【棚橋弘至の「プロレス社長奮闘記」】(30) 動いて稼げる社長なら、時には頼れる仲間に全乗っかりも大事!
地方巡業に出ると2週間ほどかけて全国を回るのもザラなわけで。「あれ? そういえば最近、出社できてないな」と、ふと思うことがあります。社長レスラーのジレンマというべきか。プロレスラーとして現場で頑張ろうとすると出社ができない。社長としてきっちり仕事をする為には、会社に行きたい(※社会人2年生で社内SNSに重要案件が未読のまま溜まりがちな棚橋に、テレワークはレベルが高い)。
レスラーとして頑張りたい棚橋、社長として頑張りたい棚橋…。これはベクトルとして真逆な気がしてきたわけです。なるほど。これは、いつぞや勉強して覚えた“利益相反”ってやつでしょうか。これは捨て置けない事態です。では、其々の行動の何が利益になって、何が不利益になるのだろうか?
プロレスラーとして試合に出ると、会場を盛り上げることができます。また、サイン会等をやれば、会場で多くのファンの方々に、より一層グッズをご購入いただけます。棚橋は今年、現役ラストイヤーですから、ご祝儀効果もあり、「引退前の生棚橋を見たい!」というお客様が挙って観に来て下さります。
しかし! 一方で棚橋が社長として出社できない不利益を考えてみると、これも非常に大きくてですね。…あれ? 今のところ特にない。事案の承認印等は、我が社の頼れる長老・菅林会長に代行していただける。社内会議等はベテランの副社長・松本さんがほぼ仕切ってくれている。社内の活気づけは活気溢れる若手社員達がしてくれている。
ああ、何て頼もしい布陣。ありがたいことに、「棚橋は今年一年、精いっぱいプロレスラーとして生きてこい!」というバックアップ態勢が、いつの間にか完成していたのでした。いやぁ、素晴らしい。
さて、『新日本プロレス』の社内規定によると、利益相反の取引を行なう場合は株主総会や取締役会で承認を受ける必要があるんですって。承認を受けた記憶はないので、やはり棚橋の社長とプロレスラーは、利益相反には当たっていないということでしょう。「いやいや、待てよ。抑も、社長として出社していなくても、新日本プロレス事務所には何の支障も出ていないって、いいのか棚橋。プライドはどこへ行ったんだ?」。そんな心の中の“リトル棚橋”の声も聞こえますが、今だけはご勘弁願おうかと。
頼れる仲間には全乗っかりも、時には大事です。もう少し落ち着いたら社長業務もバリバリやりますから! 今暫くは動けて稼げる社長の利点を生かして、現場で利益追求させていただきます。勿論、巡業が続いた時や大事なイベント前には社内SNSに全社メッセージを発信。共通認識の形成を図っていますよ。ああ、それにしても、早く頼れる社長になりたい…。
棚橋弘至(たなはし・ひろし) 『新日本プロレスリング』代表取締役社長兼レスラー。1976年、岐阜県生まれ。立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入寮。得意技はハイフライフロー。著書に『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』(飛鳥新社)・『カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの“復活力”』(マガジンハウス)等。
2025年3月4日号掲載
レスラーとして頑張りたい棚橋、社長として頑張りたい棚橋…。これはベクトルとして真逆な気がしてきたわけです。なるほど。これは、いつぞや勉強して覚えた“利益相反”ってやつでしょうか。これは捨て置けない事態です。では、其々の行動の何が利益になって、何が不利益になるのだろうか?
プロレスラーとして試合に出ると、会場を盛り上げることができます。また、サイン会等をやれば、会場で多くのファンの方々に、より一層グッズをご購入いただけます。棚橋は今年、現役ラストイヤーですから、ご祝儀効果もあり、「引退前の生棚橋を見たい!」というお客様が挙って観に来て下さります。
しかし! 一方で棚橋が社長として出社できない不利益を考えてみると、これも非常に大きくてですね。…あれ? 今のところ特にない。事案の承認印等は、我が社の頼れる長老・菅林会長に代行していただける。社内会議等はベテランの副社長・松本さんがほぼ仕切ってくれている。社内の活気づけは活気溢れる若手社員達がしてくれている。
ああ、何て頼もしい布陣。ありがたいことに、「棚橋は今年一年、精いっぱいプロレスラーとして生きてこい!」というバックアップ態勢が、いつの間にか完成していたのでした。いやぁ、素晴らしい。
さて、『新日本プロレス』の社内規定によると、利益相反の取引を行なう場合は株主総会や取締役会で承認を受ける必要があるんですって。承認を受けた記憶はないので、やはり棚橋の社長とプロレスラーは、利益相反には当たっていないということでしょう。「いやいや、待てよ。抑も、社長として出社していなくても、新日本プロレス事務所には何の支障も出ていないって、いいのか棚橋。プライドはどこへ行ったんだ?」。そんな心の中の“リトル棚橋”の声も聞こえますが、今だけはご勘弁願おうかと。
頼れる仲間には全乗っかりも、時には大事です。もう少し落ち着いたら社長業務もバリバリやりますから! 今暫くは動けて稼げる社長の利点を生かして、現場で利益追求させていただきます。勿論、巡業が続いた時や大事なイベント前には社内SNSに全社メッセージを発信。共通認識の形成を図っていますよ。ああ、それにしても、早く頼れる社長になりたい…。
棚橋弘至(たなはし・ひろし) 『新日本プロレスリング』代表取締役社長兼レスラー。1976年、岐阜県生まれ。立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入寮。得意技はハイフライフロー。著書に『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』(飛鳥新社)・『カウント2.9から立ち上がれ 逆境からの“復活力”』(マガジンハウス)等。
