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【不養生のススメ】(07) 飲酒の御利益

20171031 13
飲酒が齎す健康への影響という議論になると、大抵憂鬱な気分になる。厚生労働省のホームページを開けば、「飲酒は、意識状態の変容を引き起こす。短時間内の多量飲酒による急性アルコール中毒は、死亡の原因」「慢性影響による肝疾患、脳卒中、がん等と関連」「長期にわたる多量飲酒と依存性、社会への適応力の低下、家族等周囲の人々にも深刻な影響」等の警告がある。まるでホラー映画を見ているような恐怖感に襲われる。勿論、厚労省の警告は間違っていないが、飲み過ぎが体に悪いことは誰でも知っている。フェアな議論として、適量の飲酒が齎す健康への利益も知るべきだと思う。先ず、多くの読者が経験している飲酒による幸福感から話そう。2012年のカリフォルニア大学のジェニファー・ミッチェル博士らの報告によると、飲酒は幸福感を齎す脳内神経伝達物質のエンドルフィンを放出する。また、2016年のケント大学のベン・バアンバーグ・ガイガー博士らの報告は興味深い。博士らは、飲酒の齎す幸せについて、2つの調査を用いて分析した。1つ目は、1970年生まれの1万7000人を対象にした伝統的な疫学調査。結果、飲酒の頻度やレベルは、人生の幸福感に関与していなかった。但し、長い人生、様々な状況において、飲酒は幸福感にも様々な影響を及ぼす。そこで博士らは、『ロンドンスクールオブエコノミクス』が開発した、人間の幸福をよりよく理解する為のアプリ『Mappiness』を使用し、約3万1000人の利用者の1日を通じたランダムな瞬間の幸福度を調べた。

すると、利用者が酒を飲んだ瞬間に、より幸せを感じていることが示された。特に、通勤や待ち時間等楽しくない時に、飲酒による幸福感は高まった。一方、社交や性行為等、既に楽しい時は、飲酒は少しだけしか幸福感に影響しなかった。こうして、飲酒の齎す幸せが、医学研究でも実証されつつある。実は、幸せは最近ホットな研究テーマだ。例えば2015年、『ユニバーシティーカレッジロンドン』のアンドリュー・ステプトー博士らは、高齢になると幸せと健康の関係が深まり、その関係は双方向性であること、幸せであることが長生きに繋がることを報告している。昨年、『ハーバード大学公衆衛生大学院(HSPH)』は、香港の李錦記ファミリーからの2100万ドルの寄付金で、『健康と幸せセンター』を設立した。このセンターは現在、幸せと健康の関係の調査を進めている。他にも、飲酒が齎す健康へのメリットが沢山報告されている。HSPHによると、これまでに100以上の研究が、適度な飲酒は心臓発作や突然死、全ての心血管疾患による死亡のリスクを減らすことを報告している。しかも、その効果はほぼ一貫しており、25~40%のリスクが低下する。適度な飲酒はHDL(善玉)コレステロールを増す為、心血管疾患を予防するのは理に適っている。また、HSPHの大規模疫学調査等で、適量の飲酒は、全く飲まない人に比べて、胆石とⅡ型糖尿病が起こり難いことも示されている。更に、適度な飲酒の認知症への効果も示された。2003年、ハーバード大学の研究者らの報告では、酒を全く飲まない人、週1~6ドリンク(※飲酒量を、アルコールの種類に拘わらず、純粋なアルコール量に換算して表示したもの。その基準量は国によって異なり、日本の基準は1ドリンク=10g【ビール中ビン半分】)飲む人、週7~13ドリンク飲む人、週14ドリンク以上を飲む人において、週1~6ドリンクの飲酒が最も認知症のリスクが低かった(※右上図)。つまり、適度な飲酒は認知症を予防する可能性がある。また、2014年のテキサス大学の研究者らの報告によると、認知症の無い60歳以上の人は、少量から中等量の飲酒で記憶力が向上した。ところで、飲酒は肥満の原因と勘違いしている読者もいるだろう。実は、適量の飲酒は、飲まない人に比べて肥満が少ない。『アメリカ国立衛生研究所』の研究者らによる報告では、1997~2001年までを通じて、3万7000人以上の非喫煙者を対象とし、1日あたり1ドリンク、週3~7日の頻度で飲酒をしていた男女が、最も低い肥満指数だった。

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テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

【薬のホント・健康食品のウソ】(13) リア充女子がハマる健康法のウソホント

20171031 12
「20代の頃より疲れが覿面に体に出るようになった。生活習慣を改めるべきなのはわかっているけど、仕事が忙しくてストレスも溜まるし、何かを我慢するのは辛い。だから、どうせ食べるなら、健康と美容に良くて、しかも気分もアガるオシャレなものがいいなって」――。そう話すのは、30代後半の坂本雅美さん(※仮名)。彼女がここ数年ハマった食べ物は、アサイー、ココナッツオイル、チアシード等で、選ぶ基準は“ハワイや欧米のセレブの間でブーム”であること。「旅行先として不動の人気を誇るハワイの他、最近の女性向け健康食品では“セレブ発”も必須キーワード。中でも日本人女性はミランダ・カーが大好きで、彼女がブームの発信源」(女性誌編集者)。雅美さんも憧れるミランダ・カーはアメリカのモデルで、『サントリー』の『黒鳥龍茶』のCMに出演しているといえばおわかりだろう。彼女が「これが無いと生きていけない」と発言したことで、一躍注目されたココナッツオイルは、ダイエットの他、認知症への効果も取り上げられた為、女性だけでなく、中高年世代も巻き込んでの大ブームとなった。扨て今回は、雅美さんがハマった食べ物の効果を、共立女子大学大学院家政学研究科の川上浩教授に分析してもらった。川上教授は、「健康に良いとされる食べ物の効果は、対照群を設けた科学的に信頼度の高い方法で、人間での検証実験が行われていないものが多く、正直なところ肯定も否定もできない」と話す。しかも、1つの食品ばかり摂取するのはNG。「野菜と雖も、過剰摂取は禁物。灰汁の成分が腎臓等に悪影響を及ぼすことも」と警鐘を鳴らす。管理栄養士の伊達友美氏も、「栄養素には摂取適正量があり、摂取量と効果が比例する訳ではない。また、チアシード等植物の種は消化に良くないので、胃腸が弱っている時は控えるべき」と指摘する。一方で、「本人が調子が良いと実感していれば、それも1つの食べ方」と2人の専門家は口を揃える。雅美さんが冒頭で述べた「気分がアガる」。これこそが、女性たちが“セレブ発”にハマる最大の理由なのかもしれない。

■川上教授がメッタ斬り! リア充女子に人気の健康法、本当の実力
①ココナッツオイル…中鎖脂肪酸は体脂肪になり難いという特性はあるものの、油は油。カロリーが高いので、取り過ぎにはくれぐれも注意。
②アサイー…同様の栄養価を持つ食物は他にもあり、アサイーが特別という訳ではない。また、食物の抗酸化作用も、人間に対する効果は実証されていない。
③トマトジュース…リコピンの抗酸化作用を調べた検査は、あくまでも試験管内や動物での実験であって、人間の体の中で同様の効果が得られるかはわかっていない。
④ローフード…酵素は蛋白質なので、摂取しても胃液で殆ど消化分解されてしまう。胃腸薬として開発された消化酵素以外は、加熱しようが生で食べようが、体内で働く可能性は極めて低い。
⑤アーモンドミルク…乳アレルギーへの牛乳の代替品になるのは確かだが、本品はアーモンドを水で薄めたもの。牛乳も水で薄めればカロリーが低くなる。
⑥チアシード…ダイエット効果については、水を含むと膨らむ為、膨満感があり、その満腹感によるものと思われる。豊富な栄養素についても、特にチアシードでなければならないほどではない。
⑦パクチー…食べ物によるデトックス・抗酸化作用については、人間への効果が実証されていない。最近の流行で“山盛りパクチー”等で大量に摂取する人もいるが、灰汁の成分が腎臓等に悪影響を及ぼすこともあり、野菜と雖も食べ過ぎは禁物。
⑧デトックスウォーター…酵素は蛋白質なので、分子が大きい為、水に漬けたくらいでは抽出されない。
⑨グリーンスムージー…細胞壁の成分はヒトが消化分解できない食物繊維なので、ミキサー等で物理的に分解して、細胞内に含まれる微量な栄養素を効率的に摂取するという意味では評価できる。


キャプチャ  2017年6月17日号掲載

テーマ : 食に関するニュース
ジャンル : ニュース

【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(61) 総額400兆円? 戦費コストから考える“半島リスク”の実態

国家とは共同体であり、その共通する目的は国民の福利を実現することである。地球規模では、これを“国益の追求”という。現在、北朝鮮は金正恩という独裁者が、独自の国家理念を持って貪欲に国益を追求している。米朝関係は緊迫しており、マスコミは明日にでも戦争が起きるかのように報じているが、どうだろう? 答えはNOだ。戦争は国益とコストのバランスで決定される。現代文明の基礎は経済である。経済を無視した戦争は起こり得ない。9.11同時多発テロ以後、イラクとアフガニスタンで要したアメリカの戦費は4.8兆ドルに上る。北朝鮮との戦費は2.5兆ドルと試算されているが、これほどのコストを負担してまでアメリカが開戦するとは思えない。北朝鮮はどうだろう? アメリカに先制攻撃を仕掛けることは、これもあり得ない。金正恩が一番に望んでいるのが、現体制の存続である。アメリカと戦争をすれば、体制はおろか国家が崩壊することを、北朝鮮自身がわかっているのだ。度重なるミサイル発射実験は、あくまでもデモンストレーションであり、ブラフでしかない。米朝とも、互いに手の内はわかっているが、世界中が注目する中、引くに引けないだけである。若し仮にアメリカが北朝鮮を攻撃するとなれば、同盟国である日本と韓国には事前通告がある。そうなれば、政府は国民に説明しなくてはならないのだ。慌てずとも、今日明日に戦争が始まることはないのである。米朝戦争について、もう少し経済の面から考察してみよう。ここで重要なのは、戦費よりも事後費用のほうが遥かに莫大であるということだ。この点はつい見落とされがちだが、大切なので、以下、述べたい。

北朝鮮が戦争によって崩壊した場合、当然のことながら韓国との統一となる。その場合、戦争によって傷んだインフラの整備や、社会保障制度の統合に天文学的な費用が必要となる。ここで、今から27年前の東西ドイツ統一に要した費用を参考にしたい。ドイツの主要経済研究所である『ハレ経済研究所』が2009年に発表した統一コストの推計は、1兆3000億ユーロであった。ところが最近、べルリン大学のクラウス・シュレーダー教授が発表したデータでは、その数字が2兆ユーロとされ、物議を醸している。このドイツ統一にかかったコストから、南北統一を考えてみよう。先ず、人口比率からだが、ドイツの場合、東ドイツの人口は西ドイツの4分の1であった。これに対し、北朝鮮の人口は韓国の2分の1にあたる。その上、北の所得格差は、統一時の東西ドイツに比べて相当に大きい。これだけでも、南北統一の費用がドイツ統一の比ではないことがわかるだろう。日本の経団連にあたる韓国の『全経連』が試算した南北統一にかかる費用は、約250兆円。アメリカのシンクタンクによれば、その額は400兆円を超えるとみられている。アメリカの戦費はアメリカで賄うのが当然だが、北朝鮮崩壊後のコストは誰が負担するのだろう? 勿論、当事者である韓国が負担すべきだが、果たしてその経済力があるだろうか? 結論から言うと、今の韓国には無い。それでは、アメリカが負担するかといえば、それもないだろう。これらの事実は、当事者であるアメリカも北朝鮮も十分わかっている。勿論、日本・韓国・中国・ロシアもだ。北朝鮮は、それをわかった上でアメリカを挑発し、デモンストレーションを繰り返しているのである。米朝のチキンレースは、今のところ北朝鮮に有利な展開となっている。失うものが何も無い国家にとって、混乱こそ最大のチャンスなのである。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年10月31日号掲載

テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

【昭和&平成放送禁止大全】(08) 「鳥取は未だ糸電話」発言に鳥取県民からは大ブーイング

20171031 11
常にCM好感度ランキングで上位をキープする白戸家でお馴染みの『ソフトバンク』。若者たちから支持される人気作品を量産する一方で、同社は視聴者の怒りを買うようなCMも数多く残している。その1つが、2012年に放送された“鳥取砂丘編”だ。この作品では、鳥取と書いてトリンドルと読むという強引な捩りで、トリンドル玲奈が鳥取からやって来た学生役として出演。白戸家のある地域は学生が3年間スマホ無料であることに対して、「鳥取は違うの?」との問いかけに、「鳥取は未だ糸電話」とトリンドルが答え、鳥取砂丘で糸電話を使う男性の姿が挿入される(※右画像)。驚いたお父さん犬が「本当か?」と聞くと、トリンドルは「そんな訳ないじゃん」と否定して、何故かお父さん犬にキスをしてCMは終わる。全体的に雑な作りの内容だと言わざるを得ないが、当然ながら、この作品に対しては「鳥取を侮辱している」「笑えないし、小馬鹿にされた感じしかしない」「最後に否定するなら最初からそんなことを言わなければいいのに」等、鳥取県民から大ブーイングが巻き起こったのである。中には、「鳥取は以前から過疎化が大きな問題で、遅れている地域だと遠回しに言われているような気がする」と不快感を露わにする意見もあり、結局、ソフトバンクは鳥取砂丘編を短期間で打ち切ることになったのだった。また、ソフトバンクの歴代CMの中には、苛めを助長するとして社会問題になったものもあった。それは、ゴールドプランという特定の時間帯なら同社の携帯電話同士の通話が無料となることをPRした作品でのこと。

女子大生4人が登場し、「試合の件は電話して9時までに」と合言葉のように言い合うのだが、きみちゃんと呼ばれる学生だけは「いいよ。私にかけるとお金がかかるし」と否定すると、他の学生たちが「あっ、そっか。ソフトバンクじゃないんだ」と隣れむような声をかける。そして、最後にテロップで“友達を大切に”という言葉が一瞬だけ表示されてCMは終わる。この作品に対して、『日本広告審査機構』には「苛めを助長する」「きみちゃんが可哀想」等の苦情が相次いで寄せられ、インターネットの掲示板には「通話料が無料じゃないと友だちになれないのか」という怒りの書き込みが殺到。ソフトバンクは、「ターゲットは中高生や大学生で、『通話が無料なので、友だちと交流を増やしてほしい』という思いを表現した。苛めを意識して作ったものではないが、誤解を招いた」というコメントを発表する事態にまで追い込まれたのだった。更に、ソフトバンクのCM史上最もダダスベリだったのが、国民的アニメキャラクターのその後を描いた“MOON RIBAR”シリーズだ。2015年放映なので、記憶にある人も多いだろう。この作品では、セーラームーンに小泉今日子、ちびまる子ちゃんに広瀬すず、鉄腕アトムに堺雅人、ゴルゴ13に小日向文世、あしたのジョーの矢吹丈に又吉直樹、北斗の拳のケンシロウに市川海老蔵、おぼっちゃまくんに満島真之介という豪華メンバーを起用。全国の民放テレビ局で60秒バージョンを一斉放映し、プロモーションも積極的に行う等、白戸家に代わる新シリーズとして期待されたのだが、これがまた兎に角評判が悪かった。ムーンスティックが自撮り棒になったり、真っ白に燃え尽きた矢吹丈が小説家に、少年ロボットであるアトムが大人の人間に、ゴルゴ13に至っては総理大臣になっていたりと、原作をひたすら無視しまくった内容に、「如何にも原作を観ていないと思しき愛を微塵も感じない演出にイラつきを隠せない」や「元セーラームーンとか言っているCMは原作に対する敬意が感じられなくてかなり不快」といった意見が続出。あまりの不評っぷりに、同10月からスタートしたこのシリーズは、僅か3ヵ月で続編が作られることなく終了。一応は全キャラクターのCMが制作されたようだが、殆ど放映されることなく終わった作品も幾つかあるようだ。大金を叩いて制作したCMのコケっぷりに、業界内では「孫正義社長も激怒した」という噂が駆け巡ったほどである。 (フリーライター 児玉陽司)


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テーマ : 社会問題
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【移民社会アメリカ・アメリカで働く夢】(04) 永住権つけ込み昇給抑制――マドゥリ・ネマリさん(31・インド系アメリカ人)

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「アメリカで希望を持って働くインド人を応援する為、シリコンバレーの中心地であるサンノゼで弁護士をしています。ドナルド・トランプ政権発足後、就労ビザのことで心配を募らせるインド人と、外国人の雇用を躊躇う中小企業の間で板挟みになっています。暗い話ばかりです。正直、上手くアドバイスできず、困っています。仕事の殆どは、インド人のアメリカ移住に関する案件です。その内の6割は、専門技能を持つ外国人向けの査証“H-1Bビザ”の取得と更新に関する実務です。永住権(グリーンカード)の取得申請も手伝っています。永住権は、インド人にとって究極のアメリカンドリームです。手にするのは年々、難しくなっています。時代のせいでしょうか」。インドで生まれ、生後5週間でアメリカへ。永住権を持つ父の娘として永住権を取得。12歳でアメリカ国籍(市民権)を得た。インドは二重国籍を認めていない為、アメリカ国籍を選んだ。「私の父もそうでしたが、インドではH-1Bビザでアメリカに来るのが、永住権獲得の近道とされています。その為、毎年多くの人がこのビザを取得します。だけど、永住権獲得までは非常に非常に長い道程です。その過程で、インド人が雇用主の言うがままにされているという現実に気付きました」。ビザの取得や永住権の申請には、雇用主の保証が必要。裏を返せば、原則として雇用主の保証が無いと永住権を申請できない。

「こうした事情につけ込み、昇給を抑えようとする悪い会社もあります。転職すると手続きは一からやり直し。嫌がる雇用主は少なくないので、転職に消極的なインド人もいる。でも、シリコンバレーでは転職を繰り返さないとキャリアアップは望めません。本人と企業の間に立って状況改善に努めても、政府からは次から次へと移民に不利な政策が出てきます。流れはどんどん悪い方向に向かっていますね。衝撃的なことがありました。1月下旬、トランプ大統領が入国制限の大統領令を発令した際、H-1Bビザのインド人が入国できなかったのです。インドは制限対象の国ではないのに。以降、一部のインド人の間で出国を見合わせる動きが広がりました。知人は『故郷の結婚式に出席できなかった』と悲しそうでした。更に、衝撃的な事件も起きました。インド人技術者が殺された事件です」。カンザス州で2月下旬、インド人男性2人が元海軍兵の白人の男に銃撃され、1人が死亡した。男は「私の国から出て行け」と言い、差別意識を露わにした。「人生で初めて、『アメリカが怖い』と思いました。今の政権が我々を追い込んでいる――そう感じさるを得ません。弁護士として何ができるか、自問する日々です。政府には、アメリカ経済に貢献してきた有能なインド人の存在を改めて認識してもらい、ビザや永住権の割り当てを増やすよう求めていくつもりです。滞在資格に悩むインド人には、『更新手続き等を怠らず、希望は捨てないように』とアドバイスするしかないですね。アメリカはやはり、幸せになれるチャンスを掴める夢の国です。その上で、あまり大きな声では言えませんが、たとえビザが切れても、既にアメリカ国内に生活基盤があり、この先もアメリカで生きていきたいのなら、アメリカ国内に留まり、時を待つのです。今のような時代がいつまでも続くとは決して思いませんから。 =おわり

               ◇

ロサンゼルス支局 田原徳容が担当しました。


⦿読売新聞 2017年9月24日付掲載⦿

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【移民社会アメリカ・アメリカで働く夢】(03) 起業、仲間のビザは無い――アレックス・モドンさん(27・アメリカ人)

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「2015年夏、インド人2人と共同で、シリコンバレーにスタートアップ企業を設立しました。企業の市場戦略に役立つ情報の収集と分析を自動化するサービスを提供しています。出だしは順調でしたが、事業とは別のことで壁にぶち当たりました。就労ビザです。僕はアメリカ人だからいいのですが、この会社に必要不可欠な2人のインド人が、アメリカに長期滞在して働く為のビザを新たに取得する必要があったのです。恥ずかしながら、ビザに関する知識はほぼゼロでした。彼らのビザをどうするか? 大手企業が保証すれば簡単なんでしょうが、僕らの小さな会社では中々難しくて、相談しているうちに時間だけが過ぎました。そうこうしているうちにドナルド・トランプ政権発足――。もう、頭を抱えましたよ」。トランプ大統領は、雇用政策でも“アメリカ第一主義”を掲げ、外国人の就労や定住に否定的だ。専門技能を持つ外国人向けビザ『H-1B』の取得審査も、厳格化を進めようとしている。「僕はトランプ支持者の多い“ラストベルト”出身です。嘗て製造業が栄えたオハイオ州です。兄がGoogleに就職し、それがきっかけでシリコンバレーを訪ねるようになりました。自分も起業の夢に魅せられて、5年前にとうとう引っ越して来ました。シリコンバレーで人脈を広げるうちに意気投合したのが、2人のインド人です。並外れたコンピューターの知識と作業能力――。圧倒されました。『世の中には凄い人間がいるんだ』と実感しましたね。『彼らとスタートアップを設立すれば、面白い仕事ができそうだ』。そう考えると、ワクワクしました」。

非営利団体『アメリカ政策国家基金』の調査(※2016年)によると、企業価値が10億ドル規模のスタートアップ企業87社の内、約半数の44社の経営陣に移民が名を連ねた。「ビザ取得の目処が立たず、彼らの不安は相当なものでした。このままシリコンバレーで事業を続けるのがいいのか、迷った末、一度はインドに事務所を置いてみましたが、これは長続きしませんでした。アメリカとの時差の為、彼らの生活が昼夜逆転してしまったのです。インドで暮らすこと自体、がっかりだったようです。シリコンバレーを目指して頑張ってきたのに、逆戻りですからね。事業経営者として、優秀な技能者が仕事に打ち込める環境を整えるのは大事なことです。最終的に至った結論は、シリコンバレーに会社を残しつつ、事業の一部をカナダのバンクーバーに移転させることでした」。今年2月、アメリカとカナダでの2拠点体制をスタート。従業員6人の内、インド人2人を含む3人がカナダ勤務だ。「バンクーバーなら、サンフランシスコから飛行機で2時間半。時差が無いのも魅力です。カナダのジャスティン・トルドー首相はトランプ大統領と違い、移民歓迎です。実際、2人の移住手続きは簡単でした。彼らは今の生活に満足し、生き生きとしています。アメリカで外国人のビザ取得や永住が難しくなる中、こうしたパターンは今後増えるんじゃないでしょうか。でも、『本当にこれでいいんだろうか?』と考える時があります。顧客・投資家・企業間の繋がり――。こうしたもので、まだまだシリコンバレーに勝る場所は無いんです。会社ごとカナダに移す選択肢を避けたのは、その為です。アメリカ人として、“世界の頭脳”のシリコンバレーに誇りを持っています。そして、アメリカに移民は必要です。カナダにいるインド人の仲間と、ここで一緒に働ける日が来ると信じています」。


⦿読売新聞 2017年9月23日付掲載⦿

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【移民社会アメリカ・アメリカで働く夢】(02) 安住の地はカナダにあり――ビクラム・ランネカルさん(35・インド人)

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「インドのムンバイ出身で、アメリカではH-1Bビザを取得し、シリコンバレーのIT大手で6年働きました。その後、アメリカに見切りを付けて、カナダのトロントに移住しました。昨年秋、ドナルド・トランプが大統領選で当選する直前のことです。カナダのことはあまり知りませんでした。寒い国というぐらい。調べてみて、発展ぶりに驚きました」。トロントや西海岸のバンクーバーは、IT関連の企業育成や人材発掘に力を入れ、シリコンバレーを追い上げる勢いを見せている。『Google』等アメリカのIT大手も拠点を置く。「それ以上に大事な発見がありました。移民が大歓迎されているのです。就労ビザは手軽に取得でき、永住権も適切な時期にストレスなく得られる仕組みです。アメリカとは正反対です。移住は正解だったと思います。アメリカは、移民に厳しいトランプが大統領になって、益々住み難くなっていると思います。それに比べて、カナダは能力を存分に試せる環境でした」。留学先のデラウェア大学でコンピューターを専攻し、卒業後は仲間とシンガポールで起業。2010年、アメリカのIT大手にへッドハントされる。

「『シリコンバレーで働かないか?』と誘われた時は、夢の階段を駆け上がるような気分でした。アメリカ西海岸は気候が良くて過ごし易く、気に入っていました。有能な人たちと触れ合うのも刺激的で、シンガポールに行く前に結婚したインド人の妻と2人の男の子に囲まれ、幸せでした。ずっとここで暮らしたい――。そう願いましたが、現実は厳しいですね。永住権(グリーンカード)の取得に何年も待たされるんですよ。希望者が多いようです。トランプ大統領の登場で、先行きの不安も増しました」。トランプ政権は、永住権の発行を半減させる方針とされる。IT企業求人情報サイト『ハイアード』の調査では、トランプ氏の当選後、IT企業従業員の40%がアメリカ国外への移住を検討したという。希望する移住先のトップは力ナダだった。「トロントに来てから起業しました。複数のアプリを効果的にビジネスに活用する仕組みを提供する会社です。投資家の資金援助もあり、経営は順調です。カリフォルニアでは高価で手の届かなかったマイホームも購入しました。庭付き一戸建てです。子供たちは大喜びです。冬の寒さも防寒着に“投資”すれば凌げます。ビザや永住権に関する不安が無いのは、やっぱり安心しますね。“北へ動こう”というタイトルのブログを始めました。『カナダはどうだ?』と尋ねてくるシリコンバレーの仲間が多くてね。思いや体験を綴った単純な内容ですが、10日間で2万人も閲覧者を獲得しました。『カナダに来てみたい』と考えている人が、結構多いんじゃないかという気がします。シリコンバレーに匹敵するくらい環境が整っていますから」。トロントでは、産官学が共同運営する企業支援機関『MaRs』が、新興ビジネスを強力に後押しする。商談に使える会議室等、設備を提供する他、様々な国の出身者が起業家の相談に乗る。「インド人が増えてきたと感じますね。シンガポール時代の仲間も来ました。インドでアメリカのビザ取得に手間取った末に、カナダを選んだ若者たちもいます。今、自分のブログを、アメリカ在住の有能なインド人をカナダに呼び込む“就活支援サイト”みたいにできないかと考えています。需要はあります。アメリカはもう、いつまでも安心して暮らせる国ではないですからね」。


⦿読売新聞 2017年9月22日付掲載⦿

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【移民社会アメリカ・アメリカで働く夢】(01) ビザ厳格化「面接さえ辿り着けない」――モシン・カダールさん(31・インド人)

アメリカのドナルド・トランプ大統領が唱える“アメリカ第一主義”が、アメリカで働きながら暮らしたい外国人の夢を壊そうとしている。トランプ政権は、専門技能を持つ外国人向けの査証『H-1Bビザ』の取得審査を厳格化し、移民に対する永住権の発行を半減させる方針だ。トランプ政権に翻弄される人々が、思いを語る。

20171031 01
「仕事が上手く見つかりません。正確に言うと、仕事はあり、僕を雇いたいという会社もあるのですが、僕のH-1Bビザの更新をサポートしてくれる会社が見つかりません。ビザが無いとアメリカを追い出されるから、大問題です。トランプ大統領の反移民政策のせいで、会社が外国人の採用に尻込みしている――そんな気がします」。出身はインド南部のケーララ州。国内で最も識字率が高く、教育熱心な地方だ。「アメリカで勉強して働き、起業するのが小さい頃からの夢でした。アメリカに留学し、2013年にH-1Bビザを取り、サンフランシスコで働き始めました。専門は3Dデザインのソフト開発。技術には自信があります。最初に勤めた大手企業で評価され、年収が10万ドルを超えました。インドなら王様のような暮らしができます。浮かれましたね。ローンでマンションと車を買いましたよ。その後、自分の力をもっと試そうと、中規模の会社に転職しました。出張で国内を飛び回っていると、夢の国で活躍している実感が湧きました。でも、そんな日々はトランプ大統領の誕生で終わりました。『移民や外国人がアメリカ人の雇用を奪っている』と大統領が言うので、企業は慎重になりました。迷惑な話です。僕は社長から『出張しなくていい』と言われ、仕事が減りました。更に、契約が更新されず、自動的に退職。ショックでしたね。僕、イスラム教徒なんです。イスラム教徒に差別的な対応が現実となり、愕然としました。“アメリカ人の雇用を奪うイスラム教徒の外国人”の僕は、トランプ大統領やその支持者に最も疎まれる存在ですね」。

トランプ大統領は“テロ撲滅の為”として、イスラム圏からの入国を一時、制限した。「インドに帰る? それは嫌です。インドのナレンドラ・モディ首相はヒンドゥー至上主義者で知られ、トランプ大統領と比較にならないほどイスラム教徒に弾圧的なんです。恐ろしい。だから、ビザにしがみ付くしかないんです。更新すれば、あと3年はいられる筈です。片っ端から求人に応募しているのですが、面接にも辿り着けない。面接があっても落ちてばかりですよ」。IT企業求人情報サイト『ハイアード』の調査によると、IT企業が外国人を面接する割合は、今年4~6月期、前年同期比37%減と大きく落ち込んだ。「ある会社の担当者は、私の嘗ての年収を見て、『トランプは高い給料に見合う技能を持つ外国人だけでいいと言う。一理あるが、高い給料は出せない』と言いました。別の会社の面接官は、真っ向から『イスラム教徒ですか?』と聞いてきました。おかしなことになっていると思いますね。礼拝所(モスク)で集う仲間の6割はH-1Bビザで来ていますが、話題は『いつ追い出されるか?』ばかり。焦りが募ります。ビザが更新できる期限が迫ったので、苦肉の策で一旦学生ビザに切り替えました。就職活動は続けられますが、学校に行く必要があるし、授業料もかかります。僕たちインド人は、小学生ぐらいからプログラミングを勉強する人が多いんです。人口が多く、貧しい国なので、早くから技能を磨き、世界で通用する人間になろうと必死なんです」。アメリカでは、『Google』のサンダー・ピチャイCEOを筆頭に、多くの優秀なインド人がIT産業で活躍している。「外国人がアメリカで成功し、アメリカのIT産業を支えている――。素晴らしいと思うのですが、トランプ大統領は気に入らないんでしょうね。本当にアメリカにいられなくなったら、中東のカタールに行くのはどうかな。現地に住む叔父は、『滞在資格や宗教で悩まされることはない』と言います。国営ガス会社等、僕の能力を生かせる具体的な就職口もあるようです。だけど、それは最後の手段。やっぱりアメリカにいたいんです。夢を未だ諦め切れません。就職活動を続けます」。


⦿読売新聞 2017年9月21日付掲載⦿

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創業者急逝でお家騒動が勃発! 『大戸屋』骨肉の争い、その呆れた実態

“美味い・安い・早い”を競う外食業界の中で、“不味い・高い・遅い”の独自路線を突き進む『大戸屋』。昨年末、会長の急逝をきっかけにお家騒動が勃発し、最近も遺族側が改革案を提案する等、火種が燻ったまま。そのドロドロの内実とは――。 (取材・文/フリージャーナリスト 小石川シンイチ)

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日本国内に350店、海外に150店を構える巨大飲食チェーンの大戸屋。看板メニューの“鶏と野菜の黒酢あん定食”(※税込851円)を始めとする38種類の定食に加えて、期間限定メニューやデザート等、常時50前後のメニューを揃えている。黒酢や五穀米といった食材を使ったヘルシー志向のメニューが女性客にウケ、顧客の約6割が女性だという。一方、男性からの人気はイマイチ。男性客が求める“美味い・安い・早い”といった飲食店のスタンダードからは外れているからだ。「大戸屋を現在までに大きくした故・三森久実会長は、“顧客本位”を打ち出し、全国チェーンでは当たり前のセントラルキッチン方式ではなく、各店舗のキッチンで調理することを売りにしています。その一手間の為に、費用と時間(※提供時間が13~14分程度)がかかる。大戸屋は女性客をターゲットにしており、回転率よりも客単価を重視する戦略を採っており、その為に“高い・遅い”となるという訳です」(経営ジャーナリスト)。しかし、その一手間かけた料理が美味しいかといえば、必ずしもそうではない。女性客向けの定食屋は競合が少ない為、大戸屋はそこまで味に拘らずとも、そこそこの集客が見込めるからだ。こうして、大戸屋は他の飲食店とは一線を画した“不味い・高い・遅い”の独自路線を突き進みつつも、働く女性の増加に合わせて急成長してきたのだ。「“女性客が1人でも入れる店”をコンセプトにした大戸屋ですが、実はその経営コンセプトはモスバーガーのパクリなんです。故・三森久実会長が、故郷の山梨県でモスバーガーのフランチャイズもしており、“大戸屋ごはん処”として店をリニューアルする際に、モスバーガーの店舗担当に発注したのです。白木を用いたテーブル・明るめの照明・栄養バランス・盛り付けの色合い・注文を受けてからのその場での調理を重視すること・生産者の名前等を店内に張り出すこと等、全てモスバーガーと同じコンセプト。このパクリ路線の店舗が、女性客からの支持を得たのです」(同)。

過去のインタビューで故・三森久実会長は、「今、うちがやっていることは、モスがやっていることを“めし屋”に置き換えたものだと言っていい」と語っているほどだ。その社史を振り返ると、1958年に創業者の三森栄一が池袋に開業した『大戸屋食堂』が始まりだ。当初は男性客中心の大衆食堂としてスタートし、全品50円均一の“50円食堂”として展開した。1979年に三森栄一が早逝し、後に会長となる三森久実が僅か21歳にして店を継いだ。1992年、3号店の吉祥寺店で全焼事故を起こしたが、その保険金をきっかけに店舗をリニューアル。“女性客が1人でも入れる店”をコンセプトに、『モスバーガー』をパクり、『大戸屋ごはん処』としてモデルチェンジしている。つまり、久実会長が事実上の創業者なのだ。「大戸屋ごはん処にモデルチェンジを図っている時、久実会長は丁度再婚したばかりでした。後妻である三枝子氏のアドバイスもあって、女性客が喜ぶような店作りに大戸屋を変えたのです。この後妻が後にお家騒動を起こす訳ですが…」(同)。店舗は、家賃の高い路面店を避けて、ビルの2階や地階に出店し、“家庭の味”に拘った。食材は本部が一括購入するが、調理は各店で行うといったモスバーガー風の店作りで、メインバンクである『三菱信託銀行』(※現在の『三菱UFJ信託銀行』)のバックアップもあって、順調に売上を伸ばしていく。2001年、大戸屋は定食店として初めて株式を店頭公開(※現在のジャスダック市場)。アジアやアメリカ進出も果たし、2015年度には売上高260億円、営業利益6億円になっている。ところが、三森久実会長と三枝子氏の間に生まれた未だ20代の智仁氏を、次期社長に据えようと“帝王教育”を施し始めた矢先、2015年7月に三森久実会長が肺癌で急逝。ここから同社の風向きが変わっていく。元会長・三森久実氏の息子・智仁氏は、本来なら『大戸屋ホールディングス』の社長である窪田健一氏(※三森久実会長の従兄弟)の下で、次期後継者として経験を積む予定だった。ところが、久実氏が57歳の若さで急逝したことで、深刻な後継問題が勃発。それだけでなく、久実会長の息子を始めとする創業家サイドと、窪田社長を筆頭とした経営者サイドは、莫大な資産や経営方針を巡り、泥沼の争いを繰り広げることになったのだ。「三森家側は、それまで会長からの事業承継対策を十分に行っていなかった。その為か、久実氏が末期の癌であることが判明した時点で、莫大な相続税を避けようと、相続税対策として大戸屋から8億円の功労金を受け取ろうと、“功労金問題”と呼ばれる騒動も引き起こしています(※2015年3月頃)。しかし、大戸屋のメインバンクである旧三菱信託銀行や一部の取締役が難色を示し、頓挫したのです」(経済紙記者)。しかも、洋食店『祇園ミクニ』、上海の大戸屋ごはん処、山梨の工場用地、植物工場といった、赤字或いは減損を生じさせている三森久実会長の“負の遺産”とも言える事業が残っていた。また、それだけではなく、経営サイドは経営上のコストカットも必要と考えていた。「大戸屋は2001年の上場以来、売上高は増えており、営業利益は2001年度に6.1億円、その後、ピークだった2013年度に7.5億円になりましたが、2015年度は6億円に留まっています。営業利益が殆ど変わらないという“収益性”の問題がありました。『これまでの経営をコストカットする好機だ』と現経営陣は考えたのです。昨年11月の中期経営計画では、2015年度の“売上高260億円・営業利益6億円”を、2019年度には“売上高296億円・営業利益13.7億円”まで引き上げるとブチ上げています」(同)。

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【JR・栄光と苦悩の30年】(24) 「四国にも新幹線が欲しい」――半井真司氏(『JR四国』社長)インタビュー

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『JR北海道』の問題は他人事ではありません。四国は自然環境がいいので、未だ北海道ほど深刻ではありませんが、10~20年先は同じように路線の維持が困難になります。現在、四国の人口は385万人ですが、2040年には300万人を切ると予測されています。このままでは、運輸収入の減収を見込まざるを得ません。一方で設備は老朽化して、修緒費も余分にかかる。このままいけば、営業損失は拡大していきます。当社は発足時から鉄道事業は赤字で、経営安定基金の運用益150億円で穴埋めする前提で始まりました。今でも営業損失が100億円なので、運用益が150億円あれば収支は合う訳です。黒字の路線は本四備讃線だけです。それも、予讃線とか土讃線に乗ってきた利用者が本州に抜けていくから利益が出ているのであって、予讃線や土讃線を切ったら本四備讚線も赤字になってしまいます。

当社は“四国で基幹的公共輸送機関を維持する”という使命を持ってスタートし、現在もそれは変わっていません。鉄道には公共性があり、経済合理性だけで止めていいのでしょうか? 東京でいう鉄道と、地方維持の為の鉄道の使命は違う部分があると思います。2010年、有識者の方々や大学の先生ですとか、経済界・4県知事等で『四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会』という議論の場を設け、一定の提言を頂きました。高速化等鉄道利用の促進策と、もう1つ、財源の確保、つまり国の支援措置が必要との提言を頂きました。今、四国の方に広くお願いしているのは、もう一度、鉄道の在り方を議論して頂きたい。当社単独で「経営努力をせよ」と言われても限界があります。今ある鉄道が必要なら、公共施設を駅の近くに持ってくる等、街全体で鉄道の利用促進をどうするか考えてほしい。2010年の懇談会の頃から、地元では四国新幹線の要望が高まりつつあります。九州新幹線・北陸新幹線・北海道新幹線と次々に完成して、新幹線が普通のインフラになりつつあるのに、四国だけが取り残されている。一方には新幹線があり、もう一方には新幹線が無いとなると、人口が益々減っていくでしょう。これは、日本各地をどうしていくのか、地方創生を地方だけに任せていいのかということでもあるのです。


キャプチャ  2017年3月25日号掲載

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George Clooney

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