■ J2の第23節 J2の第23節。10勝5敗7分けで勝ち点「37」のジェフ千葉(4位)と、7勝10敗5分けで勝ち点「26」のザスパクサツ群馬(15位)がフクダ電子アリーナで対戦した。5月31日(日)に群馬のホームの正田醤油スタジアムで対戦した時は1トップで起用された大卒ルーキーのFW江坂が2ゴールを挙げて群馬が2対0で勝利している。この時は前半に千葉のFW森本が退場。数的不利となった千葉はほとんどいいところなく敗れた。
ホームの千葉は「4-2-3-1」。GK岡本。DF金井、キム・ヒョヌン、富澤、田代。MF佐藤勇、パウリーニョ、ネイツ・ペチュニク、町田、谷澤。FW安柄俊。夏の移籍市場で横浜FMのDF富澤と川崎FのFW安柄俊を獲得したが、チームに合流して間もない2人がともに先発出場となった。DF富澤は横浜FMではボランチでプレーすることが多かったが、この日はCBで起用された。左SBのDF中村太は怪我で欠場となった。
対するアウェイの群馬は「4-2-3-1」。GK富居。DF夛田、有薗、青木良、小林亮。MF松下裕、アクレイソン、吉濱、黄誠秀、江坂。FW野崎桂。開幕から全試合でスタメン出場を続けている流通経済大出身のルーキーのMF江坂は左サイドハーフでスタメンとなった。右SBは6試合連続でDF夛田が起用されて、トップ下には「群馬のガットゥーゾ」の異名を持つMF黄誠秀が起用された。CBのDF青木良は古巣対決となる。
■ 2対1でアウェイの群馬が競り勝つ 試合は前半32分に群馬が先制する。低い位置でボールを奪ってロングカウンターを仕掛けると、うまく右サイドを打開してMF吉濱にボールが渡る。MF吉濱はタイミングを計って攻撃参加したMFアクレイソンにスルーパスを出すと、MFアクレイソンとDF金井が競ってこぼれたボールを裏から走り込んできたMF江坂が左足でゴールに流し込んでアウェイの群馬が先制する。MF江坂は今シーズン7ゴール目となった。
1対0で迎えた後半18分に千葉が左サイドでFKを獲得すると、初スタメンのFW安柄俊が折り返したボールをMFネイツ・ペチュニクが高い打点からヘディングシュートを決めて1対1の同点に追いつく。しかし、群馬は後半28分に高い位置でボールを奪ってMF小林竜との絡みからMF吉濱が左足でミドルシュートを放つと、これが鮮やかに決まって2対1と勝ち越しに成功する。MF吉濱は今シーズン3ゴール目となった。
結局、2対1でアウェイの群馬が勝利。群馬は今シーズンはホーム戦もアウェイ戦も千葉に勝利したことになる。「MF江坂とMF吉濱という期待の同級生コンビがゴールを決める。」という群馬にとっては最高の展開になった。群馬はこれで4試合負けなし。一方の千葉は今シーズン6敗目。ここ最近の10試合は2勝4敗4分けと苦しんでいる。千葉は次節は自動昇格争いをする磐田とアウェイで対戦する大一番が待っている。
■ またしてもジャイアント・キリング 群馬は2014年シーズンは14勝21敗7分けで18位と低迷したが、今シーズンはここまで8勝10敗5分け。この数字だけを見ると「まあまあ頑張っている。」と思う人がほとんどだと思うが、今シーズンは勝利の内容が極めて濃い。8節はC大阪、11節は京都、15節は磐田、23節は千葉にいずれもアウェイで勝利しており、ホームでも16節に千葉、21節に徳島を下しており、昇格候補と言われたチームには滅法強い。
すでに何度もジャイアント・キリングを起こしているが、この日のヒーローのMF吉濱も「なぜ、強豪相手にこれだけ勝てているのか分からない。」という趣旨のコメントを残している。理由については良く分かっていない選手も少なくないと思うが、今シーズンの群馬は強豪を相手にしたときも決して怯むことは無い。試合の終盤に決勝ゴールを奪う試合も目立つが、最後まで諦めないメンタルの強さも持っている。
群馬は昨シーズンまでの絶対的な主力だったFW平繁とFWダニエル・ロビーニョとDFクォン・ハンジンが揃って移籍。確実に計算できる即戦力クラスの補強もチームに戻って来たMF松下裕くらい。なおかつ、服部監督はプロのチームを率いるのは初めてである。「どう考えても今シーズンの群馬は苦戦するだろう。」と思われた中、強豪チームを相手に非常にいい戦いを見せてJ2で大きな存在感を示している。
ジャイアント・キリングとは格下のチームが格上のチームに勝利することで、「守って守ってカウンターのスタイルで勝利する」というイメージもあるが、今シーズンの群馬はそういうスタイルのチームではない。攻守両面でアグレッシブに戦えるチームで、攻撃的な守備ができる。トップ下にボール奪取力がウリとなるMF黄誠秀を起用したときはなおさらで、効果的な守備から鋭いカウンターを繰り出す場面は多い。
■ 1人で局面を打開できる2人のアタッカー 「1人で局面を打開できるアタッカーが2人もいる。」というのが群馬の強みになっている。1人目はMF吉濱である。湘南から完全移籍で群馬にやってきたが、左利きで、ドリブルもできて、パスも出せて、創造性もある。守備力や運動量など物足りない部分もあるが、攻撃的なスペックの非常に高い選手である。「何をするのか分からない。」というのもMF吉濱の魅力の1つで、イマジネーション豊かなプレーヤーである。
2人目は大卒ルーキーのMF江坂。この日もゴールを挙げて早くも7ゴールとなった。左サイドハーフが基本ポジションであるが、1トップに入るケースも増えている。シュートへの意識が高くて、左右両足で精度の高いシュートを放つことが出来るのがMF江坂の魅力であるが、運動量も豊富で、ドリブルで突破することもできて、自分で局面を打開することもできる。J2のアタッカーの中で有数のポテンシャルを持っている。
MF江坂はルックスの良さも魅力でプレーに華がある選手である。「華がある or 華が無い」というのがどういうものなのか言葉で表現するのは難しいが、「華がある。」と言い切れる選手はJ1の選手を含めても両手で数えられるほどである。
1つ前のエントリー でクローズアップしたC大阪のFW玉田あたりは「華のある選手」と言えるが、MF江坂は数少ない「華のあるJリーガー」で、非常に魅力的なプレーヤーである。
MF江坂とMF吉濱の2人が群馬の攻撃陣を引っ張っていく存在と言えるが、この2人は非常に相性が良くて、MF吉濱のパスを受けたMF江坂がゴールを狙うシーンは頻繁に観られる。ともに1992年生まれ。群馬は攻撃的なポジションは20代前半から中盤の選手の割合が高いが、このくらいの年代の攻撃的なポジションの選手が躍動するチームはほぼ例外なく魅力的である。ここまでの群馬の戦いぶりは称賛できる。
■ なかなかいいデビューを飾ったFW安柄俊 一方の千葉は調子が落ちている。3月・4月は順調に勝ち点を積み重ねたが、ここ最近はホームのフクアリであまり勝てておらず、ここ6試合で1勝2敗3分け。取りこぼしが目立っている。当然、「決定機に決められていない。」という部分も無きにしも非ずであるが、「決定力不足」を問題視できるほど多くの決定機を作れていないのがここ最近の千葉である。攻撃の迫力がなくなっているのは気になるところである。
この日もゴールを決めて9ゴールとなったMFネイツ・ペチュニクはよく頑張っているが、攻撃的なポジションの選手で「本当によく頑張っている。」と評価できるのはMFネイツ・ペチュニクのみ。FW森本は16試合で2ゴールで、MF谷澤は20試合でノーゴール。五輪代表候補のMF井出は5ゴールと結果を残しているが、関塚監督の信頼を完全に勝ち取るまでには至っておらず。ベンチスタートの試合も少なくない。
閉塞感が出て来たので「夏の補強は不可欠」と言えたが、横浜FMのDF富澤と川崎FのFW安柄俊を獲得した。DF富澤はボランチとCBの両方でプレーできてチームメイトを鼓舞する能力もある。当然のことながら、DF富澤の補強も効果的と言えるが、現状は守備的なポジションよりも攻撃的なポジションの方が改善ポイントは多いので、川崎Fから期限付きで加入したFW安柄俊がどこまでやれるか?は重要になってくる。
7月9日(木)にチームに合流したFW安柄俊はいきなり1トップのスタメンで起用されたが、出来としてはなかなか良かった。特に序盤はいいボールが頻繁に入って来て「キープ力」と「体の強さ」をいかんなく発揮した。前半の半ば以降はなかなか試合に絡めなくなったが、後半18分にはMFネイツ・ペチュニクのゴールをヘディングでアシスト。「合流して4日目」ということを考えると非常にいいプレーを見せたと言える。
川崎Fでの2年半はほとんど試合に絡めなかったが183センチとサイズがあって体の強さも感じる。そして、北朝鮮代表の経験があっていくつかの年代で国際試合を経験している点も魅力。プレーしている姿からはクールな印象を受けるが、停滞感が出ている千葉の雰囲気を変える可能性を持った選手で面白い補強ができたのではないかと思う。期待値は高いが、活躍してもらわないと困るという状況になりつつある。
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