■ J2の第23節J2の第23節。4勝10敗8分けで勝ち点「20」のロアッソ熊本(20位)と9勝9敗4分けで勝ち点「31」の愛媛FC(11位)がうまかな・よかなスタジアムで対戦した。今シーズンの熊本はホームではここまで1勝5敗4分け。6月6日(土)に行われた17節の長崎戦で待望のホーム初勝利を飾ったが、このときは水前寺競技場での試合だったので、メインで使用しているうまかな・よかなスタジアムでは昨シーズンから10試合勝ちなし。
ホームの熊本は「4-2-3-1」。GKシュミット・ダニエル。DF養父、クォン・ハンジン、鈴木翔、黒木晃。MF園田、高柳、嶋田慎、齊藤和、藏川。FW巻。CBが本職と言えるMF園田がボランチに入って、右SBのスペシャリストのMF藏川が左サイドハーフで起用されるというやや苦しい布陣となった。J1の仙台から期限付き移籍のGKシュミット・ダニエルは7試合連続スタメン。196センチというサイズが最大の武器となる。
対するアウェイの愛媛FCは「3-4-2-1」。GK児玉。DF林堂、西岡、浦田。MF藤田息、秋山、玉林、近藤貫、瀬沼、河原。FW渡辺亮。怪我もあってここ最近はスタメンから外れる試合が続いていたMF秋山は15節の長崎戦(A)以来のスタメンとなった。C大阪から期限付き移籍中のMF秋山はこの試合が愛媛FCでの最後の試合となる。愛媛FCのユース出身で期待のMF近藤貫が左WBでプロ初スタメンとなった。
■ うまかな・よかなスタジアムでは久しぶりの勝利試合はどちらかというとホームの熊本ペースで進んでいく。愛媛FCはキャプテンのFW西田がベンチスタートで190センチのFW渡辺亮を1トップの位置で起用したが、前線で孤立するシーンが目立った。先制したのは熊本で前半36分にペナルティエリア内でDF養父のパスを受けたMF藏川が絶妙なコントロールからファーサイドにクロス。これをファーサイドで待っていたDFクォン・ハンジンが頭で合わせて熊本が先制する。
熊本は後半24分に相手のパスミスからMF齊藤和が絶好のチャンスを迎えるが決められず。しかし、直後の後半26分にキーパーのGKシュミット・ダニエルのロングフィードをFW巻が頭で落としてゴール前に走り込んできたMF齊藤和が足先でうまく合わせて2対0とリードを広げる。MF齊藤和は早くも今シーズン9ゴール目。プロ3年目の2013年シーズンに記録した8ゴールを上回って自己最多のゴール数となった。
結局、試合は2対0でホームの熊本が完勝。ようやくうまかな・よかなスタジアムで勝利することができた。熊本はこれで5勝10敗8分けとなった。残留争いに巻き込まれている中、貴重な勝ち点「3」を獲得した。一方の愛媛FCはC大阪への復帰が決まったMF秋山の最終戦を白星で飾ることはできず。18節は東京V(H)、19節は岡山(A)に勝利したが、20節の磐田戦(H)から4試合勝ちなし。4試合連続で無得点と苦しんでいる。
■ 現実路線に切り替えてどん底から脱出したロアッソ熊本今シーズンのJ2は開幕前から「かつてないほどの豪華メンバー」と言われており、予想通りに昇格争いは大混戦になっているが、もっと熾烈なのは残留争いである。昇格組の金沢が開幕から快進撃を見せて残留争いとは無縁のシーズンを過ごしており、昨シーズンは21位で入替戦に回った讃岐も順調に勝ち点を伸ばしている。そして、降格候補の1つと言われた群馬は強豪チームを相手に無類の強さを発揮している。
開幕前は「金沢と讃岐と群馬の3チームが残留争いの中心になるだろう。」と言われていたが、結局、3チームとも着実に勝ち点を積み上げている。その一方で、J1経験が豊富な大分や京都が下位に低迷しており、熊本や水戸やFC岐阜なども思い通りの結果を出せていない。大分と京都と水戸はすでに監督交代という大ナタを振るったが、補強に成功して前評判の高かった熊本も予期せぬ不振で3月・4月は苦しんだ。
熊本は4月に5連敗(※ しかも5試合連続ノーゴール)を喫するなどクラブ史上でも1.・2を争う危機的な状況を迎えたが、5月3日(日)に行われた11節の栃木SC戦(A)から基本となる戦い方を大きく変えている。元日本代表でターゲットマンのFW巻をフォワードの軸に据えて、FW巻の高さをフル活用する現実的なサッカーを選択するようになったが、これによって少しずつではあるが、勝ち点を積み上げるようになっている。
4月終了時点での10節までの成績は1勝6敗3分けだったが、5月以降は4勝4敗5分け。1試合平均で1.31ポイントを獲得している。ひとまず、現実的なサッカーを選択したことが吉と出た。正直なところ、昨シーズンの終盤から今シーズンの序盤に見せていたサッカーと比較すると「魅力度」ではかなり劣るが、こういう状況に陥ったので仕方がない。スパッと切り替えることができたのでどん底状態からは脱出できた。
■ プロ初の二桁ゴールにリーチがかかった齊藤和樹前半36分にDFクォン・ハンジンが先制ゴールを挙げて、後半26分にMF齊藤和がダメ押しゴールをマークしたが、MF齊藤和のゴールは見事だった。これで今シーズン9ゴール目。ゴールを決める直前にキーパーとの1対1に近い決定機を外したが、「簡単なシュートを外して難しいシュートを決める。」というのがMF齊藤和という選手である。高い代償を払う展開になるかと思われたが、すぐに自分で取り返した。
熊本はシーズン序盤はほとんど攻撃の形を作れなかったので、フォワードやトップ下やサイドハーフの位置でプレーするMF齊藤和に絶好のパスが送られる場面は本当に少なかった。9ゴールという数字は例えば千葉のMFネイツ・ペチュニクと同じであるが、「総合力ではJ2の中でもトップクラス」と言える千葉の選手の9ゴールと攻撃で苦労している熊本の選手の9ゴールではその意味合いや価値は少し異なると言える。
MF齊藤和のようなこれからキャリアを築いていくストライカーにとって1つの目標となる「プロ初の二桁ゴール」にリーチがかかったが、二桁は大きな勲章となる。自身の価値を高めるだけでなく大きな自信を手に入れることが出来ると思うが、「簡単なシュートを外す。」という出来ることならば改善したい部分が「リーグ戦で二桁ゴールを記録できた。」という自信が解決してしまう可能性は無きにしも非ずである。
当然、キーパーとの1対1など「比較的簡単だ。」と思われるシュートを外してしまうのは技術的な問題も関係していると思うが、やはり、MF齊藤和の場合は精神的な部分が大きいと思う。「ハードワークもできて、なおかつ、定期的にスーパーゴールを決める。」という選手が「ハードワークができて、定期的にスーパーゴールを決めるが、簡単なシュートもきっちりと決める。」という状態になったら鬼に金棒である。
■ スタメン抜擢の若手コンビは不発・・・一方の愛媛FCはこれで4試合勝ちなし。4試合連続無得点と調子が落ちている。トータルでは9勝10敗4分け。今シーズンの愛媛FCのクラブとしての目標は「シーズンの勝ち越し」である。やや控えめな目標を掲げているが、ここから2連勝や3連勝するとプレーオフの出場権争いに本格的に加わることができる。愛媛FCにとっては非常に大事な時期と言えるが、この日はほとんどいいところが無かった。完敗だったと言える。
3試合連続無得点中ということもあって、若手のFW渡辺亮とMF近藤貫を今シーズン初めてスタメンで起用した。「起爆剤になってほしい。」という木山監督の願いが込められていたと思うが、ともに思うようなプレーはできず。MF近藤貫はシャドーの位置が一番良さを発揮できるポジションだと思うが、この日は左WB。不慣れなポジションだったが、MF三原向が見せているような裏への積極的な飛び出しが欲しかった。
愛媛FCはFW西田とMF河原とMF瀬沼のトライアングルは強力である。この3人に続く選手の登場が待たれるが、現状ではこの3人とそれ以外の選手には「様々な部分で差がある。」と言わざる得ない。今のところは新戦力の補強のニュースも聞こえてこないので、大卒ルーキーのMF近藤貴と高卒2年目のMF表原を含めた生え抜きの選手たちのさらなる成長が期待されるが、どの選手も苦労しているのが現状である。
■ 愛媛FCでのラストゲームとなったMF秋山大地C大阪から期限付き移籍中のMF秋山はこの試合が愛媛FCでのラストゲームとなった。合流して間もない4節の水戸戦(A)から12試合連続スタメン。最近は怪我等もあってスタメンから外れる機会が続いたが、最終戦ではスタメン出場。「ボランチが手薄」という愛媛FCの苦しい台所事情を助ける活躍はできた。自身もかなりの試合経験を積むことが出来たので、双方にとって非常に意味のある期限付き移籍だったと言える。
MF秋山に対する木山監督の評価は非常に高かった。「ボール奪取力に関しては日本人の中ではトップクラス」と評しており、試合経験の少ないMF秋山を信頼して使い続けた。加入当初はリスキーなプレーを選択する場面が多くて、縦パスをカットされてカウンターを食らうシーンがたびたび見られたが、試合を重ねるごとに「リスキーなプレーを選択してもいい場面なのか、否か。」の判断が正確にできるようになった。
これでC大阪に戻ることになるが、C大阪は意外とボランチの層が薄い。ここ最近はWボランチを採用しているが、MF山口蛍とMF扇原に続くのはベテランのMF橋本英。代表経験のある3人は盤石と言えるが、MF長谷川アーリアジャスールがいなくなったので、「ボランチの4番手は誰か?」を即答するのが難しい状態である。当面、レギュラーというのは難しいと思うが、MF秋山の頑張りが必要な状況になっている。
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