紅海:近視眼的アメリカのもう一つの誤算
2024年1月10日
ビクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook
アンサール・アッラー・イエメン海軍による攻撃が増す中、紅海経由の輸送を停止する世界の海運会社が増えている。特に「攻撃に対抗するための軍事同盟」創設をアメリカが発表した後、それがどれほど成功するのか、そもそもそれは正当かという疑問が浮上した。いつものように、アメリカ合州国から何万キロも離れた紅海地域にワシントンは不器用に進出し、主にイスラエルの利益のための海上輸送を「正当なものに」しようとした。
紅海のバブ・エル・マンデブ海峡からスエズ運河への輸送の一時停止を最近発表した企業には石油大手ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)が含まれる。「紅海での海運治安状況の悪化に鑑み、BPは紅海を通る全ての航行を一時的に停止すると決定した」と同社は述べた。BPの決定は、アンサール・アッラー軍がコンテナ船の1隻を攻撃した後、スイスに本拠を置く世界最大のコンテナ会社MSCがスエズ運河を避けると述べたことを受けたものだ。「紅海航路が安全になるまで、東回りと西回りでMSC船舶はスエズ運河を航行しない。既に現在、一部のサービスは喜望峰経由にルート変更されている」とMSCは報じている。デンマークに本拠を置く別の大手海運グループ、マースクは追って通知があるまで、この海域でのコンテナ船航行を停止した。船の一隻が攻撃を受けたHapag-Lloydなど他の海運大手もリストに加わり「我々は現在喜望峰周辺で船舶を運行している」と述べた。バブ・エル・マンデブ海峡を通過する予定の全ての船舶に対し、追って通知があるまで航海を停止するよう通知する企業が増えている。
ガザとのイスラエル戦争でパレスチナ人の抵抗を支持するアンサール・アッラーは「占領政権に行き来する全船舶を攻撃する」と誓っている。この集団はパレスチナ占領地のイスラエル軍事施設を狙った無人機やミサイルを送り込むのに加え、紅海の船舶に対する一連の攻撃を開始した。この攻撃はイスラエル政権に海運を提供する他企業への圧力も強めている。イスラエルと関係のある船舶をアンサール・アッラーが紅海で攻撃し続ければ、紅海の航行を止める海運会社が増えるだろうと専門家は述べている。
海上の混乱は世界の石油価格を推定約3%上昇させ、スエズ運河使用を多くのグローバル企業を消極的にさせた。スエズ運河は世界貿易、特に石油、穀物、消費財輸送の重要ルートだ。世界の海運の約15%が、ヨーロッパとアジアを結ぶ最短航路である運河を通過する。運河を通過しようとする全船舶は紅海を通過しなければならず、最も重要な事は、イエメンとジブチとエリトリアを隔てる紅海の小さな一帯、重要なバブ・エル・マンデブ海峡を通過しなければならないのだ。通常の貿易の流れが乱れると、価格上昇や遅延が発生し、様々な配送ルートで船舶の航行距離を数千キロ増すため混乱は長引くばかりだ。
報道によると、両社は代わりにアフリカを回る運行をしており、通常船の航行距離が5,000キロ近く伸びる。貨物が目的地に到着するまで更に14日かかる場合があり、消費者の配送経費負担が増加する。「戦争リスク保険料は当然上昇傾向にあるが、船舶がアフリカを迂回するルートに変更されると貨物の航行距離が長くなるため船舶供給は逼迫するだろう」とフロントラインのラース・バルスタッド最高経営責任者(CEO)はロイターに語った。「そうなれば金利に強い上昇圧力がかかるだろう」とも述べた。フレイトス・ツヴィ・シュライバー最高経営責任者(CEO)は「アジアから(イスラエルに)向かう船舶にとって、アフリカを回る航路はスエズ運河を経由するより約7,000海里、10-14日とかなり長い。また、このルートでは燃料費も高くなる。」
現在、イスラエル最大の港、南部のアシュドッドと北部のハイファに係留されている船舶は見つかるのを避けるためトランスポンダー電源を切っていると多くの海運会社情報筋が語った。「イスラエルの港に寄港したり予定をしていたりする船舶運航業者は情報を制限すべきだ」と世界有数の海運協会が発表した勧告は述べている。「公開情報はアンサール・アッラーに利用されかねない。」
多くの海運会社情報筋によると、一部のコンテナ船会社が停止し、他のコンテナ船会社が新たな追加料金を課す中、イスラエルへの海上輸送経費はここ数日上昇しており、ガザでの無慈悲な戦争の中、テルアビブへのサプライチェーンへの圧力が高まっている。経済を海上貿易に依存しているイスラエル政権は追加輸送費用を負担するかどうかまだ明らかにしていない。
西アジアのアメリカ海軍が司令部を置くバーレーンで「紅海海域を守る」ための多国籍軍事連合創設をロイド・オースティン国防長官が厳粛に発表した。イギリス、バーレーン、カナダ、フランス、イタリア、オランダ、ノルウェー、セーシェルとスペインの艦艇が加わるアメリカ艦隊は、理論的には紅海海域を定期的に巡視し、それによりアメリカ合州国の助けを借りて、現在ガザ地区の民間人を攻撃しているイスラエルへの海上補給を確立しようとするだろう。
アメリカが結成した連合はイスラエル政権を守ることを目的としているとアンサール・アッラー公式代表ムハンマド・アブドゥルサラームは強調した。「これでガザを支援する合法的な作戦をイエメンが継続するのを止めることはできない」とアブドゥルサラームは述べ、紛争を拡大しようとする者はその責任を負うことになると強調した。結論として「アメリカが連合を結成して、イスラエルを支援するのを可能にしたのと同様、この地域の人々にはパレスチナ人を支持する完全な正当性があり、パレスチナ人の権利支持とガザの大きな不正反対をイエメンは自ら引き受けた」と彼は述べた。
イスラエルの港に向かう商業タンカーをアンサール・アッラーが攻撃したのと同様、この集団はアメリカ艦船も無人機やミサイルで攻撃したと専門家は指摘した。アメリカ率いる同盟がアンサール・アッラー攻撃を止めるのは非常に困難だろう。紅海を更に軍事化してもアンサール・アッラーが攻撃レベルを高める可能性があるため、この地域に安全をもたらさない。それによりイスラエルの港に船が出入りするのに必要な防衛はできず、イスラエル政権にガザとの戦争を終わらせるようアメリカは一層圧力をかけることになろう。
これも戦争が他に波及する可能性があると専門家は考えている。もしアメリカ合州国がイエメンを攻撃し、アンサール・アッラーが報復攻撃をれば、近い将来、紅海に入港する船はなくなるだろう。加えて、既にアメリカ合州国は以前アラブ同盟諸国と共に、アンサール・アッラーに対し致命的戦争を仕掛けたが、効果がなかったので、イエメンとの戦争は、ありそうにない選択肢だ。対イエメン軍事作戦中、サウジアラビアは、アメリカ合州国の強力な包括的支援を享受したが、この戦争に勝つことはできず、それゆえペンタゴンはイエメン戦争の新参者でも勝者でもない。イエメン人の勇気や、この地域におけるアメリカ合州国の不人気や、紅海がアメリカ大陸から遠く離れていることから、イエメンでの戦争は選択肢ではないことをアメリカ人は完璧に知っている。
これが遙か離れた紅海での新たな軍事行動に反対する懐疑的な声が既にアメリカ国内で多い理由だろう。そして、アメリカが世界の多くの国々に対し、あるいはそうした国々と貿易をしている国やアメリカ「ブラックリストに」載っている国々にさえ制裁を課すことが許されるなら、なぜまさしくアメリカの助けを借りてガザで残酷に破壊されている彼らの同じ宗教の兄弟にアンサル・アラーのイエメン人が手を貸すことが許されないのかと世界中の国々が問うている。
ビクトル・ミーヒンは、ロシア自然科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/01/10/the-red-sea-another-miscalculation-of-the-short-sighted-usa/
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原子力寄生委。
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Prof. Mearsheimer: Israel's Unsuccessful Legal Assertions at the International Court of Justice 33:37
Douglas MacGregor: "Houthis Shocked the World After Defeated the Attack of US-ISRAEL Alliance" 1:34:33
Larry Johnson: Israel Had FAILED In Gaza! It's All Deceit, Deception, Hide And Unpredictability 52:31
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はじめに~【IWJ号外】「元『ニューヨーク・タイムズ』記者クリス・ヘッジズ氏、南アフリカがICJに提訴したイスラエルによるジェノサイドの審理を詳報!『正義を要求し、バイデンの責任を問わねばならない』と訴え!」を出しました!
IWJへの緊急支援をお願いいたします! この1月は、1日から15日までの間に、48件、51万4100円のご寄付をいただきました。この金額は月間目標額400万円の13%であり、1月のあと半月の間で、87%が必要です!! 代表の岩上安身もインフルエンザに倒れ、1週間経っても発熱が続くなど、新年早々、IWJはピンチに見舞われています。IWJは市民に支えられる独立メディアとして、真実を、市民の皆さまに伝え続けていきます! そのためには、市民の皆さんのご支持とご支援が何よりも必要です! 本年1月こそ毎月の月間目標額400万円に届きますように、どうぞよろしくお願い申し上げます!
【中継番組表】
米国がロシア産原油を輸入を再開!? IWJは外務省と経産省に米国によるロシア産原油の実態を把握しているか、米国からロシア産原油の輸入再開について何らかの連絡があったのか、問いあわせました! 本日は経産大臣の定例会見で質問をぶつける予定です! ぜひ御覧ください。
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【第1弾! 地震発生から2週間経ち、岸田総理がやっと現地を視察!「改めて被害の甚大さを感じ、一瞬言葉を失った」と表明】絶句とは国民の側のセリフ! 今まで現地視察すらもしないで、ウクライナ支援を約10億円も下回る被災地支援の予算を決定していたのかと、日本国民全員が言葉を失う!! 地震翌日に自衛隊は派遣に備えて1万人を待機! しかし岸田総理はなぜか出動命令を出さず、5日目にやっと5000人を派遣! この間に命を落とした人がどれだけいたか!「逐次投入」を批判されても「与えられた条件の中で最大限投入をしてきた」と中間管理職のような反論!(『朝日新聞デジタル』、2024年1月14日)
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