■ グアテマラは対戦相手として妥当だったか?9月6日(金)のキリンチャレンジカップでグアテマラ代表と対戦したザックジャパンは3対0で勝利した。ここ最近で言うと、主力である欧州組が参加しなかった東アジアカップは「2勝1分けで初優勝」と結果を残したが、コンフェデでは3戦全敗で、8月中旬に行われたウルグアイ戦も2対4で敗れた。複数失点を喫する試合が続いており、流れが良くなかったので、力の劣る相手とは言え、一旦、嫌な流れを断ち切ることができた。
グアテマラのFIFAランキングは93位なので、日本よりはかなり下になる。異なる地域の国のFIFAランキングを比較することは、あまり意味が無いことだとは思うが、一応、比較してみると、日本が37位で、グアテマラは93位である。グアテマラと同じくらいのチームを探すと、95位のオマーンや中国といった国々の名前を挙げることができるが、世界的に見ても、評価の高い国とはいえない。
こうなると、もう少し強い相手と試合が出来なかったのか?という疑問も生まれてくるが、まず言えるのは、強い相手とばかり対戦していても、TVゲームのように経験値がたくさんもらえて、チームが強くなっていくわけではないということで、「マッチメイキングにもバランスが大事」ということである。強豪国と対戦して、課題がたくさん噴出しても、課題をクリアに出来る機会が無いと、意味のないものになってしまう。
例えば、大学入試などで、模擬試験ばかりこなしていても、本当の実力が付かないのと同じである。日本代表は、試合を行った後、すぐに解散となることがほとんどなので、課題は次回に持ち越しとなることが、普通である。もちろん、次の試合までに、何回かは、練習することができるが、連続して強豪国と対戦しても、新しい課題が出てきて、その前に出た課題が消化できないままだと、チームは強化されない。
■ 世界各地でW杯予選したがって、ウルグアイのような強豪国と対戦した後は、若干、力の劣る相手を選ぶことも、巧みなマッチメイキングだと思うので、ウルグアイ戦の後、グアテマラを相手に選んだことは、悪くは無いと思うが、各国のスケジュールを見ると、選択肢はほとんど無かったので、強豪国と対戦したくても、「物理的に不可能だった。」ということも、それなりにサッカーを知っている人にとっては、自明のことだと思う。
ブラジルW杯まで、あと9ヶ月ほどになったが、まず、パラグアイ、ボリビア、チリ、ベネズエラ、ペルー、ウルグアイ、コロンビア、エクアドルという南米の8カ国は、9月7日(土)にブラジルW杯の南米予選を控えており、土曜日にはW杯予選が組まれていないアルゼンチンも9月11日(水)にW杯予選が組まれている。当然のことながら、これらの国と試合を行うのは、絶対に無理な話である。
欧州も同様で、マケドニア、ウェールズ、スコットランド、ベルギー、セルビア、クロアチア、イタリア、ブルガリア、マルタ、デンマーク、チェコ、アルメニア、アイルランド、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、カザフスタン、フェロー諸島、エストニア、オランダ、トルコ、アンドラ、ルーマニア、ハンガリー、ノルウェー、キプロス、スイス、アイスランド、スロベニア、アルバニアは9月7日(土)に欧州予選を戦った。
また、メキシコ、ホンジュラス、パナマ、ジャマイカ、コスタリカ、米国は9月7日(土)に北中米・カリブの最終予選をこなしている。今回、来日したグアテマラは、三次予選のグループAで3勝2敗1分けという成績で、首位のアメリカと2位のジャマイカに次いで3位に終わったので、最終予選に進めなかったので、来日することができたが、最終予選に進んだ国々を日本に招くのは、無理である。
さらに、翌日の9月8日(日)は、イスラエルとアゼルバイジャンの欧州予選が行われて、チュニジア、カーボベルデ、シエラレオネ、赤道ギニア、コートジボワール、モロッコ、ガンビア、タンザニア、ブルキナファソ、ガボン、ニジェール、コンゴ共和国、ナイジェリア、マラウイ、セネガル、ウガンダ、ケニア、ナミビア、ジンバブエ、モザンビーク、カメルーン、リビアといった国々がアフリカ予選を戦っている。
そして、9月9日(月)には、ベナン、ルワンダ、トーゴ、コンゴ民主共和国、スーダン、レソトの6チームがアフリカ予選を戦って、9月10日(火)には、エジプトとギニアの試合が組まれていて、さらには、アジア地区のプレーオフの第2戦のウズベキスタンとヨルダンの試合も組まれている。このように、各地区のW杯予選は大詰めにさしかかっており、ほとんどの国がW杯予選で頭がいっぱいの状態である。
■ 誰もが一度は通る道したがって、日本と同格か、それ以上の力を持った国で、9月6日(金)に日本で試合をこなすことができる可能性がわずかでもある国というのは、アジアの韓国やオーストラリアやイランなどを除くと、開催国で予選が免除されているブラジルなど、ごくわずかである。おそらく、世界中を探したとしても、片手で数えることができるくらいであり、対戦相手の選択肢というのは、ほとんどなかったと言える。
もちろん、日本サッカー協会のマッチメイク能力が高いとは言えない。欧州や南米の強豪国とのパイプが太いとも思えないが、何でもかんでも、マッチメイキング批判に持っていこうとするのか、いかがなものかと思う。「日本サッカー協会のマッチメイキングにケチを付ける。」というのは、サッカーを見始めて、ちょっと時間が経って来た頃に、誰もが、一度は通る道ではあるが、かっこいい話ではない。
その後、いろいろな現実を知って、「マッチメイキングがそんなに簡単なことではない。」ということが分かると、声を大にしてマッチメイキングを批判することはなくなってくるが、特に、今回のグアテマラというマッチメイングを批判することは、サッカーに明るくない人には通っぽく聞こえるが、全くそうではない。「そんなにサッカーに詳しくない。」、「あまり事情が分かっていない。」と言われても、反論はできない。
ごく稀に、サッカー解説者やサッカーライターなど、専門家でも、様々な事情を無視して、日本サッカー協会のマッチメイキングに対して、ケチを付けたがる人もいるが、視野の狭さを感じてしまう。世界のサッカー界は、日本代表が中心で動いているわけではないので、日本代表あるいは日本サッカー協会がいくら頑張っても、無理な話というのは、いくらでもある。
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