■ 史上最速の降格2007年のJ2を制し、2002年以来のJ1復帰を果たしたコンサドーレ札幌。しかしながら、第29節の柏戦に0対2で敗退し、1年でのJ2降格が決定。残り5試合を残しての降格決定は、2007年の横浜FCと並んで、史上最速である。
今回は、J2降格が決定したコンサドーレ札幌の敗因を考える。
① 失点数の多さ29節までの成績を見て、まず、目につくのが、失点数の多さである。29節終了時点で、リーグワーストの「60」。ワースト2位のチーム(東京V、千葉、磐田)の失点数が「43」なので、ダントツの数字である。
思い起こすと、2007年シーズンは、J2最少の45失点(48試合制)。自信を持っていたはずの守備陣が思うような結果を残せないことで、チームの土台は崩れた。
シーズン前に不安視された攻撃面は、意外にも総得点数でリーグ12位と健闘。大分、新潟、横浜FM、京都、千葉、大宮を上回っている。失点数の多さは、大きな誤算だった。
② つなぐ意識の向上がもたらしたマイナス面ただ、だからといって札幌のディフェンスがJ1で全く通用しなかったわけでは無い。三浦監督の得意のゾーンプレスは一定の効果を発揮し、特に、前半戦は、結果的に敗れたとしても拮抗した試合が多く、J1の上位チームをも苦しめた。
相手の決定機に対して、全員で体を張ってゴールを守る意志の強さは、他のチームには見られない大きなストロングポイントであり、前半戦(1~13節)は3勝9敗3分け。十分に残留の可能性を残したままで、中断期間を迎えた。
しかしながら、後半戦(14節~29節)は16試合で1勝11敗3分け。16節の千葉戦で3対0で勝利して以降は勝ち星なし。ほとんど勝ち点を伸ばせないまま、残留争いからも脱落していった。
その脱落の理由の1つに考えられるのが、「つなぐ意識の向上」にあると見る。
前半戦はボールを奪うとすぐに前線のFWダヴィを目掛けてロングボールを蹴りこんで、FWダヴィの一発にかけるシンプルな攻撃が中心であった。味方の人数が揃う前に攻め込む攻撃なので、サポートは少ないが、FWダヴィの馬力でいくつもの印象的なゴールを生みだした。
ただ、この戦術では、せっかく奪ったボールをすぐに相手に渡してしまうケースが多く、波状攻撃を食らうことが多かった。ということで、その反省から、後半戦は微調整を図り、最終ラインから丁寧につなぐ意識が芽生えてきた。
これは悪いことではないが、結果的には、「つなぐ意識の向上」が裏目に出た感がある。札幌側につなぐ意識が芽生えたことで、相手チームも攻撃のリズムを作りやすいシチュエーションとなった。
相手チームから見ると、前半戦の札幌のように、すぐにロングボールを蹴ってくるタイプのチームは、非常に戦いにくいチームである。シーズン当初から、どのチームも札幌相手のときは、「絶対に勝ち点3を取る。」という心づもりで試合に臨んできたが、いいときの札幌は、その心理状態を逆手に取って、ロングボールを使って、いい意味で試合を破壊した。
試合を破壊すると、もはや、勝敗はどちらに転ぶのか分からないイレギュラーな状態となる。全体の戦力で劣る札幌にとって、正攻法で戦う場合は、中盤のタレント力の差がストレートに勝敗に表れて分が悪いが、試合を破壊することで、正攻法で戦う場合よりも、勝率は随分とアップする。
私的な意見として、シーズン前は、「あまりにも中盤でボールがつなげない状態であり、札幌がJ1で戦うのは難しいだろう。もっとつなぐ意識を持つべき。」と見ていたが、むしろ、逆に、もっとフォワードを目掛けてアバウトなボールを蹴り込んでいく戦法を徹底させるべきだったのかもしれない。
■ 2年後を見据えて・・・ただ、ノーインパクトのシーズンだったかというと、そうでは無い。むしろ、通常とは異なる毛色で、リーグに彩りを加えた。
前述のように、シーズン前に不安視された攻撃力の乏しさだったが、意外にも総得点は「32」で、リーグ12位。大分、新潟、横浜FM、京都、千葉、大宮よりも多くのゴールを奪っている。
圧巻だったのはセットプレーの強さで、シーズン直前に加入したMFクライトンが抜群の精度のボールを供給し、183cmのFWダヴィ、187cmのDF箕輪、187cmのFWアンデルソン、185cmのMF中山、181cmのDF池内と長身選手が並ぶセットプレーの迫力はリーグ屈指。シーズン前に得たMFクライトンという優れたプレイスキッカーとの相乗効果で、セットプレーから多くのゴールを奪った。
注目点は、もともと高さのある選手が揃っていたが、さらに、中断期間に、187cmのDF箕輪、187cmのFWアンデルソンを補強したことである。これだけ、185cm以上の選手がたくさんゴール前に集まると、相手チームとしては、複数箇所でミスマッチが生まれる。
シーズン途中に攻撃的なタレントを補強するのは簡単では無いが、高さのある選手に限定して補強を行うことでセットプレーを強化し、得点力不足を補うという戦法は、なかなか興味深い。
J1・J2の33クラブを見渡してみると、基本的にはどのチームも、「ボールの人も動くサッカー」という概念で強化を行っている。その点で見ると、札幌のサッカーは異質ではあるが、どのチームも「右へ倣えのサッカー」では、面白みは半減する。
結果的には、残念なものに終わったが、なかなか、考えさせられる興味深いチームだった。この1年でつかんだものを離さないで、再昇格を目指してほしい。
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>>> No Nameさん
どうも、コメントありがとうございます。
>>> 雪鯱さん
どうも、コメントありがとうございます。ちなみに、席はジェフシートでした。ものすごく、見やすい席でした・・・。
>>> おけんさん
どうもありがとうございます。また覗きに来てください。またコメントを残していってくださいね。
>>> No Nameさん
どうもコメントありがとうございます。札幌の試合は、今年、15試合ほど、見ていますが、前半戦の戦いぶりは悪くありません。しかし、残留を目指して勝利が必要となった後半戦はややバランスを崩してしまったように思います。
いずれにしろ、攻撃的なポテンシャルの高い選手が多い札幌ですので、彼らに試合経験積ますことができるという意味では、長丁場のJ2も悪くない環境では無いかと思います。
再開待ってました。
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いつも更新を楽しみにチェックさせて頂いています。
地元札幌の試合を今年も数十試合見ましたが、やはりクライトンの存在感なくしてこのチームは成り立たないと思いました。ダヴィについてもポテンシャルはあるがそれがここまでJ1で発揮されるとは思いませんでした。
セットプレーで得点を重ねた反面、失点の多くもセットプレーで三浦さんの「ゾーン」でという事を選手間だけでも捨て切れなかったのかなと思うと残念です(個人的にはマンマークでいけばかなり失点は少なかったのではと思います)
うちはオシムさんが来るとかクライトン・ダヴィは残らないとかこの時期に来期の話が出て来て(ましてやJ2)寂しい限りですが生え抜きの若手が一皮も二皮も向けて覚醒して欲しいと期待しております。
札幌以外のチームに多数触れられるこちらのサイトをいつも楽しみに更新待ちしております。お身体に気をつけてお過ごしください、長文失礼しました。
お久しぶりですね。また覗きにきますね。
再開してたんですね。
更新楽しみにしてますが、あまり負担にならない程度に。。。
しかし、千葉-東京V行かれてたとは。
もしかするとすれ違っているかも知れませんね。
また始まって嬉しいです。
気楽に頑張って下さい~
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