■ 開幕4連勝を達成した後は苦しむ。2018年のJ3を制覇して「初のJ2昇格」を達成したFC琉球はオフに主力数名が引き抜かれた。金鍾成監督も鹿児島に引き抜かれたのでオフは苦戦を強いられたが開幕4連勝を達成した。1節は福岡、2節は大宮に勝利するなど最高のスタートを切ったが転機になったのはMF中川風(→横浜FM)の流出だった。開幕からの3試合で4アシストと躍動していたMF中川風は3月15日(金)に横浜FMに移籍することが決まった。
当初は東京世代のMF上門がゴールを量産するなど「MF中川風の穴を感じさせない戦い」を見せていたが徐々に失速。結局、5節以降は22試合で3勝12敗7分け。散々な成績になる。開幕4試合で勝ち点「12」を獲得したのはやはり大きくて今のところは残留争いに巻き込まれていないが現在のところ5連敗中。ここ最近のチーム状態の悪さを考えると「今後、J2の残留争いに巻き込まれる可能性」は否定できない。
波の大きいシーズンになっているが8月5日(月)に元・日本代表のMF小野伸(札幌)の加入が発表された。9月27日(金)で40才になるMF小野伸は言わずと知れた日本サッカー界のレジェンドである。3大会連続でW杯に出場している数少ない選手の1人であり、オランダの名門のフェイエノールトで長きに渡って活躍した。開幕4連勝を達成した後はあまりいいニュースがなかったFC琉球にとっては久々の明るい話題になる。
■ 「日本サッカー界の最高傑作」とも言われる。高校時代から大きな注目を集めたMF小野伸は黄金世代を代表する選手になる。1999年のワールドユースの準優勝というのは日本サッカー界にとって金字塔だったがキャプテンとしてチームを引っ張って大会のベストイレブンにも選出されている。当時は世紀末だったので「20世紀最後の天才」とも言われたが、さらには「日本サッカー界の最高傑作」とも評された。圧倒的な技術とアイディアを持った選手だった。
その後は怪我に苦しんだので「怪我がなければ・・・」というのはMF小野伸を語る上で外せないキーワードになるが天性の明るさとリーダーシップが黄金世代の選手ならびに日本サッカー界が成長していく上で大きな助けになった。2014年の途中に札幌に加入したので、ほぼ5年間、札幌でプレーしたが、今度の浦和戦(H)が札幌でのラストゲームになる。最後の試合で出番が得られるのか?に注目が集まる。
8月17日(土)に行われる横浜FC戦(H)がFC琉球の選手としてのデビュー戦になる可能性がある。横浜FCというと、今夏、同じく元・日本代表のMF中村俊が加入して盛り上がっているが、MF小野伸とMF中村俊が一緒のピッチでプレーすることになったらかなりドラマチックである。年齢的にはMF中村俊の方が1つだけ上になるが両名は若い頃から「ポスト・中田英寿」とも言われて激しいライバル関係にあった。
■ 「きちんと休んだら治る。」というレベルではなさそう。「FC琉球での最初の試合で両名が激突する可能性がある。」というのはオールドファンにはたまらないシチュエーションになるが、まず最初に言うと、MF小野伸がFC琉球の中で大きな戦力になる可能性は相当に低いと思う。満身創痍の状態なので、J1であれ、J2であれ、長時間プレーするのは難しい。怪我を抱えており、その怪我というのは「きちんと休んだら治る。」というレベルのものではなさそうだ。
騙し騙しやるしかないような状態になっていると想像できる。電撃移籍となったMF小野伸が開幕4連勝の後、低迷するFC琉球の救世主になることを期待している人は少なくないと思うが現実的には難しい。プレーすることが出来たとしても途中出場がほとんどになると思うので過度に期待するのは酷だと思うがたくさんの修羅場を潜り抜けた経験というのはJ2で1年目のFC琉球にとって大きな助けになるだろう。
先のとおり、札幌に加入したのは2014年の夏だった。当時の札幌はJ2所属。野々村社長になって経営的に少し上がり目の状態だったが2014年は10位、2015年も10位だった。J2でも真ん中付近のチームだったが2016年にJ2優勝を達成すると2017年・2018年と2年連続でJ1残留を達成。2018年に至ってはJ1でも4位になった。クラブ史上最高のシーズンを過ごしたがクラブ規模はここ数年で一気に拡大した。
■ 札幌の躍進に陰ながら貢献MF小野伸の後、MF稲本が加入して、MFチャナティップなども獲得。FWジェイやFW鈴木武蔵などの補強にも成功しているのでスター選手が札幌に加入することはもはや珍しくなくなっているがその先駆けとなった1人はMF小野伸だった。何だかんだでスター選手がいないとお客さんは増えなくて収益も伸びない。「タイトルを狙えるクラブになった札幌でその礎を築いた選手の1人」として記憶されることになるだろう。
彼の存在は有望株が多い札幌の若手の成長にも大きな助けになっただろう。人格者としても知られており、「ピッチ上でプレーできなくてもチームに大きなプラスの影響をもたらすベテランがいないとチームは強くならない。」という考えを持つ野々村社長の期待以上のものを札幌にもたらしたと思われる。もちろん、もっとたくさんピッチ上でプレーできれば最高だったが、多くのものを残して札幌を後にすることになる。
FC琉球も若い選手が多いチームである。昨シーズンは元・日本代表のFW播戸が在籍してチームを盛り上げたがMF小野伸はFC琉球というクラブにもたくさんのものをもたらすことになるだろう。「J1でプレーするのは厳しくなったかつての代表選手やスター選手がJ2やJ3のクラブに移籍していろいろな経験を伝えて回る。」という流れが出来つつあるのは日本サッカー界によって喜ばしい話である。
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