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石油をめぐって悪化したサウジ・米国関係だが、問題はもっと深い

<記事原文 寺島先生推薦>

Saudi-US relations deteriorate over oil, but the issue is much deeper

バイデンは米国中間選挙を前に、サウジの石油減産を阻止しようとしたが失敗して、サウジアラビアに対して人権に関する空虚な警告を再び発した。

筆者:ロバート・インラケシュ(Robert Inlakesh )


政治分析家、ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画制作者。パレスチナ自治区で取材・生活し、現在はQuds Newsに所属している「Steal of the Century: Trump's Palestine-Israel Catastrophe」」の監督。

出典:RT

2022年10月25日

<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ>

2022年11月28日


画像:サウジアラビア・ジッダのアルサラーム王宮で、ジョー・バイデン米大統領(左)とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(右)が会談した。© サウジアラビア王宮 / アナドル・エージェンシー 、ゲッティが画像を提供

 ジョー・バイデン米大統領は、リヤドによる原油減産の決定についてその「影響」を警告したが、結果は民主党党首バイデンを困惑させるものとなった。しかし、サウジアラビアの反抗的な動きは、見た目よりもずっと複雑なのかもしれない。

 中東における米国の長年の友好国であるサウジアラビア王国が、今年10月初めに開かれたOPEC+の会合で原油の減産を推し進めて以来、米国は強く反対の声を上げている。バイデンは11月の中間選挙に向けて党を率いているが、原油価格は下がらず、選挙で共和党を打ち負かすという希望を損なうことになった。民主党の有力者たちは、サウジの動きが選挙結果に影響することに憤慨し、サウジを激しく非難するようになった。

 今月初めにOPEC+が2020年以来の低水準への減産を決定したことは、ワシントンでは即座に、サウジアラビアが欧米よりもロシアの味方をした、と評された。バイデンにとってさらに悪いことに、リヤドは現在南アフリカ、ブラジル、ロシア、インド、中国からなるBRICS経済連合への参加に関心を示していると報じられている。

 サウジアラビアは、ロシア側につくために何らかの決定を下したことは否定しており、特にサウジがウクライナに対抗する姿勢を示しているという主張に対しては「驚愕している」と述べている。


<関連記事> サウジアラビア、石油減産をめぐる米国の圧力を明らかにする

 サウジアラビアの減産の決定は、特にヨーロッパがエネルギー不足に苦しむ中、西側諸国にとって打撃であることは間違いないが、この動きはNATOが支援するウクライナとロシアとの紛争に対する政治的な意図でなされたものではないだろう。どちらかといえば、反米というより、反民主党の立場をとっていると解釈できる。

 ワシントンでは、バイデン政権発足当初の立場を反映し、現在は人権侵害やサウジの独裁的な国家体質に焦点を当てた言い方に変化しているが、その真意は、純粋な懸念ではない。リヤドによれば、バイデンはサウジ政府に対し、原油減産の発効を選挙後にするよう譲歩を求めたとさえ伝えられている。しかし、OPEC+の決定を延期する試みは徒労に終わり、米国大統領は11月8日の予備選挙で、この問題で減るかもしれない民主党の票を失わないために原油価格の問題を取り上げざるを得なくなったのである。

 ドナルド・トランプ前大統領が就任後初の外遊先としてサウジアラビアを選んだように、共和党がサウジ自身の地域政策に好意的であることは明らかである。現在も共和党に大きな影響力を持つトランプ氏は、在任中、サウジとアラブ首長国連邦の双方にとって大きな味方であった。共和党へのロビー活動などを通じて、リヤドやアブダビは自分たちが得た結果に満足しているようだった。特筆すべきは、トランプ政権の非公式補佐官を務めたトーマス・バラックが、首長国政府の外国人工作員であると非難されたことだ。それはバラックが、外交政策の主要問題で前大統領に影響を与え、サウジとUAEが湾岸地域で影響力を高める方向性を大きく変えた可能性があったからだった。

 次に問題になったのは、バイデン政権の偽善的な取り組み方である。米国大統領バイデンは、政権の外交政策課題に関する最初の演説で、リヤドの人権侵害の責任を追及し、イエメンでの戦争を終結させるために努力すると主張した。しかしバイデンは、サウジアラビアへの攻撃用武器やその他の関連武器売却を中止すると表明しながら、同年末には武器売却を承認したのである。

 7月の外遊では、アラブ首脳会議にオブザーバーとして参加し、大統領は中東から「離れない」ことを誓った。この外遊は、米国の世界的・地域的課題にとって何ら具体的な利益をもたらすものではなかったが、米国はサウジアラビアへの攻撃用兵器の売却を再び検討する用意があるとの情報も入っていた。実際、OPEC+による減産の1週間前には、米国の投資家にサウジアラビアへの訪問を奨励する報道がなされ、サウジと米国の関係は新たな高みに達している。それは、サウジアラビアがロシアとウクライナの囚人交換に関与した後のことでもある。

 民主党の複数の有力議員から関係断絶を求める声が上がる中、サウジのアデル・アルジュベイル外相はCNNのインタビューで、米国とサウジの関係を結びつける要素を以下のように列挙した。


<関連記事> アメリカ人は、米国が中東の同盟国に圧力をかけたかどうか分かるべきだ --- 下院議員

 「サウジアラビアには、約8万人のアメリカ人が住み、働いています。我々は非常に強力な貿易・投資関係を持っています。イエメンに平和をもたらすこと、イスラエルとアラブの間に平和をもたらすこと、アフガニスタンを安定させること、イラクをアラブに復帰させること、アフリカの角に安定をもたらすこと、リビアやサヘル地域*のG5諸国の安定と平和をもたらすこと、そして過激主義やテロとの戦いにおいても、我々の共通の利益を守るために我々は非常に緊密に働いています。それらの利益は永久に続くものであり、それらの利益はとてつもなく大きなものです。」
 [訳注]*サヘル地域----中央アフリカ北部、セネガルからエチオピアに至るサハラ砂漠の南に接する半乾燥地域

 この発言が注目される理由は、米国がリヤドとの関係を通じて活用できる力を明確に示しているからである。両者は1938年の石油発見以来、一心同体の関係であり、1979年のイラン王国の没落後、この関係は大きく改善されてきた。しかし、サウジアラビアは米国にただ利用されることを黙って見てはいなかった。米国の石油市場の主要部分を自ら買い占め、地域情勢への影響力を確保し、単なる国際的ガソリンスタンドではなく、地域の主要プレーヤーとしての役割を確固たるものにしているのである。

 サウジアラビアが国内外で行っている人権侵害は忌まわしいものであるが、バイデン政権は明らかにそれらに関心を抱いていない。だからこそ、原油価格と党派的な選挙問題が絡む今になって米国とサウジの関係が悪化し、ホワイトハウスにとってまた新たな困惑が浮き彫りになっているのである。バイデン大統領のサウジアラビア訪問の際、大統領はワシントン・ポスト紙の記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件を持ち出そうとしたと伝えられている。サウジアラビアの説明によると、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、イスラエルによるパレスチナ系アメリカ人ジャーナリスト、シリーン・アブ・アクレの殺害と、米軍によるイラクのアブグレイブ刑務所での拘禁者拷問を指摘してバイデン氏に対抗したという。「自分を偽るな」と、サルマン皇太子は言いたかったのだ。しかし、米国とサウジアラビアの関係は、米国が再び政権転覆戦争を引き起こさない限り、今後も続くだろう。
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