは知っていました。「止めたほうがいいっぺよ」と反対しました。が、心の内では女手ひとつで私を育て、随分と貧しい思いをさせていることに母は耐えられないのでは、と理解しました。全ては私の責任で、中学3年の時、父親に包丁を持って向かって行ったことが発端となり、私を叱った為に不仲となり、離婚に至ったのです。

後年、AV監督となったある日、突然、事務所に幼児を背負い、ヨチヨチ歩きの息子の手を引いた若い母親が訪ねて来て、「今日中に滞納している家賃を払わなければアパートを追い出される。AVに出演するので何とか助けてほしい」と泣き崩れました。その切羽詰まった表情は只事ではなく、作品になるかどうかを考えることなく、彼女が必要な金額をスタッフに渡し、振り込ませに行かせたのです。

そして求められるままに撮影を行ないました。その撮影中、別室にいる幼児が母親を求めて泣き叫ぶ声が聞こえてきます。遠き日に息子の為にキャバレー勤めを厭わなかった母親のことを思い出し、カメラのレンズ向こうが霞んで見えなくなりました。目の前でAV男優に組み敷かれ、無我夢中になってしがみつき、喜悦の声を上げている母親の裸体の上に、不覚にも涙の滴を垂らしたのです。

撮影終了後、「これは別途、生活の足しに」と20万円を渡しました。若い母親は「こんな大金いいんですか」と、嬉しそうにそのお金を懐に入れ、幼児を背負い、ヨチヨチ歩きの息子の手を引いて去って行ったのです。その後ろ姿は、まるで昔の母親と私の姿にダブって見えました。

この頃のAV業界に熟女ブームが到来しております。五段腹であったり、帝王切開の跡や出産経験が下腹にくっきり残っている母親の熟女等も少なからずいて、活況を呈しています。偽フェミニストは「子供のいる貧困家庭の女性の弱みにつけ込んで搾取している」と批判をしますが、そうではありません。

熟女女優の皆さまは、自分達の仕事に誇りを持っています。学歴や閨閥には恵まれていないけれど、誰にも頼らず自分の力と魅了だけで生きている、という揺るぎないプライドの持ち主です。そして何万、何十万人という彼女達を熱く称えるファンがいます。この世で一番自分を大切にしてくれた、見返りを求めることなく命がけで守ってくれた母親というかけがえのない存在へのオマージュでもあります。

私とて、仏壇に飾ってある50代の母親の遺影を拝みつつ、「今日出会ったら、きっとスカウトをしたに違いない」の“親孝行したい時に親は無し”のエロ事師でございます。


村西とおる(むらにし・とおる) AV監督。本名は草野博美。1948年、福島県生まれ。高校卒業後に上京し、水商売や英会話教材のセールスマン等を経て裏本の制作・販売を展開。1984年からAV監督に転身。これまで3000本の作品を世に送り出し、“昭和最後のエロ事師”を自任。著書に『村西とおるの閻魔帳 “人生は喜ばせごっこ”でございます。』(コスモの本)・『村西とおる監督の“大人の相談室”』(サプライズBOOK)等。


キャプチャ  2024年12月19日号掲載

テーマ : 人生を豊かに生きる
ジャンル : 心と身体

【基礎からわかる暴力団】(11) 刺青…カタギ世界からの決別を意味する通過儀礼も意味が変わった!

一生カタギの世界には戻らないと覚悟を決めて、自分の体に刺青を入れるヤクザは多い。刺青が“ガマン”とも呼ばれるのは、針で色素を体内に刺していく痛みに耐える必要があるからで、故に“男の修業”と言われる。つまり、ヤクザの刺青はある種の通過儀礼のような趣があったわけだが、令和の現代ではそうとも言えなくなってきた。

「正直、ヤクザになる前から刺青が入っているやつも多い。ファッションの一部みたいな感じで、いわゆる“タトゥー”ってやつだな。それくらい一般的になっているから、昔に比べると彫師に払う料金もグンと安くなった。今でも細部は手彫りじゃなきゃだめと拘っている彫師もいるけど、基本は電気針を使う。あの何とも言えない痛みは変わらないが、入れる時間自体は短くなっているし…」(某組織関係者)。

確かに街を歩けば、堂々とタトゥーを見せつけている若者と遭遇する機会は多い。日本のサッカー選手でもワンポイント刺青が入っていることも珍しくない。日本社会が刺青に寛容になった部分もある。

実際、平成末期に彫師が医師法違反で逮捕・起訴されることが相次いだのだが、そのうちの1人が最高裁まで争い、令和になって「タトゥーを入れる行為は美術的な意義がある社会的風俗として受け止められ、医療行為とは受け取られてこなかった」と判断され、無罪を勝ち取っている。謂わば、司法が彫師にお墨付きを与えたわけだ。

「そのせいか、最近ではインターネット通販で電動針とタトゥーマシン等セットになって、1万円ぐらいで誰でも買えるようになった。絵心がなくても図案をシールでトレースすれば、素人でも刺青を入れることができてしまう。偶に『仲間内に入れられて、目も当てられない結果になった』と嘆いているやつもいるよ(笑)」(同)。

何だか以前のように、刺青に厳粛な意味合いはなくなっているようなのだ。とはいえ、気安くなっても“刺青お断り”の施設は多い。プールにサウナ、スポーツジム等、肌を少しでも見せる可能性がある場所は立ち入れない。

しかも先日、新聞の片隅にこんな記事が載った。〈刺青見せ50万円 恐喝容疑で男逮捕 茨城県警〉(※茨城新聞)。自称解体業の男が無職の男性に刺青を見せて、自分がヤクザであるかのように装って現金を脅し取ったという。やはり“刺青=ヤクザ”というイメージは覆っておらず、世間からは怖がられていることに変わりない。下手すれば、ヤクザが刺青を見せただけでパクられる可能性もある。

刺青のメリットは何なのか。「うーん、刑務所の中にいた時、一目でヤクザとわかってもらえて、少しだけ鼻が高かった。それぐらいだな、刺青の恩恵を感じられたのは(笑)」(同)。多くのデメリットにも耐えなければならない刺青は、今も変わらず“ガマン”が必要なのだ。


キャプチャ  2024年9月12・19日号掲載

テーマ : 暴力団
ジャンル : ニュース

【西村博之の「相手にYESと言わせる話術」】(93) 「この件について“はい”か“いいえ”で答えて下さい」

よく討論番組とかに呼ばれたりするのですが、そこで他の出演者と意見の食い違いがあったりすると、お互いに質問合戦になることがあります。そんな時に往々にしてあるのが、相手が“質問に答えない”というもの。質問には質問で返して、何となく場を収めようとするパターンですね。

多分、答えると不利になるので答えたくなかったり、誰かから「答えるな」と言われていたりすると思うのですが、上手に躱す人がいるわけです。まあ、質問に答えなくても相手を納得させればいいというのはあるのですが、納得できない場合はちゃんと答えを聞きたいものですよね。

最近、話題になっている兵庫県の斎藤元彦知事の定例会見でも同じような光景がありました。選挙中のSNS運用問題について質問をされても、「法令への抵触はない」「代理人に任せている」と繰り返すばかり。こういう相手が明言を避ける時に答えてもらうには、どうしたらいいか?

そういう時は、同じような質問を“言い換えて続ける”のが効果的だと思うのですね。例えば、「この件について具体的な説明をいただけますか?」とか、「この問題についてご自身のお考えをお聞かせいただけますか?」とか、兎に角、同じ質問でも表現を変えたりして繰り返す。すると、稀に回答を引き出すことができる場合があったりします。

勿論、それでも答えなかったりすることもあるのですが、それはもう答える気がないということで、周りに不誠実な人であると認識してもらうのがいいと思うのですね。そういう心理的な負担から解放されたいと感じる人は少なくないです。とはいえ、相手が不誠実と思われようがなんだろうが答える気がないパターンもあります。

そんな時に僕がやるのは、「“はい”か“いいえ”で答えて下さい」という二択にしてしまうものです。例えば、今回の例でいうと「業務やボランティアに関係なく、PR会社の社長がSNSの運用をしていたというのは事実ですか? “はい”か“いいえ”で答えて下さい」という感じです。

こういう伝え方をすると質問に答えざるを得なくなりますし、それでも答えない場合、周りからすると“逃げている”ようにしか見えません。但し、この質問をすると自分が変なやつだと思われる可能性もあるので、その点はご注意下さい。 (聞き手・構成/編集プロダクション『ミドルマン』 杉原光徳)


西村博之(にしむら・ひろゆき) 英語圏最大のインターネット掲示板『4chan』管理人・『2ちゃんねる』創設者・『東京プラス株式会社』代表取締役・『未来検索ブラジル』取締役。1976年、神奈川県生まれ。中央大学文学部教育学科卒。『僕が2ちゃんねるを捨てた理由』(扶桑社新書)・『論破力』(朝日新書)・『自分は自分、バカはバカ』(SBクリエイティブ)等著書多数。


キャプチャ  2024年12月17日号掲載

テーマ : 対人コミュニケーション
ジャンル : ビジネス

【岩崎う大の「シン・お笑い論」】(56) 『キングオブう大』と『M-1グランプリ』



『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(※テレビ朝日系)の企画として『キングオブう大』というコーナーが始まったのが、2020年のことだった。その年の『キングオブコント』準決勝で敗退したうちの5組が参加し、僕が一人審査員として採点、コメントしていくという企画で、『note』でのキングオブコント評が話題になった結果だった。

準決勝で敗退したとはいえ、参加者は実力者ばかり。蓋を開けたら予想よりも緊張感のある空気で、そういう緊張感はバラエティーのアゲアゲな空気よりは得意なので、怯むことなく自分のペースで進むことができた。勿論、『オードリー』の若林さんを筆頭に、しくじり先生レギュラーメンバーの方々が、そのバラエティー離れした空気感を面白がって盛り立ててくれたおかげである。

このキングオブう大がきっかけで、noteを読んでくれる人も大幅に増えたし、僕に“審査員キャラ”がついた。審査員キャラなんて、現役でお笑いをやる上で邪魔になるという見方もあると思うが、長年キャラのなかった人間としては嬉しかったし、審査員キャラという謎の武器を活かせたら面白い筈だと今も思っている。現在は、非常に由緒ある『ABCお笑いグランプリ』の審査員までやらせていただけるようになったが、それもみんな、キングオブう大が始まりだ。

また、他人様のネタにああだこうだ言う以上、これからもコントを頑張ってやっていこうという決意も生まれた。笑いの神様との約束というか、世間や他の芸人から「あいつ審査員のくせに、このレベルなんだ」という逆審査を受ける可能性はあるが、自分のネタの理想を追い続けようと誓った。

そんな頃、『お笑い二刀流道場』(※テレビ朝日)という深夜番組の、コント師に漫才を披露させるという企画で、『かもめんたる』に漫才をやってほしいというオファーがあった。10年以上前、かもめんたるで漫才に挑戦した結果、「コントに専念しよう」という僕の中では英断を下して以来、漫才は観て楽しむものという固定観念があった。

キングオブコント2013優勝後、バラエティー番組にハマれず迷走していた頃も、「演劇をやれ」という助言は貰っても、「漫才をやれ」とは誰からも言われなかった。それぐらい、かもめんたるの漫才には誰も期待していなかった。

偶に槙尾から「漫才やりませんか?」という提案はあったが、それはかもめんたるのコントを漫才に落とし込んだものだった。そんなネタならコントでやればいい。僕はかもめんたると漫才に接点はないと思い込んでいた。

ただ、その時のオファーはタイミングがよかった。これはもう運命としか言いようがないかもしれない。丁度、『劇団かもめんたる』の公演中だったのだ。〈HOT〉という作品で、ラサール石井さんをゲストに迎えた公演。僕の役柄は政府の人間で、屁理屈や正論を織り交ぜながら他人を激詰めしていく“面倒臭いやつ”だった。

発言に妙な説得力があり、そいつと関わると、他人は皆、ある種の被害者になったり、加害者に仕立て上げられるが、そいつには確固たる芯があり、それは愛とも呼べてしまいそうな、そんな厄介な人間。そのキャラクターを演じながら、僕は凄くやり易いと感じていた。言葉がスラスラ出てくるのだ。

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テーマ : お笑い芸人
ジャンル : お笑い

【言論StrongStyle】(250) 「減税した分、増税する」? 自民党は死にたいのか!



現在、衆議院がハングパーラメント(※絶対多数党不在議会)である。こんな状態、いつまでも続けるものではないので、ハングパーラメントのうちにやることをやっておかねば。ただ、日本政治のキャスティングボートは日本国民が握っている。これまで税制の全権を握ってきたと言っていい自民党の宮澤洋一税制調査会長が、「減税したら増税する可能性もある」と言い出した。

景気浮揚策として減税するのに、増税したら意味がない。学部レベルのマクロ経済学として間違っている。それどころか、家計としても間違っている。減税したのに増税したら、手取りが増えない。この人は何が何でも国民の手取りを増やしたくないのだろうか。「自民党は、この人を黙らせないと地獄に落ちるぞ」と、心の底から心配になる。

宮澤税調会長と財務省の繋がりは有名なのだが、まさに自民党が官僚機構をシンクタンクに使ってきたツケを象徴するような発言だ。何とかの一つ覚えのように「減税すれば税収が減る」と繰り返すばかりだ。当たり前の話だが、その分の経済効果があるので、最終的に税収は増える。

政治家・財界人・メディアが、官僚自身が信じているとは思えない御説明の通りに一つ覚えを繰り返しているのが情けない限りだ。引き算だけで足し算はないのか。自民党には最新の経済学をレクしてくれる人がいないのだろうか。

MIT教授のオリヴィエ・ブランシャールの著書『21世紀の財政政策』が引用したヴァレリー・レイミーの論文『金融危機から10年:財政研究の復興から学んだこと』によれば、政府支出乗数は0.6から1なのに対し、税率変化の乗数がマイナス2からマイナス3とのことである。つまり、1兆円の政府支出をしても6000億~1兆円の経済効果しかないが、1兆円の減税をすれば2兆~3兆円の経済効果がある。

これはレイミーが実証した研究結果だ。それを世界的に高名で、大学院の経済学の教科書を書くようなブランシャールが引用。近代経済学では長らくケインズ式のIS-LMモデルが使われてきて、政府支出の効果が説かれてきたが、教科書を書き換える事態になっているのである。

以上の解説は、私が理事長兼所長を務める『救国シンクタンク』の研究員レポートに纏まっているので、希望されるなら専門家がご説明に参る。今はハングパーラメントだというのに、自民党は頭の下げ方を忘れたのだろうか。最後は力で押し切る気でいるようだが、過半数を割った少数与党で、どこから味方が湧いてくると思っているのだろうか。

このまま国民民主党との協議が物別れに終われば、最後は予算も法律も通らない。何と『読売新聞』と『しんぶん赤旗』が同じことを言って包囲網を形成。仮に予算と法律が通らず行政が停滞すれば国民民主党の責任にするつもりだろうが、SNSは今の自民党の敵だ。謂わば既成メディアとSNSの決戦になる。その時に勝算は?

逆算する。来年7月までに参院選が必ずある。その直前に東京都議選も重なる。だから自民党としては、3月に予算を通して総裁選挙、新総理で都議選と参議院選、人気がある総理なら衆議院を解散して同日選挙に持ち込み、安定多数を奪い返したいだろう。野党は、そのシナリオを阻止しに来る。

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テーマ : 税金
ジャンル : 政治・経済

【宇垣美里の漫画党宣言!】(135) 溢れるラジオ愛で繰り返すタイムリープ

気づけばラジオの仕事を続けて10年が経った。仕事から入ったそれはいつしか習慣となり、移動中や家事の合間には常にお気に入りのラジオ番組を流し、最早なくてはならない生命線。リスナーであることがアイデンティティーのひとつだからこそ、『オールドヨコハマラジオアワー』に通底する狂おしいほどのラジオ愛はよくわかる。わかるけども!

なぎさはラジオ番組『オールドヨコハマラジオアワー』、通称オルヨコの熱心なリスナー。このラジオなしでは生活できないほど心の支えとなっているのに、ある日の放送でパーソナリティーのルールーから番組の終了が発表された。なぎさは悲しみに暮れ、何とか時間を戻してあのラジオの終了を止めたいと嘆きながらシュウマイを食べていたら、何と本当に半年前にタイムリープしてしまう。斯くしてオルヨコの終了を阻止すべく、なぎさの孤独な戦いが始まったのであった。

恐らく今まで読んできた中で最も平和なタイムリープものである本作。人の命や世界の運命がかかっているわけでもなく、ただ大好きなラジオ番組の打ち切りを止めたいという一心で、シュウマイを食べては何度も何度も時を越えていくその気軽さといったら。一聴取者という立場でありながら自力で何とかしようと、既に25回も過去に戻ったという3話でのなぎさの発言に、「彼女はもう10年以上の時をひとりで過ごしたということ!?」と思わず末恐ろしさを感じたものの、その強過ぎる推しへの愛はカラッとしていて気持ちがいい。

気軽なタイムリープの一因にあるであろうなぎさの判断の速さと勢いを、1頁4コマという構成ならではのリズム感が助長し、たっぷり空間を使った横長のコマいっぱいに迸るパワーとポジティブさによるものか、終始底抜けに明るく楽しい雰囲気で物語は進んでいく。

オルヨコ愛をきっかけになぎさと友人関係になる放送作家見習いのハラスとのテンポの良いやり取りも心地よい。これまたタイムリープでありがちな過ごした時間を片方だけが忘れてしまう悲しみ等は感じさせず、寧ろ何度出会っても親友になってしまう2人の唯一無二の関係性が一層輝くばかり。いつしか2人の推しであるルールーのことも、どんどん好きになってしまった。

オルヨコの好きなところはリスナーと答え、「双方向のコミュニケーションで成り立ってるラジオが好きだから オルヨコはそういうラジオだから好き」と微笑む彼女の姿に、ラジオパーソナリティーの端くれとして思わず共感。そう思えるような関係の番組って、リスナーの存在って、本当に得難いものなんだよなあ。

タイムリープを繰り返すうちに、徐々に核心へと近づいていくなぎさ。オルヨコ打ち切りの黒幕たる思想違いのルールーファン・ミサキの心に迫ることができるのか。そして、オルヨコを守り切ることができるのか。私個人としては、予想外の場所で推しに出会い、ルールー本人だと気づきながらも彼女の吐いた嘘を尊重して別人として扱い続けるなぎさの姿勢に一票。推しの幸せは祈ってこそだろ! 自分の理想を推しに押し付けるのは邪道だろ! 行け、なぎさ! シュウマイを決めてやれ。


宇垣美里(うがき・みさと) フリーアナウンサー。1991年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部卒業後、『TBS』に入社。『スーパーサッカーJ+』や『あさチャン!』等を担当。2019年4月からフリーに。著書に『風をたべる』(集英社)・『宇垣美里のコスメ愛』(小学館)・『愛しのショコラ』(KADOKAWA)。近著に『風をたべる2』(集英社)。


キャプチャ  2024年12月5日号掲載

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

【誰の味方でもありません】(375) 社会は“カスタマイズ”できるのか?

https://www.dailyshincho.jp/article/2024/12120555/?all=1


キャプチャ  2024年12月12日号掲載

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

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George Clooney

Author:George Clooney

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