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信賞必罰・スッポン営業、『大和ハウス』売上3兆円の秘密――10年で売上高・利益とも約2倍、雰囲気は“軍隊”・“中小企業”

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JRの最寄り駅から車で約10分。千葉県内の住宅街の一角に、“ダイワハウス”と書かれたシートで囲った建設現場があった。広さは約2300㎡。「ここは賃貸アパートが建つ予定。向こうにオフィスビルが見えるでしょ。あれも大和ハウスが建てた」。嘗て、地元で農業を営んでいた為、広大な土地を所有する須藤覚氏・作一氏親子(右画像)はそう語る。須藤親子と『大和ハウス』の付き合いは、約40年にも上る。1970年代後半。所有する別の土地をどう活用するかに悩んでいた覚氏の元を、「倉庫を作りませんか?」と大和ハウスの営業マンが訪ねてきた。「大通りに近く、倉庫にすれば『借りたい』という企業は多い筈。安定した賃料が入りますよ」。何度も足を運んでは熱心に説明する営業マンに心を動かされ、1982年に倉庫を建設したのが最初だ。この倉庫は今、店舗に姿を変え、ドラッグストアが営業している。県内にある別の土地は、先ず中華料理店の店舗にしたが、その後はオフィスビルに建て替えた。賃貸アパート経営には乗り気ではなかったが、「相続税対策に有効」という提案を受け入れ、今や保有物件数は建設中のものを含めて14棟にも上る。合計2万㎡はある土地の約7割で、大和ハウスが物件を建てた。大和ハウスの今年3月期の連結売上高は3兆4600億円、営業利益は2800億円の見通し。この6年間で売上高は9割増、営業利益は2.4倍に増える。売上高の伸び率は、1兆円を超える内需企業の中でトップ。外需企業と比べても、『富士重工業』・『村田製作所』に次ぐ大きさだ。人口減少等、国内住宅市場を取り巻く環境が厳しさを増す中でのこの成長は、異様と言ってもいいだろう。

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住宅業界で比較すると、大和ハウスの飛躍ぶりはより鮮明だ。同じ6年間で、『積水ハウス』と『住友林業』の売上高は共に3割増に止まる。千葉の須藤親子に対するように、商業施設やオフィスビル等、住宅以外の用途を幅広く提案できるのが成長率の差となっている。「祖業の住宅以外の分野に注力し、今や同じ土俵で勝負していない」(大手住宅メーカー幹部)。不動産・住宅企業の多くは、物件を一度建てたら、顧客との付き合いはそれで終わりにしがち。しかし、大和ハウスはとことん付き合う。この深い付き合いを可能にしているのが、顧客の地主向けに定期的に開く“オーナー会”だ。今月17日。オーナー会の初詣イベントが東京都内で開かれた。集まった土地オーナーは、永田町の日枝神社にお参りし、近くのホテルで食事。その後、皇居東御苑を散策した。オーナー会は初詣以外にも、税理士や司法書士を呼んでの相続税対策セミナーや、食事・観劇等、様々な催しを開く。2015年には土地オーナーの夫人等、女性限定のハワイ旅行を企画。夫人らは、浴衣姿で街を練り歩いた。他の住宅メーカーにも土地オーナー向けの親睦会はあるが、大和ハウスの徹底ぶりは抜きん出ている。大和ハウスは、オーナーとの密な意見交換を通じて、保有・運営する物件の最近の悩みや、地域の経済情勢を把握できる。周辺の地主が持つ土地の活用の話も入り易い。こうして一度、物件を建てた土地でも、より有効な活用策が見つかれば別の物件への建て替えを勧める。顧客に対して広く、深く──。食いついたら離さない“スッポン営業”が、大和ハウスの急成長を支える。相手は土地オーナーばかりではない。保有する土地の有効活用に悩む企業にもあの手この手の提案をし、ビジネスに繋げている。神奈川県の工場跡地の活用に頭を悩ませていたメーカーに対しては、車を使ったアクセスの良さや、近くに競合する施設が少ないことを考えて、ショッピングセンターを提案し、開発。テナントのパチンコ店が抜けた後のビルの活用を考えていた大阪府の会社に対しては、ビルを増築。前面をガラス張りにして明るい雰囲気に変え、食品スーパーを新たなテナントとして誘致した。街の雰囲気や人の流れをも変えかねないような提案営業。何故、これほど猛烈な攻勢をかけるのか。JR大阪駅近くにある大阪本社15階の役員フロア。この一角に、喫煙スペースとして活用する会議室(通称“たばこ部屋”)がある。足を踏み入れると、そこには驚くべき光景が広がる。

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テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(31) “水とダイヤの逆説”を唱えたジョン・ローの天才的発想

人間が生きていくのに、水は欠かせない重要な物質である。ところが、美しいけれども必要不可欠とは言えないダイヤモンドが高価で、水が安価なのは何故だろう? これは、交換価値と使用価値が必ずしも一致せず、“希少性”こそが価格を決定するからである。例えば、水に不自由を感じない地域では、ダイヤモンドは非常に高い交換価値を持ち、高価で取引される。しかし、水の無い砂漠では、ダイヤモンドより水が貴重で高価となるかもしれない。つまり、通常、ダイヤモンドは希少性が高いから高価で、水は希少性が低くて低価格だということである。“希少性”は物の供給に対して需用が多ければ増し、交換価値が高くなる。この“希少性”は、経済学の基礎となる。この理論については、『国富論』で有名なイギリスの経済学者であるアダム・スミスが、“水とダイヤモンドのパラドックス”として説いたとされている。だが、アダム・スミスより遥か50年も前に、スコットランドの経済思想家であるジョン・ローは“希少価値論”を提唱している。このジョン・ローこそ、近代のリフレ政策を考案・実行した人物なのである。ジョン・ローは1671年、スコットランドのゴールド・スミス・バンカーの家に生まれた。ゴールド・スミスとは金細工職人のファミリーネームで、スミスはアングロサクソン語(古英語)の“職人”という意味である。鍛治屋はブラック・スミス、銀細工職人はシルバー・スミスというように、職種が姓になっている。アメリカのスミス姓は、ヨーロッパから大量に移民した鍛治屋がルーツである。ゴールド・スミスは、金を保管する堅牢な大型金庫を持っていた。その為、客の金を預かる“金保管業務”が自然に発生する。

この時に発行する金の預かり証が“ゴールド・スミス・ノート”だった。これは、現在のSKR(金保管証券)に当たる。ゴールド・スミス・ノートは、いつしか交換の手段に使われるようになっていった。“銀行券”の始まりである。そこでゴールド・スミスは、保管された金が引き出されることが少ないことに気付き、金の貸し出し業務を始める。その為、保管している金の量より多くのゴールド・スミス・ノートが発行されていった。この頃にはゴールド・スミスの信用は高く、金の保管に関わらず、自らの責任でゴールド・スミス・ノートを発行するようになっていた。これが、『ゴールド・スミス・バンク』と呼ばれる近代的な銀行の始まりである。現在の銀行も、保有する金より多くのSKRを発行し、貸し出すことで手数料を得ているのは、17世記と全く同じ構図なのだ。ジョン・ローは父親の死後、その遺産で放蕩生活をしていた。ところが、イギリスで殺人事件を起こし、絞首刑を宣告されるも逃亡。その後、ヨーロッパを転々とした後、財政難に喘いでいたフランスに辿り着く。彼は先ず、王立銀行を設立して王室銀行券を発行。その紙幣を国が借り入れ、国債の償還に充てた。それと同時に、出回った紙幣を吸収する為、『ミシシッピ会社』という実態の無い金鉱探査の政府系企業を創った。そして、ミシシッピ会社の株を売り、国債を株券に変えていった。現在のセキュタイゼーション(証券化)業務である。実態の無い会社だったが、金鉱という架空の裏付けによって株価は上昇し、国債の償還も順調に熟した。このシステムは“ミシシッピシステム”と呼ばれ、“管理通貨制度”として各国中央銀行が今も採用している。このように、現在の金融システムは、17世紀に開発されたものと基本は変わっていないのである。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年1月31日号掲載

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【刑務所のリアル】(04) 苛められても和田真一郎を信じた元エリート大学生の末路…『スーパーフリー』逮捕者・Aの悲惨な少年刑務所生活

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2003年に発覚した『スーパーフリー事件』は、早稲田大学の学生を中心とした学生サークルによる悪質な強姦事件で、集団強姦罪・集団強姦致死傷罪創設のきっかけになる等、社会に大きなインパクトを与えた。サークル内では“芸能人より有名な大学生”として崇められていた代表の和田真一郎に懲役14年、13名のサークル幹部に懲役10年から2年4ヵ月の実刑判決が確定している。その内の1人で、当時、学習院大学に通っていたAと函館少年刑務所で一緒だったという安藤誠氏(仮名・33)が、Aの刑務所での様子を詳細に教えてくれた。「自分がAと一緒だったのは、函館少刑の炊場工場です。ヤンチャなヤツらに混じって1人だけ真面目な口調でしたし、見た目も眼鏡をかけたガリ勉タイプで、明らかに浮いていました。声だけはデカいんで、『お前、うっせぇよ』とかいつも怒られていましたね」。安藤氏が配属されたのは、Aから遅れること1年。炊場内では、Aがスーパーフリーの事件で捕まったことは周知の事実だった。「2週間ぐらい経った時、『あいつはレイプ。スーフリだよ』って教えてくれるヤツがいて知りました。本人も『スーフリでは幹部だった』『週刊誌にも載ったんです』なんて言っていたし、担当の刑務官も『お前、Aが何で捕まったか知っているか?』なんて雑談のネタにしているぐらいでしたから。知らないヤツはいなかったですよ」。収容者の食事を作って運搬する炊場は、時間に追われながらの重労働を求められ、体力的に最もキツい配属先だ。配属順に役割が決まっており、新人には単純でキツい仕事が割り当てられていた。

「Aより後に入ったヤツは多いのに、間抜けで失敗ばかりしていたんで、Aは一番下っ端の洗い場をやらされていました。後から入った年下からもタメ口で、まぁ苛められていましたよ」。延長食として出される甘味物は、キツい仕事に対するご褒美だ。しかし、Aの分はというと、コーヒーの中にグチャグチャになった揚げパンが突っ込まれていたりする。炊場が嫌で態と懲罰になり、他の工場へ行きたい新人が、「何でテメェがもたついている分を俺がやんなきゃいけないんだよ!」と胸座を掴んで居直る相手も、Aの役目だった。炊場は少年刑務所のエリート工場ということあって、舎房は個人の居室と集会室を自由に出入りできる開放処遇が取られていた。「集会室で雑談とかしている時、Aは皆の暇潰しにスーフリのことを聞かれていました。Aが『パーティーを開いてですね。まぁ、自分、7番目の幹部だったんですけど』とかって言うと、他の受刑者から『お前、最初“3番目”って言っていたじゃねぇかよ』『どうなんだよ、A!』って詰められて、『すみません、見栄張っていました』とか…。兎に角、ツッコミどころが多いんですよ」。私本の購入時、Aに選択権は無い。「お前んち金持ちだから、俺らの分も宜しく」と、皆が読む雑誌を数冊買わされていた。それでもAは打たれ強く、天然なところがあり、「自分、女をバックでイカしたことがあるんです」等と余計なことを言う。すると、「じゃあ、どうやったのかやってみろ」と皆の前で腰を振らされ、この余興は飽きるまで数日続けられたという。「Aぐらいだと皆に部屋を勝手に開けられちゃうんですけど、1回、Aがズボン下げていた時があったんです。『てめぇ、センズリこいてたべ』って指摘されて、勃起してんのに『いや、違いますよ、違いますよ。デキモノができていたんで』とか言い訳して、また皆の笑い話にされたり…。まぁ、暇潰しのアイテムでした。あれだけ苛められても折れないから、『頑張ってんな』って思いましたけどね」。Aより先に出所した安藤氏だが、Aと交わしたこんな会話を覚えている。「俺が『和田さんってどうなの?』って聞いた時、目を輝かせて『いや、あの人は凄い人ですよ』って言うから、『出たらあの人について行くの?』って言ったら、Aは『はい。また和田さんのところに行きたい。一緒になんかやりたいですよ』って、和田さんを崇拝していましたね」。 (取材・文/フリーライター 池田潮)


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テーマ : 社会ニュース
ジャンル : ニュース

持っているだけでダサい端末! AndroidはiPhoneと比べ物にならない欠陥スマホだ!

iPhoneとスマホのシェアを二分しているAndroidは、実はとんでもない欠陥品だった! 使い難い、セキュリティーが甘い、そしてGalaxyに至ってはいつ爆発するかわからない危険物。そんなAndroidのクソっぷりを徹底解説する! (フリーライター 高田純一)

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2016年9月16日に発売された『iPhone7』シリーズの売れ行きが上々だ。旧モデルに比べ、デザイン面での変わり映えがしないばかりか、満を持して投入された防水・デュアルカメラ(『iPhone7Plus』)・『Suica』対応といった機能も、「やっとAndroidに追いついたか」と揶揄されたものの、『Apple』の発表によると、全世界の初回出荷分は予約だけで完売し、同社株も年初以来の高値を更新。とりわけ、新色のジェットブラックは今も尚、入荷待ちが続いているほどの人気で、このまま年末商戦に雪崩れ込みそうな勢いだ。片や、ダダ下がりなのがAndroidの評判。そのA級戦犯が、ご存知、“爆発スマホ”との異名を持つ韓国『サムスン電子』製の『Galaxyノート7』であることに異論はないだろう。発売当初からバッテリーの爆発事故が相次いだ同機は、世界中で旅客機への持ち込みが全面禁止となったばかりか、リコール対策後の交換品ですら爆発事故が発生した為、現在では生産・販売自体が中止と“残念な事態”となっている。Galaxyはスマホ黎明期、開発に出遅れていた日本メーカーを尻目に、唯一、iPhoneに対抗していたAndroid陣営の雄。そのブランド力から、嫌韓ムードが日本社会に漂う昨今ですら一般ユーザーからの支持が厚く、一時、『NTTドコモ』が“ツートップ”として大々的に販売プロモーションを行った通り、『ソニー』の『Xperia』と並ぶ国内の携帯キャリアの稼ぎ頭でもあった。謂わば、Galaxyのハイエンドモデルは、順調にアップデートしていれば間違いなく売れる端末。なのに何故、爆発事故を起こしてしまったのか? 「それがiPhoneのせいだ」と言ったら、皆さんは驚くだろうか。しかしここに、いつまでもiPhoneに敵わないAndroidの残念さが表れているのだ。

その理由は簡単。韓国でのGalaxyノート7の発売は8月19日と、例年9月に発表・発売されるiPhoneを兎に角出し抜く必要があったからだ。これは、嘗て秋にデビューしていたiPodに合わせ、夏に『ウォークマン』の新型を投入し、三日天下の売上げベストをマークしていたソニーと同じ不甲斐なさ。王者のAppleに先んじる為、何が何でも夏にはリリースしなくてはならない――。Galaxyノート7が“バッテリー爆発機能付き”という恐怖のスペックを備えることとなった背景は、「安全に纏わる十分な開発や検証の時間を確保できなかったから」とも推測できるのだ。その証拠に、Galaxyノート7は、イメージ面でもiPhone7に引けを取らないよう、先代モデルの『Galaxyノート5』から“6”を飛ばして、一気に7とナンバリング。未だサムスンが“追いつけ追い越せ”の姿勢でiPhoneを意識していることが窺えるだろう。残念なのはサムスンだけではない。中国製を中心に、iPhoneのデザインやネーミングをパクったようなスマホは、相変わらず市場に溢れている。尚且つ、6月には北京市知的財産権局が「iPhone6が佰利公司のスマホ“100c”を模倣している」として、iPhoneの販売禁止を命じたのを始め、8月には同じ北京市の高級人民法院が“IPHONE”の商標権を中国企業に認める等、国を挙げてそのブランド力に乗っかっている始末。如何にも中国らしいエピソードだが、我々日本人も笑っている場合ではない。9月に『ロイター通信』が報じたところによると、公正取引委員会が独占禁止法違反でAppleを捜査する可能性があるという。大手3キャリアが等しく廉売しているiPhoneを取り締まるのが大義名分とのことだが、全く魅力が無く、売れ行きが悪い国産スマホを援護射撃する為の“Apple苛め”といった見方もある。しかし何故、こうもAndroidは残念なのか。普段、iPhoneの恩恵に与っている人ほど、家族や友人から「iPhoneとAndroidのどっちがいいの?」と改まって訊ねられると、モゴモゴと口籠ってしまうのではないだろうか。そんな時、「素直にiPhoneにしておけば間違いない」と断言できるよう、そのポイントを整理したい。先ず挙げられるのが、一口に“Android”といっても、メーカーや端末によって、ハードウェア、ユーザーインターフェイス(使い勝手や操作性)、プリインストールアプリに至るまで仕様がバラバラで、最悪の場合、対応要件を満たしているアプリでも動かない場合がある点だ。iPhoneと違い、膨大なモデルが存在するAndroidスマホだけに、アプリメーカーが動作状況をチェックできるのは、世界的に売れている一部の端末のみだからだ。

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【オトナの形を語ろう】(10) 己以外に一切頼らない“無頼”という生き方

今週は、この連載の担当者のS君が「“無頼”について話してほしい」というので、“無頼”を書く。この頃は、街場をうろついていても、「あれが“無頼”だ」という男に逢うことは殆どなくなったし、“無頼”という言葉さえが消えようとしている。一昔前の世間の印象だと、無頼な連中は何か滅茶苦茶なことをして生きている人たちに思われたが、そんなことはない。無頼だからといって、理由も無く他人に暴力を振るったり、見ず知らずの他人を傷付けるようなことはしない。寧ろその逆で、本当に無頼としてしか生きられなかった男は、静かで、大人しい生き方をしている人のほうが多かった。ただ、無頼の連中が、結果として起こした行動だけを見ると、「とても普通の人間ができる行動ではない」と思われただけだ。その行動とて、一生の間に一度、二度あるくらいである。私が見てきた“無頼”の話をしよう。先ず、“無頼”とは読んで字の如く、頼るもの無しである。“頼りない”とは違う。頼るもの、頼る者、人を含めて、「己以外の他人・物事に一切頼る生き方をしない」ということだ。しかし今、君たちが生きている社会と、日々の暮らしを見てみれば、あらゆるものに頼らない生き方ができるか? いや、そうじゃなくて、「そういう生き方が可能か?」と問えば、それは普通できないのである。

何故、そんな風に生きるのか? それは、当人がこの世に「オギャーッ」と生まれて、誰かに育ててもらい、誰かに飯を食べさせてもらい、誰かに“生きるとは何事か”を教えてもらい、そこまでしてもらってきて尚、それらの人全てに恐縮の念、“有難い”という気持ちは持った上で、それらの人との関係をも基本的に断ち、「己一人で生きていく」と決め、あらゆることを他人に頼らず生きていく男たちだからである。その生き方が楽と思われるかね? 何? 他人にとやかく言われないで静かなのは悪くない? 他人は“無頼”に対して、とやかく以上のことを口にし、バカにするものだ。そんな他人の口から出てくるものなどどうでもよくて、そんなものは端から耳に入らないのが“無頼”である。いや、他人からどう思われようが、どう言われようが、そんなことは全く当人の身体の中に入ってこないのである。それでも楽に見えるかね? そう、「よくわからない」と言うほうが、君たちの正直な感想だろう。“無頼”は、それはしんどいものである。辛いものである。ところが、私が見てきた“無頼”と呼ばれた男たちからは、微塵もしんどい・辛い・苦しいという印象は感じることがなかった。何故だろうか? 最初の内はわからなかったが、「“無頼”の内にあるものに、半端なものが何一つ無いからだ」とわかった。彼らの身体の中にある精神の強靭さは、想像を超えるものであった。

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【Test drive impression】(08) 『レクサス IS200t F SPORT』――フジトモこと藤島知子がIS主要グレードを徹底試乗!

「国産車で最もインテリジェント(知的)なメーカーは?」と問われたら、真っ先に頭に浮かぶのが『レクサス』。中でも、今回ご紹介するISは、レクサスのエモーショナルな走りを象徴する小柄なFRスポーツセダンとして、20代の若者から隠れ肉食系の男性、将又マダムの足として活躍する等、幅広い層の支持を得てきたレクサスの稼ぎ頭。フロント回りに存在感を与えるスピンドルグリルが採用されたのは、2013年にデビューした現行モデルですが、それから約3年の時を経て、昨年10月末にビッグマイナーチェンジ。変更点のハイライトは、内外装の仕様変更と走行性能のレベルアップ。中でも、走りについては自信の表れなのか、メディア試乗会は一般道だけでなく、車にとって過酷なサーキットでハンドルを握らせてくれるんですって! 外観で目に留まるのは、ワイドに低く構えて見せるグリル下部のデザイン。先進的な3眼式のLEDヘッドランプは、目を細めて遠くを見据えたような表情で、その端正な顔立ちに思わずウットリ。世知辛いご時世をスマートに生き抜くオジサマのイメージと重なる姿が、女心を擽ります。テールランプには多灯式のLEDが採用され、夜間は艶やかな後ろ姿を印象付けてくれそうです。切削高輝度処理を施した新意匠のアルミホイールは、全体をアグレッシブなイメージに。やっぱり、“お洒落は足元から”ですね。車内に乗り込んでみると、ダッシュボードの上部に埋め込まれたナビのディスプレイが10.3インチに拡大されていることに気付く。画面が広くなり、地図やオーディオ等の情報がより見易く表示されるようになったのは嬉しい。

インテリアのアクセントとなるオーナメントパネルは、本アルミの他に、温もりを感じるウォームメタルや、日本古来の名栗といった加工技術を披露する辺りも、日本の美学が息衝く高級車らしいですね。扨て、肝心の走りですが、先ずは袖ヶ浦フォレストレースウェイのコースで、『IS300h F SPORT』に試乗。2.5リッターエンジンにモーターとバッテリーを組み合わせたハイブリッド仕様ですが、車重はエントリーモデルの200tと比較すると50㎏ほど重たいものの、コーナーリングでは嫌な癖を感じさせない素直な姿勢変化を見せる辺りがお見事。重量物を車両の前後にバランスよく配置したレイアウトも効いているけど、ちょっとやそっとのことじゃタイヤが路面を捉えて離さない抜群の安定性、連続走行でもヘコタレないブレーキも信頼感の高さを感じさせます。但し、アクセルを踏み込んだ加速時は少しのっそりとした印象で、瞬発力を期待するならV6の3.5リッターのIS350か、IS200tのほうがオススメと言えそう。ハイブリッドはモーターの後押しが得られる強みがあるけど、どちらかというと一般道や高速道路でゆったり流す時のほうが、静けさや快適性の面でメリットが光りそうですね。いやはや、それにしても驚かされたのは、操縦安定性が大幅に向上していたこと。今回のマイチェンでは、ドライバーが安心して気持ち良く車を操縦できるように、“感性”で感じ取れる領域を磨き上げていて、足回りはフロントサスペンションのロアアームをアルミ材に変更して、剛性アップと軽量化を両立。更には、スプリングブッシュの特性、電動パワステのチューニングを最適化する等、ボディーの上屋の動きはフラットに、足はしなやかに動くことで、意のままに車を操縦していけるFRらしい素直な走りを実現してくれていました。

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ジャンル : 車・バイク

【Jazzyの裁判傍聴ライフ】(25) 法廷で大号泣! 感情表現豊かな外国人

私が主に傍聴している東京都内の裁判所で裁かれる被告人は、実に多国籍! アジアや北中南米、更にはヨーロッパ、アフリカ諸国まで。殆どの外国人被告人には“法廷通訳人”が付くので、被告人は自国の言葉でコミュニケーションを取ることができ、日本人の証人が出廷した場合、その証言内容は随時訳されて、正確に伝えられます。そんな外国人被告人の公判では、日本人ではあり得ないようなリアクションで驚かされることが結構あるのです! ストーカー規制法違反の罪に問われた韓国人の女(20代)は、好意を抱いた日本人男性に対してメールを送ったり、職場から出てきた男性の後をつけて同じ電車に乗る等の付き纏い行為を、1年以上繰り返しました。初めのうちは冷静に質問に答えていた被告人ですが、家族のことを聞かれると感情が抑えられなくなり…突然号泣! 「わ―――――――ん!」。女は物凄い大声で泣き叫び、証言台に顔を伏せました! それでも裁判長は続けます。「2ヵ月間勾留されていますが、韓国にいる家族とは連絡を取っていないんですね?」「わ―――――――ん!」「今後、日本に来るつもりは無いですね?」「わ―――――――ん!」。裁判長は相当面倒臭そうに、「被告人質問を終わります」。子供の号泣よりも酷いやつでした。大人があそこまで取り乱すとはビックリ!

続いては、物凄い挙動不審のアフリカ系被告人。ビクビク、オドオドしながら入廷。これから殺されるかのようなビビりっぷりです! 彼は路上で20代の女性の頬にキスをし、着衣の上から陰部を触り、強制わいせつ罪で起訴されました。生年月日は「わからない」と答えましたが、見た目は30代でしょうか。日本人の妻がいるそうです。罪状認否では、日本語で「スイマセン、ゴメンナサイ!」といきなり泣いちゃいました。彼の母国の公用語であるフランス語の通訳人が付きましたが、あまりフランス語はわからない模様。審理が全然進まず、通訳人(女性)は終始キレ気味です! 「前に捕まったことは?」「1日オサケ飲む、グループのトコロ、オレはタタカレタ、警察があとでキタ、警察にイッタ、翌朝カエサレタ、その後、オレ、飲むのヤメタ」…何の話やねん!(笑) その後、事件のことを聞かれると…。「オレがやったこと本当にヨクナイ。オレはみんなを許す。もし出たら働く、お金払う。許してクダサイ!」。続く反対質問では、検察官が強めの口調で「女性にしたことをどう思っている?」と聞くと、「許してほしい。許して~!」と泣き出して床に! 私の位置からはその姿を確認できませんでしたが、恐らく命乞いスタイルで跪いて懇願! 証言台から勝手に離れた被告人を見たのは、この時が初めて! 論告・弁論が終わり、最終陳述では「オレは悪い犯罪者じゃない。働いてお金を払う、許してほしい。イッパイ後悔している。許して! もうヤラナイ、誓うよ。許して!」等と、かなりしつこく許しを求めました。どちらの被告人も初犯ということで、執行猶予付きの有罪判決に。号泣や懇願の効果があったということではないですよ~。


キャプチャ  2017年2月6日号掲載

テーマ : 刑事事件・裁判関連ニュース
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【それはハッカーが知っている】(29) ハッカーたちの世界大会、その実態とは?

海外ではゲームやドローンレースの世界大会が開催され、賞金総額は1億円オーバー! その模様はオンライン中継される等、人気コンテンツとなっていたりする。

――では、ハッカーの世界では、このような世界大会的なのってあるのでしょうか?
石川「最も有名な大会は、毎年、ラスベガスで開催されるコンピューターセキュリティーの会議“DEF CON”で行われる“CTF”ですね」

――何を競うんですか?
石川「サーバー内の脆弱性をチェックし、修正します。又は、ウイルスを送り込んで作業を妨害したりもします。そのようなことをしながら、サーバー内の“フラッグ”を回収する競技です。これはチーム同士の戦いで行われます。ラスベガスの大会が一番有名ですが、現在は世界各地でCTFが開催されていますね」

――因みに、ゲームやドローンレースのように、賞金もありだったりするのでしょうか?
石川「例えば、アメリカ国防総省で兵器の研究開発を行う組織である国防高等研究計画局(DARPA)が主催する大会ですと、賞金総額が3億円以上というのもあります」

――すっごいじゃないですか!
石川「魅力なのは賞金だけでなく、就職活動にも有利なんですよ。世界有数のIT企業は勿論、CIAやNSAのスカウトたちも熱い視線を送っていますからね。知り合いの日本人は、FBIからスカウトされていましたよ(笑)」

――えっ、これって日本人も参加しているんですか?
石川「例えば、マレーシアで開催されたCTFの大会では、2011・2012年で日本人チームが2連覇しています。他の国際大会でも優勝したり、上位に入る日本人チームは多いですね。よく国内では、『日本人はハッキング分野で遅れている』と言う識者がいますけど、私の感覚だと技術的に遅れていることはありません。ただ、近年、活躍が目立つ中国人や欧米人のように、大会で『俺が! 俺が!』とアピールするのが下手で、今一目立たないという印象ですね」

――国内でも、このような大会は行われているのでしょうか?
石川「“CTFチャレンジジャパン”というのがあって、日本の有名な情報セキュリティー会社の社長が率いるチームが優勝しました。レベルはかなり高いと思います。残念ながら現在は、この大会はやっていないんですけどね」

――このような大会が国内で盛り上がると、ハッカーに対する認識も変わってくるんでしょうね。
石川「ホワイトハッカーの公的な資格とも言える“情報処理安全確保支援士”の試験が、今年から始まります。初年度なので資格も取り易いと思います。興味ある方は挑戦してはどうでしょうか」

――是非、石川さんも受験を!
石川「僕は試験問題を考える側に採用されてしまったので、受験資格が無いのですよ(笑)」


石川英治(いしかわ・ひではる) 『東日本インターネット事業協同組合』理事。1969年、埼玉県生まれ。『西武鉄道』退社後、弁護士秘書・外車販売・訪問販売等の職を経て起業。1998年までハッカーグループ『UGTOP』の主催者として活動。1998年に実業家として、日本初のインターネットセキュリティー専門会社『アルテミス』を起業。2000年から2011年まで携帯電話公式コンテンツを運営する『サイバーエデン』を起業。著書に『まるわかりカジノ読本』(廣済堂ベストムック)・『子どもたちが危ない!スマホの現実』(ロングセラーズ)等。


キャプチャ  2017年2月6日号掲載

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【Global Economy】(21) トランプ政権の通商政策…アメリカの保護主義、蘇る亡霊

アメリカのドナルド・トランプ大統領が、国内産業を過剰に守ろうとする保護主義の姿勢を強めている。アメリカの通商史を振り返ると、実は3度目の“いつか来た道”であることがわかる。 (本紙経済部デスク 小谷野太郎)

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「労働者が再び生活水準を維持し、慣れ親しんだ分野で安定した雇用に就けるようにする」――。これは、トランプ大統領の発言ではない。今から約90年前の1928年、アメリカのハーバート・フーヴァー商務長官が農民に呼び掛けた言葉だ。当時、世界的に農産物が供給過剰になり、アメリカでも穀物価格が急落。農家が次々と廃業した。翌1929年に起きたニューヨーク株式市場の株価大暴落をきっかけに世界恐慌に陥ると、アメリカ国民から不満が噴出した。「国内産業を輸入品から守る為、関税を引き上げるべきだ」。アメリカ議会のリード・スムート、ウィリス・ホーレー両議員は、輸入する農産品や工業品の関税を大幅に上げる『スムートホーレー関税法案』を起草した。アメリカの経済学者は、保護主義が齎す悪影響を懸念した。1028人もの学者が、法案否決を訴える嘆願書に署名した。それでも、国民の声に押された議会は、1930年に法案を可決。大統領に就任したフーヴァーも署名した。1933年には、アメリカ政府は原則としてアメリカ製品のみを買う『バイアメリ力ン法』も成立した。アメリカに輸出し難くなった諸外国では、報復措置が広がった。イギリスやカナダ等の英連邦は、域内の関税を下げる一方、城外からの輸入関税を高くする特恵関税制度を強化した。地域毎に排外的なグループを作る“ブロック化”が進み、世界の貿易量は数年で3分の1に激減した。新たな市場や資源を軍事力で奪おうとする動きが強まり、世界は第2次世界大戦へと向かっていった。この反省から、戦後の社会は自由貿易の推進に取り組んだ。1948年には、多国間で貿易の障壁を取り除く交渉をする『関税質易一般協定(GATT)』が発足した。だが、1970年代の石油危機で世界的に景気が落ち込むと、アメリカで保護主義が再び頭を擡げた。日本車を標的にした日米貿易摩擦だ。

当時、日本の自動車メーカーは石油危機に対応する為、低燃費の小型車を次々と開発。対米輸出を年率10~20%の高い伸びで急拡大させていた。対するアメリカ大手3社(ビッグスリー)の車は大型で、“ガスガズラー(ガソリンばかり大量に消費する車)”と呼ばれ、業績が悪化した。1980年には、3社のレイオフ(一時解雇)が計25万人にも及んだ。アメリカ政府は日本に対し、輸出の自主規制や、アメリカでの生産を求める政治的圧力を強めた。当時のマイケル・マンスフィールド駐日大使は、「爆弾の導火線に火が点いた」と日本を恫喝した。日本政府は1981年、自動車の対米輸出の自主規制に踏み切り、『ホンダ』や『日産自動車』等はアメリカでの現地生産を始めた。この“成功体験”をきっかけに、アメリカの対日要求はエスカレートし、その後は半導体や工作機械等でも輸出規制を求めた。しかし、アメリカ車の不振は、アメリカの消費者が小型車を求めた結果だ。企業努力の不足を棚に上げて政府に泣きつき、一時的に業績を回復したところで、長続きする筈もない。実際、今やアメリカの新車市場で、日本勢は4割近いシェア(占有率)を誇る。『ゼネラルモーターズ(GM)』は2009年に経営破綻し、『クライスラー』は『ライアット』との提携で生き延びる等、ビッグスリーは苦境が続いた。現在のアメリカは、1930年代・1980年代の亡霊が蘇ったかのようだ。トランプ大統領は「バイアメリカン」(アメリカ製品を買おう)と叫び、『環太平洋経済連携協定(TPP)』から離脱する大統領令に署名した。今後は2国間の協定交渉を進め、貿易相手国に“是正”を求める考えも示した。メキシコ国境沿いに壁も建設する。トランプ大統領が自動車産業を頻りに守ろうとする背後には、ビッグスリーの一角である『フォードモーター』の影もちらつく。1930年代の世界恐慌の研究で知られる経済学者のチャールズ・キンドルバーガーは、「各国が個別の国益の擁護に転じた時、世界全体の利益は失われた」と指摘した。慶應義塾大学の渡辺頼純教授は、「トランプ政権の姿勢は、1980年代への逆戻りだ。不必要な貿易摩擦に世界全体を引きずり込む恐れがある」と語る。昨年にかけてTPPの協議が進んだ際、日本国内では農産物の輸入増に対応できるよう、農業の競争力強化の検討が進んだ。貿易の自由化は、その国の得意な生産物の輸出が増えるメリットと同時に、競争力の弱い国内産業に努力を促す効果も齎す。国民の不満の矛先を海外に向ける手法は、国内で痛みを伴う改革を必要としない為、為政者が国民の支持を保つのに手っ取り早いやり方だ。しかし、保護主義の広がりは世界の経済を停滞させ、“いつか来た道”となる恐れがある。

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【科学捜査フロントライン】(09) 性能・解析技術が劇的向上…これが最先端の防犯・監視カメラだ!

繁華街等を中心に、その数が増え続けている防犯・監視カメラ。警察だけでなく、民間業者も設置し、その数は全国で300万台を超えると言われている。解析技術も向上し、容疑者の特定等に役立っている。そんな最新技術の数々を紹介しよう。 (取材・文/フリーライター 青木康洋)

20170130 07
現代社会、特に都市部では、昔に比べて人間関係が希薄になってきている。その為、「以前より目撃証言が集まり難くなった」と語る捜査関係者は少なくない。そのような状況の中で重要視されているのが、防犯・監視カメラの映像記録である。警察が“街頭防犯カメラ”として設置しているのは、2012年3月末時点で全国16都道府県に791台。最も多いのは大阪府の204台で、警視庁管内には港区六本木や新宿区歌舞伎町等、主な繁華街5ヵ所に計185台が設置されている。では、民間のものも含めて、日本全国に合計何台の防犯・監視カメラが設置されているのかといえば、正確な実数を把握することは難しい。しかし、少なく見積もっても300万台以上が置かれていることは間違いない。2008年、ある防犯・監視カメラメーカーが、生産や出荷の統計を基に、「日本の監視カメラ台数は約350万台」という数値を発表したことがある。これが事実なら、凡そ人口36人につき1台の防犯・監視カメラがある計算になる。まさに“神の目”である。防犯・監視カメラの設置目的は、その名が示すように犯罪の抑止にある。高速道路等に設置されている自動速度違反取締装置(通称“オービス”)は、1980年代から日本に導入されたが、フィルム式の古いタイプのまま設置されているところも未だにある。フィルム式オービスの場合、所定の枚数を撮影し切ってしまうと違反者の感知はできないが、それでもスピード違反の抑止効果はある。ダミーのオービスが設置されているだけで、ドライバーには「スピードを控えよう」という心理が働くからだ。防犯・監視カメラの場合にもこれと同じ効果があり、設置されているだけで犯罪が抑止されるのは間違いない。だが、そういった犯罪抑止効果だけではなく、最近では「犯罪捜査や容疑者の検挙に、積極的に監視・防犯カメラを活用しよう」という動きが急速に強まっているのだ。カメラそのものの性能も、従来に比べて飛躍的に進化し、最新の技術が組み込まれようとしている。そういった最新技術を幾つか紹介しよう。

2011年3月から、警視庁は民間業者が設置している防犯・監視カメラの映像と、警視庁が所有している手配被疑者らの画像を自動照合するプログラムの試験運用を始めた。従来も、犯罪捜査に防犯監視カメラの映像は使われてきたが、事件毎に捜査員が映像を個別にかき集めていたのである。多くのケースでは、カメラの所有者から映像データの任意提出を受けていた。しかし、「これではスピーディーな犯罪捜査に問題がある」との指摘は、以前からなされていた。2008年、東京都は『“10年後の東京”への実行プログラム2009』という施策を発表。この中の“最先端技術の活用と官民パートナーシップの構築によるテロ対策”に基づいて警視庁が取り組みを示したのが、『非常時映像伝送システム』である。民間の防犯カメラの映像を、緊急時に警視庁に送信するシステムだ。警視庁警備1課によれば、銀行等の金融機関から警察に事件現場の様子を静止画像で送信するシステムは既に導入済みだが、動画の送信は新しい試みだという。送信対象は大規模災害やテロ通り魔等、多数の死者が出ることが想定される事件・事故に限定されるという。事件情報が入り次第、警視庁が民間に動画の送信を要請。送信の可否は民間側が決めるとされている。飽く迄も迅速な初動捜査が目的なので、警視庁側が録画することはできず、また事態が収束し次第、民間側からの送信もストップされるという。先ずは『東京メトロ』の数ヵ所の駅をモデル地区に指定し、試験運用から始める。東京メトロの全路線に設置されているカメラは約6500台。何れは、防犯・監視カメラの映像を一元的に警視庁と連動させることが企図されているのだ。2020年に開催予定の東京オリンピックでのテロ対策にも期待が寄せられている。人の歩き方には個性が出る。腕の振り幅・歩幅・姿勢等に特徴が現れるので、個人の特定が可能になる。これは『歩容認証システム』(左上画像)と言われ、現在、警察庁の『科学警察研究所』(以下“科警研”)で導入に向けて開発が進んでいる。同システムの長所は、低解像度の映像からでも個人を特定できる点にある。現在設置されている監視・防犯カメラは、殆どが高所から広角のレンズで撮影するタイプだ。民間の鑑定機関である『法科学鑑定研究所』の冨田光貴所長は、「防犯・監視カメラの映像は見下ろす角度で撮影したものが多く、髪の毛に隠れてしまうので、顔を全て捉えるのは難しい」と明かしている。しかし、人間の歩き方の鑑定なら、遠距離から撮影した映像でも個人の特定が可能になる。映像から顔で個人を特定する為には、カメラから10m以内で撮影されていなければ難しいが、“歩容”なら50m先に写っている人間であっても識別できるのだ。警視庁のある捜査員は、こう明かす。「天候は勿論、夜間に撮影された映像では、顔の識別・着衣・所持品の特定も難しい。しかし、歩き方なら不鮮明な映像であっても個人を特定できる上、たった2歩分の映像があれば十分解析が可能です」。

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