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ロス・トーマス『暗殺のジャムセッション』(ハヤカワミステリ)
久々にロス・トーマスを読む。以前は頻繁に翻訳も出ており年末ベストテンでも常連の人気作家だったが、1995年に亡くなってからはそれもパッタリ。本日の読了本『暗殺のジャムセッション』は2009年、十三年ぶりにポケミスで翻訳された一冊となる。
冷戦時の西ドイツでスパイ戦に巻き込まれたマッコークルだったが、今では帰国して恋人フレドルと結婚、ワシントンで「マックの店」を経営する身だった。そこへ突然重傷を負って転がり込んできたのが、かつての相棒パディロ。彼はアフリカのある一味から首相暗殺計画を依頼されたが、それを断ったため、トラブルとなってアメリカへ脱出してきたのだ。だが一味はパディロとマッコークルのことを調べ上げており、マッコークルの妻フレドルを誘拐してパディロに暗殺を強要する。パディロとマッコークルはこの難局を打破すべく、ある計画を練り上げるが……。
▲ロス・トーマス『暗殺のジャムセッション』(ハヤカワミステリ)【amazon】
いやあ、やはりロス・トーマスは巧い。ハードボイルドというかスリラーというか、まあジャンル名なんてどうでもいいんだけど、この手の作品を久々に読んだこともあって、余計に満足度高し。ロス・トーマス作品の魅力は何といっても、そのキャラクターによるところが大きいんだけど、意外にひねくれたプロットもお得意で、単なるドンパチアクションで終わらないストーリー展開も見逃せない。
本作でも、強要された暗殺計画をどうやって失敗させ、かつフレドルを救うか、というなかなかに悩ましい問題が横たわっているにもかかわらず、作者はここに凄腕の犯罪者を複数絡め、裏切り合戦も展開させる。誰が味方でどいつが敵か? そして暗殺計画の行方は? はたまたフレドルの運命やいかに? この複雑なドラマが見どころである。
前述のごとくキャラクターも立っている。主役コンビはもちろんだが、彼らをサポートするチームの面々、ハードマンやマッシュあたりの人物像が絶妙。とりわけ会話は絶品で、基本的には殺伐としていてクールなやりとりなのだけれど、そこかしこにくすぐりを忍ばせていて、その匙加減がいい。
ただ、いかんせん分量に比して登場人物が多すぎるせいか、どのキャラクターも万全というわけにはいかない。例えばアフリカの一味などは全体的にちょっとイメージが弱い気はするし、パディロに思いを寄せるヒロインも描写が浅い。
まあ、登場人物が多い云々ではなく、これがデビュー三作目ということで単純にまだ未熟なだけなのかもしれない。デビュー作の『冷戦交換ゲーム』も読んでいるのだが、さてあちらはどの程度のものだったか?
ちなみに原作の刊行は1967年。そんな古さはまったく感じさせない楽しい一冊であることは間違いないのだが、同じ早川書房から刊行されている後期の作品は、よりハイレベルのものが揃っている。気になる方はそちらから読んでもいいかもしれない。
冷戦時の西ドイツでスパイ戦に巻き込まれたマッコークルだったが、今では帰国して恋人フレドルと結婚、ワシントンで「マックの店」を経営する身だった。そこへ突然重傷を負って転がり込んできたのが、かつての相棒パディロ。彼はアフリカのある一味から首相暗殺計画を依頼されたが、それを断ったため、トラブルとなってアメリカへ脱出してきたのだ。だが一味はパディロとマッコークルのことを調べ上げており、マッコークルの妻フレドルを誘拐してパディロに暗殺を強要する。パディロとマッコークルはこの難局を打破すべく、ある計画を練り上げるが……。
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いやあ、やはりロス・トーマスは巧い。ハードボイルドというかスリラーというか、まあジャンル名なんてどうでもいいんだけど、この手の作品を久々に読んだこともあって、余計に満足度高し。ロス・トーマス作品の魅力は何といっても、そのキャラクターによるところが大きいんだけど、意外にひねくれたプロットもお得意で、単なるドンパチアクションで終わらないストーリー展開も見逃せない。
本作でも、強要された暗殺計画をどうやって失敗させ、かつフレドルを救うか、というなかなかに悩ましい問題が横たわっているにもかかわらず、作者はここに凄腕の犯罪者を複数絡め、裏切り合戦も展開させる。誰が味方でどいつが敵か? そして暗殺計画の行方は? はたまたフレドルの運命やいかに? この複雑なドラマが見どころである。
前述のごとくキャラクターも立っている。主役コンビはもちろんだが、彼らをサポートするチームの面々、ハードマンやマッシュあたりの人物像が絶妙。とりわけ会話は絶品で、基本的には殺伐としていてクールなやりとりなのだけれど、そこかしこにくすぐりを忍ばせていて、その匙加減がいい。
ただ、いかんせん分量に比して登場人物が多すぎるせいか、どのキャラクターも万全というわけにはいかない。例えばアフリカの一味などは全体的にちょっとイメージが弱い気はするし、パディロに思いを寄せるヒロインも描写が浅い。
まあ、登場人物が多い云々ではなく、これがデビュー三作目ということで単純にまだ未熟なだけなのかもしれない。デビュー作の『冷戦交換ゲーム』も読んでいるのだが、さてあちらはどの程度のものだったか?
ちなみに原作の刊行は1967年。そんな古さはまったく感じさせない楽しい一冊であることは間違いないのだが、同じ早川書房から刊行されている後期の作品は、よりハイレベルのものが揃っている。気になる方はそちらから読んでもいいかもしれない。
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