■ 歴代ベストイレブンJ2のザスパ草津は、10周年を記念して、サポーターから「歴代ベストイレブン」を募集している。「2002年から2012年まで、ザスパ草津のトップチームに在籍した選手であれば誰でもOK!」ということで、どんな選手が選ばれるのか、楽しみだが、これに習って、サッカーコラム J3 Plus+(さっかーこらむ・ジェースリー・プラスプラス)でも、各クラブの歴代ベストイレブンを考えてきた。
全てのクラブのベストイレブンを選ぶのは大変なので、とりあえずとして、「オリジナル10」の10クラブについて、歴代ベストイレブンを考えてきたが、意外や意外、読者の方からも好評なので、もう少し頑張って、オリジナル10以外のクラブにも範囲を広げて、ベルマーレ・ジュビロ・レイソル・セレッソ・アビスパ・サンガの6チームの歴代ベストイレブンも考えていきたいと思う。なお、これまでと同様で、「主観」や「好み」が、相当に混ざってくることは、ご了承いただきたい。
今回の歴代ベストイレブンは、以下のようなルールを定めて、メンバーを決めている。
・スタメン11人を選出する。
・スタメン以外にベンチ入りメンバー7人を選出する。
・外国人は5人までとする。(スタメンは3人まで、ベンチは2人まで。)
最初に、「そのクラブに在籍していたときに、どれだけ活躍・貢献できたかを重視する。」ということを記述しておく。そのため、必ずしも、能力の高い選手や実績のある選手を優先して、選んでいくわけではない、ということである。例えば、京都サンガに所属したMFシーラスは、ブラジル代表として、1990年のW杯のメンバーにも選ばれている大物選手であるが、京都サンガでは、期待されたような活躍はできなかったので、京都サンガの歴代ベストイレブンの候補には入らない。
ということで、今回は、オリジナル10以外のクラブの第1弾で、「ベルマーレ平塚・湘南ベルマーレ編」である。ベルマーレは1993年のJFLを制してJリーグに昇格すると、魅力的な攻撃サッカーを披露して、一世を風靡した。若手中心のメンバーで、両サイドバックも積極的に攻撃に参加するスタイルで、1994年には天皇杯を制している。
1999年にJ1で最下位となってJ2に降格すると、ずっと再昇格できず、J2生活が長くなっていたが、2009年に反町監督が監督に就任すると、甲府とのデットヒートを制して、11年ぶりの昇格を果たした。過去には、MFベッチーニョ、FW野口、MF田坂、DF名良橋、DF岩本など、個性豊かな選手が在籍し、MF中田英もプレーしている。懐かしい名前がたくさん出てきそうで楽しみだが、これまで通り、ポジション別にベストイレブンを考えていこうと思う。
ゴールキーパー → ベルマーレのGKと聞いて、思い出されるのは、古島清人、小島伸幸、伊藤裕二、金永基、野澤洋輔といった名前で、創生期のチームでポジションを争ったのは、GK古島とGK小島の二人である。当初は、GK古島の方が評価が高かったが、レギュラーポジションを確保したのは、GK小島で、1998年のフランスW杯のメンバーに選出されるなど、日本を代表するGKとなった。日本代表には、GK川口とGK楢崎がいたので、第3GKという立場だったが、若い二人を精神的にサポートした。安定感のあるGKで、DFラインに安心感を与えることのできる選手だった。
したがって、日本代表まで駆け上がったGK小島をベルマーレの歴代ベストイレブンのスタメンとするのが妥当で、サブには、11年ぶりのJ1昇格に大きく貢献したGK野澤洋輔を選出したい。反町監督とは、新潟でも、湘南でも、松本山雅でもコンビを組んだが、爆発力のあるGKで、ファインセーブの多いGKで、華のあるキーパーである。2007年・2008年と2年連続で全試合出場を果たしたGK金永基が2009年のシーズン開幕前に負傷して、長期離脱することになったが、その穴を補って余りある活躍を見せた。ということで、GKのポジションは、スタメンがGK小島、サブがGK野澤に決定した。
ディフェンダー → ベルマーレというと、攻撃型のチームで、「守備の堅いチーム」というイメージは薄い。よって、センターバックの人材に恵まれてきたチームとは言い難いが、それでも、過去、何人か、優秀な選手が在籍している。その中で、スタメン候補といえるのは、名塚善寛、クラウジオ、パラシオス、斉藤俊秀、ジャーン、村松大輔といった選手たちである。DF名塚は、初期のベルマーレのDFラインの要で、1994年にファルカン・ジャパンが誕生すると、ファルカン・ジャパンでもレギュラーに抜擢された。クレバーなセンターバックで、昇格1年目の2ndステージは、2位と大躍進したが、そのチームを支えて1994年のベストイレブンに選出されている。
DFクラウジオは、1997年から1999年までベルマーレでプレーした屈強なディフェンダーで、フリーキックを武器としていた。彼の右足から放たれる弾丸フリーキックは脅威そのもので、1997年と1998年は、ディフェンダーながら、2年連続で6ゴールをマークしている。一方、DFパラシオスは、J2時代のベルマーレを支えた選手の一人で、2001年から2004年の途中まで湘南でプレーした。コロンビア代表として1998年のフランスW杯にも出場している大物で、2001年にはベルマーレのユース出身のDF茂庭とセンターバックでコンビを組んでいる。
J1経験の豊富なDF斉藤とDFジャーンが加入したのは、2007年だったが、この二人が加入したことで、チームの守備力が大幅にアップした。DF斉藤も1998年のフランスW杯のメンバーで、長らく、清水で活躍していたが、湘南でもクレバーな守備を見せた。DF斉藤とコンビを組んだDFジャーンは、2007年から2010年まで湘南でプレーした。彼もブラジル代表経験のあるセンターバックで、高さや強さもあったが、パートナーを生かすプレーも巧みで、得点力も備わっていた。2009年はスピードタイプのDF村松とコンビを組んだが、補完性が抜群で、J1昇格に大きく貢献した。
以上の候補者の中から、センターバック二人を選出する必要があるが、「外国人は3人まで(※ スタメン中)」というルールがあるので、外国人のセンターバック・コンビとするのは難しい。よって、一人目は、日本代表でもプレーしたDF名塚で、二人目は、DFパラシオスか、DFジャーンか、どちらかとなるが、J1昇格に貢献したDFジャーンを選出したい。
次はサイドバックである。Jリーグに昇格した頃のベルマーレというと、サイドバックの攻撃参加が持ち味のチームだったが、そのときにサイドバックを担当したのは、右サイドバックがDF名良橋晃で、左サイドバックがDF岩本輝雄で、この二人を歴代ベストイレブンのスタメンに選出したい。他にも、堅実なプレーが光ったDF公文裕明、悪魔の左足を持つと恐れられたDF尾亦弘友希、MFアジエルと絶妙のコンビネーションを見せて、2009年のJ1昇格に大きく貢献したDF臼井幸平など、面白いタレントはたくさんいたが、ベルマーレの攻撃サッカーを象徴する二人をサイドバックに入れたい。
右SBのDF名良橋は、1998年のフランスW杯の日本代表の右ウイングバックで、国際Aマッチは38試合に出場している。クロスの精度はそれほど高くなかったが、スピードがあって、思い切りのいい攻撃参加を得意としていた。1997年に鹿島に移籍したが、2007年にベルマーレに戻って、リーグ戦にも出場している。一方、左SBのDF岩本は、類希な左足を持っていて、キックの精度とキックの威力が抜群だった。サイドバックでプレーしたのは、最初の頃だけで、その後は、サイドハーフでプレーすることがほとんどだったが、仙台時代の2003年に決めたフリーキックからのゴールは、「Jリーグ史上最高のゴールの1つ」と言われている。DF岩本もファルカン監督によって日本代表に抜擢されると、日本代表の背番号「10」を与えられて、大きな期待を背負った。
ミッドフィールダー → 中盤で、外すことができないのは、MFベッチーニョ、MFアジエル、MF坂本紘司の3人で、ベルマーレの歴史を作ってきた選手たちである。ブラジル人のMFベッチーニョは、フジタ時代の1993年に加入すると、チームのJリーグ昇格に貢献し、1996年までベルマーレでプレーした。「Jリーグ史上でも屈指の優良助っ人」で、1994年は37試合で24ゴール、1995年は50試合で25ゴールをマークし、攻撃的なサッカーをするチームを引っ張った。万能型のアタッカーで、ドリブルも、パスも、シュートも一級品で、2列目でプレーすることが多かったが、フォワードの選手以上にゴールを量産した。
2000年から湘南でプレーしているMF坂本は、「ミスター・ベルマーレ」と呼ぶにふさわしい選手である。技巧派のテクニシャンとして鳴らしていたが、近年は、運動量や献身性も増して、総合力の高い選手となった。もっとも、印象的なのは、2009年シーズンのパフォーマンスで、水戸戦でハットトリックを記録するなど、50試合に出場して13ゴールをマークし、久々のJ1昇格の原動力となった。この年は、MF坂本、MF寺川、MF田村で中盤を組んだが、攻守のバランスは絶妙だった。甲府(A)との大一番で決めたロスタイムの勝ち越しゴールと、最終節で昇格を決めた後、号泣した姿が印象的である。
MFアジエルも、2009年の昇格に大きく貢献した選手で、チームの大黒柱として、長くベルマーレを支え続けた。J2レベルを超越したテクニックを持っており、ドリブルのキレも抜群で、打開力もあった。また、味方を使うプレーも上手で、特に、DF臼井とのコンビネーションは抜群で、前述の天下分け目の甲府戦(A)でも、アジエルのアシストからDF臼井がゴールを決めている。人懐っこい性格で、サポーターからも大いに愛された。
ラストは、MF中田英寿である。1994年に新人王を獲得したMF田坂和昭、技巧派のMF反町康治、若さを武器に切り札となったMF西山哲平、2001年に17ゴールを挙げたMF栗原圭介、28歳の若さで現役を引退することになったが、クラッシャーとして2009年の昇格に大きく貢献したMF田村雄三、衰え知らずのテクニシャンのMF加藤望など、多彩な顔ぶれが候補に入ってくるが、やはり、MF中田英を外すことはできない。
1995年にベルマーレに加入して、1998年夏にイタリアのペルージャに移籍したので、在籍期間は短かったが、1996年のアジア・カップウィナーズカップの優勝に貢献するなど、チームに多くのものをもたらした。1年目と2年目は、MFベッチーニョという絶対的なエースがいたので、司令塔役というよりは、セカンドストライカー的な役割を与えられることが多かったが、飛び出しのセンスもあって、シュートも巧みだった。ということで、中盤は、MFベッチーニョ、MF坂本、MFアジエル、MF中田英というメンバーとなった。
フォワード → フォワードの一人目は、日本代表でもプレーしたFW野口幸司である。MFベッチーニョが攻撃の中心で、ゴールも量産したが、FW野口がエースストライカーで、1994年は42試合で19ゴール、1995年は49試合で23ゴールを挙げている。スピード、パワー、テクニックなど、特別、際立つものはなかったが、ゴール前のポジショニングに優れていて、ポジショニングで勝負するタイプで、決定力が高かった。固め取りをするタイプで、1試合で5ゴールを挙げたこともある。
2トップの相方は、アウミール、呂比須ワグナー、高田保則、田原豊などが候補となる。FWアウミールは、1994年から1996年までベルマーレでプレーしたアタッカーで、当時は、FW野口と2トップを組むことが多かった。身体能力の高い選手で、ドリブルも得意としていた。
FW呂比須ワグナーは、今シーズン、G大阪のヘッドコーチに就任して、あっさりと解任されてしまったので、日本での評価を著しく下げてしまったが、1997年は27試合で18ゴール、1998年は29試合で18ゴールと、ゴールを量産した。ベルマーレのときに日本への帰化が認められて、日本代表に初招集されて、フランスW杯にも出場している。スピードはなかったが、テクニックがあって、ポストプレーも巧みだった。フランスW杯の予選では、3試合連続ゴールを挙げて、日本の窮地を救っている。
FW高田はベルマーレユースの出身で、1997年から2005年の途中まで、ベルマーレでプレーした。準優勝に輝いた1999年のワールドユースの日本代表メンバーで、苦しい時代を支えた希望の星である。2010年限りで現役を引退しているが、キャリアのほとんどをJ2で過ごしており、J2で記録した76ゴールは、J2史上最多のゴール数で、407試合出場は、歴代4位である。3位がMF坂本で、6位がMF臼井とベルマーレ絡みの選手が上位に並んでいるところも面白い。
ここで、最後の枠を、FW呂比須ワグナーにするのか、FW高田保則にするのか、悩むところであるが、在籍年数も長くて、ゴール数も多いFW高田に軍配を上げたい。よって、スタメンは、FW野口とFW高田の2トップで、FW呂比須ワグナーはサブとする。
以上をまとめると、以下のようになった。サブは、GK野澤、DFパラシオス、FW呂比須ワグナー以外には、DF臼井、MF田坂、MF田村、MF加藤の4人をチョイスした。MF田坂はスタメンに入ってもおかしくない選手で、ボランチとしても、センターバックとしても、能力の高い選手だった。MF加藤は35歳だった2005年にチームに加入したが、2005年から4年連続で40試合以上に出場するなど、攻撃の中心として活躍した。30代後半になって、ここまでパフォーマンスが落ちなかった選手も珍しく、2008年限りで現役を引退することになったが、「もっとできそう。」だと思うほど、若々しいプレーを見せた。
まとめ スタメン (11人)
GK 小島伸幸
DF 名良橋晃
DF 名塚善寛
DF ジャーン
DF 岩本輝雄
MF 坂本紘司
MF アジエル
MF 中田英寿
MF ベッチーニョ
FW 野口幸司
FW 高田保則
サブ (7人)
GK 野澤洋輔
DF 臼井幸平
DF パラシオス
MF 田坂和昭
MF 田村雄三
MF 加藤望
FW 呂比須ワグナー
以上で、「ベルマーレ編」は終了で、次回は、ベルマーレとは同期生で、1990年代後半から黄金時代を築いた「ジュビロ磐田編」になります。
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