【永田町LIVE】(15) “カネ”呪縛、派閥解散ゼロ…「総裁選が近づけば再結集も」、野党は“偽装”批判
岸田文雄首相が岸田派(※宏池会)の解散検討を宣言してから3ヵ月余りが経過した。これまでに、自民党6派閥のうち麻生派を除く、岸田、二階、安倍、森山、茂木の5派閥が政治団体の解散を決定したが、正式に解散手続きをした派閥はゼロだ。表立った活動は停止したが、派閥の再結集の“核”は残り続ける状況に、野党は「偽装解散だ」との批判を強めている。何故、各派閥は政治団体の解散に踏み切らないのか? (取材・文/政治部 野間口陽・遠藤修平・高橋祐貴)
派閥解散の先陣を切る形になった岸田派は、自民党本部近くにある派閥事務所の閉鎖に向けて、事務所の備品の処理等を進めている。だが、賃貸物件の事務所は退去に“6ヵ月前の通知”が必要。実際の閉鎖は6月以降となる見込みだ。閉鎖に向けて、派閥幹部が役員会や“密談”の場として使っていた小会議室を取り壊す等、“原状回復”に向けた改装工事も進める予定だ。政治団体『宏池政策研究会』の解散には、解散届の提出と共に、今年分の政治資金収支報告書の提出が必要となる。宏池会事務局は、「改装等事務所閉鎖にかかった費用も含めて収支報告書に記載し、提出しなければならない。ある程度、時間がかかるのは仕方がない」と理解を求める。更なる理由もある。解散の遅れには、政治団体の“残金”の処分方法が決まっていないという事情も影響している。宏池政策研究会の公開済みの収支報告書によると、2022年末の繰越額は7833万円。参議院予算委員会で立憲民主党の辻元清美氏から“派閥の財産処理”を問われた岸田首相は、「様々な議論がある。適切に政治団体として判断する」と躱したが、辻元氏は「偽装解散だ。お金をどうするかだ。口だけで解散すると言ってもだめだ」と畳みかけた。裏金事件の震源地となった安倍派では清算管理委員会を設置し、派閥の残務処理を進めている。6月で派閥事務所は閉鎖する方針だが、正式な解散時期は未定のままだ。2022年時点の繰越額が1億6199万円にも上る“派閥のカネ”について、残額や処理方法が確定していない為だ。今後、安倍派では立件された事務局長の裁判が控えており、裁判費用を派閥として支出することも想定される。どれだけのお金が残ったかが確定するには、未だ時間がかかる状況だ。2月1日に開催した派閥最後の総会では、残った財産について「仮に残った場合は公的機関に寄付等をする」ことで纏まったものの、具体的な寄付先は決まっていない。派閥関係者からは「解散は来年になるだろう」との声も漏れる。二階派も事情は同じで、派閥関係者は「残ったカネをどうするかだ」と頭を悩ませている。2022年の繰越額は1億7056万円。派閥事務所の賃料や事務員の人件費、裁判費用等を差し引いた残高については、所属議員で「山分けすればいい」との案も上がるが、意見集約はこれからだ。自民派閥には解散と復活を繰り返してきた歴史がある。自民の金権政治への批判が高まった1994年にも、当時の宮沢派(※宏池会)、小渕派(※平成政治研究会)、三塚派(※清和会)等5派閥が解散を宣言したが、翌1995年の党総裁選で派閥化の流れが強まり、結果的に復活した。党総裁選は今年9月にも実施されるだけに、「曖昧な形にしつつ、総裁選が近づけば再結集という形をとるのではないか」(党ベテラン)との観測は消えない。残務処理の多さを理由に、総裁選の動きが本格化するのを待っているようにも映る。ある派閥の関係者は、「清算団体を別に作って、残高をプールしておけばいい。派閥を解散しても、どうせまた人は集まる。そういう時が必ず来る」と語った。
2024年4月23日付掲載
派閥解散の先陣を切る形になった岸田派は、自民党本部近くにある派閥事務所の閉鎖に向けて、事務所の備品の処理等を進めている。だが、賃貸物件の事務所は退去に“6ヵ月前の通知”が必要。実際の閉鎖は6月以降となる見込みだ。閉鎖に向けて、派閥幹部が役員会や“密談”の場として使っていた小会議室を取り壊す等、“原状回復”に向けた改装工事も進める予定だ。政治団体『宏池政策研究会』の解散には、解散届の提出と共に、今年分の政治資金収支報告書の提出が必要となる。宏池会事務局は、「改装等事務所閉鎖にかかった費用も含めて収支報告書に記載し、提出しなければならない。ある程度、時間がかかるのは仕方がない」と理解を求める。更なる理由もある。解散の遅れには、政治団体の“残金”の処分方法が決まっていないという事情も影響している。宏池政策研究会の公開済みの収支報告書によると、2022年末の繰越額は7833万円。参議院予算委員会で立憲民主党の辻元清美氏から“派閥の財産処理”を問われた岸田首相は、「様々な議論がある。適切に政治団体として判断する」と躱したが、辻元氏は「偽装解散だ。お金をどうするかだ。口だけで解散すると言ってもだめだ」と畳みかけた。裏金事件の震源地となった安倍派では清算管理委員会を設置し、派閥の残務処理を進めている。6月で派閥事務所は閉鎖する方針だが、正式な解散時期は未定のままだ。2022年時点の繰越額が1億6199万円にも上る“派閥のカネ”について、残額や処理方法が確定していない為だ。今後、安倍派では立件された事務局長の裁判が控えており、裁判費用を派閥として支出することも想定される。どれだけのお金が残ったかが確定するには、未だ時間がかかる状況だ。2月1日に開催した派閥最後の総会では、残った財産について「仮に残った場合は公的機関に寄付等をする」ことで纏まったものの、具体的な寄付先は決まっていない。派閥関係者からは「解散は来年になるだろう」との声も漏れる。二階派も事情は同じで、派閥関係者は「残ったカネをどうするかだ」と頭を悩ませている。2022年の繰越額は1億7056万円。派閥事務所の賃料や事務員の人件費、裁判費用等を差し引いた残高については、所属議員で「山分けすればいい」との案も上がるが、意見集約はこれからだ。自民派閥には解散と復活を繰り返してきた歴史がある。自民の金権政治への批判が高まった1994年にも、当時の宮沢派(※宏池会)、小渕派(※平成政治研究会)、三塚派(※清和会)等5派閥が解散を宣言したが、翌1995年の党総裁選で派閥化の流れが強まり、結果的に復活した。党総裁選は今年9月にも実施されるだけに、「曖昧な形にしつつ、総裁選が近づけば再結集という形をとるのではないか」(党ベテラン)との観測は消えない。残務処理の多さを理由に、総裁選の動きが本格化するのを待っているようにも映る。ある派閥の関係者は、「清算団体を別に作って、残高をプールしておけばいい。派閥を解散しても、どうせまた人は集まる。そういう時が必ず来る」と語った。
2024年4月23日付掲載