■ 宮崎ラウンドの1日目ニューイヤーカップの宮崎ラウンドが1月31日(日)に開幕した。宮崎ラウンドに参戦するのはジェフ千葉・ロアッソ熊本・鹿島アントラーズ・アビスパ福岡の4チーム。その初戦でJ2所属の千葉と熊本が対戦した。千葉は関塚監督が続投したが熊本は小野監督が退任してヘッドコーチだった清川監督が就任した。清川監督は現役時代は日立製作所でプレー。2010年から2015年まで熊本でヘッドコーチを務めた。
千葉は「4-2-2-2」。GK佐藤優。DF北爪、イ・ジュヨン、多々良、阿部翔。MF山本真、富澤、長澤、井出。FWエウトン、船山貴。昨オフに大幅な血の入れ替えを行った千葉は新加入選手が8人もスタメンに名を連ねた。2015年も千葉でプレーしたのはDF北爪とMF富澤とMF井出の3人だけ。期待の新戦力のMFアランダはベンチスタートとなった。FWオナイウ阿道はU-23アジア選手権に選出されているので欠場となった。
対する熊本は「4-2-2-2」。GK原。DF小牧、鈴木翔、園田、黒木晃。MF上村周、村上巧、八久保、嶋田慎。FW齋藤恵、巻。ユニバーシアード代表で即戦力の期待がかかるMF八久保が右SHでスタメン出場。J3の福島で28試合で8ゴールと活躍して熊本に引き抜かれたFW齋藤恵が2トップの一角でスタメン出場。元日本代表のFW巻と2トップを組む。不安視されるキーパーは加入2年目で25歳のGK原が起用された。
■ 2対1で千葉が逃げ切る。試合の序盤は熊本がペースを握る。スタメン11人のうち8人が新戦力となる千葉に対して熊本の方は3人だけ。GK原やDF小牧など経験値の乏しい選手が起用されたがチームのやり方は小野監督時代と大きくは変わっていない。2トップのFW齋藤恵とFW巻が積極的に前からプレスをかけて相手の自由を奪ってマイボールになったらシンプルに裏を狙うサッカーで前半15分あたりまでは熊本が試合を優位に進めていく。
立ち上がりは相手の勢いに押されて戸惑いを見せた千葉だったが前半15分あたりを過ぎるとようやく攻撃の形を作り始める。すると前半46分にMF長澤のスルーパスから右サイドをFW船山貴が駆け上がってゴール前にパーフェクトなクロスを入れると飛び込んできたMF井出が頭で合わせて千葉が先制に成功する。再開直後に前半終了のホイッスルが鳴ったので「前半のラストプレー」で千葉が先制ゴールを奪った。
後半の立ち上がりから熊本はFW平繁とDF植田龍とDF上原拓とMF高柳を投入。すると2トップの一角に入ったFW平繁がいいところでボールを受けて時間を作ってチャンスに絡んでいく。後半7分にはFW平繁のボールキープから左SBのDF上原拓がサイドを駆け上がって左足で高精度のクロスを入れるとゴール前でドフリーになっていたFW齋藤恵がヘディングでゴールを狙うがGK佐藤優が好セーブを見せて同点とはならず。
1対0で迎えた後半44分に千葉は相手のミスから鋭いカウンターを繰り出すと最後は途中出場のMF小池純が決めて追加点を奪う。意地を見せたい熊本は直後の後半45分にエリア内でボールを受けた大卒ルーキーのMF八久保が見事なボールコントロールから右足でシュートを決めて1点差に迫るが時すでに遅し。2対1で千葉が勝利してニューイヤーカップの初戦を飾った。千葉は勝ち点「3」を獲得した。
■ 基本的な戦い方は変わらないロアッソ熊本熊本県と宮崎県は隣県となるが熊本市と宮崎市の距離はかなり離れている。特急や新幹線を利用しても電車では3時間ほど。高速バスを利用すると3時間半ほどかかるので簡単には出向くことはできないと思うが試合が開催されたKIRISHIMAハイビスカス陸上競技場(宮崎市)は熊本サポーターが目立った。当然、地元のニュートラルなファンも多かったと思うが観衆1,641人というのはなかなかの数字である。
千葉は選手が大幅に入れ替わって熊本は監督が交代となった。「どういうチームになるのか?」が読みにくいチーム同士の対戦だったが、先のとおり、熊本に関してはヘッドコーチだった清川監督が内部昇格したこともあって大幅な変更はなさそうだ。前から積極的にプレスをかけるサッカーは小野監督時代と同じである。試合の序盤は熊本のプレスがハマって千葉の選手が四苦八苦するシーンが少なくなかった。
熊本はオフにGKシュミット・ダニエルとDFクォン・ハンジンとFW齊藤和という攻守の軸であり絶対に欠かせない選手が揃って退団した。3人の穴を埋めるような補強はできていない印象なので「戦力ダウンしたのではないか?」という声は多い。新戦力の活躍ならびに既存の若手の成長は不可欠と言えるが大卒ルーキーのMF八久保の活躍が目立った。後半45分にはチーム初ゴールを記録したが大きな自信になるだろう。
■ 即戦力の期待がかかるMF八久保颯MF八久保は阪南大出身。168センチ/57キロと小柄な選手であるが左右両足を起用に使える点が目を引いた。狭いスペースでボールを扱うことが求められるアタッカーの選手は逆足でも問題なくプレーできるようになるのが理想であるがなかなか難しい。逆足でもしっかりとボールをコントロールして次のプレーにつなげることができるとプロの世界でも大きな武器となる。レギュラー争いに加わるのは間違いなさそうだ。
1失点目は走り負けてしまったが大卒2年目の右SBのDF小牧の出来はまずまずだった。右SBのレギュラーだったDF養父が長崎に移籍。大ベテランのDF藏川がいるが2015年は2列目でプレーする機会が多かった。アップダウンが求められるポジションなので38歳の選手がSBをこなすのは大変である。DF黒木晃、DF鈴木翔、DF園田あたりは右SBでもプレーできるがDF小牧は大きなチャンスのシーズンと言える。
他には後半から登場したFW平繁の出来はなかなか良かった。自身がゴール前でシュートチャンスを迎える場面はなかったと思うが周りをうまく使って攻撃をリードしていた。一方、期待の新戦力のFW齋藤恵は何度か持ち味のスピードを披露したがどちらかというと「守備の部分」でエネルギーを消費して攻撃まで意識や体力が回らなかった印象が強い。タスクをこなすのも大事であるがうまく休むことも大事である。
■ カギを握るのは新外国人のFWエウトン一方の千葉は監督こそ同じであるが全く別のチームに生まれ変わった。20人以上の選手が抜けて20人以上の選手がチームに加わったがこれほど選手が入れ替わるケースはJリーグの20数年の歴史を振り返ってみてもほぼ無かったと言える。6年連続でJ1昇格に失敗して『何かを変えなければならない。』という状況だったのでメスを入れた判断は間違いではなかったと思うがここまで入れ替わるとは思わなかった。
GK高木駿、DF大岩、DF金井、DFキム・ヒョヌン、DF中村太、MFパウリーニョ、MF佐藤健、MFネイツ・ペチュニク、MF水野晃、MF谷澤、FW森本、FW松田力などが抜けた一方でGK佐藤優、DF近藤直、DF阿部翔、MFアランダ、MF山本真、MF長澤、MF小池純、MF吉田眞、FW船山貴、FWエウトンらが加入したがここまで選手が入れ替わると「誰がチームに残ったのか?」を記述した方が状況を把握しやすい。
結局、ある程度以上の実績がある選手でチームに残ったのはGK岡本、DF北爪、MF富澤、MF佐藤勇、MF井出、MF町田、FWオナイウ阿道くらい。昨年の夏に横浜FMから加入したMF富澤でさえ「古株」という印象になるほどである。DF北爪、MF井出、FWオナイウ阿道という若手有望株を引き抜かれなかったのは救いと言えるがこれほどメンバーが入れ替わると戸惑いを覚えるサポーターが多くなるのは仕方がない。
2対1で勝利して白星発進となったが初戦の熊本戦を観る限りでは「守備に関してはある程度はやれそうだ。」と言える。新加入選手が大半であるが実績のある選手が多い。「守備が崩壊して下位に低迷する。」ということはなさそうだ。2015年のJ2で上位に入った大宮や磐田や福岡やC大阪と比べるとかなり見劣りしたキーパーのポジションに実績のあるGK佐藤優(東京V)を獲得できたのはかなり大きい。
問題は攻撃陣である。2015年のJ2の成績表を見ると一目瞭然であるが失点数というのは1位の大宮から14位の徳島までは大差はない。唯一、7位の北九州が58失点と上位陣~中位陣の中ではやや多くなっているがほとんどのクラブは40失点前後である。1試合平均では1.00失点くらいのチームが大半である。結局のところ、差が付くのは攻撃力であり得点力である。攻撃に関しては現状では未知数の部分が多い。
一定以上の守備力を持ったチームが増えているので昇格を狙うためには「スペシャルな選手」が必ず必要になってくるが何だかんだでFWエウトンにかかる期待は大きい。FW船山貴やMF井出やMF長澤あたりはある程度は計算が立つがFWエウトンに関しては「どれくらいやれるのか?」はまだはっきりしない。大幅な入れ替えが行われたが結局は「FWエウトンが当たりかどうか?」で千葉の成績は大きく左右されると思う。
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