■ 最終節J2の最終節。2008年以来のJ1昇格を目指す3位のコンサドーレ札幌が、ホームでFC東京と対戦。札幌は20勝12敗5分けで勝ち点「65」。FC東京は23勝6敗8分けで勝ち点「77」。FC東京はすでにJ2優勝を決めていて、2位の鳥栖も「3位以内」をほぼ確実にしているので、昇格争いは、3位の札幌と4位の徳島の一騎打ちになっている。勝ち点は同じで、得失点差は、札幌が「+16」、徳島が「+14」。最終節は、札幌がホームでFC東京、徳島がアウェーで岡山と対戦する。
ホームの札幌は「4-2-3-1」。GK李昊乗。DF高木、山下、奈良、岩沼。MF河合、宮澤、古田、内村、砂川。FW近藤。3ゴールを挙げているFWジオゴはベンチ外。MF内村は今シーズン10ゴールを挙げている。MF岡本、FW上原、FW横野らがベンチスタートとなった。
対するアウェーのFC東京はFC東京は「4-2-2-2」。GK権田。DF徳永、森重、今野、椋原。MF高橋、羽生、谷澤、田邉。FW坂田、ルーカス。ボランチのMF梶山は欠場。シーズン途中に加入したFW坂田が今シーズン初のスタメン出場。MF石川はベンチスタート。日本代表のDF今野は古巣との対戦となる。
■ 札幌が逃げ切る試合はホームの札幌ペースで進んでいく。序盤から積極的にシュートを放って、リズムを作っていく。FC東京はFWルーカスを起点に攻撃を仕掛けるが、初スタメンのFW坂田が波に乗り切れずにブレーキになってしまう。岡山と徳島の試合と同様に「0対0」のままで進んでいくが、前半40分に均衡が破れる。MF砂川の縦パスからMF古田が左サイドを抜け出すと、中に切れ込んでから中央にグラウンダーのボールを入れる。これをゴール前のMF内村が押し込んで待望の先制ゴールを奪う。
さらに、前半のロスタイムには、MF近藤が右サイドをドリブルで突破してペナルティエリア内のMF内村にラストパスを送ると、MF内村が絶妙のトラップから落ち着いて右足で決めて終了間際に貴重なダメ押しゴールを挙げる。MF内村は今シーズン12ゴール目。前半は「2対0」と札幌がリードして折り返す。
後半開始から、FC東京はMF石川とFWロベルト・セザーを投入し、攻撃的に来る。しかし、札幌の守備陣も集中力を切らすことなく決定機を許さない。反撃のゴールが生まれたのは後半35分で、FWロベルト・セザーのシュートのこぼれ球をMF谷澤が決めて1点差に迫る。MF谷澤は今シーズン5ゴール目。これで、危ない雰囲気になってきたが、札幌は1点リードを守り切って「2対1」で勝利。4位の徳島がアウェーで岡山に「0対1」で敗れたため、3位が決定。2008年以来のJ1昇格が決定した。
■ MF内村圭宏 2ゴールの活躍37節で湘南に勝利し、徳島がホームで大敗したことで、3位に浮上した札幌であったが、最終節がFC東京戦ということで、苦戦も予想されていたが、札幌ドームに集まった39,243人の大観衆の後押しを受けて、J2王者のFC東京を下して見事にJ1昇格を達成した。大事な試合ということで「受け身」になるかと思ったが、序盤から積極的に仕掛けてシュートチャンスを作った。先制ゴールも大きかったが、前半終了間際の「2点目」のゴールも大きく、これで徳島にはプレッシャーがかかって、札幌イレブンは楽になった。
大一番でヒーローになったのはMF内村で、先制ゴールとダメ押しゴールを挙げる活躍を見せた。それにしても、11月に入ってからのMF内村はキレキレの状態で、いいところでゴールを決めている。MF内村は、札幌に加入して2年目のシーズンになるが、初年度は28試合で5ゴールと期待に応えられなかった。札幌に来てからは、ウエイトオーバーのような感じで、愛媛FCの頃のスピード感があまり感じられなくなっていたが、ここ最近は、いい状態をキープしている。2009年は47試合で18ゴールを決めて、J2でも有数のストライカーだったが、移籍2年目のシーズンで本領発揮となった。
■ 昇格の原動力は?これで札幌のJ1昇格が決定したが、昇格の原動力になったのは「堅い守備」で、38試合で32失点とリーグ2位の成績を残した。昨オフに、DF石川、DF藤山、DF西嶋らが退団し、守護神のGK高原も怪我で長期離脱となったため、「本当にディフェンスラインを構成できるのか?」というほどの窮地に陥ったが、GK李昊乗、DF山下、DF河合ら新加入組が活躍し、DF櫛引、DF奈良といった10代の若手も出てきた。
早い時期に「守備の組織」が構築できたことも大きかった。もちろん、DF櫛引やDF奈良に「個の能力」があったことも理由であるが、全く経験のないDF櫛引やDF奈良が加わっても「組織」が崩れることはなかった。彼らに目途が立ったので、中盤戦以降、ベテランの河合をセンターバックからボランチにコンバートできたことも、攻守が安定する要因となった。
そして、忘れてはならないのが、GK李昊乗の安定したプレーで、年間を通じて光った。韓国の大学から加入してきて1年目のシーズンで、言葉の問題など苦労も多かったと思うが、抜群のパフォーマンスを見せて、がっちりとポジションを確保した。188センチと高さもあって、キャッチングも安定していて、ミスも非常に少なかった。DF山下、MF/DF河合、MF内村、MF砂川らのパフォーマンスも目立ったシーズンだったが、個人的には、GK李昊乗の貢献度が最も高かったように思う。今シーズンの「クラブ内のMVP」といえるのではないだろうか。
■ サポーターの力今シーズンのJ2はこれで全日程が終了した。稀にみる混戦となったが、結局、FC東京、鳥栖、札幌の3チームがJ1に昇格し、それ以外のチームは、来シーズンもJ2で戦うことになった。FC東京は戦力が抜けていたので「別物」として考える必要があるが、決して、前評判の高くなかった鳥栖と札幌がJ1昇格を果たしたというのは、ビッグニュースであり、驚きだった。
この2チームにとって、京都、東京V、湘南、横浜FCといったJ1経験のある昇格候補のクラブが、早々に脱落したことも大きかったが、中盤から終盤にかけての勢いが凄くて、J2のリーグ戦をかき回した。この2チームを見て、改めて感じるのは、「サポーターの力」の大きさで、J1昇格がかかっていたこともあって、最終節は、鳥栖が22,532人、札幌が39,243人と、ありえないような数のサポーターを集めた。他のクラブも、厳しい経済状態の中で企業努力を重ねていたと思うが、鳥栖と札幌は、サポーターの昇格にかける思いが「大きなパワー」となって、昇格を近づけたように思う。
これで、FC東京、札幌、鳥栖の3チームが昇格となった。J1経験が豊富なFC東京には、広島、C大阪、柏に続く「1年目での躍進」の期待がかかるが、札幌と鳥栖は、戦力的を考えると、他の16クラブに比べると劣ることが予想される。よって、厳しいシーズンになるだろうが、無理に無理を重ねて、効果的でない補強を行うのは、決してほめられたことではない。資金力が無いので、ピンポイントの補強になると思われるが、フロントの力が試されることになる。
関連エントリー 2011/11/04
【J2】 今シーズンのMVPについて考える。 → J3+(メルマ) 2011/11/05
【J2】 ポジション別 ベストプレーヤーを考える。 (GK、右SB、CB、左SB編) → J3+(メルマ) 2011/11/06
【J2】 ポジション別 ベストプレーヤーを考える。 (ボランチ、攻撃的MF、FW編) → J3+(メルマ) 2011/11/24
ロンドン五輪代表候補について考える。 (GK、右SB、CB編) 2011/11/25
ロンドン五輪代表候補について考える。 (左SB、ボランチ編)
- 関連記事
-