■ J2の第27節J2の第27節。9勝12敗5分けで勝ち点「32」の栃木SC(16位)と、22勝1敗3分けで勝ち点「69」の湘南ベルマーレ(1位)が栃木県グリーンスタジアムで対戦した。阪倉監督を迎えた栃木SCは悪くないシーズンを送っていたが、ここに来て5連敗と結果が出ていない。一方の湘南も最初の23試合は22勝1敗と圧倒的な成績を残していたが、ここに来て3試合連続ドローと足踏みをしている。
ホームの栃木SCは「4-2-2-2」。GK鈴木智。DF菅、赤井、岡根、鈴木隆。MF本間、小野寺、中美、近藤祐。FW廣瀬、大久保。CBのDFドゥドゥが柏に移籍して、7ゴールを挙げていたFW瀬沼が清水に戻ったので、中心としてチームに貢献してきた2人を失ったが、新潟から加入のMF本間がさっそくボランチでスタメン出場を飾って、富山から移籍のFW西川もベンチ入りを果たした。
対するアウェーの湘南は「3-4-2-1」。GK秋元。DF遠藤航、丸山、三竿。MF菊地俊、岩尾、亀川、菊池大、岡田、武富。FWウェリントン。大黒柱のMF永木は欠場中で、大卒4年目のMF岩尾が8試合連続スタメンとなった。シャドーの位置にはJ1の鳥栖からレンタル移籍中のMF岡田が起用された。MF岡田はここまで20試合で6ゴールを挙げている。今シーズン15回目のスタメンとなる。
■ 3対0というスコアで湘南が快勝5連敗中の栃木SCと3試合連続引き分け中の湘南の試合はアウェーの湘南ペースで進んでいく。立ち上がりから久々に躍動感のある攻撃を見せて試合の主導権を握ると、前半33分にCKの流れからDF三竿がゴール前に供給したボールをうまくコントロールしたMF岡田が鋭い反転からシュートを決めて湘南が先制する。MF岡田は今シーズン7ゴール目となった。前半は1対0で終了する。
後半も湘南ペースは変わらず。後半11分に攻撃参加したDF三竿のクロスからFWウェリントンが豪快に左足で決めて2点目を挙げると、後半32分にはDF遠藤航のミドルシュートが決まって3点目を挙げる。FWウェリントンは今シーズン13ゴール目で、DF遠藤航はCBながら早くも今シーズン6ゴール目となった。栃木SCも何度か決定機を作ったが、ゴールに結びつけることはできず。
結局、3対0でアウェーの湘南が圧勝して4試合ぶりに勝ち点「3」を獲得した。3試合連続ドローと嫌な流れになりかけていたが、これで普通の精神状態に戻ったと言えるだろう。一方の栃木SCはこれで6連敗となった。試合前の段階でPO圏内の6位の千葉との差は「7」だったので、十分にPOを狙える位置に付けていたが、ここに来ての6連敗というのはPO争いを考えると痛すぎる。
■ 久々の大勝劇となった湘南開幕当初の湘南は大差で勝利する試合が珍しくなかった。2節は長崎に3対0で勝利して、5節は松本山雅に4対1で勝利して、7節は千葉に6対0で勝利して、8節は大分に4対0で勝利して、10節は京都に3対0で勝利した。開幕から10試合を経過した時点で「3点差以上で勝利した試合」は5回もあったが、11節以降はゼロ。僅差の試合がほとんどだったので、久々の大勝劇となった。
この日の気温は24.8度で、この時期にしては涼しかった。気温の低さがプラスに作用したとも考えられるが、この日の湘南のサッカーには躍動感があった。「カウンターのときに後方から何人もの選手が上がってくる。」という湘南らしいシーンが何度もあって、ここ最近の中ではもっとも内容が良かったのではないか。他チームを圧倒していた3月・4月の湘南の爽快なサッカーに近かった。
24節の福岡戦(A)から3試合連続ドローと停滞期に入っていたが、試合後のインタビューで曺貴裁監督は「選手たちは少し自信を失っていた。」と語った。これだけ開幕から勝ち続けていて、勝ち点で2位以下を大きく引き離している湘南の選手でさえ、「3試合勝ちなし」となると自信を失ってしまう辺りがサッカーの面白さであり、恐さでもあるが、1つ山を乗り越えたと言えるのではないか。
前半33分のMF岡田の先制ゴールが大きかった。攻め込みながらも先制ゴールが奪えなくて、前の3試合と似たムードになりかけたが、MF岡田が個人技からネットを揺らした。MF岡田はこれで7ゴール目となったが、ずっとスタメンで起用されているわけではないことを考慮するといいペースである。鳥栖のときはフィニッシュに課題を抱えていたが、落ち着いてプレーできるようになった。
■ 五輪代表の中心となることが確実なDF遠藤航その後の2点目のFWウェリントンのゴールも見事だったが、3点目のDF遠藤航のゴールも見事だった。DF遠藤航のゴールはミドルシュートと言えばいいのか、ロングシュートと言えばいいのか、どちらなのか迷うほど、ちょっと距離のあるところから放ったシュートだったが、地を這うようなシュートがコース隅に飛んで行って、何度も好セーブを見せたGK鈴木智でもどうすることもできなかった。
来月にはアジア大会が開催されるが、DF遠藤航が五輪代表チームの中心になることは間違いない。J1も、J2も、シーズン中になるので、どのくらいのメンバーが参加できるのかは不明で、前回の2010年大会と同様で大学生ならびに所属クラブでベンチ外の選手が中心になる可能性もあるが、フルメンバーが集まったときDF遠藤航がキャプテンマークを巻くのもほぼ確実と言える。
1993年2月生まれなので、FW宇佐美やMF柴崎岳やFW杉本らと同学年となる。リオ世代の中では一番上の学年となるが、経験値というのは五輪世代の中では突出している。湘南では2011年からチームの中心として活躍してきたが、これだけ早い時期から中心として活躍してきた選手は他にはおらず、彼の経験値というのは五輪代表の武器であり、チームに落ち着きをもたらすだろう。
昨シーズンの途中から右ストッパーがメインポジションになったが、新しいポジションで新境地を開いた。178センチとサイズには恵まれておらず、CBとしては小柄である。クレバーさやカバーリング能力の高さで勝負する元日本代表のDF宮本タイプのCBだったが、ここ1・2年で力強さが出てきて、いい具合にCBとして成長してきた。得点力もCBとしては申し分ないレベルである。
幸か、不幸か、リオ世代には有望な大型CBが目白押しで、神戸のDF岩波、鹿島のDF植田、G大阪のDF西野はJ1の上位クラブでレギュラーとして活躍している。そのこともあって、DF遠藤航は「五輪代表ではボランチで起用されるのではないか?」と言われているが、賢明な判断である。本大会までの2年間で頻繁にクローズアップされると思うが、さらなるスケールアップを期待したい。
■ 経験豊富なMF本間を獲得した栃木SC一方の栃木SCはこれで6連敗となった。ちょうど折り返し地点となる21節を終えた段階で9勝7敗5分けで勝ち点「32」。開幕前の低評価を覆す成績を残しており、いいペースで勝ち点を積み上げていたが、後半戦は勝ちなしで6連敗となった。まだプレーオフ進出をあきらめる必要はないが、DFドゥドゥがいなくなって、FW瀬沼もいなくなって、今後の見通しというのは明るくない。
武器を持った2人を失ったダメージは小さくないが、このあたりは経営的に問題を抱えているチームなので、仕方がないと割り切るしかない。幸いにして、新潟のMF本間と富山のFW西川を獲得することができたが、さっそくMF本間はスタメンで起用されて、FW西川も途中出場でポスト直撃のシュートを放つなど存在感を示した。チーム状態が良くないので、彼らにかかる期待は大きい。
特にMF本間はずっとJ1のチームでレギュラーとして活躍してきた選手で、経験値の高い選手である。2013年になって出場機会が激減したが、それまでは新潟で主軸として活躍してきた。MF小野寺がワンランク上の存在になってチームを引っ張ってきたが、隣にMF本間のような選手がいるとより自由にプレーできるようになるだろう。MF本間の存在はMF小野寺の成長の助けにもなるだろう。
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