はてなキーワード: ちゃんことは
プロ野球には、チームの勝敗に対するファンの多様な反応が存在する。
勝利を強く求めるがゆえに敗戦に深く落胆するファンの違いを理解する必要がある。
西武ファンと喋ってる時に「阪神とか広島のファンは負けすら楽しんでて【強いチームだから好き】みたいなのとは違うよな」という話で盛り上がったことがある。
この文化があるチームとないチームがあるんだよな。
負けが込むと凹むよりは「どうやったら勝てるのか」みたいな自分のオーダーや作戦をめちゃんこ考える方に行く。時として、監督や選手にドライな発言が出る。
その辺も考えるけど、それを飛び越えて楽しむところまで行くから文化がちょっと違う
「負けてる時にヘラヘラするな!悔しくないのか」という昔のスポ根の反対側にいるのが阪神・広島・ヤクルトのイメージ。負けてるなら負けてるで笑い話にしちゃう。見捨ててるわけじゃなくて、むしろちゃんと底力があると信頼してて愛が深いからこそできる行動してる感じがある。
地域密着で成功してるチームはこの「愛の深さ」がファンの中で共有されてるイメージ。
逆に、メジャーリーガー出したり、強さで話題を作ってきたチームのファンは「愛の深さ」というより野球そのものに惹かれてる分、負けが混んだ時の耐性が低くなりがち。
みんなありがとう。
昨日ネカフェでいろいろ読んできた。
【教えてもらった作品】
・転生重騎士がどうのこうの
→ちょうど求めていた感じの作品だった。そこそこ面白いけど、内容が薄くて20分くらいで1冊読んじゃうから買う気にはなれない、ネカフェで読むのには丁度いいやつ。
→上のとは逆にかなりじっくり読ませるタイプで、ちゃんと買って続き読もうかなと思った。
・フシノカミ
→ネカフェになかったからアプリでちょっと読んだけど、面白そうだった。
・ニセモノの錬金術師
→これもネカフェになかったんだが?後で読んでみる
・幼女戦記
→アクション描写が普通に上手い、主人公が謙虚で好感が持てる。この手のやつで一番面白いと思う。
追記)いきなり筆頭にもってきたこれがよく考えたら異世界転生じゃなかった
・第七王子がどうのこうの
→主人公のチート魔法の描写がかなりすごい。デジタルのポテンシャルを一番引き出している漫画かも
→有能な仲間を集めていく感じはシミュレーションゲームっぽくて面白い。信長の野望をやってる感じ。
→空手小公子の人なので流石にアクションは上手い。騎乗設定がだんだん死にかけているのと、プーチンの好感度がどんどん下がっているのが微妙。
・淡海乃海
→転生がどうのこうのというより、戦国物も架空戦記物も好きなので当然これも好き。早々に史実を外れているところがよい。
・あと田中
→楚漢戦争は好きなので普通に楽しめるが、もっと田中が活躍してもいいと思う。史実通りに進みすぎて先が読めるので微妙。
・高度な医療はどうのこうの
→絵がすごい。ストーリーはファンタジー版「仁」やってる間は微妙だっだけど、敵側のゴタゴタが始まってから面白くなってきた。
→好きに決まってるが、俺の中で「異世界転生系(≒なろう)」と同じ引き出しに入れてない。望郷太郎も。
・烈海王のやつ
→だいぶ前から刃牙本編より面白い。デュラハン倒したあたりまで読んだ。
好きだけど挙げるの忘れてた。Civの技術ツリーを上げていく楽しみを追体験できるが、戦場の描写は淡泊で物足りない。
・俺だけレベルアップな件、ゴッドオブブラッフィールド、300年後がどうたらの大魔道士、ロードオブマネー、王様の二度目の人生みたいなやつ
→全部ピッコマで読んでたけどスマホの機種変で引き継ぎミスってアカウントの購入データが飛んで続き読む気なくしたからお前ら気をつけろ
・転スラ
・蜘蛛ですがなにか
→転スラに輪をかけてつまらんかった。なんかノリが寒かった。
・無職転生
→3巻くらいまで読んだが主人公がキモすぎて受け付けなかった。
・異世界おじさん
・チー付与
→1巻は読んだ。面白くなるという話は聞いているが、続きを読むきっかけがない。
前に一度見たきりで久しぶりでグローバル艦長ってあんまり活躍してないイメージあったけど、人類の想像を超える状況に振り回されることが多いだけで軍人とは思えないほど柔軟だった。
それと初めて「戦後編」見たけどキスでハッピーエンドに終わってからの倦怠期みたいな話だった。
主人公が自分から約束したくせにすっぽかして他の女に会いに行ったり、本編だと割と正論側でしっかりしてた印象の強かった未沙も弱さが目立ったりで株を落とす一方、
文化を理解してるブリタイ閣下とか、文化してるカムジンとかゼントラン側のメインキャラのほうが魅力的だったかも。
上手くいかないゼントラーディとの融和とか急速に進む復興とか見るべき所もあって面白くはあった。でもこれマクロスか?とは思ってたけど最後の最後でマクロスだった。
長すぎてどうにも見る気がしなくて7飛ばしてF見たけど、何年か前も配信で見ておもしろってなったけどやっぱ面白かった。
話のテンポとか映像とかも現代風で今見ても見入ってしまう。初代はぶっちゃけミンメイあんまり魅力感じなかったけど、Fは両者共にカッコいい所かわいい所見せ場あって魅力的に感じた。
あとやっぱり歌が強すぎる。未だ見てない劇場版もいい加減見ようと思った。
未見だった7もΔも見て、初代も見て思ったけどやっぱりTV版としてはFが一番毎回飽きさせない展開でぎゅっと詰まった面白さがあった。
雑に洗脳が解けるお兄ちゃんとか色々ツッコミどこも多いんだけど、とにかく感情を揺さぶる展開詰め合わせで再度みるのも楽しかった。
あと、他と違って敵側が感情移入できないキャラでそいつめちゃんこにしてスッキリってのも。
なぜか当時は見てなくてそのまま一度も見る機会なかったので今回初めてみた。
フレイアちゃんかわいいというかフレイアとハヤテが強すぎてあんまし三角関係感ない。
あとライバル側の人ら。
やられたことは本当にかわいそうなのにやってることが悪辣過ぎて同情が持ちづらいのなんかジオン感あると思ってググったらやっぱ同じようなこと言われてた。
評判よりはずっと面白く感じたけど、結局あれどうなったのとか結構あってモヤッとはした。
モヤッとはしたけど前期EDの覚悟するんよ~の所好きだったらまあヨシ。
OPでCG使われてたり作画よくてびっくりした。まあ作中はそのぶんバンクも多くなってるけど(変形後スピーカーポッドを連射するバサラ)。
BGMがほぼない作りだったり、人をやっちまって落ち込む主人公は多いけど(人を救うためとは言え)ミサイルを撃ってしまった事自体に落ち込む主人公とかかなり挑戦的なロボアニメだった。
歌に関しては話のテーマとしては他よりもかなり直接的に重要な扱いだったけど アニメ作品としては全く違う歌を調和とかしたりせず切り替えて歌うシーンがしばしばあったりで正直作りが雑に感じる所はあった。
展開が今のアニメからしたらすごく余裕を持った作りで、1クール越えても敵には特に有効な手段がなくていいようにやられて後手後手がずっと繰り返されて、バサラも作中ですら戦場に来て歌ってるだけの変なやつがまたいるくらいの扱いでスルーされてて焦れったさはあった。
初マクロス7変形回あたりでバサラの歌で初めて救えたり、相手に効果てきめんだったりで契機、2クールの終盤差し掛かったあたりでサウンドフォース結成で話が動き出す感じ。
それでも4クール目でもクソガキ回入るのんびりした作りで、最後はみんなも歌って大団円は良かったと思う。
ただそんなゆったりした流れの割にFBのメンバーの出会いとかの回を未放送回でやるの!?とは思ったけど話自体は馬鹿っぽいノリで楽しかった。
こういうのもなんだけど、印象に残ったシーンってバサラ以外が歌ったシーンだったかもしれない。
細かい所だと毎回の前回までのマクロス7は!のコーナー、ナレーションやテロップがちゃんと入ってるやつは情報補足やらで機能してるんだけど、序盤や悪夢の突入作戦とかくらいにあった適当に前回の場面切り貼りしただけのやつはなんだったのだろうか。
あらすじになってなくて困惑した。一挙で続けてみてもそうなんだし、当時見てた人はどう思ったんだろうこれ。ナレーション自体も妙に砕けた口調だったりでヘンではあるんだけど。
キャラクター造形は他作品だと好き勝手大暴れしてる印象あるマックスも天才感薄れて歯車の一部みたいな扱いで数えるくらいしか活躍してなかったり、エキセドルに至ってはですなbotになってて悲しい。
作中通してガムリンが一番好きなキャラだった。制作側もガムリンにツッコミ入れさせたり、胸のすく行動させたりで共感持てるキャラとして作ってるんだろうけど。
よく舞い降りる剣が評価高いけど、あの回フリーダムかっこよく出てくるけど、その後の汚い花火大会とか助けられたと思ったら助けられたなかったザフト兵とかやるせなさとかも強くて、
個人的にはその数話後の決意の砲火のほうが盛り上がりとして楽しかった。今後の方針が固まって、わかりやすい悪役のブルコス・ライバルの三人衆登場、ムウさんがMS乗りになってディアッカ参戦に最後にアスランも…と見どころ盛りだくさんだし。
あと初めてHDリマスター版みたのでパーフェクトストライカーとかシンが出るのもワクワクした。
よく言われる何度も回想で殺されるニコルとかか以外にも、毎回それなりの時間で前回のガンダムSEEDは!が入るのでしょーじき一挙で見るのは少しつらいなあと思った。
私が初めてマッチングアプリなるものを知ったのは、大学三年生の夏休みのことでした。周囲の友人が「今度の合コンで知り合った人、実はマッチングアプリで繋がった人なんだよ」「アプリで彼氏できた」などとやたら盛り上がっているのを見て、「今どきはこういう出会いが当たり前になりつつあるんだなあ」とぼんやり思っていたのを覚えています。私はそこまで恋愛に積極的ではなく、どちらかと言えば受け身のタイプ。友人に誘われた合コンもあまり乗り気ではなかったし、“出会いのためにアプリを使う”という行為に少し抵抗感もありました。
しかし、友人たちがこぞって「安全に使えば便利だし、普段出会わないタイプの人と話せるよ」「登録だけでもしてみたら? 面白いから」と後押ししてくるので、興味本位でインストールしてしまいました。そこには思ったよりも多種多様なユーザーがいて、一見で「え、こんな素敵な人が?」と思う写真や、逆に「ちょっとこの写真は…」とツッコミたくなるようなプロフィールも混在しています。「使い方次第で良くも悪くもなりそうだな」と感じながら、最初は軽い気持ちで眺めていました。
私には3つ年上の兄がいます。小さい頃はしょっちゅうケンカして泣かされてばかりでしたが、成長と共にそこまで派手にはケンカしなくなり、大学生になった今では表面上はそこそこ仲良くやっていると思っています。兄は都内の企業に就職し、実家を出てひとり暮らしを始めました。両親は「長男だから結婚も早いかもね」と期待している様子で、本人も仕事に没頭しつつ「そろそろ彼女が欲しいなあ」とぼやいていたので、いつかは結婚の報告なんかが聞けるだろう、と私も漠然と思っていました。
そんな兄の存在を頭の片隅にも置かず、私はマッチングアプリの世界を覗いていたのです。最初のうちは年齢層を絞ったり、趣味が合いそうな人を探したり、少しやり取りをしてみたり……いわゆる「自分に合う人」を探すという目的にはまだ半信半疑でしたが、メッセージが飛んでくると素直に嬉しかったり、ちょっとドキドキしたりする自分を発見して、これはこれで面白いかもと思い始めていました。とはいえ“ネットでの出会い”に関する危険性の知識はあったので、やり取りが軌道に乗る前に安易に個人情報を教えたりせず、比較的慎重に構えていたのも事実です。
そんなある日、私はふとした拍子に「近くに住んでいる人」の検索をかけてしまいました。正直、当時の私は「まずは会いやすい距離感がいいかも」という程度の軽い思いつきで、地域をわりと狭めに設定していたのです。案の定、ずらりと出てきたのは同じ区内や隣駅くらいに住む人たち。中には年齢的に私とは違う層も混じっていましたが、それでもプロフィールを見ていると意外に面白いものです。「あ、この人の大学は友人が通ってるところかも」とか、「こんな趣味があるんだ、話してみたいな」などと眺めているうちに、ある一人のユーザーのアイコンに目が留まりました。
そのアイコンは、正直ほとんど顔が分からないものでした。横顔の一部しか映っていない……いわゆる“雰囲気写真”というやつです。ただ、どこか見覚えがあるような気がしたんです。プロフィール写真だけでは判断しかねたので、興味本位で開いてみると、そこに書かれていた年齢は私の3歳上。身長や体型、仕事のことも含めて、なんだか既視感がある数字ばかり並んでいる気がして、私は心臓がドキドキしてきました。さらにプロフィール文をよく読むと、趣味欄には「スポーツ観戦」「料理」「ドライブ」とあって、「最近、仕事が忙しくてなかなか出会いがなく、友人に勧められて始めました」という説明。あれ? うちの兄が先月あたりからやたらとドライブ好きの友達に影響されてるとか言っていたけど……まさかね、と頭の中で警鐘が鳴り響きます。
とはいえ、アプリ上のニックネームは全然違うもの。兄の本名とはまるで関係ないし、顔写真もはっきりしない。「きっと気のせいだろう」と思いながらも好奇心が抑えられず、試しに“いいね”をしてみました。ここで仮に本人だったとしても、相手が私のプロフィールを見て弾いてくれればそれで終わりだろうし、万一マッチングしてしまったとしても向こうが拒否すればすぐ解除されるだろう、と思ったのです。
ところが翌日、私はそのアプリを開いて悲鳴を上げそうになりました。まさかの「マッチング成立」の通知が届いていたのです。しかもそこには、昨夜いいねを送ったばかりの男性ユーザーの名前。私は慌ててプロフィールを再確認して、何かの間違いではないかと必死になりましたが、どう見ても同じ人。しかも画面を凝視していると、ほんの少しだけ写り込んでいるその口元や髪型の雰囲気が、だんだん兄の顔と重なってくるのです。冷静に考えれば「同じ地域に住む3つ年上の男」「身長や体型までほぼ合致」「スポーツ観戦や料理、ドライブが趣味」……兄と一致しすぎているではありませんか。
ここで私はさらに頭を抱えます。向こうも私のプロフィールを見ていいねを返しているはずなので、私が妹だと気づいていないわけがありません。顔写真は私もはっきり載せていなかったものの、年齢や大学名、趣味などを書いていましたし、何より下の名前や雰囲気で分かるはず。そもそも私の大学や専攻の話は兄にしょっちゅうしていましたし、妹の趣味くらい兄も把握しているでしょう。なのにどうしてマッチングを返してくるのか……頭の中は「兄の正気を疑う」という気持ちと「そもそも私も何してるんだろう」という自己嫌悪で渦巻いていました。
とりあえず、マッチングしたらメッセージのやり取りができる仕組みになっているので、私は勇気を振り絞って一言だけ送ってみました。
すると、数分後に返事が。画面には「ごめん、〇〇(私の名前)だよね?」と一言。私はもう恥ずかしさと衝撃で変な汗が出てきました。向こうも気づいていたらしい。ただ、この状況で何を話せばいいのか全く分かりません。普通のマッチングアプリのやり取りなら「はじめまして! どんなことが好きですか?」とか「今度一緒に食事でも」とかそういう話になるでしょうが、実の兄妹でそんな会話をするはずもありません。
「どうして私だって分かってていいね返してきたの?」 「いや、まさかと思ったけど、プロフィール見てるうちに確信して……。でもお前のアイコンもはっきりしてないから違うかもって思ったんだよ」
兄は半ばパニックになっていたのか、本当に単純な疑問を返してきます。私も驚きすぎて頭が回りません。「こっちだって、まさか兄がアプリやってるなんて思わなかったよ!」と返すのが精いっぱい。結局、アプリ上では何をどう話していいか分からず、お互い「ちょっと電話で話そう」と提案することになりました。
電話越しに聞こえてきた兄の声は、いつもよりどこか緊張気味でした。それもそうですよね。妹とマッチングした兄の立場って……冷静に想像すると、ただただ気まずい。しかし私も同じくらい気まずい。冒頭から「お前もこんなのやってるんだな……」と兄に言われ、こっちも「お兄ちゃんこそ……」と返すありさま。何というか、こんな会話、想像もしなかったです。
兄によれば、会社の同僚が結婚間近だと聞いて「俺もそろそろ真面目に彼女を探さないとヤバいかも」と焦っていたらしく、「今時はマッチングアプリくらい使わないと始まらない」と言われたのだとか。私がやっていたアプリと同じものを使っていたのは単なる偶然のようで、条件を細かく設定せず、何となく「近くに住んでいる、年齢も幅広に見てみよう」というスタンスでやっていたらしい。私がまさか同じアプリにいるとは思わずに、うっかりいいねを押してしまったとのこと。兄の言い分は「でも妹のプロフィールだって気づいた時にはもう手が震えたよ」とのことで、私も似たような気持ちだったので、電話の最後には二人して苦笑いしていました。
さて、この一件で何が困ったって、私はアプリの存在を家族には隠して使っていたわけです。当然、兄も同じでしょう。親には「彼女はいつできるんだ」としょっちゅう問い詰められていたので、やむを得ず始めたとはいえ、あまり大っぴらにしたくはなかったようです。互いに「親に言わないで」と口裏を合わせ、二人だけの秘密にしておくことにしました。少なくとも“兄とマッチングした”という事実だけは墓場まで隠したい――その点は意見が一致していました。こんなことを親や親戚に知られたら、どんな無茶苦茶な茶化され方をするか分かったものではありません。
その後、兄とはアプリ上でマッチ解除をしました。さすがに兄妹同士で繋がり続けるメリットなど皆無だし、万一アプリ側のアルゴリズムでまた変なふうに表示されるのも嫌だったので。お互い「次に普通に実家に帰ったら、なんて顔を合わせればいいんだろう」という気まずさはありましたが、実際に帰省したときは普段通りに振る舞うように努めました。私が無理やり「お兄ちゃん、最近仕事忙しいんでしょ?ちゃんと休めてる?」などと話を振り、兄も「ま、ぼちぼちかな」と笑って返すくらいのやりとり。しかしその目は「いいか、あれはもう忘れような」と言っているようでしたし、私も「もちろん、忘れたいよ!」という気分でした。
アプリの方はというと、さすがにしばらくは開くたびに身構えてしまいました。まさか他にも親戚が紛れ込んでいたらどうしよう、と不安が頭をよぎるのです。兄と出くわしてしまったせいで、すっかり家族バレが怖くなってしまい、一時期は退会しようかと真剣に考えました。でも、友人に相談すると「たまたま運が悪かっただけだって!」と笑われ、「そんな面白いこと、普通は起こらないよ」と言われて少し気が楽に。確かに一度起こった珍事件が二度三度と起こるとも思えません。少し落ち着いた後、私は年齢や居住地の検索条件をもう少し厳密に設定し直すことにしました。具体的には、私の年齢に近い2、3歳幅にしか表示されないようにするとか、実家近くの地域を外すとか、少し工夫を加えたのです。
その甲斐あってか、以降は兄以外の男性とマッチングすることが増え、実際に何人かと食事に行ったりもしました。中にはいい雰囲気の方もいたものの、最終的には付き合わずに終わってしまいました。まだこれから先どうなるかは分かりませんが、兄とマッチングしてしまった経験を経て、色々と慎重になったのは確かです。「相手が本当にどんな人か分からないのがマッチングアプリ」とは聞いていましたが、まさか“実の兄”だったという予想外過ぎる展開を味わったことで、変に免疫ができた気もします。
一方の兄はどうかというと、「もうアプリは懲り懲りだ」と言いながら結局しばらくして別のアプリを試していたようです。私と同じアプリはさすがに気まずくてやめたみたいですが、時々「今度のアプリは友達経由で身バレが防げる機能があるらしいから、大丈夫」とか、妙に詳しいことを言ってきます。私は「私はもういいよ、たまにしか開かないし」とそっけなく返していましたが、まさかまた別のアプリで兄に出くわすなんてことは……もうさすがにないはず、と願っています。いくらなんでもそう何度も兄に遭遇してたら、私の気持ちが持ちませんし。
そうして私の初めてのマッチングアプリ体験は、序盤からとんでもない“事件”に巻き込まれる形でスタートしました。自分でも信じられないし、友人にも打ち明けましたが、全員揃って大爆笑。「え、それ絶対ウケ狙いの嘘話でしょ?」と疑われたほどです。確かに、普通はまず起こり得ないシチュエーション。けれど、意外とアプリでは「知らない人と出会う」という大前提のせいで、身近な人がひっそり使っていても気づかないものなんですよね。その身近な人がまさかの実の兄だったわけです。
今となっては「マッチングアプリで自分の兄を見つけてしまった」という体験は、私にとっては笑い話半分、黒歴史半分といったところでしょうか。人によっては「そんなに恥ずかしがることないじゃん」と言うかもしれませんが、正直めちゃくちゃ恥ずかしいです。もし兄が彼女を連れてきたときにでも「あのときはお互い焦ったよね」なんて昔話をする日が来るのかもしれません。想像しただけで赤面しますが、家族としてはいつか笑って話せるネタになるんだろうな、とちょっとだけ思えなくもありません。
それ以来、私も兄もアプリの利用には気をつけています。お互い相手がどこまで情報を見られるのかという設定をちゃんと確認するようになりましたし、身バレを防ぎたいならFacebook連携型のアプリなどを使って、知り合いを避ける機能を活用するのも手だと学びました。まさに“経験者は語る”という感じです。正直、家族や親戚に見つかるだけでなく、職場の上司や友人が相手でも相当気まずいと思いますから、アプリの選び方や使い方にはある程度の注意が必要だと実感しました。
でも、そんな反省点や恥ずかしい思い出も含めて、人生には意外性がつきもの。まさか兄と“マッチング成立”してしまった経験は、一生忘れないエピソードとして心に刻まれるでしょう。兄妹喧嘩とはまた違う角度で「こんなこともあるんだ」と驚かされましたが、ある意味、兄に恋愛感情を抱く前に発覚してよかったのかもしれません(当たり前ですが)。とはいえ二度と御免ですけどね。
こうして私の「マッチングアプリを使ったら実の兄とマッチングした話」は一応の決着を見ました。アプリ自体は悪いわけではないのですが、あまりにも想定外の事態を招いたことで、しばらくは家族と会うときに妙な緊張感を覚えたのもまた事実です。今では少し笑って振り返ることができるようになりましたが、「この話だけは親には言わないでね!」と兄には何度もクギを刺してあります。兄も全力で同意してくれているので、私たちの“秘密”としてこのまま墓場まで持っていくつもりです。
もしあなたがマッチングアプリを使う機会があるのなら、どうか私と同じ轍を踏まないよう気をつけてください。とはいえ、「兄とマッチング」なんて早々あることではないかもしれません。でも世の中何が起こるか分からないのです。身近な相手も、もしかするとアプリに潜んでいるかもしれない――そんな可能性を頭の隅に置いておけば、いざというときの衝撃は少しだけ和らぐ……かもしれませんよ。
そうは言いながらも、私もこれから先、もしかするとまたマッチングアプリを通じて良い出会いがあるかもしれないと思っています。兄の一件はともかく、やはり限られたコミュニティの中だけでは出会えない人と繋がるのは、刺激的で新鮮です。今度はもうちょっと上手に使いたい。二度と家族とマッチングしないように細心の注意を払いながら、こっそり新たな一歩を踏み出したいと考えています。兄にこの話をするときは絶対に内緒ですけどね。私の婚活がうまく行くかどうか――その答えは、私のスマホと、私の人生次第ということになるでしょう。
幼い頃から、私たちは“セット”として見られてきた。生まれた日も同じ、顔立ちもよく似ている――いわゆる“一卵性双生児”ではないけれど、それでも周りからは「双子っていいね、仲良しでしょ?」と言われ続けてきた。実際に仲が悪いわけではないし、ケンカらしいケンカをしたことも数える程度しかない。
私と兄は同じクラスに入ることが多くて、席替えのときにはいつも先生が「双子は離しておいたほうがいいわよね」と気をつかってくれたから、わざわざ離れた席にされたりもした。まあ、それはそれで気が楽だった。四六時中、兄の隣りにいるのはちょっと落ち着かないというか、どうも“完全なる一心同体”なんてことはありえないんだと、子どもながらにどこかで感じていたから。
けれど、周囲のイメージとは裏腹に、私たち姉弟――いや、厳密には数分だけ兄が早く生まれた、という関係性――は、「まるで違うタイプ」の人間だった。性格も、好きなものも、行動パターンも、何もかも対照的。
兄は昔から落ち着いていて、実に要領がいい。小学校の頃から自然とリーダー役を任されることが多くて、学級委員をやっていたこともある。友達は多いし、先生からの信頼も厚い。ふと気づけば彼を中心にグループができているような感じで、皆が「○○君に相談すれば大丈夫」「分からないことがあったら○○君に聞けばいい」と頼ってくる。本人はあまり偉ぶることもなく、いつも穏やかに笑いながらうまく場を収めていた。
一方の私は、人前でしゃべるのも苦手だし、控えめに言っても“引っ込み思案”な性格だ。自己主張しないタイプで、どちらかと言うと集団より一人でいるほうが落ち着く。そんな私の横に、なんでも器用にこなしてしまう兄がいる――それがどれほど大きなコンプレックスを生むか、たぶん兄自身は気づいていない。
双子の妹としては、兄のことを「尊敬している」という気持ちが確かにある。その一方で、「ああ、また兄が注目を集めてる」「私なんて何をしても目立たない」と思わず拗ねてしまう瞬間だって少なくない。
たとえば、小学生のとき、学習発表会の劇で主役を決めるオーディションがあった。私は勇気を出して立候補してみたのだが、結果的にみんなの前でうまくセリフを言えず、途中で声が震えてしまった。恥ずかしくなって固まっていると、「じゃあ代わりに○○君やってみて」と先生が兄を指名した。すると、兄はほとんど練習もしていないはずなのに、しっかりセリフを頭に入れていて、堂々と演じてしまったのだ。そこにいたクラスメイトの拍手と歓声の大きさを思い出すと、今でも胸が苦しくなる。「これだよ、これ」と、みんなが“求める”のはいつも兄の方。私という存在は、最初からオプション扱いなんだ、なんて気持ちになってしまった。
そうやって、「どうせ私は兄に敵わない」と思うと同時に、兄が称賛される姿を見て心のどこかで誇らしく思う自分もいた。この矛盾した感情を抱えながら成長していくうちに、私は自分がブラコンなのかもしれない、と思い始めた。
――ブラコン。そう、兄を強く慕う妹のことを、ネットや友達同士の会話なんかでは気軽に「ブラコン」と呼ぶ。でも“好き”と言っても、それが恋愛感情であるはずがない。一方で、ただの家族愛だけとも言い切れない。自分でも整理しきれない妙な感情を“ブラコン”という軽い言葉でごまかしている気もした。
中学生になってからも、この複雑な関係は続いた。中学校ではクラスが分かれることもあったし、部活動も別だった。兄はバスケ部、私は図書委員。これで少しは「双子セット」から解放されるかと思ったのに、周りの子にはすぐに「バスケ部の○○君の双子なんだ!」「あのイケメンの妹?」なんて言われる。兄が“イケメン”かどうかは正直私にはわからないけど、少なくともモテることは確かだった。
それを素直に「すごいね」って思えればよかったけれど、現実は違った。私の中にはまたしても“嫉妬”とも言えるような感情が生まれていたのだ。
兄が女子からチョコをもらってきた日、家に帰ったら「これ、好きな子から?」「気になってる子いるの?」と何気なく聞いてしまう自分がいる。いや、妹として話題にするくらいは普通だろう。それでも内心では妙なざわつきを感じる。兄の恋愛を想像するたびに、寂しいような、モヤモヤするような感情が胸のあたりで渦巻く。
私はどうしようもなく「兄を意識しすぎている」と思った。たとえば学校のテストの成績が出たとき。掲示板に学年順位が張り出されると、私は自分の順位より先に兄を探す。兄の成績が上位なら嬉しいし、誇らしい。だけど、いつも兄より下の順位の自分がなんだか情けなくもなる。
結局、私は兄の背中を追いかけているのか、それとも追い抜きたいと思っているのか、自分でもはっきりしない。そんな曖昧な気持ちを抱えてしまうせいか、勉強も部活も中途半端なまま、どんどん自分に自信をなくしていった。
高校受験が迫ったとき、先生には「同じ学校を受けることになるよね?」と当然のように言われた。両親も「双子なんだから同じ高校でいいじゃない」と笑っていた。だけど、私は少し反発心を抱いていた。いつまでも「兄の妹」として見られるのは嫌だったし、同じ進路を選ぶのが当たり前というのもなんだか癪に触った。
しかし、結局は同じ高校に通うことになった。兄の成績ならもっとレベルの高い私立や、他の選択肢もあったはずだけど、彼は家から一番近い、いわゆる“県立の進学校”を選んだ。私としては心の底でほっとしたのかもしれない。だって、違う学校に進んでしまったら、毎日どんな気分になるのか想像もつかなかったから。
高校に入り、部活も別々、クラスも別々になった。それなのに、噂はすぐに広まった。「あのイケメンの双子」だの「お兄さんと妹さん全然似てない」だの、また私は地味な存在として扱われ、兄だけが注目されているという図式が出来上がる。私はその“いつもの光景”に、慣れてしまったのだろうか。辛い、悔しい、というよりも、「ああ、またこれだ」と自分を納得させてしまっていた。
しかしその一方で、兄が自然とクラスでも中心的存在になるのを見て、どこか安心している自分がいる。それは確かにブラコン的な感情なのかもしれない。だって、「あ、また人気者になっちゃってる」「でも、なんだか誇らしいかも」と思ってしまうのだから。変だと思いながらも、これが私の素直な気持ちだった。
このまま大人になって、いつか兄が誰かと付き合ったり結婚したりすることになったら、私はどんなふうに感じるんだろう――そんな想像をすると、時々息苦しいような、不思議な寂しさが込み上げてくる。兄がいなくなるわけじゃないのに。「家族」だから、ずっと一緒に暮らすわけじゃないとわかっているのに、なんとなく孤独を感じずにはいられない自分がいる。兄がいなければ、私のアイデンティティはどうなるのか。自分ひとりで立っていられるのか、不安になる。
ある日の放課後、私は図書室で一人、本を読みながらうとうとしていた。すると、突然ガタガタと椅子が動く音がして、目の前に兄が座っていた。
「珍しいね。ここで何してんの?」
兄は私がよくいる場所をわかっていたみたいで、わざわざ探しに来たらしい。
「いや、ちょっと疲れちゃって……寝てた」
私が照れ隠しにそう言うと、兄は少し笑ってから、「今日は部活早めに終わったからさ、待たせちゃ悪いし。帰ろうと思って」とあっさり言った。
私が彼を待つなんて、そんなの当たり前じゃないのに。いつからか私たちは、自然と同じ時間に家を出て、同じ時間に帰るようになっていた。もちろん都合が合わない日は別行動だけど、兄はできるだけ合わせようとしてくれる。
私は不器用に本を閉じてバッグにしまいながら、少し早足で歩く兄の後ろ姿を見つめた。いつの間にか、背も私よりずっと高くなっていた。昔はほとんど同じ身長だったはずなのに。そんな変化ひとつひとつが、私の心をシクシクと痛めつけるような気がした。
高校二年のある夜、兄がふいに私の部屋のドアをノックした。ドアを開けると、彼が少し困ったような表情で立っている。いつも余裕たっぷりの顔をしている兄にしては珍しい。
そう言って兄は部屋に入ってきた。私は慌てて机の周りを片づけ、椅子を勧めた。何か深刻な話でもあるんだろうかと、胸が高鳴る。
「どうしたの?」と聞くと、兄は小さく息をついてから、「……おれ、告白されたんだ」と言った。
瞬間、私は心臓が大きく跳ねた。体温が上がるのを感じる。なんだ、その話。自慢でもしてるの?――そんな意地悪い言葉が頭をかすめる。けれど、兄が思いのほか真剣な表情をしていることに気づき、私は思わず黙り込んだ。
「その……同じクラスの子なんだけど、バスケの試合をよく応援してくれてて、この前の大会終わってから声をかけられた。ちゃんと考えて答えたいんだけど、自分はどうしたらいいのかわからなくて……」
兄はもともと人気者だし、告白くらい何度かされてもおかしくはない。けれど、彼がこんなふうに私に相談してくるのは初めてだった。
「どんな子なの?」と私は声を震わせないように気をつけながら尋ねる。
「明るくて、周りを盛り上げるのが得意な感じ。勉強も得意みたいだし、すごく……可愛いと思う」
そこまで言われて、私はなんとも言えない感情に襲われた。可愛い子。兄がそう表現する女の子。おそらく兄にふさわしい、そういうタイプなんだろう。私とはまるで正反対の…。
でも、私は笑顔を作って、「いいじゃない。付き合えば?」と返した。兄は意外そうな顔をして、「そっか……でも、なんだか変に緊張して気軽に返事できなくてさ」とさらに眉をひそめる。
「兄ちゃんがいいと思うなら、OKすればいいんだよ。あ、応援してるから」
声が上ずりそうなのをこらえながら、私は精一杯明るい口調を作った。兄は少し安心したように笑って、「そっか……ありがとう」と言い、私の部屋を出て行った。
扉が閉まった瞬間、私は椅子に崩れ落ちた。ああ、終わった。そんな意味のわからない言葉が頭に浮かんでくる。私にとっては“何かが終わった”気がした。兄がこのまま誰かと付き合って、どんどん私の知らないところで大人になっていく……。その未来を思い描くと、胸の奥に大きな穴が空いたように感じる。
あの夜から私は兄とどう接していいのかわからなくなった。どんな顔をすればいいのか、何を話せばいいのか。今まで自然と近かった距離が、一気に遠のいてしまったような気がする。
それでも朝になれば兄と顔を合わせるし、一緒に家を出る。兄は普段通りに私に接してくれる。時には「行ってきます」と頭をポンと叩いて笑ってみせたり、何気ない雑談を振ったり。でも、私は妙なぎこちなさを拭えないまま、まともに目を合わせられなくなってしまった。
兄のほうは私のそういう態度に気づいているのかいないのか、何も言わない。それが逆に辛かった。私が一方的に意識しすぎているだけなんだと思い知らされるようで。
しかし、数週間ほど経ったある日、兄はふと私の肩を掴んで、ぐるりと向かい合って言った。「お前、最近なんか変じゃない? 具合悪いのか?」と。私はドキッとして何も言えなくなり、目をそらそうとする。
「もしかして、あれ……おれが告白された話、嫌だった? ごめん、変な相談して」
兄はそう言って、気まずそうに視線を落とした。そのとき私は、頭の中がぐちゃぐちゃになったまま、「別に」と口走った。
「別に、嫌とかじゃないし。良かったじゃん、兄ちゃんが告白されて……」
「うん、でもなんかお前の態度が変だからさ。もしかして反対なのかと思って」
「なんで私が反対しなきゃいけないの。全然いいよ。早くOKすれば?」
自分でもわかるほどに、投げやりな声になってしまう。兄は少しむっとした様子で、「何だよその言い方」と眉をしかめた。
あ、もしかして今、兄がちょっと怒ってる? 珍しい。そんなことを考えた瞬間、私は突然涙がこぼれそうになって、慌てて目を閉じた。
「ごめん……」
小さな声で謝ると、兄はそれ以上は何も言わずに、ほっと息をついて「わかったよ。とりあえず……ごめんな、変な空気になっちゃって」と呟き、また歩き出した。私は動揺したまま、背中を見送るしかなかった。
私がブラコンなのかもしれない――そう意識し始めたのはいつの頃からだろう。ずっと昔から、兄は私の“特別”だった。それが家族愛だけなのか、別の感情が混ざっているのか、自分でもわからない。ただ一つ言えるのは、私は兄に強いコンプレックスを持ちながら、同時に強く惹かれているということ。
テストで負ければ悔しいし、兄が誰かに好意を寄せれば胸が痛い。それでも、兄が元気で笑っていてくれると嬉しい。それはまるで、一方的な片想いにも近いかもしれない――なんて考えるのは、やっぱりおかしいのかな。
あれから何日か経った頃、兄は告白してくれた女の子に対して「もう少し時間がほしい」と伝えたらしく、今も決断できずにいるようだった。どういうことなんだろう。私は聞きたいと思いつつも、なかなか話しかけられないでいる。兄も自分からその話題を振ってはこない。
でも、この中途半端な状態が続くうちに、私は少しだけ気持ちに整理がつきはじめた。もし兄がその子と付き合うことを選んだら、私は素直に応援したい。兄の幸せを喜んであげたい。それが「妹」として当然の気持ちかもしれないし、私が抱えているコンプレックスや嫉妬は、所詮は家族愛の延長にある“わがまま”なのかもしれない。
「おれさ、たぶん……その子と付き合うことになると思う」
思わずどきりとしたが、私はできるだけ自然な声で「そっか」と返事した。すると兄は少し笑って、「まあ、お前とはずっと一緒にいるし、いろいろ相談してくれてもいいのに、最近は離れちゃってるから寂しかったわ」とポツリと呟いた。
「別に離れてなんかないよ、兄ちゃんこそ勝手に決めつけないで」
私は思わずふてくされたような口調になってしまい、すぐに言い過ぎたかと後悔した。でも兄は、「そっか」と柔らかく微笑んで肩をすくめるだけだった。私の中で、何かがほっと緩むのを感じる。兄はいつも通りだ。大きな変化が起きる前の、最後の日常みたいにさえ思えた。
その週末、兄は正直に返事をしたようで、結果として女の子と正式に付き合うことになった。その報告を受けたとき、私は不思議と落ち着いていられた。ああ、本当に、兄に素敵な人が現れたんだな。良かった。きっとすごく似合う二人になるんだろうな。
だけど夜になって一人になったとき、妙に胸が苦しくなって、泣きそうになる自分がいた。まるで失恋でもしたような――いや、これは失恋なのかもしれない。私が心のどこかで抱いていた「一番近い異性としての兄」が、誰かに取られてしまったような気持ち。そうとしか説明できない。
ただ、それを口にするわけにはいかない。だって、そんなの兄にとっても彼女にとっても迷惑だし、何より自分自身が許せなかった。
それからは、少しずつだけど状況は変わっていった。兄は放課後に彼女と一緒に帰ることが増え、休日も部活の合間を縫ってデートに出かけるらしい。家にいる時間も減ってきたし、リビングで顔を合わせてもスマホを気にしていることが多くなった。
そんな姿を見るたびに、私は初めこそ「何それ」と拗ねそうになったけれど、次第に「ああ、これが普通なんだよね」と思えるようになった。いつまでも双子で一緒に行動して、べったりいられるわけじゃない。私たちはもう、高校生になって、少しずつ大人になる道を歩んでいる。兄が変わっていくように、私も自分自身で変わらなきゃいけない。コンプレックスに振り回されるだけじゃなくて、ちゃんと自分の人生を築く努力をしなくちゃ。
そうして意識を切り替えるようになってから、私は自分自身にもっと集中しようと考えた。成績を上げるために塾に通うことを決め、大学受験に向けて目標を明確にする。部活には入っていなかったけれど、放課後は図書室に残って勉強する習慣をつけた。
以前なら、兄と差を感じるたびに落ち込んでいたけれど、もうそれはやめよう。兄が私とは別の人生を歩むのは当然のことなんだ。私は私で、やるべきことに打ち込めばいい――そう思えるまでに時間はかかったけれど、兄が“誰かの彼氏”になることで、その覚悟ができた気がする。
ただ、正直に言えば、私はまだ「兄が好きなんだな」と感じる瞬間がある。家でふと兄の靴が脱ぎ散らかしてあるのを見たら、「もうちゃんと揃えてよ」と文句を言いながらも、心が温かくなる。彼がリビングでぼーっとテレビを見ていると、いつものように軽口を叩き合いたくなる。そんな些細な日常が、やっぱり私は好きだ。だからこそ、これからもずっと“兄の妹”であり続ける自分を大切にしたいと思う。
確かに、兄と比較して自分を卑下してしまうこともあるし、兄に対する“ブラコン”めいた気持ちがふとした瞬間に疼くこともある。けれど、それも私の一部なんだろう。
それに、コンプレックスを抱えながらも兄を慕っていた時間は、決して無駄ではなかった。兄を目標にしてきたから、こんな自分でも少しだけ頑張ることができたのかもしれない。だって、誰かを目標にしなければ、自分なんか何もせずに投げ出していただろうから。
将来、私たちが進む道はもっとバラバラになるだろう。大学へ行くのか、就職するのか、あるいは兄はさらに先の道を選ぶかもしれない。けれど、たとえどんな道を進もうと、私たちは双子でありきょうだい。そこに嘘はないし、その事実は変わらない。
――もしかしたら、私は一生「ブラコン」かもしれない。時々、兄のことを思い出して「あの人は今どうしてるんだろう」と胸を締めつけられるように感じるかもしれない。それでも、私には私の人生があるし、兄にも兄の人生がある。お互いが自分の道を歩いて、それでも時々振り返ったときに「相変わらず元気そうだね」と笑い合える。そんな関係が理想だ。
だから私は今、「ブラコンかもしれない」という自分を受け入れつつ、少しずつ前を向こうと思っている。コンプレックスごと受け止めたうえで、兄のことを好きでいるし、同時に自分の目標に向けて一歩ずつ前進していく。その先に待っているのがどんな未来なのかはわからない。でも、きっともう少し強くなった私なら、兄の存在に振り回されるばかりじゃなくなる――そんな期待を抱きながら、今日も図書室の机に向かう。
時々、顔を上げて窓の外を見つめると、校庭でバスケをしている兄の姿が見える。仲間と笑い合いながら走り回る姿は、いつも通りキラキラしていて、私の胸をかすかに痛めつける。それでも私は微笑んで、参考書に再び向き合う。
「大丈夫、大丈夫」と心でつぶやきながら。兄は兄で、私は私。二人で支え合い、時には離れて、それぞれの人生を歩んでいく。私のブラコンはきっと治らないかもしれない。でも、それでいい。そんな自分を認めてあげたら、少しだけ楽になれる気がする。