Posted in 12 2007
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ウォルター・テヴィス『ハスラー』(扶桑社ミステリー)
かろうじて終電に間に合い帰宅。待っていたのは海外ミステリ系の同人誌としてはおそらく最強であろう『ROM』の最新号。特集はSFミステリなのだが、なんとおっそろしいことに別冊付きである。そしてゲスト編集者があの「kashiba@猟奇の鉄人」。サイトは開店休業状態のようだが、より高次元な舞台でいろいろと楽しんでいるようである。さすが(笑)。
本日の読了本はウォルター・テヴィスの『ハスラー』。
殺伐たるプールゲームの世界を描いたこの物語は、おそらく小説としてよりもポール・ニューマンの映画の方が遙かに有名だろう。だが原作である本書も映画に負けず劣らず、非常に読み応えのある傑作なのである。
賭けビリヤードのプロとして、街から街へ流れる若きハスラー、エディ。彼はプールゲームの聖地シカゴに現れ、最強の名人、ミネソタ・ファッツに挑戦することになる。だが、一進一退の勝負の末、結局は完膚無きまでに叩きのめされてしまう。そんな彼の前に現れたのは同じように惨めな境遇をもつ女性サラ、そしてギャンブルの極意を伝授しようとするバートだった。彼らの助けを得て、エディは立ち上がり、ファッツに再び戦いを挑む……。
挑戦と挫折、努力、そして栄光。民話の構成要素にも似た、実にスタンダードでシンプルなストーリー。語られるエピソードのひとつひとつがわかりやすく、現代の読者には非常に予想しやすい展開といえるだろう。
だが、表面的には単純であっても、テヴィスの語りは実に力強く鋭い。ギャンブラーたちの荒んだ生き様を見せながらも、その心の奥底に潜む孤独や優しさも同時に掘り起こす。さらには戦いのドラマを通じ、人間の誇りとは何か、というところまで問いつめてゆく。
したがって本書は素晴らしいギャンブル小説であると同時に、ピカレスクロマンあるいはビルドゥングスロマンでもある。リチャード・ジェサップの『シンシナティ・キッド』が好きだ、という人には間違いなくおすすめ。
本日の読了本はウォルター・テヴィスの『ハスラー』。
殺伐たるプールゲームの世界を描いたこの物語は、おそらく小説としてよりもポール・ニューマンの映画の方が遙かに有名だろう。だが原作である本書も映画に負けず劣らず、非常に読み応えのある傑作なのである。
賭けビリヤードのプロとして、街から街へ流れる若きハスラー、エディ。彼はプールゲームの聖地シカゴに現れ、最強の名人、ミネソタ・ファッツに挑戦することになる。だが、一進一退の勝負の末、結局は完膚無きまでに叩きのめされてしまう。そんな彼の前に現れたのは同じように惨めな境遇をもつ女性サラ、そしてギャンブルの極意を伝授しようとするバートだった。彼らの助けを得て、エディは立ち上がり、ファッツに再び戦いを挑む……。
挑戦と挫折、努力、そして栄光。民話の構成要素にも似た、実にスタンダードでシンプルなストーリー。語られるエピソードのひとつひとつがわかりやすく、現代の読者には非常に予想しやすい展開といえるだろう。
だが、表面的には単純であっても、テヴィスの語りは実に力強く鋭い。ギャンブラーたちの荒んだ生き様を見せながらも、その心の奥底に潜む孤独や優しさも同時に掘り起こす。さらには戦いのドラマを通じ、人間の誇りとは何か、というところまで問いつめてゆく。
したがって本書は素晴らしいギャンブル小説であると同時に、ピカレスクロマンあるいはビルドゥングスロマンでもある。リチャード・ジェサップの『シンシナティ・キッド』が好きだ、という人には間違いなくおすすめ。