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ロス・トーマス『狂った宴』(新潮文庫)
ロス・トーマスの『狂った宴』を読む。作者の二作目の長編で、昨年の『愚者の街』に続いて再び新潮文庫からの発売である。同文庫の「海外名作発掘 HIDDEN MASTERPIECES」の一冊でもあるが、このシリーズに限らず、最近の新潮文庫の翻訳ラインナップはいい作品が多く、実にありがたい。
まずはストーリー。英国の植民地、アフリカの小国アルバーティア。その地から英国が引き上げ、アルバーティアは独立し、初の首相選挙が行われることになった。独立後の利権を狙い、ある候補者を応援することにしたロンドンの広告代理店は、アメリカの選挙コンサルタント・シャルテルに白羽の矢を立てる。
シャルテルは代理店の若手広告マン・アップショーと共に現地へ飛び、さっそく行動を開始する。それは手段を選ばない計略であり、選挙戦はシャルテルの計画通りに進んでいくが……。
▲ロス・トーマス『狂った宴』(新潮文庫)【amazon】
初期作品ではあるが、すでにロス・トーマスの代表作に見られるような特徴は十分に盛り込まれ、あっという間に読める面白さである。
シャルテルたちが仕掛ける計画はオーソドックスなものから飛び道具までバラエティに富んでいる。一方、アルバーティアは英国の統治下にあるため一見すると平穏な小国だが、独立を前にきな臭い動きもあり、ライバル候補者もまたバックに外国の企業や政府機関がついて混沌とした様相を見せる。選挙戦とは言いながら、全体的にはコン・ゲームものを読むような面白さがあるのだ。
そういったストーリーの面白さもさることながら、より印象深いのはやはりキャラクターの魅力だろう。ひと癖もふた癖もあるような、いかがわしい登場人物たちが、丁々発止の駆け引きを見せ、会話もウィットに飛んでいて非常に愉しい。
本作でもアップショーがシャルテルを訪ねる導入部からして引き込まれる。シャルテルの一見豪放でズボラな、それでいて繊細、かつ緻密な性格が、会話だけで°読者にもスッと入ってくる。良い意味でも悪い意味でも人たらしであり、それがそのまま作品の魅力にも通じている。
ラストの皮肉な展開も作者らしいけれど、全体には後期作品ほどひねくれたところがなく、比較的シンプルな展開は、生粋のファンにはもしかすると物足りなく映る可能性もないではない。ただ、逆にいうとそれだけに読みやすさもあり、ロス・トーマスを初めて読もうという人には特にオススメである。
まずはストーリー。英国の植民地、アフリカの小国アルバーティア。その地から英国が引き上げ、アルバーティアは独立し、初の首相選挙が行われることになった。独立後の利権を狙い、ある候補者を応援することにしたロンドンの広告代理店は、アメリカの選挙コンサルタント・シャルテルに白羽の矢を立てる。
シャルテルは代理店の若手広告マン・アップショーと共に現地へ飛び、さっそく行動を開始する。それは手段を選ばない計略であり、選挙戦はシャルテルの計画通りに進んでいくが……。
▲ロス・トーマス『狂った宴』(新潮文庫)【amazon】
初期作品ではあるが、すでにロス・トーマスの代表作に見られるような特徴は十分に盛り込まれ、あっという間に読める面白さである。
シャルテルたちが仕掛ける計画はオーソドックスなものから飛び道具までバラエティに富んでいる。一方、アルバーティアは英国の統治下にあるため一見すると平穏な小国だが、独立を前にきな臭い動きもあり、ライバル候補者もまたバックに外国の企業や政府機関がついて混沌とした様相を見せる。選挙戦とは言いながら、全体的にはコン・ゲームものを読むような面白さがあるのだ。
そういったストーリーの面白さもさることながら、より印象深いのはやはりキャラクターの魅力だろう。ひと癖もふた癖もあるような、いかがわしい登場人物たちが、丁々発止の駆け引きを見せ、会話もウィットに飛んでいて非常に愉しい。
本作でもアップショーがシャルテルを訪ねる導入部からして引き込まれる。シャルテルの一見豪放でズボラな、それでいて繊細、かつ緻密な性格が、会話だけで°読者にもスッと入ってくる。良い意味でも悪い意味でも人たらしであり、それがそのまま作品の魅力にも通じている。
ラストの皮肉な展開も作者らしいけれど、全体には後期作品ほどひねくれたところがなく、比較的シンプルな展開は、生粋のファンにはもしかすると物足りなく映る可能性もないではない。ただ、逆にいうとそれだけに読みやすさもあり、ロス・トーマスを初めて読もうという人には特にオススメである。
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