数十の米銀がSVBの破綻劇を繰り返す危険性 (研究論文による警鐘)
<記事原文 寺島先生推薦>
Dozens of US banks at risk of repeating SVB collapse – study
出典:RT
2023年3月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年3月30日

Pgiam / Getty Images
他の多くの金融機関も金利の急速な引き上げにより、前例のない規模の損失から逃れられずにいる
200近い米国の銀行が、破綻と倒産に追い込まれたシリコン・バレー銀行(SVB)のようになる危険があるという報告書が、オンライン上の研究発表機関である「社会科学研究ネットワーク」に今週(3月第3週)掲載された。米国の大手金融業者であるSVBは、科学技術分野や新規事業立ち上げ分野への投資に力を入れてきた銀行だったが、先週、大規模な預金流出が生じたことを受け、規制当局により閉鎖された。
この報告書においては、著名な米国の大学の経済学者4人が、最近の金利の高騰により米国の銀行が保持している資産がどれほどの市場価値の損失を出すかの推論が行われている。
2022年3月7日から2023年3月6日の間に、フェデラル・ファンド・レート(米国の市中銀行が連邦準備銀行に預けている資金の金利)は、0.08%から4.57%にまで急騰した。そしてこの急騰に対応して量的引き締め*策が取られた。その結果、 賃借対照表**に記載されている銀行の資産同様、銀行の長期資産の価値も同時期に大きく下落している」とその報告書にはある。
* 中央銀行が保有する資産を圧縮することで、市場に出回る金の量を減らしていくこと
** 一定時点の財政状況が記載されているもの
金利が高くなれば、高い利率での貸付が可能となるため、銀行にとって利益が出るが、米国の銀行の多くは余剰金の大部分を米国債の買い付けに当てている。この買い付けは金利がほぼゼロの時になされたものだ。いまやこれらの国債の価値は、利率の高騰のせいで大きく下落している。投資家たちは高い利率のある新たに発行された国債を買えば済むようになったからだ。銀行が所有する資産の価値は下落しているのに、その実感が伴っていないということは、有価証券の価値が下がっているのに、その損失はまだ「書類上」でしかないということになる。
問題が生じるのは、取り付け騒ぎ*が起こり、銀行が自行所有の有価証券を売らざるを得なくなった時だ。これは深刻な損失になるが、預金者に預金を返すためには、そうせざるを得ない。極端な場合、そのせいで銀行は支払不能状態になることもある。あるいはSVBの場合と同じように、銀行に対する信頼が失われて、取り付け騒ぎが発生する可能性もある。
* 預金者が殺到して預金を銀行から引き出すこと
この報告書の執筆者たちは、米国の金融業者が、無保険預金として所有している資本額を調査している:その割合が高いほど、取り付け騒ぎが起こる見通しは高くなる。例えば、SVBにおいては、預金者の92.5%が無保険預金であり、たった2日間の預金流出により破綻に追い込まれた。この報告書の執筆者たちの見積もりでは、無保険預金の半分が引き出されれば、全ての預金者に預金支払いを行えなくなる銀行が米国に186行あるという。

関連記事:米国の銀行危機が西側の金融体制の崩壊に繋がる過程
「私たちの推論から示唆されることは、これらの銀行には、取り付け騒ぎが生じる危険が確実に存在しているということだ。それを防ぐには、政府が介入や資本注入を行わないといけないだろう。(中略)。結局のところ、これらの推論から示唆されるのは、銀行の所有資産の価値の大幅な下落により、米国の銀行体制の脆弱化が加速され、無保険預金に対する取り付け騒ぎの発生が危惧されるという点だ」とこれらの経済学者は結論づけ、危険な状態にある銀行の数は、ずっと「深刻な数」になる可能性があるとした。そしてそれは、「取り付け騒ぎによる銀行の持ち株の投げ売りが小規模でおさまったとしても同じだ」という。
SVBの破綻は、米国の銀行業界全体に波紋を投げかけ、シグニチャー銀行という別の銀行の閉鎖にも繋がった。他の多くの金融機関においても、株価が下落し、ウォール街の六大銀行は、時価総額で1650億ドルほどの損失を出している。これは各行の複合資産の13%程度になる。今週(3月第3週)はじめの格付け会社であるムーディーズは、米国の銀行体制の評価を「安定した状態」から「良くない状態」に下げたが、その理由は「運営状況が急速に悪化しているため」としていた。
Dozens of US banks at risk of repeating SVB collapse – study
出典:RT
2023年3月18日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>
2023年3月30日

Pgiam / Getty Images
他の多くの金融機関も金利の急速な引き上げにより、前例のない規模の損失から逃れられずにいる
200近い米国の銀行が、破綻と倒産に追い込まれたシリコン・バレー銀行(SVB)のようになる危険があるという報告書が、オンライン上の研究発表機関である「社会科学研究ネットワーク」に今週(3月第3週)掲載された。米国の大手金融業者であるSVBは、科学技術分野や新規事業立ち上げ分野への投資に力を入れてきた銀行だったが、先週、大規模な預金流出が生じたことを受け、規制当局により閉鎖された。
この報告書においては、著名な米国の大学の経済学者4人が、最近の金利の高騰により米国の銀行が保持している資産がどれほどの市場価値の損失を出すかの推論が行われている。
2022年3月7日から2023年3月6日の間に、フェデラル・ファンド・レート(米国の市中銀行が連邦準備銀行に預けている資金の金利)は、0.08%から4.57%にまで急騰した。そしてこの急騰に対応して量的引き締め*策が取られた。その結果、 賃借対照表**に記載されている銀行の資産同様、銀行の長期資産の価値も同時期に大きく下落している」とその報告書にはある。
* 中央銀行が保有する資産を圧縮することで、市場に出回る金の量を減らしていくこと
** 一定時点の財政状況が記載されているもの
金利が高くなれば、高い利率での貸付が可能となるため、銀行にとって利益が出るが、米国の銀行の多くは余剰金の大部分を米国債の買い付けに当てている。この買い付けは金利がほぼゼロの時になされたものだ。いまやこれらの国債の価値は、利率の高騰のせいで大きく下落している。投資家たちは高い利率のある新たに発行された国債を買えば済むようになったからだ。銀行が所有する資産の価値は下落しているのに、その実感が伴っていないということは、有価証券の価値が下がっているのに、その損失はまだ「書類上」でしかないということになる。
問題が生じるのは、取り付け騒ぎ*が起こり、銀行が自行所有の有価証券を売らざるを得なくなった時だ。これは深刻な損失になるが、預金者に預金を返すためには、そうせざるを得ない。極端な場合、そのせいで銀行は支払不能状態になることもある。あるいはSVBの場合と同じように、銀行に対する信頼が失われて、取り付け騒ぎが発生する可能性もある。
* 預金者が殺到して預金を銀行から引き出すこと
この報告書の執筆者たちは、米国の金融業者が、無保険預金として所有している資本額を調査している:その割合が高いほど、取り付け騒ぎが起こる見通しは高くなる。例えば、SVBにおいては、預金者の92.5%が無保険預金であり、たった2日間の預金流出により破綻に追い込まれた。この報告書の執筆者たちの見積もりでは、無保険預金の半分が引き出されれば、全ての預金者に預金支払いを行えなくなる銀行が米国に186行あるという。

関連記事:米国の銀行危機が西側の金融体制の崩壊に繋がる過程
「私たちの推論から示唆されることは、これらの銀行には、取り付け騒ぎが生じる危険が確実に存在しているということだ。それを防ぐには、政府が介入や資本注入を行わないといけないだろう。(中略)。結局のところ、これらの推論から示唆されるのは、銀行の所有資産の価値の大幅な下落により、米国の銀行体制の脆弱化が加速され、無保険預金に対する取り付け騒ぎの発生が危惧されるという点だ」とこれらの経済学者は結論づけ、危険な状態にある銀行の数は、ずっと「深刻な数」になる可能性があるとした。そしてそれは、「取り付け騒ぎによる銀行の持ち株の投げ売りが小規模でおさまったとしても同じだ」という。
SVBの破綻は、米国の銀行業界全体に波紋を投げかけ、シグニチャー銀行という別の銀行の閉鎖にも繋がった。他の多くの金融機関においても、株価が下落し、ウォール街の六大銀行は、時価総額で1650億ドルほどの損失を出している。これは各行の複合資産の13%程度になる。今週(3月第3週)はじめの格付け会社であるムーディーズは、米国の銀行体制の評価を「安定した状態」から「良くない状態」に下げたが、その理由は「運営状況が急速に悪化しているため」としていた。
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