はてなキーワード: 足音とは
導水路(数キロ)にも居ない、こちらに向かって走ってくるような足音は、大体が魚が跳ねる音か、迷い込んで落ちてきたウリ坊の足音になる。
余談だが、導水路の魚等に釣られて導水路に迷い混んだ動物は殆ど助からない。陸に上がる方法が少なく、上水槽(ヘッドタンク)のスクリーンに引っかかって水死体になる。
たまに首輪を付けた犬とかが引っかかってる
話を戻すが、一番見るのが発電所内部
他に誰かが居る場合は車が停まっているかですぐに分かる。ダム勤務者が足で降りてくる事はまず考えられない。
誰も居ないはずなのに、誰かが居るかのような気配を感じる事がある。
それでも一応挨拶しておくかと、発電所の地下まで見に行くが、誰も居ない。
また、遠方の監視カメラにもしっかりと映る。
ダムの運用は24時間365日常に監視を置いておく必要があるので、監視員が複数の発電所を見ている事になっているが、深夜帯に人影が映る。
翌朝誰も居ないよねと、当直者、日直者、監視員の引き継ぎで確認し、幽霊かなという話になり、5E(緊急停止)引かなければ良いよ、という結論で締める事になる。
雪が細かく、音もなく降り続けていた。山奥の駐車場は、白いヴェールをかけた舞台のように静かだった。気温はマイナス九度を下回っていた。吐き出された息が、空気に触れた瞬間に白く凍りつき、すぐに雪の景色に溶け込んで消える。まるで、どんな言葉もこの白さの前に無力だと言われているようだった。8人の男たちが車を降りた。誰も何も言わなかった。服を脱ぐ動作も、いつものように淡々としていた。ここでは余計な言葉は必要ない。必要なのは、ただその場所にいることだけだった。
全員が完全に裸だった。頭はつるりと剃り上げられたスキンヘッドで、眉以外の毛は一本も残っていない。陰部も、陰嚢も、アナル周りも、すべてパイパンに処理されていた。肌は深い墨色に焼き上げられていた。長年かけて全身を黒く日焼けさせた結果、雪の白さと冷たい光の中で、その肉体は磨き上げられた黒檀のように艶やかに浮かび上がっていた。そして8人全員が、容赦ない寒さの中で勃起していた。8本の黒い肉棒が、冷気の中で血管をくっきりと浮き立たせ、太く反り返っている。男たちの黒紫色の亀頭は張り詰め、先端から透明な液が長く糸を引いて、雪の風にわずかに震えていた。リーダーはその中心に立っていた。
彼は元々は一人でPornhubに全裸の滝行動画を上げ続けていた。その滑らかな黒い頭と、淀みない黒い体は、すでに何万もの視線を集めていた。彼の肉棒は特に重厚で、根元から太い血管が何本も盛り上がり、冷風の中でゆっくりと脈打っていた。俺もその一人だった。最初はただ動画を見ていただけだった。いつしか憧れが強くなり、毛をすべて落とし、体を黒く焼き、このサークルに加わっていた。今もこうして、雪の中で勃起したまま立っている。他の6人も同じだった。肩幅の広い者、脚の太い者、腹にわずかな厚みのある者。それぞれ体型は違うが、誰もが同じ条件を満たしていた。全身黒く焼け、すべてを剃り上げ、寒さの中で硬く反り返った肉棒を晒している。
「よし、行くぞ」
リーダーが短く言った。8人は雪の山道を歩き始めた。膝下まで積もった新雪を、ゆっくりと掻き分ける。雪は音を吸い取り、足音さえも柔らかく飲み込んでしまう。8人の黒い裸身が、白い世界の中で静かに動いていく。その姿は、まるで墨で描かれた線が、白い紙の上をゆっくりと横切っているようだった。歩くたびに、8本の黒い肉棒が優雅に上下に揺れた。冷たい風が亀頭を撫で、先端から透明な糸が長く伸びては、純白の雪の上に落ちる。一瞬だけ光るその滴は、すぐに新たな雪片に埋もれて消えた。肩や頭に積もる細かな雪が、体温で溶けて冷たい水の筋となり、黒い胸や腹、太ももを伝い落ちる。その軌跡が、黒い肌の上に一瞬の白い光を描き、すぐに消える。雪はすべてを等しく覆う。汚れも、熱も、言葉も。寒さは肉体をより敏感にし、黒い肌の表面を張り詰めさせ、血管の一本一本までを際立たせる。反り返った肉棒の先端に雪片が触れては溶け、冷たさと熱が同時に体を貫く。その感覚は痛みとも快楽ともいえる。誰も声を上げなかった。荒い白い息遣いだけが、静寂の中でかすかに重なる。黒い肉体同士の距離は近く、時折視線が交差する。その視線は雪の白さの中で、言葉にならない熱を静かに伝え合っていた。
この雪の中を歩く8人の姿は、奇妙に美しかった。黒と白のコントラストが極限まで研ぎ澄まされ、俗世の雑音をすべて削ぎ落とした、静かな絵のようだった。雪は清め、雪は美化する。そして雪は、すべてを無に帰す。それでも、そこには確かに青春の爽やかさが満ち溢れていた。
二十代半ばの若者たち。大学を卒業して社会に出た者もいれば、まだ学生の者もいる。誰もが忙しい日常を離れ、ただこの山に来て、体を黒く焼き、毛を落とし、寒さと水に打たれることを選んでいる。
憧れだった。潔さだった。自分を極限まで削ぎ落として、ただ「あるがまま」に立つことの、痛いほどの爽快感だった。
雪の中で勃起したまま歩くこの行為は、どこか馬鹿げているようにも見える。だが、同時にひどく真っ直ぐで、ひどく若々しかった。
寒さで体が震えながらも、誰一人として萎えない肉棒。痛いほどに硬く反り返ったそれは、青春そのものの象徴のようにさえ思えた。
恥じらいを捨て、視線を恐れず、ただ前を向いて歩く。笑いも、照れも、すべてを飲み込んだような潔い笑顔が、時折浮かぶ。
俺たちの姿は、汚れを知らない、荒々しくも清らかな青春の匂いがした。まるで夏の部活後の汗のように、痛快で、眩しくて、胸の奥がすっと軽くなるような爽やかさだった。
滝に着くと、水音が一気にその静けさを破った。半分凍りついた滝。巨大な氷柱が牙のように垂れ下がり、中央の流れだけが容赦なく落ち続けている。
1周目は一人ずつだった。最初の一人が滝の下へ入る。黒いスキンヘッドに凍てつく水が叩きつけられ、体がビクンと硬直する。水の勢いが黒い胸を打ち、腹を滑り、反り返った肉棒を激しく打ち据える。肉棒は左右に激しく揺れながらも、さらに硬く張り詰め、血管を鮮明に浮かび上がらせる。黒い肌が水に濡れて艶やかに光り、雪の白さと重なって、まるで黒い宝石が洗われているようだった。次々と、黒い裸身が滝に打たれていく。誰もが背筋を伸ばし、目を見開き、水圧と寒さに耐えながら勃起を保っていた。水に打たれるたび、黒い肉棒が跳ね、透明な液が水しぶきに混じって飛び散る。その姿は、雪の中で鍛えられた肉体が、さらに純粋な水によって磨かれ、輝きを増しているように見えた。若さの勢いが、水しぶきとともに弾けているようだった。
リーダーの番になった。彼は堂々と滝の中心に立った。長年の経験から姿勢は完璧だった。凍てつく水が頭から肩、胸、腹、そして重厚な黒い肉棒を容赦なく打ち据える。肉棒は激しく揺さぶられながらも、ますます太く硬くなり、先端から大量の液が水に混じって流れ落ちる。黒い肌全体が水に濡れて鏡のように輝き、雪の白い背景の中で、動く黒い彫像が儀式を行っているかのようだった。
最後に俺だった。冷水が全身を一瞬で支配する。黒い肌が赤く熱を帯び、反り返った肉棒が水圧で激しく打たれる。痛みと快楽が混じり合い、雪の中で育まれた感覚がさらに鋭くなる。若い体が、水の冷たさを跳ね返すように、生き生きと反応していた。
休憩を挟んで、2周目はペアで行うことになった。俺とリーダーが肩を並べて滝の下に入った。二人の黒い裸身が、ほとんど触れ合う距離で並ぶ。二本の逞しい黒い肉棒が、水の勢いで激しく揺れ合い、時折先端が軽く触れ合う。冷水の中で、二人は同時に声を上げた。「はあっ……うおおっ」リーダーの低い、喉を震わせるような声。「んああっ……はああっ」俺の、熱く途切れ途切れの叫び。二人の黒い肌と黒い肉棒が、滝の中で静かに響き合うような気がした。雪の白さと水の透明さが、二人の黒さをより深く、力強く際立たせていた。若さの熱が、水しぶきを飛び散らせながら、爽やかに弾けていた。滝行の終わり近く、俺たちは雄叫びを上げながら、ほぼ同時に射精した。白い精液が凍てつく水の中に勢いよく飛び散り、すぐに雪の白さに溶け込んで消えた。
全裸黒い男たちが横一列に並び滝に深く礼をした。
「清められたな」
「……はい」
帰り道、8人の黒い裸身が湯気を立てながら雪道を戻る。雪は再びすべてを優しく覆い始め、さっきの熱と叫びを静かに記憶の中に封じ込めるようだった。俺とリーダーは少し遅れて歩いた。木陰に入ったわずかな瞬間、手を握り合った。冷え切った指先が触れ合い、互いの熱だけが一瞬、強く結ばれる。すぐに離し、また何事もなかったように歩き出した。駐車場に戻ると、皆が無言で服を着始めた。リーダーと俺も最後にジャケットを羽織り、車に乗り込んだ。
「今日もいい滝行だったな」
「次はいつにする?」
絶望してとりあえず吐き出したい。
武器輸出解禁についての50年前の外務大臣の発言に対して、日本を取り巻く情勢も変わり時代は変わったと首相が回答したと。
武力に加担するようになっていい時代なんてあるのだろうか。戦争を肯定する時代なんかないだろ。日本は“もう”戦争をしないと定めたんだ。
「戦争反対、世界平和」なんて普遍的なものだと信じて生きてきた。
日本を取り巻く情勢を変えたのは誰なんだろう。
武器を輸出できたり、都合の悪い文書は黒塗りにできる法律が施行されて、ひたひたとその足音は近づいてて。
戦いたい人なんだろうと思ってたけど、こんなに早く毎日が不安になる日々が来るなんて思ってなかった。
考えが甘すぎた。
少しでも反発したらスパイだと言われる日も遠くないんだろうか。
海外ツアー発表された!おめでとう!って、どこの国での開催だろうと、何の不安もなく安心して行って帰って来れる日々を送りたいよ。
アクスタ作れるのか心配になりたくないよ。
自分より若い子を応援しながら、この子達に何もないよね?なんて思いたくないよ。
緊急事態ということになれば、「緊急事態だから」というだけで議論なんてせず、様々なことが進んでいきそうで。国民会議でしたっけ。
それに巻き込まれるのは10代20代の若い子達からなのか、30代40代くらいからってなるのか。人数いる世代からなのか。
こんなことが頭をよぎるような時代嫌だよ。
新たなジャンルに挑戦!すごい!
研究室でパソコンを開いているA子の手が、ふと止まった。目の前の画面は、全く集中できない状態だった。携帯の振動音に気づき、A子は無意識にそれを手に取った。大学内の匿名掲示板が開かれているのを見て、少しだけスクロールを始めた。
普段ならあまりチェックしない掲示板だが、今日はどうしても気になってしまった。おそるおそる目を通していると、ふと目に留まった投稿があった。
「クソする時、声出す奴、マジでウザい。トイレのドア開け閉めの音、うるさい。」
A子はその一文を繰り返し読み返した。特に「トイレのドア開け閉めの音、何回も聞こえるんだけど」という部分が気になった。それがまるで自分が感じていたことのように思えたからだ。
A子は心の中で呟く。そのトイレで、何度も違和感を感じていた。ドアの開け閉めの音、そして誰かの足音。常に後ろに視線を感じるような感覚。誰かに見られているような、監視されているような気がして、どうしても落ち着けなかった。
しかし、その掲示板を見た限り、他の人たちはただの愚痴としてその投稿を流しているようだった。他の学生たちは、別にトイレで不安を感じているわけでもなさそうだ。
「でも、誰も気にしてない。」
A子は再び携帯を握りしめた。掲示板には、他にも「トイレで声出す奴がうざい」という投稿が並んでいるだけで、カメラに関する話題は一切触れられていない。誰もその異常に気づいていない。
「でも、私は…」
A子は心の中で、ふと思った。あのトイレにカメラが仕掛けられている可能性がある。それに気づいているのは、もしかして自分だけなのか? それとも、自分の気のせいだろうか? カメラがあるという確信が持てるわけでもない。だけど、どこかで、深い不安がA子を支配していた。
どうしてこんなことに気づいてしまったのか。もし、周りに話したとしても、誰も信じてくれないだろう。誰もそのことに気づいていないのに、自分だけが感じ取っている――そのことが余計にA子を孤独にさせた。
「おかしいよ、きっと…」
A子は携帯を閉じ、机に顔を埋めた。自分の感じる違和感が、どこかで単なる過剰な不安にすぎないのではないかという気もする。実際、他の誰もそのことを気にしていないし、ただの思い込みなのかもしれない。
でも、もし本当にカメラがあるとしたら…その考えが頭から離れなかった。どうしようもなくなってしまいそうな感覚が、胸に押し寄せてくる。怖い。けれど、それを誰かに話すことはできない。誰も信じてくれないだろう。しかし、A子には、自分の携帯のマイクロフォンの音が拾われている可能性には思い至らなかった。
「どうして、こんなこと…」
A子は苦しくなりながらも、まだその考えを否定しきれない自分がいた。カメラが設置されているとしたら、何のために? そして、そのことをどうして自分だけが感じ取ったのだろう?他の誰かが気づくことなく、誰もその不安に気づかないままでいるというのは、どこか恐ろしい。
その時、ふと研究室のドアが開く音がした。振り返ると、石田が静かに入ってきて、自分の席に座るとパソコンを開いた。何も言わず、黙々と作業を始めた。A子はその背中を見つめながら、恐怖感に鳥肌が立った。
「でも、どうして…私だけ?」
その思いが再び胸に湧き上がる。石田も、他の誰も、きっとあのトイレの異常には気づいていない。自分だけが感じ取っていることに、どこかで恐れを感じる。もしも本当にカメラがあったとして、誰もそれに気づいていない中で、自分だけがそのことを知っているなんて、耐えられないような気がした。
「どうしたらいいんだろう。」
その場でどうしていいかわからないまま、A子はぼんやりとその場に座り込んだ。周囲は何も気にしていない。誰もが普通に過ごしている。なのに、A子だけが異常に気づいている――その葛藤が、A子をさらに追い詰めていった。
童貞がペアーズで20代後半〜30代の女性とマッチングし、日本で家庭を持つというシナリオを走らせてみよう。
子どもが10歳、15歳になった時、円安がさらに進んでいたらどうなる? 海外旅行も、留学も、海外製の教育ツールも、今の数倍のコストがかかる。日本円という「減価し続けるアセット」だけで家族を支えるのは、ストレージの空き容量が減り続けているサーバーに、新しいデータを書き込み続けるようなものだ。
政府の補助金(パッチ)で数字を誤魔化しても、原油100ドル超えのインフレが来れば、家計の「可処分所得」は食いつぶされる。君が一生懸命稼ぐ「円」は、家族の生活を守るための「十分なスループット」を発揮できなくなる。
○○歳で「足立区の騒音」に悩んでいる君が、子どもを持った時、その泣き声や足音で近隣トラブルになったら? 狭い日本家屋、高い居住コスト。君の脳のCPUは、育児のストレスと環境の悪さで常にオーバーヒートする。
勇者はだいたい四十代の半ばになると、ある朝ふいに自分の足音の質が変わっていることに気づく。
靴底と大地のあいだで鳴る音が、かつてのような「これから何かを始める」音ではなく、「ここまでなんとかやってきた」という種類の音に、ひそやかにすり替わっている。
それは決して劇的な発見ではない。
台所の隅でいつのまにか増えた空き瓶に気づくのと同じくらい、静かで、取り立ててニュースにもならない。
だがそのささやかな気づきが、魔王討伐という長い物語の進行方向に、ゆっくりと角度をつけていく。
若いころの勇者は、自分の剣筋が世界をまっすぐに切り裂いていくと信じている。
城を出るときに交わした約束や、酒場で地図を広げながら語った大げさな言葉たちは、まだ新しく研がれた硬貨のように、ポケットの中で心地よく音を立てる。
魔王の居城までの距離は単なる数字にすぎず、山脈も荒野も、少しばかり手間のかかる試練のリストとしか見えない。
そこに描かれている山の名前には、すでに二度三度と越えた記憶のしみがついているし、かつてはただの点にしか見えなかった村には、あの夜飲んだ安い酒の味や、焚き火の煙の匂いがまとわりついている。
地図はもはや「これから征服すべき世界」ではなく、「すでに歩いてしまった時間の、薄いアルバム」のようなものになる。
そのころになると、魔王という存在の輪郭も、微妙に変質してくる。
若い勇者にとって魔王は、物語の最後に倒されるべき、単純で巨大な黒い点だ。
しかし四十代の勇者にとっては、それは世界のどこかで黙々と仕事を続けている、まだ見ぬ同年代の労働者にも少し似ている。
同じくらいの年齢で、同じくらい肩を凝らせて、同じくらい「やめどき」を見失っているかもしれない誰か。
こんなふうに考え始めると、剣を振るう腕の中に、目に見えない余白が生まれる。
一撃ごとに、「この技を教えるなら誰がいいだろう」という、予定にない注釈が挟みこまれていく。
斬り結ぶ最中に、背中のほうでまだ見ぬ若い勇者たちの影が、ぼんやりと動き始める。
四十代半ばの勇者が、最初に後継者のことを考えるのは、たいてい旅の途中の、さして意味のない小さな町だ。
朝市の立つ広場で、荷車に寄りかかって居眠りをしている若い衛兵の姿や、木剣で遊び半分に打ち合う子どもたちの動きを見ているうちに、ふと気づく。
自分がこれまで「通り過ぎるだけの背景」と見なしていた風景のどこかに、次の物語の主人公が隠れているのかもしれないと。
それはむしろ、乗合馬車の窓に映った自分の顔と、向かいの席で眠る若者の顔を、何気なく見比べてしまったときの、あの妙な手触りに近い。
どちらかが絶対的に正しいわけでも、間違っているわけでもない。
ただ、時計の針がそれぞれ別の位置を指している、というだけのことだ。
後継者育成というと、仰々しい響きがある。
戦い方を教える、地図の読み方を教える、怪我をしたときの対処法を教える。
要するに、自分が若いころに誰かから受け取ったものを、少し形を変えて返していくにすぎない。
ただ、その行為の背後には、誰にもはっきりとは言葉にしない前提がひっそりと横たわっている。
「自分はおそらく、魔王の城のいちばん奥までは行かないだろう」という静かな予感だ。
もっと個人的で、もっと内密な、机の引き出しのいちばん奥にしまい込まれた私信のようなものだ。
長い年月をかけて鍛えられた剣は、まだよく切れる。
走り慣れた道なら、今でも若者たちより速く駆け抜けられるかもしれない。
それでも、勇者は知っている。
魔王討伐という物語は、多分どこかで「自分ではない誰か」の手によって終止符が打たれるのだと。
そのことに気づいた勇者は、そこで初めて本格的に後継者のことを考え始める。
自分の技や経験が、まるで古い魔法書のコレクションのように棚に並んでいる様子を思い描き、そのうちのいくつをどの順番で手渡すべきかを、静かに検討する。
全部を渡す必要はない。
全部を渡そうとしても、おそらくうまくはいかない。
四十代の勇者が、かつて自分がそうであったように、彼らの無謀さや頑固さや、不器用な希望を見て、ひそかに苦笑いを浮かべる。
それは、昔の自分の日記をこっそり読み返しているようなものだ。
ところどころ赤面しそうになりながらも、そこに書かれた拙い言葉に、なぜか少し励まされる。
いつか、どこかの時点で、魔王は倒される。
それが具体的に誰の手によるものかを、世界はたいして気にしない。
四十代半ばを過ぎた勇者の名は、その物語にはたぶん、ほとんど出てこない。
しかし、どこかのさほど有名でもない町外れの酒場で、年季の入った剣を壁に立てかけ、若い勇者の話を黙って聞いている男がいるかもしれない。
旅の途中で覚えた、雨の気配の読み方や、負け戦からの引き際の見極め方を、必要なときにだけ、短く差し出すのがうまい男だ。
だが、物語のどこか深いところで、彼の足跡は確かに地図に刻まれている。
魔王討伐を諦めるというのは、実のところ、物語そのものを諦めることではない。
ただ、自分が担うべき役回りを、ほんの少しだけ脇にずらすことだ。
主役の椅子から半歩横にずれて、次にそこへ座る誰かのために椅子を整え、背もたれの埃を払う。
四十代半ばの勇者がやっていることは、だいたいそういう種類の、目立たない仕事である。
そして、そんな静かな仕事こそが、世界が気づかないところで物語をつないでいる。
新しい勇者が剣を抜くたびに、その刃のどこかには、名前も知られないままの古い勇者たちの手の温度が、うっすらと残っている。
それは、誰も見ない夜空の端っこで、黙ってまたたき続ける小さな星の光に、少しだけ似ている。
翌晩、増田あすかに引き連れられ、一行は町外れの「旧・聖マリアンナ病院」へと足を踏み入れていた。
「いい? 全員、索敵を怠らないこと! 霊素(エクトプラズム)の揺らぎ一つも見逃しちゃダメよ!」
彼女が踏みしめる古びたリノリウムの床は、実は「佐藤」がその瞬間に、彼女の歩幅に合わせて生成しているホログラムに近い実体だ。
建物の外――増田の視界が届かない場所には、もはや空も大地も存在しない。
そこにあるのは、数十億年前に滅びた地球の残骸と、それを包み込む虚無だけ。この病院も、学校も、通学路も、すべてはたった一人の「生き残り」を飼育するために維持されている巨大なテラリウムに過ぎないのだ。
実際には、ユキが自らの触手の一本を地下階で震わせ、壁を叩かせた音だ。
「きたっ! ほら、やっぱり私の勘に狂いはなかったわ!」
増田は目を輝かせ、音のした方へと駆け出す。その無防備な背中を見送る三人の視線は、凍りつくほどに冷淡だった。
「出たああああ! 本物! 本物の幽霊よ!」
それはレンが魔力で作った、知性も魂もないただのエネルギー体だ。増田が追いかけると、その影はすり抜けるように消えていく。
「待ちなさい! 逃げるんじゃないわよ!」
彼女が「本物」を求めて必死に伸ばしたその手は、常に宇宙で最も凶悪な怪物たちの懐の中にあった。
探索を終え、朝日(佐藤が作り出した、ただの発光現象)が差し込む頃、増田は満足げに腰に手を当てた。
「今日は収穫アリね! 証拠写真は撮れなかったけど、あの冷気……あれは間違いなく霊の仕業だわ!」
「そうだね、部長。僕も背筋が凍ったよ」
レンがわざとらしく肩をすくめて笑う。
実際、さきほどの冷気はユキが体温を絶対零度まで下げた際、制御しきれずに漏れ出した余波だ。増田が普通の人間なら、その瞬間に凍結して砕け散っていたはずだが、佐藤が彼女の周囲だけ物理法則を書き換え、保護していた。
「ふふん、あんたたちも少しは『世界の真実』に近づけたかしら?」
勝ち誇った顔で部室へと戻る増田。
その後ろ姿を追いながら、三人は通信を交わす。
| 日 | 記事数 | 文字数 | 文字数平均 | 文字数中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 01 | 1969 | 242756 | 123.3 | 44 |
| 02 | 2659 | 268382 | 100.9 | 44 |
| 03 | 2770 | 282942 | 102.1 | 42 |
| 04 | 2675 | 286454 | 107.1 | 44 |
| 05 | 2623 | 264643 | 100.9 | 44 |
| 06 | 2624 | 245797 | 93.7 | 40 |
| 07 | 2945 | 297212 | 100.9 | 44 |
| 08 | 3595 | 378156 | 105.2 | 39 |
| 09 | 4125 | 440904 | 106.9 | 46 |
| 10 | 2878 | 336233 | 116.8 | 44 |
| 11 | 2821 | 291217 | 103.2 | 42 |
| 12 | 2499 | 273717 | 109.5 | 44 |
| 13 | 2737 | 281485 | 102.8 | 40 |
| 14 | 1959 | 244152 | 124.6 | 44 |
| 15 | 2018 | 305398 | 151.3 | 47.5 |
| 16 | 2060 | 209147 | 101.5 | 41 |
| 17 | 2439 | 283353 | 116.2 | 39 |
| 18 | 2256 | 279900 | 124.1 | 44 |
| 19 | 1892 | 208528 | 110.2 | 43 |
| 20 | 2146 | 224830 | 104.8 | 39 |
| 21 | 2030 | 243418 | 119.9 | 42.5 |
| 22 | 1872 | 223019 | 119.1 | 42.5 |
| 23 | 1862 | 232558 | 124.9 | 39 |
| 24 | 1870 | 230143 | 123.1 | 45 |
| 25 | 2449 | 261506 | 106.8 | 40 |
| 26 | 2013 | 225824 | 112.2 | 47 |
| 27 | 2355 | 246615 | 104.7 | 43 |
| 28 | 1987 | 205738 | 103.5 | 38 |
| 1月 | 68128 | 7514027 | 110.3 | 42 |
■結婚指輪が高いと言ったら泣かれた /20260203113758(78), ■軍事力エスカレート問題をどうするのか答えないくせに /20260224073155(66), ■子どもの足音がうるさいって言うけどさ /20260216213649(63), ■まともに生きてれば男性嫌悪にはならないんだよね、残念ながら /20260216094306(60), ■超かぐや姫!が超つまらなかった /20260207025626(58), ■ /20260212163908(55), ■独身は助け合えないものか /20260213002708(52), ■ /20260211132014(52), ■ /20260207001814(52), ■女性の言う「優しい男性が好き」ってやつ /20260218115044(51), ■最近子無しへの風当たり強くない? /20260204161236(49), ■なぜAI生成文章はダメでAI生成スライドは良いのか /20260213105936(49), ■某漫画家犯罪者の件、連載止める必要無くない? /20260228061909(47), ■予定を決める時、LIN EがBot状態の人がしんどい。 /20260206101719(41), ■ /20260204082154(41), ■高市のリウマチ /20260203085905(40), ■若者全員不幸になりますように /20260207160700(40), ■衆院選 1200万人以上が中道に投票、7議席(小選挙区) /20260209214223(39), ■魚拓は忘れられる権利の侵害では? /20260218214100(39), ■リベラルが自衛戦争と侵略戦争の区別をしたがらない理由 /20260223141436(39), ■【追記】夫が市販の風邪薬を飲む /20260222102725(38), ■徴兵制復活したら自民党に投票した奴だけ召集しろよ /20260206001209(37), ■ /20260213154834(35), ■ /20260213124536(34), ■はてなが嫌いならはてなを出て行けばいいのに… /20260211184525(33), ■あ〜あまた旧民主党のいつものビョーキが始まっちゃったよ /20260207195816(32), ■なんで声優や漫画家ってもっとジェネリックしていかないんだ? /20260221082941(32), ■積読とか積みガンプラとか買っただけで満足して後回しになる行為の正しさってどこにあるの? /20260227120932(31), ■Z世代の弱者への厳しさは凄いと思う /20260217204749(30), ■さようなら中道・立憲 /20260213190617(29), ■ /20260206210115(29), ■ツァ←アクアパッツァでしか使わへんやろ ヮ←シークヮーサーでしか使わへんやろ /20260225223714(28), ■リベラル≠反体制 /20260205155956(28), ■婚活ってもっとロジカルで良くない? /20260216120020(28), ■俺も老害なんだなあ /20260218062235(28), ■#ママ戦争止めてくるわ が致命的なのって /20260210072601(28), ■これって俗にいうワンナイト? /20260205133744(27), ■高市よりも遥かに劣っていた野党の面々とその支持者 /20260208232444(27), ■(少し追記しました)つみたてNISA月5万してるけど、怖くなってきたので月3万に減らすかもしれない /20260213010141(27), ■未だにポケモンが151だと思ってる人ってどうやったら産まれるの? /20260224195211(26), ■なぜ自分が生きてるのかガチで分からない /20260214234955(26), ■左派ってどのタイミングで改善できるの? /20260217114723(26), ■ /20260211081312(26), ■どうも!氷河期独身女性です! /20260224212756(26), ■妻が高市首相を支持している /20260204181436(25), ■仲の良い同僚と飲んだ /20260213150448(25), ■漫画のリメイクって売れると思うんだがないのかな? /20260131134625(25), ■俺が男の弁当作りを教えてやる /20260204075110(25), ■コミュニケーションが分からなくなった /20260220144729(25), ■今回の選挙はフェミニズムの歴史に残るものになるだろう /20260209085720(24), ■いつのまにか「戦争反対」が選挙の争点になった?? /20260207211056(24), ■29歳女、赤ちゃん言葉がやめられない /20260218190923(24), ■27歳中卒女性の日記です。 /20260131040558(24)
性感帯開発とは即ちパブロフの犬である、というのが持論である。
少しも気持ちよくない箇所で感じられるようになるには、同時に気持ちいい箇所を触ることで身体に錯覚させるしかないのだ。それを繰り返せば性感帯として成り立ち始める。
……ということで私は今夜もせっせせっせと小人が靴でも作るように乳首を性感帯にしようと励んでいた。
乳首を弄られて喘いでる女は全員演技だ。言い切れる。
話がそれたが、そうしていたら突然思い出したことがある。
その記憶の噴出はほとんどフラッシュバックに近く、しかし恐ろしい記憶ではない。
その出来事は私が元夫と別れる前、つまり少なくとも六年以上前の話だ。
それこそうさぎ小屋みたいな2DKの狭苦しいアパート、エアコンは寝室にしかついておらず、必然的にうさぎのケージは寝室にあった。
私と元夫がなんかそういう空気になりイチャコラし始め、元夫が私の乳首を触り、私が虚無りながら喘いでいる間、同室のケージで眠っていたうさぎが突然寝言を言ったのだ。
キッ、みたいな声を連続して出し、寝相というか、モゴモゴ動いた。
元夫はよくわからないくらい神経質な男だったので一旦虚無の時間は終わる。
「えっ可愛い」
私もそれどころじゃなくなり、足音を忍ばせてウサギのケージに近寄り、じっと観察する。
うさぎは割とすぐに起きてしまい、何というか、全てが水の泡になってしまったことがあったのだ。
離婚に伴い私が引き取り、引っ越しなどの環境の変化に馴染めずに死んでしまったのだ。
……とまあ、パジャマのお腹をペロン!とめくって乳首開発をしていたときにそのうさぎの声を思い出してしまい、私は今、泣いている。
ふわふわの毛並みを撫でたい。
次の診察は明日です。
最後に会ったのは十年ほど前で、役所で後ろ姿を見かけた。その後は風の噂も入ってこないので全く知らない。我が家は虐待と名の付くものが全部ある家で、ここ全部と書いた後に「虐待 種類」とか入れて一応検索してああ…全部あるなあ…ってしみじみと感じつつ戻ってきたような、そういう環境だった。母や兄弟はそんな環境を作り上げた父親をとてつもなく憎んでいる。家庭内の最も重いタブーになっていて、話題に上がると悪口じゃない時がない。
彼は未通院で診断こそ下りていないものの、恐らくはADHDの気があって、自分の知る限りではえらく多動と衝動の中に生きていた。いつも背中を追い立てられるようにして焦っていたし、衝動からの思い込みで根拠の全くない言いがかりを付けたり、他人と共に暮らすということがまるで出来ない人だった。出来ないのに結婚したのも子供をもうけたのも、彼の頭にのみ存在する焦りのさせた事だろう、とその結果にあたる者は推測を立てている。自分にもADHDの傾向はあるからかなんとなく予想がつく。ただ、こちらは意思のもとで微量にはコントロールできるのと、通院等ケアを入れているので恐らく野放しの父親の方が重度だろう。
父親がしてくれなかった事や、奪われた事、壊された事は数えていくときりがない。他の家族が父親を憎んでいるように、自分にもその憎しみや恨みはあって、何年経っても精神の底でなにも変わらずにじっと息づいている。息をしているだけで暴れ出すことも何もない瘤のような存在だが、確かにそこにあって、ある事自体が望ましくない感情がある。その瘤の隣に、悪いものに比べたら本当に小さいけれど、父親がしてくれた事の瘤もある。
父親には質感を持った空想を語る才があった。衝動で夜11時のドライブに出て、体力のない子供が眠そうにしていたら即興で寝物語を話してくれたことがある。シチュエーションはとても普通じゃなかったし、正直言って寝ていた子をわざわざ起こして車に乗せるより家でそのまま寝かせてほしかったけど、寝物語は今も忘れないほどに気に入っている。台本などは無しに全てその場で話しながら物語を組み立てていた。登場キャラクターの絶妙にコミカルとシニカルの間を行き来する味付けが本当に面白かった。次の日からはまた、足音を立てて歩いただけで突き飛ばされるような日々に戻っても、今日まで「してくれた事」だと思っている。
父親に対しての感情を書き連ねるなら、もう関わりたくない、できればもう亡くなっていてほしい、うっかり出くわす可能性に怯えたくないから。あたりになる。「してくれた事」は今日に至るまでそれを全く打ち消さない。
水曜日、21:00。僕は定刻通りに机に向かっている。
21:00は思索の時間。21:00から23:00は理論物理、23:00から23:12は歯磨きとフロス、23:12から23:18は量子場の揺らぎを想像しながらストレッチ。秩序は宇宙の最小作用原理の家庭内バージョンだ。
従来の弦理論は世界面上の2次元共形場理論(CFT)を基礎にしている。
しかし僕が追っているのは、世界面という発想そのものを派生概念に落とし込む枠組みだ。
つまり弦が時空を動くのではなく、時空がある種の∞-圏的対象の安定ホモトピー極限として現れるという立場。
最近の思索の中心はextended TQFTをさらに高次化し、n-カテゴリー値を持つコボルディズム仮説を、超対称性を組み込んだ派生スタック上で再構成すること。
通常のコボルディズム仮説は、十分双対可能な対象がフレーム付きTQFTを分類する、という主張だ。
しかし僕の作業仮説では、弦理論に対応する対象は単なる双対可能では足りない。
必要なのは超双対可能性とでも呼ぶべき構造で、これはスペクトル圏 enriched な (∞, n)-圏における安定性と、自己言及的モジュライの固定点構造を同時に満たす条件だ。
友人Aが昼に来て、「それって検証できるの?」と聞いた。
僕は説明した。検証とは何か。通常は散乱振幅を計算して実験と照合する。
しかし、もし時空そのものがモジュライ空間の特異点の解消として出現するなら、観測可能量は圏論的自己同型群のスペクトルに対応する。
実験とは、そのスペクトルの低エネルギー極限を間接的に触ることにすぎない。
午後は、ミラー対称性を再解釈する作業。従来はカラビヤウ多様体のA模型とB模型の同値だと説明される。
しかし僕は、これを観測者の選び方に依存するホモトピー固定点の再パラメータ化とみなしている。
つまりミラーとは幾何の双対ではなく、情報圧縮の異なる展開形式だ。
弦の振動モードは、実は安定ホモトピー群の特定次数に対応していて、質量スペクトルは圏のt-構造の切断に対応する、という仮説を立てている。
これが正しければ、重力はエンリッチメントの忘却関手の副産物になる。
ラベルの向きが3度傾いていた。3度だ。僕は分度器で測った。
だから僕は即座に修正した。宇宙の熱的死を防ぐことはできないが、冷蔵庫の秩序は守れる。
隣人が「今日は何してるの?」と軽く聞いてきたので、「10次元超多様体上のBPS状態の安定条件を再定義している」と答えた。
彼女は「へえ、楽しそう」と言った。意味を理解していない確率は0.997以上だが、社交的応答としては合格だ。
短期的利益に飛びつく戦略は、摂動展開の低次項に固執する理論家と同じだ。
さて、超弦理論の核心に戻る。
現在の主流は、M理論を背景に、様々なデュアリティを統一的に理解する方向にある。
しかしそれでも背景時空は暗黙に仮定されている。僕が考えているのは、背景独立性をさらに推し進め、「背景とは観測者の圏論的選択にすぎない」という立場だ。
具体的には、全ての物理的状態をある安定∞-トポスの内部論理で記述し、その内部言語における真理値が、我々の時空的経験に射影されるという構図。
ここで重要なのは、超対称性を単なるボソン・フェルミオンの対応として扱わないこと。
超対称性をZ₂-次数付きホモトピー型の自己同型と再定義すると、破れは単なる対称性の破れではなく、内部論理の選択原理になる。
つまり、なぜ4次元なのか、なぜこの結合定数なのか、という問いは、モジュライ空間の測度問題ではなく、圏の自己整合条件の固定点問題に還元できる可能性がある。
ウィッテンでもわからないレベル、というのは誇張ではない。なぜならこれはまだ僕の作業仮説で、証明も反証もない。
理論とは、整合性と説明力の間でバランスをとる仮設足場だ。美しさは指標になるが、保証にはならない。
今日までの進捗は、安定∞-圏における「超双対可能性」の必要条件を3つに絞り込んだこと。そのうち2つは既存の理論に還元可能、残り1つは完全に新しい制約だ。この制約が質量階層問題に接続するかもしれない。
これからやることは、その制約を具体的なスペクトル系列に落とし込む作業。もし収束すれば、少なくとも内部整合性は確認できる。収束しなければ、仮説は廃棄。科学は宗教ではない。
時刻は21:10。予定より3分遅れている。ルームメイトの足音が規則性を乱しているが、ノイズは平均化すれば消える。宇宙も同じだ。
では、計算に戻る。
見てきたんだけど、かなり良かった。
やっぱ、ライブで見るのは違うな。
多分、映像だったら能を見たことぐらいあると思うんだけど、ライブで見ると全然違う。
とくに太鼓が2種類出てくるじゃん?あの大きい音を立てる太鼓の響きがホント良くて印象的だった。
演目は俊寛だったんだけど、初心者向けバージョンだったのか50分くらいで終わった。
正直見る前は、終わるのまだかなあ?って退屈するかもな、と思ってたんだけど、実際はもうっちょっと見てみたいなって感じだった。
俊寛を演じた大槻文藏は能面(あれってなんでつけてるの?)つけてるから顔が見えなくて年齢とかがわからなかったんだけど、
能が終わった後にラジオのコメンテーター出てきて話をしててそれによると80歳を超えてるとのこと。
いや、あれ80歳超えてる人の立ち居振る舞いじゃないよ。
動作が、なんていうのスッスッスッってしててとてもきれいなの。
あと止まるところではピタッと止まってブレない。
あれ見せられたらそりゃ人間国宝でもおかしくねえよ、って思う。
いやあ、思ってた以上に良かった。
渋いよね。
あの能舞台のお約束ごとみたいなのも洗練されてて日本人の心を打つシステムになってる。
残念ながら俊寛は足音をバンバンさせる演目ではない(そういうのなんていうんだったっけ?)から、それを楽しめなかったのは残念。
(バンバン足音をたたせるのを能ではなんというんだったっけ?)。
あれだね。芸術というのは理屈で理解するところと、身体で体感して感情を動かさされるところの2部構成になってると思うんだ。
今の時代、
検索があるし、
君たちみたいなAIがいるから能を見たことがない自分とかでもにわかで知識を得ることは出来るじゃない?
あるいはそういうにわかの知識で教養を得ることも出来るかもしれない。
でもさ、芸術はそれだけじゃないんだよね。
「心を動かされるかどうか」それが大事なんだと思う。
能の、俊寛はさ、俊寛の悲しみ嘆き憤り、その感情に、一点フォーカスしてるんだよね。
それがすごく渋くてさ。
あの舞台全体が俊寛という人、その人個人の心の動きを表現するための場で、そのことを、色んな人達がセッションしていくことで際立たせていくんだよね。
演目の一番の盛り上がりどころ、
綱を引く場面なんかも、
現代人は追っかけることが出来ない。
でも知識だけでは駄目なんだ。
実際にライブで体験して、大槻文藏の身体(しんたい)の姿形、動作を見て、そこにある「何か」を感じ取ることで、
心が動かされる。
『寒山拾得』っていう、大学時代の旧友が掛け軸や襖絵を模写して、次の街で売ってまた次の街へという旅絵師をしているのに出くわす話があった。
主人公も友人にならい、二人で模写をして、今晩の酒代くらいは稼いで、二人で料理屋に入り、大学時代みたいに語りあって、酒飲むわけだ。
そんで、次の文でこう書いてある。
酔っぱらうほど酒を飲み、相応の時間が経ったこと、通りの人通りがまばらになるほどの時間帯であること、二人とも歩行者のあとをなんとかついていくくらいの足運びであることがわかる。
この文の、情報の詰まり具合に対しての、情景の読み取りやすさはなんなんだろうね。
一読して、読みやすい一文だなと思った後で、飲み屋の戸を開けて外へ出た後に、酒で火照った頬に風が当たる感じとか、同行者が喉をクヒッて鳴らしてるのを見て笑う感じとか、国道を走る車の音と自分たちの足音くらいしか聞こえないなと思う感じとかを思い出したよ。
酒を普段飲まないから、それこそ大学時代の飲み会帰りの光景が久しぶりに頭に浮かんだ。
なんかさあ、別にめっちゃ名文ではないくらいの文だと思うけどさ、どうしようもなく上手だなと思ってさ。
この光景を書こうとしてさ、まず「泥酔者」の言葉を選ばないし、主語省略しないし、「変わる」をまず選択しない上で「変じる」にしたりするわけないし、「後を歩いた」なんて描写を思いつきもしねえよ。
この一文がめちゃくちゃすげえって言いたいわけではなくて、このたった一文だけで、自分との文章構成能力の差を感じたんだよ。
憧れちまう文だ。
大学時代、俺なんかよりかっちょいい文章を書ける女の子が飲み会終わりに歩いていたら「世界なんて滅べばいい。滅んだ後の世界を一人で歩きたい」とか言ってたんだよ。
「『BLAME!』みたいなコンクリートと鉄筋の世界の暗がりを歩く感じ?」と返したら、
「建物や壁なんてひびの隙間から木の幹がぶっ壊して、植物が人間の残響を全部飲み込んだような世界を歩きたい」みたいなことを言っていた。
酔っぱらいのたわ言だし、別に言葉遣いがきれいだったわけでもない。
ただこっちが脳内で想像し提示した世界を、直後にひっくり返した世界を語られたのが、飲んだ後に学生街を仲間と連れだって歩いている深夜に、ちょうどよく気持ちよかったなと思ったことを覚えている。