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仁木悦子『林の中の家』(講談社文庫)
本日より夏期休暇をとる。明日からは温泉に行く予定だが、本日はフリー。ということで渋谷の東急で行われている古書市最終日をのぞいてきたが……見事に欲しい本がない。やっぱり最終日じゃだめだ。
読了本は仁木悦子の『林の中の家』。仁木兄妹ものの第二長編である。
欧州旅行中の水原夫妻から屋敷の留守とサボテンの世話を頼まれた仁木雄太郎と悦子の兄妹。そんなある日のこと、彼らの家に女から奇妙な電話がかかるが、途中で女の悲鳴とともに電話は切れてしまう。「林の中の……」というわずかな情報から電話の家を突き止めた二人だが、なんとそこで女の死体を発見してしまう……。
『猫は知っていた』以上にゲーム性が強い作品である。しっかりした構成、緻密なまでに張り巡らされた伏線。それでいてマニアではなく一般読者を見据えた世界観。戦後、松本清張とともに一時代を築いたことも十分納得できる出来。
もったいないのは事件が地味すぎることか。基本的にドメスティックな設定の多い仁木悦子の作品だが、仁木兄妹ものはとりわけその傾向が強い。普通だからこそここまで成功したのも事実が、個人的にはちょっと味が薄すぎるのだ。全般的にもう少しだけ香辛料を効かせてくれると嬉しいのだが。
読了本は仁木悦子の『林の中の家』。仁木兄妹ものの第二長編である。
欧州旅行中の水原夫妻から屋敷の留守とサボテンの世話を頼まれた仁木雄太郎と悦子の兄妹。そんなある日のこと、彼らの家に女から奇妙な電話がかかるが、途中で女の悲鳴とともに電話は切れてしまう。「林の中の……」というわずかな情報から電話の家を突き止めた二人だが、なんとそこで女の死体を発見してしまう……。
『猫は知っていた』以上にゲーム性が強い作品である。しっかりした構成、緻密なまでに張り巡らされた伏線。それでいてマニアではなく一般読者を見据えた世界観。戦後、松本清張とともに一時代を築いたことも十分納得できる出来。
もったいないのは事件が地味すぎることか。基本的にドメスティックな設定の多い仁木悦子の作品だが、仁木兄妹ものはとりわけその傾向が強い。普通だからこそここまで成功したのも事実が、個人的にはちょっと味が薄すぎるのだ。全般的にもう少しだけ香辛料を効かせてくれると嬉しいのだが。
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