■ 駆け込みでの移籍は無し 欧州の冬の移籍市場は1月31日にクローズされたが、注目された日本人選手の締め切り間際の駆け込みでの移籍は無かった。3年前の2011年はDF長友がチェゼーナからインテルに電撃移籍を果たして、一昨年はCSKAモスクワに所属していたMF本田圭のラツィオ移籍が噂されたが、このときは移籍は実現せず。最終的には昨年の12月末に晴れてセリエAの名門のACミランへの移籍を果たした。
特に注目されていたのは、プレミアリーグに所属している3人である。アーセナルのMF宮市は怪我もあってなかなか出場機会を得られないので、試合に出場できそうなクラブへのレンタル移籍も考えられたが、アーセナルにとどまることになった。サウサンプトンのDF吉田も前半戦は出場の機会があまり無くて移籍の可能性もあったが、ここに来てチャンスが増えてきたのでチームを離れる意味はなくなった。
もっとも注目されたのは、やはり、マンチェスターUのMF香川である。ポジションや役割が重なるMFマタが62億円という高額な移籍金で加わった。さらには、怪我で戦列を離れていたFWルーニーやFWファン・ペルシーが戻ってきて、今後は出場機会の減少も予想される。「W杯のことを考えると移籍をした方がいいのではないか?」という声もあったが、結局、チームにとどまることになった。
■ 出場機会の減少もありうるMF香川 立場としては非常に厳しい。FWルーニーやFWファン・ペルシーが離脱している時期に地位を固めたかったが、なかなかうまくいかなかった。チェルシーのMFマタを62億円という高額な移籍金で獲得したので、今後、しばらくの間、MFマタが優先されるのは間違いないだろう。24節のストーク・シティ戦ではベンチに入ることもできなかったが、今後、ベンチ外が増えていく可能性も考えられる。
MF本田圭が加入したACミランにも同様のことが言えるが、「上手くいっていない名門クラブ」でプレーするというのは、なかなか難しいことである。1人で打開できる(はずの)ワールドクラスのタレントがいて、周りを固めるのも世界的に評価されている選手たちであるが、一度、チームとしての歯車が狂ってしまうと、みんなが「オレが、オレが。」になってしまって、余計に結果が出なくなる。
ファーガソン前監督のようなカリスマ性のある監督であるならば、そういった選手たちの暴走にブレーキをかけることができるが、モイーズ監督やセードルフ監督のようにメガクラブでの実績の乏しい監督になると非常に難しい。マンチェスターUの場合、お金はあるので、MFマタのような新しい選手も入ってくるが、根本的な問題が解決されない限り、誰が加わっても浮上していくのは難しい。
MF香川という選手は(ピッチ上においては)頭のいい選手である。昨シーズンもそういうところはあったが、自分がエゴを剥き出しにしてプレーするよりは、周りの選手を生かすプレーをした方が(チームとしての)結果につながると考えて、マンチェスターUではかなり周りに気を使ったプレーをしている。そういった部分が「積極的ではない。」と見られるときがあるのはツライところである。
■ スタメンのときはチームは好成績 日本のサッカーファンがマンチェスターUを語るとき、MF香川を話の中心に据えて語ることが多いので、ほとんどの人が気が付いていると思うが、MF香川がスタメンで出場した試合のマンチェスターUの成績(※ リーグ戦とCLに限定)はメガクラブにふさわしいものである。リーグ戦は7試合で4勝2敗1分けで、CLは5試合で4勝1分け。合計すると8勝2敗2分けなので、1試合平均の勝ち点は「2.17」となる。
一方、スタメンではなかった試合は、18試合で8勝6敗4分け。1試合平均の勝ち点「1.56」。極端に悪い数字ではないが、マンチェスターUのようなメガクラブとしてはちょっと物足りない数字である。自分がスタメンで出場している試合ではチームとして満足できる結果が出ていて、スタメンを外れた試合はあまりいい結果が出ていないというのは、MF香川にとっては、悪くない要素である。
表1. 香川がスタメンのときの成績 (リーグ戦とCL限定)
表2. 香川がスタメンではなかったときの成績 (リーグ戦とCL限定)
もちろん、「たまたまだ。」という意見もあるとは思うが、個人的には、MF香川が出場している試合でチームがいい成績を残しているというのは、決して偶然ではないと思うし、MF香川のようにたくさん走って、チームメイトの助けになれるような選手が少ない点(=ほとんどいない点)が今シーズンの大きな問題点だと思う。気の利いたプレーができる選手をうまく使えていないことも低迷の要因の1つだと思う。
当然、前目のポジションの選手は数字を出すことが大事である。結局のところ、数字(=ゴール数とアシスト数)で評価されてしまう世界であり、1.5流や2流のチームは「オレが、オレが。」でもOKだと思う。そういう感じでも、(1.5流や2流のチームにふさわしい)結果が付いてくると思うが、マンチェスターUのような超一流のクラブになると、それではダメだと思うし、それでは思うような結果は付いてこない。
周りにいい選手がたくさんいる中で、出場機会を確保するためには、数字でアピールすることはもちろん大事であるが、わがままなプレーをしてゴール数やアシスト数を稼いだとしても、超一流のクラブではあまり意味が無いと思う。ファーガソン監督はそういうところの見極めは確かだったが、モイーズ監督は1年目の監督であり、全く余裕の無い状態である。モイーズ監督との相性はあまり良くない。
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個人別エントリー (香川真司)
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