■ 上位対決は鹿島が勝利4月26日(土)に行われたJ1の第9節の広島と鹿島の上位対決は3対0でアウェーの鹿島が勝利した。前半10分に相手のGKとDFの連携ミスから高卒ルーキーのMFカイオが決めて鹿島が先制に成功すると、前半19分には新鋭のMF土居が決めて2点目を挙げる。さらに後半9分にはMF遠藤康のFKが直接決まって3点目を挙げる。結局、3対0で鹿島が勝利して、首位に浮上した。
これで鹿島は9試合を終えて6勝3敗となったが、なぜか、ホームでは結果が出ておらず、1勝3敗。3敗全てがホーム戦となる。対して、アウェー戦は5戦全勝。1節の甲府戦は大雪の影響で中立地と言える国立での試合になったが、3節は鳥栖、5節は横浜FM、6節はG大阪、9節は広島である。力のあるチームや勢いのあるチームとのアウェー戦で勝ち点「3」を得ている。
2013年は全く逆で、ホームでは強くて、アウェーではさっぱりだった。完全に逆転してしまったことを不思議に思うが、とにかく、9節を終えた時点ではアウェーで全く勝ち点を取りこぼしていない。9節の広島戦(A)は相手がACLの影響で疲労困憊だった点を考慮する必要はあるが、3対0という快勝だった。新潟と神戸に連敗して雰囲気が悪くなっていたが、盛り返したと言える。
鹿島にとっては大きな勝ち点「3」となったが、先制した後、その9分にMF土居のゴールが生まれて2対0になったことで、試合運びが楽になった。広島はカウンターも得意としているが、2対0になったことで、鹿島は無理に攻める必要が無くなった。結局、2点ビハインドになって前掛かりにならざるえない広島の裏を突いて、鹿島のカウンターが決まるようになった。
■ 見どころ満載の2点目のシーン2点目の鹿島のゴールシーンは、いろいろな要素が詰まった興味深いシーンだった。まず、鹿島のGK曽ヶ端がロングキックを蹴って、FWダヴィとDF塩谷が空中戦で競って、FWダヴィが競り勝った。こぼれたボールに対して鹿島のMF土居は胸を使って近くにいたMFカイオにパスを出して、MFカイオは積極的にドリブルで仕掛けたが、MF森崎和とDF塩谷の2人に挟まれてボールを失った。
ルーズボールをDF塩谷が保持して前方にパスを出したが、中途半端なパスになった。このボールに鹿島のMF小笠原が反応したが、MF森崎和も素早く反応した。両ベテランの試合を読む力の鋭さを感じる攻防だったが、MF小笠原の方が一歩早くて、MF森崎和のタックルはMF小笠原の足に入ってしまった。「ファールでは!?」という雰囲気になって、FWダヴィなどは主審に詰め寄った。
面白かったのは、エキサイトしている選手がいる中、冷静にプレーを続けた選手も何人かいたことである。FWダヴィやMFカイオは熱くなっていたが、MF柴崎岳やMF土居といった日本人の若手はクールだった。結局、MF柴崎岳の絶妙のパスからMF土居が抜け出して貴重な2点目のゴールが生まれたが、MF柴崎岳やMF土居の判断は見事で、サッカーIQの高さを感じるシーンだった。
対して、広島の選手はFWダヴィが主審に詰め寄ったことが関係したのか、ほとんどの選手の足が止まってしまった。ファールに相当するプレーが起こったのは間違いないが、「笛が鳴るまでプレーは止めない。」というの基本である。経験のある選手が多いので、このことは重々承知だと思うが、疲労の影響なのか、動きが止まらなかったのは右WBのMF柏くらいだった。
■ 疲労の影響は隠しきれず・・・広島はリーグ戦とACLを並行して戦っており、シーズンの中で、今がもっとも厳しい時期であるが、4月23日(水)にACLの第6節のCCマリナーズ戦があって中2日だった。幸いにして、CCマリナーズ戦も、鹿島戦も、ホームゲームだったが、こういう咄嗟のとき、疲労の影響は出てしまう。Jリーグの代表として、厳しい日程の中で戦っているので、広島の選手を責めるのは酷である。
ただ、DF塩谷のミスパスがきっかけになっているので、防ごうと思えば、防げる失点だったので、悔やまれるところである。DF塩谷はリーグ戦とACLでゴールを量産して、「もっとも旬な選手」と言えるが、ここ最近のパフォーマンスはあまり良くない。リーグ戦とACLに加えて日本代表候補合宿にも参加して、「広島の中でも特に疲れている選手」と言えるが、軽率なミスが多い。
したがって、ここ数試合のプレーを見ると、「絶好調」とはとても言えないパフォーマンスである。どちらかというと、「低調」と言えるパフォーマンスになっているが、「周囲の要求レベルが高くなった。」という側面もあるだろう。日本代表候補に選出されて、ワンランク上の選手として見られるようになったので、「ミスをしたらこれまで以上に目立ってしまう。」という部分もある。
■ 世界的な評価を受けている西村雄一先のとおり、試合の行方を大きく左右する鹿島の2点目のゴールだったが、ファールがあったと確認した上で、プレーを流した西村レフェリーの判断も良かった。もちろん、笛を吹く準備はしていたが、MF柴崎岳にボールが渡ったことを瞬時に確認して、プレーを止めなかったことがファインゴールにつながった。アドバンテージというルールをうまく活用出来たシーンだった。
こういう激しいシーンがあると、咄嗟に笛を吹いてしまうものである。「流していたら決定機だったのに・・・。」と思うシーンは、Jリーグでも頻繁に見られるが、『西村さんはその先にどんなプレーが起こるかを、ある程度は予測しながらピッチに立っていて、しかも、その予測が的確なので、無駄にプレーを止めて、試合の流れを壊すことが無いのだろう。』と感じる一連の場面だった。
西村レフェリーのファインジャッジだったと思うが、得点が決まった直後、広島の選手は主審の周りに集まって抗議とまでは言えないが、確認をしていた。もちろん、広島の選手の言いたいことは分かるが、主審には全く非は無い。西村レフェリーが5年連続でJリーグの優秀主審賞を受賞しており、世界的に評価されている理由がよく分かるワンシーンだったと言える。
一般人がきちんと主審を評価することは非常に難しいので、どうしても、減点方式になってしまう。誤審騒動を起こしたら、その都度、ポイントが下がるという仕組みと言えるが、こうなると、たくさん試合をこなせばこなすほど評価が下がってしまう。また、名前がよく知られていて、ビッグマッチに登場する機会が多くて、たくさんの試合を経験している人が圧倒的に不利である。
もちろん、「誤審をしない。」ということは1つの評価基準になるが、一方で、そこにウエイトを置き過ぎるのはどうかと思う。もちろん、西村レフェリーもミスをすることはあるが、何だかんだで、世界的に評価されているレフェリーである。西村さんがJリーグで笛を吹いていることは幸運なことなので、審判団にレベルアップを要求するだけなく、観る側もレベルアップに努める必要があると感じる。
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