■ レアなケースC大阪U-18所属で、来シーズンからC大阪のトップチームに昇格する予定になっていたMF丸岡がドイツの名門のドルトムントに「1年半」というどちらかというと長期間のレンタル移籍をすることになった。高校卒業後、アーセナルと契約したMF宮市の例はあるが、ユースからトップチームに昇格して、即、海外のクラブにレンタル移籍するというのは、Jリーグでは「非常に珍しいケース」と言える。
最初に話を聞いたときは、「研修」あるいは「留学」のような感じかと思ったが、C大阪の岡野社長やドルトムントのクロップ監督などの話を聞く限り、そういうパターンではないようだ。本気度はかなり高い。とりあえずとして、ドルトムントのU-23に合流することになる見込みであるが、1年半の期間で「トップチームでもやれそう。」ということが分かれば、トップチームでプレーする機会も与えられるだろう。
ハナサカクラブの支援によって去年・今年とC大阪U-18は海外遠征を行って、現地でドルトムントと試合をしているが、これが相手方に目を付けられるきっかけになったという。いずれにしても、これまでほとんどなかった移籍のパターンなので、どういうことになるのか。1年半の間にトップチームでプレーするチャンスがあるのか、1年半後にC大阪に戻ってくるのかどうなのか、いろいろな点で注目したい。
■ どういう選手なのか?正直なところ、MF丸岡のプレーを観たのは、2回だけである。2011年のJユースカップの準決勝の清水戦が1回目で、2012年のJユースカップの準々決勝の札幌戦が2回目だった。ユース通のコアなサッカーファンにはよく知られた選手だと思うが、出場資格があった「96ジャパン」では、アジア予選でも、本大会でも、プレーはしていない。したがって、一般的な知名度は決して高くない。
当サイトの読者の中に「C大阪のユースの試合を追いかけている人」が何人かいたと思うので、そういう人から『丸岡満とはどういう選手なのか?』、「ドルトムントで活躍できる可能性はあるのか?」といった内容の
レポートが届くのを待ちたいところであるが、1年生のときから試合に出場していたので記憶には残っている。2試合ともボランチだったと思うが「技術が高くてパスの精度が高い。」という印象がある。
ちなみに、今年の3月にHannibalさんから送られて来た「
セレッソ大阪の次なるブレイク候補たち」というタイトルの読者エントリーでは、C大阪の若手5人(MF吉野、MF秋山、MF小暮、DF夛田、MF丸岡)がピックアップされているが、MF丸岡に関しては、以下のように記述されている。
(5) 丸岡満 ボランチ 173cm/64kg C大阪U-18所属 新3年生
→ 新チームになったユースでエースナンバー「8」を継いだ天才肌のボランチ。1年の頃からコンスタントに試合に出て、秋山とともにゲームを組み立てていた。世代別代表にもコンスタントに選出される実力は折り紙つきで、攻撃センスの高さが光る。一昨年のJユースカップ準決勝清水戦では約40メートルのロングシュートを叩き込んだ。トップチーム昇格は確実と思われるが、どうなるか。この春C大阪ユースに加入する瓜二つの弟、丸岡悟にも要注目である。ここに紹介されている「約40メートルのロングシュート」は、MF丸岡のプレー動画として、今回、至るところで紹介されているが、先のとおり、この試合は生で観ているので、しっかりと記憶している。当時の清水ユースには、今シーズンの途中で松本山雅にレンタル移籍してレギュラーとして活躍したDF犬飼(当時3年生)や、トップチームで活躍しているMF石毛(当時2年生)もいたが、C大阪が5対1で圧勝した。
1点目がMF木暮で、3点目と4点目がMF南野だったが、2点目がMF丸岡のシュートだった。「40メートルのシュート」と言われているが、この距離から決まるというのは、Jリーグの試合でも滅多にないことなので、インパクトは大きかった。(ちなみに、2011年のJユースカップの決勝戦(=名古屋戦)はスカパーで中継されたが、MF丸岡は準決勝の清水戦でレッドカードを受けたため、名古屋戦には出場できなかった。)
■ したがって、持っている情報はあまり多くないので、ドルトムントで成功できるか?について判断することはできないが、もし、それなりの成功をおさめることができれば、「こういうルートもある。」ということが、一般的に知られるようになって、1つのルートを開拓することができる。(どのラインに到達すれば成功と言えるのか?というのは、なかなか難しいところではあるが・・・。)
日本には「ユースからプロに進む。」というだけでなく、「高校からプロに進む。」というルートや、「高校やユースから大学に進んでプロに進む。」というルートもある。さらには「JFLなど企業クラブに入団して、Jクラブに引き抜かれる。」というルートもある。様々な選択肢がある点が「日本サッカー界の強み」になっているが、MF丸岡のパターンが新しいルートと認識されるようになるのか、否か。
「海外移籍は早ければ早い方がいい。」という人もいるが、そういう考えというのは、正しくないと思う。そう考える人が思っているほどJリーグのクラブの育成力は低くはないし、そう考える人が思っているほど、海外クラブの育成力は高くない。そして、次から次へと有望なタレントが出てくるわけではないので、『何人か犠牲になったとしても、大成功者が1人出てくればオールOK。』というわけにはいかない。
個人的には、10代など低年齢での海外移籍はあまりいいとは思わない。外国の生活に「合う人と合わない人」がいるので、なかなか試合に出場できなかったとき、実力不足が原因なのか、周囲の環境に慣れていないことが原因なのか、はっきりしないことがある。日本でプレーしている限り、環境のせいにすることはできないが、海外でプレーしていると、「環境」というのが、一種の言い訳になってしまう。
本当の原因は「実力不足」なのに、「環境のせい」にしてしまって、成長期に伸び悩んだ選手はこれまで何人もいる。なので、18歳で進路先を選択する時、最初は日本のチームを選んだほうが良いと思うが、そうは言っても、どういう環境で伸びるのかというのは、人それぞれである。「こういうときはこうすべき。」と決めつけるのも危険である。MF丸岡の挑戦は静かに見守りたいところである。
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