ゴールキーパー → すでにフル代表でも常連となったGK権田修一(FC東京)がいるので、このポジションは「ストロングポイント」となっているが、彼を除くと、所属クラブでレギュラーポジションを獲得した経験ある選手はほとんどいない。よって、「若いGKが出場機会を得られていないこと。」は、日本サッカーの問題点の1つになっているが、解決するのは難しい。現状、J1でも、J2でも、ほとんどのクラブに実績のあるGKがいて、よほどの選手でない限り、19歳、20歳、21歳くらいでポジションを確保するのは困難である。
したがって、五輪代表候補として名前を挙げることのできる選手の数自体が少ない。怪我等が無ければ、GK権田が予選や本大会で日本のゴールを守るのは間違いないが、もし、彼にアクシデントがあったら、GK安藤駿介(川崎F)に出番が回ってくるだろう。2010年11月のアジア大会では正GKを任されて、7試合で1失点のみと金メダルに大きく貢献した。コンビネーションにも不安はないので、GK安藤であれば、比較的、安心して観ることはできる。ただ、彼にしても、所属の川崎Fでは、今シーズンは4試合に出場しただけ。GK川島が移籍して、「ポジション獲り」のチャンスかと思われたが、レギュラーに定着するに至らなかった。
他には、GK大久保択生(千葉)とGK守田達弥(京都)も候補といえる。ともに190センチをオーバーする長身で、所属クラブでレギュラーをつかんだ時期もあったが、今シーズンは、全く出場機会が得られておらず、GK岡本やGK水谷の壁は厚い。フィールドプレーヤーであれば、途中出場の可能性があるので、レギュラー取りのきっかけをつかむこともできるが、GKとなると、よほどの幸運が無いとポジションを奪うのは難しい。
そんな中で、出場機会を得ることに成功したのが、GK川浪吾郎(FC岐阜)で、10月になって、8試合連続でスタメン出場を果たしている。FC岐阜はレギュラーだったGK野田が離脱し、2番手のGK村尾も著しく安定感を欠いていたので、柏で出番に恵まれていなったGK川浪にチャンスが与えられたが、8試合で25失点を許しており、GK川浪も失点に絡むミスが目立っている。GK川浪はユースから昇格して2年目の選手で、ずっと各年代の代表チームに選ばれているGKなので、プロの世界でどのくらいできるかが注目されたが、厳しい結果になっている。
右サイドバック → この世代は、「2列目のアタッカー」と「サイドバック」に、極端なほど人材が集中している。「アタッカー」に才能が集まっている理由は、いろいろと考えられるが、「サイドバック」に人材が集まっている理由は浮かんでこない。トルシエ時代に「3バック」を採用したことも影響して、日本では「3バック」がメインだった時期が長かったので、「トルシエの悪影響でサイドバックが育たなくなった。」と主張する人もいたが、実際には、そういうこともなく、次々と優秀な人材が出て来ている。
まず、「右サイドバック」であるが、チーム立ち上げの時は、力の拮抗した選手が多かったので、「ポジション争いは熾烈になる。」と思ったが、今シーズン、DF酒井宏樹(柏)が大ブレークしたので、完全にポジションを確保した。「高速クロス」がクローズアップされることが多いが、どちらかというとフィジカルの強さを生かした「守備」に特徴のある選手で、試合経験を積んできて「攻撃力」も備わってきたという印象である。すでに、フル代表に選ばれた経験もあって、頭一つ抜けた存在になってきている。
個人的に推したいのは、DF岡本拓也(浦和)で、長期離脱から戻ってきたばかりなので、今シーズンの出場はほとんどないが、優れたバランス感覚を持っていて、攻撃でも守備でも質の高いプレーを見せる。2010年の終盤には、高校3年生ながら、浦和で右SBのポジションを確保し、今年3月に行われたウズベキスタン遠征では、U-22日本代表でも右SBでスタメン起用されている。
もっと攻撃的なタイプでは、DF高橋峻希(浦和)がいる。浦和はこの年代のサイドバックが左右とも充実していて、それゆえに、誰もレギュラーに定着しきれていないが、攻撃に関しては、DF高橋峻がもっとも優れていると思われる。彼の場合は、浦和で「サイドハーフ」で起用されることも多いが、「サイドハーフ」でロンドン五輪代表チームに絡んでいくのは相当に厳しいので、右SBでアピールした方が、ロンドンへの近道となるだろう。一方、「守備」に特徴のある選手としては、DF椋原健太(FC東京)の名前が挙げられる。サイズは無いが、1対1に強くて、粘り強い守備を見せる。所属クラブでは、DF徳永がいることので、左SBに入っていることがほとんどであるが、右SBに入った方が「攻撃力」も生きてくる。
後述するように、DF椋原も含めて、左右どちらのサイドでもこなす選手が多くなってきたので、左SBで名前を挙げた選手も、右SBの候補となりうるが、右サイドが専門の選手を考えると、攻撃力のあるDF古林将太(草津)も面白い存在である。テクニックがあって、ドリブルに「キレ」もあるので、深いエリアまでえぐってクロスを送ることができるので、ゴールにつながるプレーが多い。レンタル元の湘南には、アジア大会の金メダルメンバーのDF鎌田翔雅(湘南)もいるが、攻撃に関しては、DF古林の方に魅力を感じる。
センターバック → 「CBの人材難」が叫ばれているが、北京世代は、逆にこのポジションの人材が豊富だった。DF水本、DF青山は、20歳そこそこの年齢で、クラブチームでもレギュラーを確保し、2006年の時点でフル代表に選ばれている。その後も、DF森重、DF吉田、DF槙野らが台頭してきて、DF槙野は北京五輪代表に絡むことはなかったが、「真ん中の強さ」が反町ジャパンの強みとなっていた。さらに、下の世代も、2011年のU-17W杯でも活躍したDF植田直通(大津高校)、DF岩波拓也(神戸ユース)らが控えているので、CBの人材は豊富といわれている。よって、世代によって落差が激しいが、とにかく、ロンドン世代はCBの人材が不足している。
そのため、チーム立ち上げ等当初から、もっとも不安視されていたポジションだったが、幸いにも、今シーズンになって、DF鈴木大輔(新潟)、DF濱田水輝(浦和)が所属クラブでポジションを確保し、経験を積んできている。この二人は、五輪代表に選ばれて「日の丸」を付けてプレーする経験を積んだことが「自信」につながったようで、代表で得た自信をクラブでも生かして、Jリーグでもチャンスを得るようになった。
したがって、ようやく「CBコンビ」が不動のものになってきたので、中央の守備も落ち着いてきたが、3番手以下の選手とは「差」が付いて、どちらかが欠けると大ピンチになってしまう。今のところ、3番手といえるのは、DF薗田淳(川崎F)で、アジア大会を制したときはレギュラーでプレーしたので、コンビネーション等には不安は無いが、今シーズンは、決してCBのポジションが厚くない川崎Fで、2試合に出場しただけなので、成長する機会を得られていない。今回は、DF薗田のほかに、大学4年生のDF丸山祐市(明治大学)、DF大岩一貴(中央大学)がベンチ入りしているが、大学生が二人も入っていることからも、苦しい台所事情が見て取れる。
他に、J1で出場機会を得ている選手というと、DF村松大輔(清水)がいる。2009年に湘南がJ1に昇格したときのレギュラーCBで、南アフリカW杯前に岡田前監督が日本代表に招集したこともあった。スピードが武器の「新しいタイプのCB」であるが、176センチの身長なので「高さ」に不安を残す。湘南では、DFジャーンとコンビを組んで補い合っていたが、やはり上のレベルになると、このくらいの身長では厳しくなってきて、移籍先の清水でも右SBやボランチで起用されるケースが多くなっている。ただ、この方針には賛成で、「スピード」があって「守備力」も高いので、右SBに専念した方が「フル代表」を狙えるはずである。
J2で出場機会を得ている選手では、DF菅沼駿哉(熊本)、DF大野和成(愛媛FC)、DF福村貴幸(京都)、DF高橋祥平(東京V)がいる。この中で、常時、4バックの中央で起用されているのはDF菅沼であるが、シーズン途中での移籍だったこともあって、コンビネーションが十分ではなく、期待通りのパフォーマンスは見せられていない。一方、DF大野とDF福村は左利きで、3バックの左ストッパーで起用されることが多いが、左利きのCBは数が少ないので、大きな武器となる。ただ、現状では、両者ともCBとしては経験不足のところは否めない。これからに期待したい選手であるが、DF福村については、4バックの左SBの方に適性があるだろう。
この4人の中では、U-22日本代表に呼ばれた経験のあるDF高橋が、一番、五輪代表に近い存在である。彼も、ここ最近は「ボランチ」でプレーすることが多くなっているが、ボールコントロールに優れているので、ボランチでも違和感なくプレーすることができる。180センチなので、抜群に空中戦に強いタイプではないが、若い頃から試合経験を積んでいるので、この世代のCBの中では「経験値」の多い選手である。当然、関塚監督の構想にも入っていると思われるが、MF山村、MF扇原など、長身選手をボランチで起用することを好むので、DF高橋の場合も、CBよりボランチの方で、チャンスがありそうな雰囲気がする。
ということで、ロンドン世代で出場経験を積んでいる選手が少ないが、1993年1月1日以降に生まれた「リオ世代」は、前述のとおりで、人材は豊富である。中でも、DF奈良竜樹(札幌)、DF櫛引一紀(札幌)、DF遠藤航(湘南)の3人は、J2でも出場機会を得ている。DF奈良が高校3年生で、DF櫛引とDF遠藤は、大学1回生の早生まれと同じであるが、若さに似合わず、成熟したプレーを見せている。
この中では、湘南のDF遠藤は、先日のアジアユースでチームを離れるまで、開幕からずっとフルタイム出場を続けており、DFラインの中心となっている。2010年のアジアユースにも飛び級で参加するなど、試合経験も豊富であるが、176センチと「高さ」が無いので、現状では、関塚監督に呼ばれる可能性は低いと思うが、札幌のDF櫛引やDF奈良については、飛び級での招集の可能性が全くないとは言い切れない。
プロ1年目のDF櫛引は、シーズン途中からレギュラーポジションを確保し、チームの堅守を支えている。彼も178センチなので「大きな選手」ではないが、高さでやられるシーンはほとんどなく、「守備のセンス」を感じさせるディフェンダーである。まだ「体の強さ」は感じないが、コンサドーレ札幌の先輩のDF今野泰幸とイメージが重なるところがある。
一方のDF奈良は、DF櫛引がアジアユースで抜けているときにポジションを奪う形になった。ユース所属となるが、昇格を争う大事な終盤戦でスタメン起用されて、DF櫛引と比べても、遜色ないプレーを続けている。彼も180センチなので、大きな選手ではないが、しっかりと相手のフォワードをつぶすこともできるし、左右両足で正確なフィードを送ることもできる。そして、何よりも「1つも勝ち点を落とせない」という状況でプロデビューしたにも関わらず、プレッシャーなど感じていないかのように、落ち着き払ったプレーができる「精神力」が見事である。
※ 次回は、左SB、ボランチ編です。
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