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山田風太郎『天狗岬殺人事件』(出版芸術社)
出版芸術社の山田風太郎コレクションから『天狗岬殺人事件』を読了。この山田風太郎コレクションというのは、単行本未収録や長らく絶版状態になっていたものをまとめた全三冊のシリーズで、いかにも出版芸術社らしい企画。ありがたやありがたや。
まずは収録作から。
「天狗岬殺人事件」
「この罠に罪ありや」
「夢幻の恋人」
「二つの密室」
「パンチュウ党事件」
「こりゃ変羅」
「江戸にいる私」
「贋金づくり」
「三人の辻音楽師」
「新宿殺人事件」
「赤い蜘蛛」
「怪奇玄々教」
「輪舞荘の水死人」
「あいつの眼」
「心中見物狂」
「白い夜」
「真夏の夜の夢」
以上全17編。玉石混淆気味なところもあるが、山風ファンであれば文句なしに買いの一冊。
特に興味深かったのは、「三人の辻音楽師」から「輪舞荘の水死体」までの五作。実はこの五作、「女探偵捕物帳」という本格ものの連作短編なのだが、なかなか凝った構成をとっている。沖縄で起こったある事件の復讐のため、姫と少年と爺の三人組はどさ回りをしながら、復讐相手たちを捜して旅を続けている。そして毎回、復讐相手を見つけだすことには成功するが、彼らはたいてい事件に巻き込まれており、三人組が復讐を遂げる前に他の誰かに殺されているのだ。結局その謎を解き明かす羽目になるのが三人組という、なんとも不条理なシリーズなのである。
一つひとつの作品もまずまず楽しめるが、残念なのは、どうやらこのシリーズが収録されている五作で中断したらしいことである。山田風太郎はこの手の連作、例えば『妖異金瓶梅』や『誰にもできる殺人』でもわかるように、たいていシリーズそのものに対する仕掛けをかましてくるのは有名な話。短編でありながら長篇としても成立する構成。毎回の定型を逆手に取ったトリック。この妙技をおそらく「女探偵捕物帳」でも狙っていたはずである。それが読めなかったのが唯一の心残りだ。
他の作品では比較的コミカルな作品が多いけれども、その手のものよりは独特のムードがいかにも山田風太郎らしい「天狗岬殺人事件」がやはり素晴らしい。
まずは収録作から。
「天狗岬殺人事件」
「この罠に罪ありや」
「夢幻の恋人」
「二つの密室」
「パンチュウ党事件」
「こりゃ変羅」
「江戸にいる私」
「贋金づくり」
「三人の辻音楽師」
「新宿殺人事件」
「赤い蜘蛛」
「怪奇玄々教」
「輪舞荘の水死人」
「あいつの眼」
「心中見物狂」
「白い夜」
「真夏の夜の夢」
以上全17編。玉石混淆気味なところもあるが、山風ファンであれば文句なしに買いの一冊。
特に興味深かったのは、「三人の辻音楽師」から「輪舞荘の水死体」までの五作。実はこの五作、「女探偵捕物帳」という本格ものの連作短編なのだが、なかなか凝った構成をとっている。沖縄で起こったある事件の復讐のため、姫と少年と爺の三人組はどさ回りをしながら、復讐相手たちを捜して旅を続けている。そして毎回、復讐相手を見つけだすことには成功するが、彼らはたいてい事件に巻き込まれており、三人組が復讐を遂げる前に他の誰かに殺されているのだ。結局その謎を解き明かす羽目になるのが三人組という、なんとも不条理なシリーズなのである。
一つひとつの作品もまずまず楽しめるが、残念なのは、どうやらこのシリーズが収録されている五作で中断したらしいことである。山田風太郎はこの手の連作、例えば『妖異金瓶梅』や『誰にもできる殺人』でもわかるように、たいていシリーズそのものに対する仕掛けをかましてくるのは有名な話。短編でありながら長篇としても成立する構成。毎回の定型を逆手に取ったトリック。この妙技をおそらく「女探偵捕物帳」でも狙っていたはずである。それが読めなかったのが唯一の心残りだ。
他の作品では比較的コミカルな作品が多いけれども、その手のものよりは独特のムードがいかにも山田風太郎らしい「天狗岬殺人事件」がやはり素晴らしい。
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