◆ 味方サポーターから飛んだヤジ4月26日(土)にNACK5スタジアムで行われたJ1の第9節の大宮アルディージャとヴァンフォーレ甲府の試合は2対0でアウェーの甲府が勝利した。前半36分にセットプレーからDF佐々木が決めて先制に成功すると、後半20分には1トップの位置で奮闘するベテランのFW盛田のゴールで追加点を挙げるという理想な展開となった。甲府はこれで2連勝で、大宮は4連敗となった。
この試合はホームの大宮がシュート5本で、アウェーの甲府が16本。ということで、大宮はなかなかシュートチャンスを作れなかった。4連敗中で、しかも、序盤からあまりチャンスを作れない展開だったので、「どちらかというと穏やかである。」と言われるNACK5スタジアムの大宮のサポーターは苛立っていたが、まだ0対0のスコアだった前半29分に興味深いシーンがあった。
中盤で甲府のボランチのMFマルキーニョス・パラナの縦パスを右SBのDF今井がカットして、DF今井は前方にいたMF家長にパスを出して勢いよく前に飛び出したが、MF家長は少し後ろにいたボランチのMF横山にパスを出して、MF横山も横にいたMF渡邉大にパスを出して、MF渡邉大は最終ラインにいるCBのDF菊地パスを出した。これによって、カウンターの可能性はなくなった。
バックパスをしたMF渡邉大にはそこまで相手のプレッシャーはかかっていなかった。なので、彼が前にボールを運ばなかったことに対して、ホームの大宮のサポーターからヤジやブーイングが飛んだ。これに対して、スカパーの中継で解説を務めていた小林慶行氏は『応援してくれている(味方の)サポーターのはずなのに「前に行け」となると選手もやりずらくなってくる。』とコメントした。
確かに一理ある。小林慶行氏は現役時代はクレバーな選手で、周りがよく見える選手だった。おそらく、こういう感情というのは、選手側の率直な気持ちだと思う。試合の中で、シュートが打てそうなシーンでシュートを打たなかったとき、「シュート打て!!!」というコールが起こるケースも同類だと思うが、良かれと思ってやっていることが、実はマイナスに作用しているパターンは結構ある。
◆ 勝てないチームを懸命に応援する人たち四国初のJ1クラブとして注目を集めた徳島ヴォルティスだったが、開幕からなかなか結果が出なくて、リーグ戦は9連敗で、ナビスコカップを含めると11連敗を喫した。3点差くらい敗れるのがデフォルトになっていて、「勝ち点が獲れそう。」という試合もほとんど無かった。監督やチームスタッフや選手は不甲斐なさであったり、情けなさを感じていただろう。
サッカーはメンタル面が勝敗を大きく左右するスポーツである。勝てているチームは雰囲気も良くなって、ミスを恐れることなく思い切りのいいプレーができるようになるので、さらにいい結果が舞い込んでくるという好循環となるが、勝てていないチームはその反対で、何をしても裏目に出てしまう。徳島も負のスパイラルに突入していたが、ようやく、断ち切ることができた。
ツライのは選手や監督だけでない。サポーターも同じである。選手や監督は現状をしっかりと受け止めて戦い続けるしかないが、サポーターはそうではない。ここまで連敗が続くと、TVで試合を観たり、試合会場に足を運ぼうとする意欲が薄れてくるのが当たり前であるが、それでも、ホーム戦はもちろん、アウェー戦にも多くの徳島サポーターがやってきて、選手に声援を送っている。
勝っているチームの試合に多くの人が集まるのは自然なことである。その一方で、開幕からずっと負け続けていたチームを見捨てることなく、サポートし続けるというのは、なかなかできることではない。J1の10節の甲府戦(A)の勝利というのは、そういう人たちへのプレゼントであり、結果が出ないときもサポートを続けてくれる人がたくさんいるというのは、クラブの財産である。
◆ 娯楽性も必要か?とにかく結果か?イタリア人のフィッカデンティ監督が就任したFC東京は10試合を終えて4勝4敗2分けとまずまずのスタートを切ったが、昨シーズンとはサッカースタイルが様変わりしている。ポポヴィッチ監督のときはボールを大切にするサッカーだったが、フィッカデンティ監督は戦略家である。とにかく試合中に動いてくる監督で、90分の中で、システムを3回・4回と変えることも珍しくない。
スコアが動いたときに並びを弄ることは珍しくないが、スコアが0対0のときでも、「あまりうまくいっていない。」と判断したときは、いろいろと手を打ってくる。ここまで試合中にシステムを弄ってくる監督はこれまでのJリーグにはいなかったので、なかなか興味深い指導者であるが、現C大阪のポポヴィッチ監督のときと比べると、自分たち主導のサッカーではなくなった。
どちらかというと相手に合わせるサッカーになったので、「FC東京は守備的なサッカーになった。」という人もいる。言うまでもなく、東京は娯楽の多い土地柄である。「だからこそ、攻撃的で魅力的なサッカーをしなければならない。」という人もいるし、その反対で、「だからこそ、とにかく勝負にこだわらなければならない。」という人もいる。「強くないと見向きもされない。」という意見も一理ある。
これは東京をホームタウンとするFC東京だけでなく、セレッソ大阪、名古屋グランパス、横浜Fマリノスなど、大都市で活動する他のいくつかのクラブにも当てはまる話である。「攻撃的で、魅力的なサッカーで勝利すること」ができれば最高であるが、なかなかそうはいかない。Jリーグの監督の中ではかなり異質なFC東京のフィッカデンティ監督からは目が離せない。
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