ここ数年で、ドイツでプレーする日本人選手が多くなりましたが、「ドイツ人のサッカーファンはブンデスリーガでプレーする日本人選手をどのように評価しているのか?」については、日本のサッカーファンにとっても気になるところですが、1年ほど前にドイツ人の方と知り合う機会があったので、ドイツで日本人選手がどのように認識されているのかを尋ねてみました。以下はそれをまとめたものです。
※ 2012-2013の前半戦の話がメインになります。
◆ ブンデスリーガで活躍するアジア人プレイヤー
ブンデスリーガでの東アジア人プレイヤーの活躍の歴史は、1977年の日本人ミッドフィルダー、奥寺康彦のFCケルン移籍に始まります。この当時、日本にはアマチュアサッカーしかなく、1965年から1992年まで日本のトップサッカーリーグであった日本サッカーリーグ(JSL)で奥寺は選手人生をスタートしました。チームは企業が所有し、リーグ発足当初はほとんどの選手たちがその企業の社員でした。奥寺は、JSLから下部リーグへ一度も降格した経験のない唯一のクラブチームである古河電工で7年間プレイしました。
◆ 香川慎司 (マンチェスターU)について
→ 夏にボルシア・ドルトムントからマンチェスター・ユナイテッドに移籍した香川は、ブンデスリーガで活躍した選手の最も典型的な例でしょう。23歳の香川は最近、AFC年間優秀選手に選ばれ、2010年Jリーグ・セレッソ大阪からドルトムントに移籍、その世界レベルへの急成長が話題にのぼっています。ドルトムントで香川は、ユルゲン・クロップ監督のバランスのとれたチームの2011年のリーグ優勝および翌年のリーグ連覇に貢献しました。香川は、ブンデスリーガに最近移籍してきた東アジア人プレイヤーたちのよい刺激となっています。
◆ 清武弘嗣 (ニュルンベルク)について
→ いろいろな面で、清武のキャリアは香川のあとを追っています。セレッソ大阪が2010年に清武を獲得しました。この23歳のプレイヤーはニュルンベルクの全16試合に先発し、チームトップの3ゴールをあげています。さらにリーグ7位タイとなる5つのアシストも記録しています。彼のパフォーマンスで特に注目すべきなのは、セットプレー です。清武のフリーキックおよびコーナーキックは、いつも弧を描きながら、ピンポイントでゴールエリアに入ってくるため、相手ディフェンダーを混乱させます。
◆ 乾貴士 (フランクフルト)について
→ 昨年、ボーフムに在籍した24歳の乾は、2.ブンデスリーガ(=2部リーグ)の優秀選手のひとりでした。乾は全試合に先発、5つのゴールを決め、チームは11位でシーズンを終えました。シーズンの終盤、リーグ2位で1部昇格を目指すアイントラハト・フランクフルトが彼を獲得しました。ここまで全17試合に先発出場し、5ゴール3アシストを記録、フランクフルトが好む4−2−3—1の左ミッドフィルダーとしてプレイしています。枠をとらえたシュートが46本、70の得点チャンスを演出し、ブンデスリーガでもっとも期待できるプレイヤーのひとりです。
◆ 内田篤人 (シャルケ)について
→ シャルケは好調にシーズンを滑り出したものの、瞬く間に低迷してしまいました。11月初旬以降、チームは12試合中、勝ち星をたった2つしか取れず、リーグ8位となっています。内田は12試合に先発し、出場した999分間にとられたファウルはたった8個です。24歳の内田がタックルでボールを奪う確率は、いまのところ52.7%、パスの成功率は79.9%となっています。また、このイケメンフルバックは1つのゴールに貢献し、11の得点チャンスを演出しています。
◆ 細貝萌 (当時はレヴァークーゼン)について
→ 1部残留をかけた昨シーズンのアウスブルグで重要な役割を果たし、レバークーゼンに戻った細貝は、ドイツ1部リーグでプレイするという素晴らしいチャンスを得ています。今シーズン、26歳の細貝は、シーズン序盤、チームになかなか溶け込むことができませんでしたが、信頼できるユーティリティディフェンダーとして、そのポジションを獲得したようです。841分間プレイし、チャレンジ成功率が49.7%、11の得点チャンスを演出しています。細貝はフルバックとしても守備型ミッドフィルダーとしてもプレイし、堅い守りになくてはならない存在となっています。
◆ 長谷部誠 (当時はヴォルフスブルク)について
→ サッカー日本代表チームのキャプテンは、シーズン序盤、フェリックス・マガト監督により、ヴォルフスブルクのスタメンから外されました。しかし、チームの成績不振によりマガト監督の解任が決まると、長谷部に再び活躍のチャンスが与えられました。10月25日にマガト監督が退任してから、長谷部はヴォルフスブルクの全試合に先発し、745分間を戦い、ゴールも1つあげています。マガト監督退任後、チーム状態は改善されましたが、リーグ15位という不甲斐ない順位からのランクアップを目指して、やるべきことはまだ山積みです。
ということで、今、ドイツでプレーしている選手以外では、奥寺さんと香川真司の話が出てきました。「ドイツで日本人のサッカー選手」というと、この2人の印象が強いという認識で間違いないようです。プロ選手第1号の奥寺さんの功績というのは、ドイツではよく知られているようですが、日本ではあまり知られていません。もっと称えられるべきだと個人的には思います。
文中では、いくつか数字が出てきますが、「得点チャンス」、「チャレンジ成功率」など、あまり日本では用いられない言葉(=数字)も出てきます。日本では、(「ゴール数」以外では)「アシスト数」がクローズアップされる機会が多いと思いますが、当然、アシスト数というのは、味方が決めてくれないと記録されません。「演出した得点チャンスの数」というのは、活躍度を示すいい指標のように思います。
清武に関しては、やはり、フリーキックおよびコーナーキックの精度の高さが評価されており、乾は枠内シュートの多さが評価されています。そして、内田はドイツでも「イケメン」と認識されているようです。移籍当初は、「ドイツ人は、KagawaとUchidaの顔の区別が付かないらしい。」ということが話題になっていましたが、内田クラスになると、万国共通で「イケメン」と扱われるようで、一安心です。
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