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2023-03-12

anond:20230310115113

将棋

斎藤慎太郎ファン→鹿

佐藤天彦ファン領民

豊島将之ファン→区民

2021-06-07

Abema将棋トーナメントで短時間だとなぜか弱くなる強い棋士がいることに気づいた

 ここ数年の将棋人気で誕生したabema将棋トーナメント放送が毎週土曜日にあり、持ち時間5分、1手指すごとに5秒追加という、普段の対局だったらまずありえない持ち時間の短さに慌てふためくプロ棋士の様子を見て楽しんでいるのだが、いつもの対局での棋力に照らして、明らかに早指しだと弱くなる棋士がいることに気づいた。

 将棋囲碁のようなボードゲームで、子供の頃からやっている人と大きくなってから始めた人の差が一番出やすいのは、超早指し(持ち時間3分で使い切ったら負けとか)なんじゃないかと前から思っている。子供の頃からやっている人は、そもそも単純に経験値が多いし、持ち時間など関係なくバシバシ瞬発力で指す子供時代記憶がどこかに残っていたりもするのか、直感が優れているし直感が効く範囲も広い気がする。他方大人になってから始めた人は、経験値が足りないのを理屈で補っているようなところがあるから時間をかけて読み進めれば人並みに正しい結論まで辿り着けるけれど、いかんせん直感が効かずとっさの判断が苦手である。実際自分の周りを見ていてもそういう傾向は顕著で、大人になってから始めた人ほど長時間と短時間のレート差が大きい(当てはまらない人もいるけど)。

 しかしさすがにプロ棋士大人になってから始めた人はいいから、これは関係ない。だったら普段の強さと早指しの強さが連動していてもいいはずじゃないかとも思うのだが、実際にはそうなっていない。なかでも印象的なのは、一昨日私を含む多くのファンに惜しまれながら敗退した豊島将之竜王。見るからに今回のルールが不得意で、去年に続いて二年連続で予選敗退。知らない人のために書いておくと、豊島竜王は今の将棋界で一番強い部類に入る人で、タイトルも2つ持っている。ちなみにいま一番多く(3つ)タイトルを持っている渡辺明名人にもなんとなく似た印象があって、公式戦だと勝ちまくっているが、abemaトーナメントだとうおーーー強い、という感じがない(しインタビューなど聞いていると自分でもそう思っている節がある)。

 プロ棋士脳内というのはとにかく常人には計り知れないところがあり、許されるのなら割って覗いてみたいくらのものだと思うのだが、そうなると逆に気になってくるのは、普段の対局時(持ち時間4時間とか6時間とか、長ければ8、9時間で2日に分けてとか)、早指しはいまいちだが時間をかければべらぼうに強いこの人たちの頭の中ではどんなことが起こっているのかということだ。直感で思い浮かんだ手(よく「第一感」と言われる)が読みで修正される度合いが、他の棋士よりも大きいんだろうか。第一感の手の精度はイマイチだが、あるいは「筋のいい」手をパッと思いつく能力にはプロともなれば差はなくて、10手先20手先と掘り下げていったところに潜んでいる意外な妙手に気づく能力に長けているとかなんだろうか。しかし何手先だろうと手を発見するのは直感なんじゃないんだろうか。それとも直感を裏切るような手を理詰めで辿り着く技術なんだろうか......。

 しかし、羽生善治永世7冠には、経験を積んで強くなるとは、「直感」の段階で無駄候補手を切り捨てる能力が向上することであり、それによって読むべき手を減らしていくことだという趣旨言葉がある。この手はきっとダメだろうな、この手は可能性があるかもな、みたいな読み以前の感覚の正確さが強さの一大要素だという発想で、これはプロにも当てはまるはずだという気もする。余談だが今回のabemaトーナメントでは意外と歳が上の人が勝っているのも面白くて、頭の回転速度は20代をピークにして衰えるらしいが、その分を経験に裏打ちされた直感で補えているのかなあという感じもある。

 人工知能計算力に物言わせてとにかくしらみ潰しに読むのに対し、人間ほとんどの選択肢をまず最初に切り捨てると対比的されることがあるが、その第一感の部分で豊島竜王とか渡辺名人とかがさほど秀でていないのだとしたらやっぱり意外で、そうなんだとしたら彼らの強さは何によってできているんだろう、というかそもそも将棋の強さというのはどういう能力構成されているんだろうと思う。既存の手筋をいくつ覚えたかとか脳内盤がどれくらい鮮明かとかそれで何手先まで読めるかとかいうことである程度までは強くなれるが、突き詰めていったら、どんな能力必要なのか、強いとはどうなることなのかがわからない、むしろそれをこそ考えるという境地があるはずだと想像する。それは畢竟するところ、人間の知能がある限られたルールの中で極限状態に置かれたらどう振る舞うか、エンタメの装いで人体実験しているようなものだ。自分で直に体験することはできないが(単純に棋力が足りないので)、代わりにやってくれるプロ棋士を見ながらこの人たちの頭の中では何が起きているのだろうかと想像することは楽しい

 AIAIで、機械学習からディープラーニングに替わって以降、コンピュータ自分で作り調整している無数のパラメータが何を測っているのか人間には分からないという話があるが、9×9マス、駒8種類程度のゲームでもその「考え方」には複数可能性があるわけである藤井聡太が注目を集めているのも、単に計算が早いだけではなくて、「考え方」の質的更新を予感している人が多いからだろう。AI人間が勝てない今日ボードゲームプロ競技として存続していくことに意味はあるのかと問われることがあるが、あえて考えるなら、「ミスだらけでも人間真剣勝負する姿は美しい」型の人間ドラマ礼賛よりも(そういう要素が消えるとは思わないしま自分も好きだが)、人間知的能力をある方向に限界まで高めたときにの垣間見えるその特性AIとの比較も含めて明らかになったり、AI人間の共同作業にはどんな形があり得るのかの実験になったり(実際「AIのような手を人間が指す」ことは多くなったわけだ)ということの方に可能性があると思う。

 と、取り留めもなく最後は話が大きくなりすぎたが、あんなに強い豊島竜王がどういうわけか一向に勝てないのを嘆きながらこんなことをぼんやり考えていたのでした。来週も楽しみ。

2020-12-06

将棋符号思考するプロ棋士

 将棋って指したことありますか?

 将棋楽しいボードゲームで、基本的に殴り合いのオフェンスゲームです。仮にチェスディフェンスゲームで、お互いに防御の構えを組み換えながら敵側の綻びを見つけ出すゲームだとすれば、将棋は蟻の一穴をこじ開け落城させるオフェンスゲームと言ってもいいでしょう。

 チェス競技人口が一説には5億人とも言われる中、将棋競技人口は一千万人程度とガラパゴス様相を呈していますが、明らかにゲームとしてのバランスではチェスに勝っていますチェス公式戦においては先手勝率が40%程度、後手勝率が30%、引き分けが30%程度なのに対して、将棋の先手勝率50%程度、後手勝率は48%、そして引き分け千日手)の確率は2%前後であり、引き分け可能性がチェスに対してずっと少なく、そして先手と後手の勝率拮抗し合っているため将棋ボードゲームとして極めて高い完成度を誇るゲームと言えるのです。

 更に付け加えると、ダメ筋(明らかにダメな手)を含めた、ありとあらゆる手の組み合わせ(ありとあらゆる進行の総数)を計算すると、チェス10120乗程度なのに対して、将棋10の220乗程度ということですからゲームとしての奥深さも将棋チェスを上回っています。因みに、宇宙存在する原子の総数が10の70乗程度ということなので、如何に将棋というゲームが奥深いかは言うべくもありません。つまり、ある部分において将棋というゲーム宇宙それ自体より『深い』のです。


 僕は腕前としてはアマチュア初段程度で、つまりアマチュアが目指すべき差し当たっての目標点にいます。やはりアマチュア二段以上を目指すとなるとかなり強烈な努力必要になってくる印象です。アマチュア初段は将棋普段嗜んでいる人間の中で、上位25%前後の層を指しているとお考え下さい。

 将棋の道は極めて長いです。そして険しいです。詳しくはこの「将棋名人とはどのくらい強いものなのか:https://ncode.syosetu.com/n5490eb/」という素晴らしい記事をご覧になって頂ければよいかと思います。(この記事の作者様と私は同一人物ではありません)

 将棋プロになるためには奨励会という育成機関を通過する必要があります。この奨励会は入会すると6級からスタートとなるのですが、これはアマチュアで言うところの四段以上の腕前に相当すると言われていますしかも、この奨励会に入会するのは小学生中学生少年少女です。つまり大の大人血の滲むような努力をしてようやく到達できる地点に、ある程度の凝縮された努力によって遥かに短い時間で到達できる人々、つまり天才たちだけがこのスタートラインに立つことができるということです。

 さて、当然奨励会員になったところでプロになったわけではなく、プロになれるのは奨励会三段リーグ突破して四段の資格を得た者だけで、年間に四人しか輩出されない仕組みとなっています。更に、四段になった後もプロとしてのグラデーション存在しており、そこには才能の差という影がいつまでも付き纏います

 才能のあるプロ、つまりそんな天才の中の天才は、将棋を指す際にどのように思考しているものなのでしょうか?

脳内将棋

 先に紹介させてもらった記事では、天才達の中でもグラデーション存在しており、将棋トップに立てるのは本当に一握りの人間であることが述べられていました。

 つまりトッププロとは、仮に将棋人口1000万人だとすれば上位0.0001%人間のことです。すなわち、トップの十人、それが実質的日本トッププロ達です。

 羽生善治藤井聡太渡辺明豊島将之永瀬拓矢らがそうです。将棋を指す者達は彼らのことを畏怖の目で見つめ、時折プロが招かれるイベントなどで間近に見る際には、化け物や、宇宙人。あるいはこの世の理を超越したもの意味する視線が、彼らには注がれることとなります

 さて、これらのプロ達に必要ものは何なのでしょう?

 つまりは才能とは一体何なのかという話になるのですが、脳内将棋盤というのがポイントになってきます

 人は、数理的思考能力、つまりIQが140を超えると立体的なイメージをあらゆる角度から検証できるようになるという話があります人間のある種の知的能力と、立体的な像を脳裏に生み出す能力には深い繋がりがあるということなのです。つまり、才能のある将棋指しは脳の中に将棋盤を作り出すことができ、これによってどんな時でも(つまり実際の将棋盤がなくても)脳裏において将棋情報を扱うことができるようになるほか、将棋に関する凝縮した思考を連綿と行うことができるようになるということなのです。勿論、プロもこの「脳内将棋盤」を持っており、彼らの脳内将棋盤にはそれぞれのバリエーションがあることも有名です。

 以下コピペ

羽生四冠

「4分割(5×5中央重複)の部分図が高速で行ったり来たり。盤全体は1度には浮かばない、負荷が大きい。盤面は白、線は黒。駒は外形が無く黒の一字彫り。アマ二、三段くらいになった10歳ごろからこんな風。」

森内九段

「立体的でリアルな榧盤に柘植の駒。

盤駒のみの思い浮かべる事はほとんど無く背景も付随。対局中は当時の対戦相手や対局場の雰囲気まで再生普段は自室の背景に板盤。」

加藤九段

「盤は黄色で1一が右上に固定されている全体図で、線は無い。楷書文字1字だけが駒として自動的に動く。」

渡辺二冠

「ダークグレーの空間に、字の書かれていない黒に近い灰色の駒が浮かんでいるだけだが、どちらのどの駒かは分かる。」

佐藤(康)九段

「黒くぼやけた盤面のどこか一部だけが見えている。駒はゴニョゴニョ、あるか無いかからないまま何かある感じ。」

里見女流名人

「盤も背景も黒く、線の無い盤全体に文字の無い黒っぽい駒がモニョモニョ。」

 (出典:AERA No.38増大号'12.9.17天才たちの「脳内パネル」』)

 さてトッププロどころかアマチュア4~5段の人々にはこの脳内将棋盤が基本的に備わっていると言われています。つまり、この脳内将棋盤は確かに、ある程度将棋の強さ(棋力)の指標となるのです。しかし、トップの人々に関してその指標ピタリと当てはまるかというと、疑問だと言わざるを得ません。脳内将棋盤というもの将棋の猛者にとって当たり前のアイテムかつ大前提アイテムであるため、最上位層の人々の能力を測る尺度としては些か信頼性に欠けるということなのです。というか、一応奨励会三段(アマチュアではなくプロ基準の三段)ともなれば、既に常人を超越して人間卒業レベルに至っているので、やはりその中にいる更なる化け物達を推し量るには、脳内将棋盤の有無のみならず別の尺度を用いる必要があります

脳内将棋盤が「ない」。

 つまり、その二者。単なる化け物と、化け物の中の化け物を辨別する際に必要なのは脳内将棋盤が「ない」ということなのです。

 頭の中で将棋盤が無く、視覚的なイメージに頼ることな思考できる人々が、化け物の中の化け物にはいるということなのです。

 例えば、常人は次のように考えます

 「最初の一手……まず、角の斜め前の歩を前に一つ進めるだろ。すると、後手の相手も同じように角の斜め前の歩を一つ進める。だとしたら俺は飛車先の歩を一つ前に突いて、相手も突き返して……横歩取りの筋に合流しそうだ」などなど。
 つまり常人基本的画像、目の前にある将棋盤の視覚的なイメージを用いて思考しており、そのイメージを介さずには将棋を指すことができないのです。ある意味では脳内将棋盤の存在も、視覚的な情報に基づいているという点においてはその思考の延長線上にあると言っていいでしょう。そう、人は基本的将棋を考える際には視覚的なイメージ媒介とするしかないのです。

 しかし、プロの一部にはそのような思考法は――視覚的なイメージを介した思考は――あくまで「補助的なものに過ぎない」と証言する者もいます藤井聡太増田康宏、羽生善治などがそれらの棋士です。

 では彼らはどのように思考しているのでしょうか。

 そう、符号によって思考しているのです。

 将棋符号とは、数字文字によって駒の動きを表したものです。いわば駒の「番地」とも言われるもので、次の記事が参考になると思います

https://book.mynavi.jp/shogi/detail/id=77758

 例えば、少し前に書いた横歩取りの定跡だと以下のような記述になります。76歩、34歩、26歩、84歩、25歩、85歩、78金、32金……。このような記述の仕方は江戸時代以降から共通であり、いわゆる将棋の対戦の記録である棋譜」は古くは数百年前のものが記されています。古い文献において、盤面は視覚的に、絵図を用いて記述されることはなく、符号を使って記述されているのです。

 いちいち絵図で盤面を描き残すよりも、文字で表した方がずっと労力は少ないですからね。

符号思考する

 以下の記述あくまで本人らの証言を参考に記しているものであり、彼らの思考追体験したものでは当然ないのですが、つまり彼らの思考は以下のものになります

 先程書いた将棋符号が、将棋に関する思考を始めた瞬間にズラズラズラ~~~っと文字列で浮かぶのです。

 そう、これがトップ棋士達の思考なのです!

 「ズラズラズラ~~~っ」って……、と自分文章表現力の稚拙さに絶望しそうになるのですが、そう言い表すほかない。そう、真のトッププロにおいては、文字によって思考が行われるのです。そこに画像の介在する余地は、僅かにしかない。羽生善治曰く、「思考基本的符号で行って、その後、ある程度局面を読み終わった後に、自分思考確認するために思考画像に起こす、という作業はありますが、基本的画像思考することはありません」とのことでした。

 先に書いた通り、画像物事を表すというのは、文字列で表すよりも遥かに手間が掛かります。つまり、脳の処理を要します。

 となれば、より情報量の少ない符号によって思考するということが、より高速な思考法として適しているということなのです。

 ある意味、それは楽譜における音符の存在と似ているでしょう。というか、そのものかもしれません。音楽というものは体系化され楽譜という共有形式を持つ以前は、完全に口伝であり、人々が歌い継ぐことによってしか継承を行うことができませんでした。しかしそれが数学的・音楽的に体系化され、楽譜の形を取ることになると、そのような継承の際に起こり得る障害はほぼ完全に撤廃されることとなります。そしてこれらの音符を読むことで、人々はそのメロディー脳裏に想起することができるようになりました。将棋棋士もまた、それと同じ知的処理を行っていると言ってもいいかもしれません。

 つまり、ドミソ、の音符が並んでいるのを見て、タララ~、という和音脳裏に浮かぶのと同じように、将棋トッププロたちは符号によって将棋の盤面を把握することができるのです。これは、将棋のある程度の才能がある人々には必須能力ですし、実際に高位のプロ棋士トップアマチュアは、棋譜を一目見ただけで盤面の進行をまざまざと思い浮かべることができると言われています

 とは言え、そのことと「思考符号を用いる」ことはやはり一線を画していると言ってもいいでしょう。

 勿論、理屈としては分かるのです。我々が音楽継承する際に楽譜を用いたように、あるいは将棋の対局を語り継ぐために符号によって棋譜を残したように、それらの音符や符号といった記号には意味圧縮することができ、効率的情報伝達を行うことができるのだと。

 勿論、理屈としては分かります。とは言え、それらの記号を使って後世へと情報を伝達することと、それらの記号を用いた思考を正確に効率的実践することとは、また別問題です。

おわりに

符号さえ「ない」。(藤井聡太場合

 というわけで、画像媒介にした思考文字列を媒介にした思考とでは、効率において文字列による思考に軍配が上がるということでした。プロ棋士らによる思考抽象化が極限にまで達すると、本来立体的な駒やそれらの視覚イメージを用いずして思考することが不可能であったはずのボードゲームも、文字列を介した思考によって再現されてしまう、ということなのでした。実に、これは驚くべき異常性であり、そして、個人的には文化として、そして娯楽として、このような常軌を逸した営みを次代へと継承していかなければならないと感じます

 さて、ところで常軌を逸していると言えば、藤井聡太二冠の名前はもはや語るべくもなく有名ですよね。彼のインタビュー記事は相当数発表されていますから、彼の語る様々な内容について把握している方も多いかも知れません。

 その中でも異質のインタビューと言えば、2020年の夏に発表された、小説家白鳥士郎氏によるインタビューでしょう。https://originalnews.nico/139502

――棋士はどなたも『脳内将棋盤』を持っておられます。でも藤井先生は、あまり盤面を思い浮かべておられる感じではないと、以前、記事で拝見したのですが。

はい

――では、対局中はどんな感じで考えらおられるのですか? 棋譜思考している?

「ん……それは、自分でもよくわからないというか。んー…………」

――盤は思い浮かべない?

「まあ、盤は(対局中は)目の前にあるわけですので」

――詰将棋を解くときなどはどうです?

詰将棋は読みだけなので、盤面を思い浮かべるという感じでは……」

――えっ? ……私のような素人だと、詰将棋を解くときこそ将棋盤を思い浮かべるというか……むしろ手元に盤駒を置いていないと解けないくらいなんですけど……。

 将棋プロ世界は腹の探り合いであり、自らの能力本質である思考方法」について簡単に詳らかにすることは、本来無いことと言ってもいいかもしれません。とは言え、これまで語ったようにそれらをはっきりと述べる棋士の人々がいらっしゃるのもまた事実です。そして、このインタビューにおいて行われた藤井二冠の発言もまた、棋士思考の一環を覗くことのできる重要な機会であるように思われます

 さて、ここで述べられているのは、そもそも思考する際に「なにもない」ということです。

 全くの虚無、というわけではないにせよ、少なくとも目の前に分かりやすい形で示すことのできる思考は、存在しないということなのです。

 以下のインタビューで彼は次のように語っていますhttps://shuchi.php.co.jp/voice/detail/3394?p=1

――藤井四段は、将棋の場面を図面で考えるのか、棋譜で考えるのか、どちらのタイプですか。

 聡太 : 基本的に、符号で考えて、最後図面に直して、その局面の形勢判断をしています

 彼は基本的にはこれまで述べたように、「符号」を使って思考するのですが。しかしある種の詰将棋などにおいてはそのような符号さえ必要にしないということでした。

 このような、実際の目視確認脳内将棋盤(符号による棋譜理解)→符号による思考符号さえない思考という構図を単純なステップアップの過程として語ることはできないとは思うのですが、しかし、将棋というゲームについて思考する際に、その思考が極限まで達した人は何かしらの深淵へと、虚無への道を辿っているような、そんな感触を覚えてしまうのは僕だけなのでしょうか。


 さて、というわけで、トップ棋士たちの、良い意味での思考の異常性について語りました。現在12/6午後五時三十分ですが、僕がこの世の隅っこでこの文章を書いている間、世間の大舞台では羽生善治九段豊島将之竜王二冠のタイトル戦第五局が、行われている最中です。

2020-08-21

木村一基の不撓の闘い

藤井聡太棋聖が瞬く間に二冠、そして八段となり、世間は大きく湧いている。

けれど、ここでは、番勝負で敗れた木村一基九段の話をさせてください。

悲願は実る

将棋ファンをやっていて一番辛かった瞬間は、と問われれば、2016年の第57期王位戦番勝負第7局を挙げる。このシリーズ通算6回目のタイトル戦挑戦となった木村一基八段(当時)が、羽生善治王位相手に3勝2敗と先行し、悲願の初タイトル王手をかけていた。しかし、第6局、第7局と木村は連敗する。またしても、悲願の初タイトル獲得はならなかった。これで木村は、あと1つでタイトル、というところで8連敗を喫した。あと一つは、どこまでも遠い。

いつもは負けた後も気丈に振る舞う木村だが、この日は様子が違った。記者質問言葉が詰まる。言葉が、出ない。結局、言葉を発さないまま、木村右手を小さく振って質問をさえぎった。8度目の正直。期するものはどれだけだったか。胸にこみ上げた思いはどれだけだったか。胸が潰れるような思いだった。こんなに辛いことが世の中にあっていいのか、と思った。

この時、木村43歳。次々と若手が台頭してくる将棋である。43歳の木村に残されたチャンスは多くない。もしかしたら、これが最後のチャンスだったのではないか。そんな思いが頭をよぎった。

そんな思いが頭をよぎったことを、私は今でも恥じている。

それから3年後の2019年木村は再び王位戦で7度目のタイトルに挑む。そして、豊島将之王位(当時)を相手に、4勝3敗でタイトルを奪取。史上最年長記録となる、46歳での初タイトル獲得である。43歳で8度目の正直を逃し、それでもなお、木村は這い上がってきた。そして、ついに悲願は実った。解説会場で見守っていたファンは、立ち上がって木村拍手を送ったという。この悲願は、将棋ファンにとっての悲願でもあったのである

将棋ファンをやっていて、一番辛かった瞬間と、一番嬉しかった瞬間。その両方を味わわせてくれた木村一基は、私にとって特別棋士である

ついにタイトルホルダーとなった木村一基王位も、1年後には初めての防衛戦を迎える。2020年7月、第61期王位戦木村の前には、まだどこか慣れない和服に身を包みながらも、凛とした佇まいで盤の前に座る挑戦者がいた。

藤井聡太七段(当時)。厳しい、あまりに厳しい防衛戦が幕を開ける。

遠い勝利

番勝負第1局。藤井七段の先手番で角換わり。木村王位は、38手目に△4四歩と突く。これは、「攻めてこい」という手で、ここを突くと先手の猛攻が始まる。強い受けを得意とする木村。初めて上位者として臨むタイトル戦。藤井七段の攻めを堂々と受け止める覚悟で突いた歩であった。

当然、藤井七段は次の手から攻めかかる。厳しく、刺さるような攻め。藤井が攻め、木村が受ける。それが延々と続いた。受けを身上とする木村である面目躍如の粘り強い受けが次々と飛び出す。絶体絶命と思える場面でも、受けはある。藤井の攻めが止まり、一手でも木村に攻めの手が回れば、たちまち逆転である

しかし、その手は最後まで回ってこなかった。藤井聡太七段、攻め始めてから守りの手を指すことなく、攻め倒しての快勝。盤上に衝撃波が残るような、そんな幕開けとなった。

第2局。先手番の木村選択したのは得意戦法の相掛かりであった。この戦型は、定跡が整備されておらず、一手一手が難しい戦いになる。お互いの構想力、真の力量が問われる戦型ともいえる。木村藤井、互いに盤上没我し、深い読みで盤の底の海を泳ぐ。2日目の午後になってもまだ本格的な戦いが始まらない。あまり難解な応酬の中、一歩抜け出したのは木村だった。8六に角を上がった手が、藤井も困ったという好手。深い読みと、これまでの艱難辛苦に裏打ちされたような丁寧な応対。木村がついに優位に立った。

しかし、藤井は全く楽にさせてくれない。逆転に向けて絶えず圧をかけ続けるような指し手で、木村を追い詰めていく。序盤、中盤で考えに考え、優位を掴んだ木村。終盤まで来ると、時間が残っていない。時間に追われるように指した手は、わずかに足りなかった。木村一基、2連敗。終局後、遠くに目をやった姿が印象的だった。

迎えた第3局。第2局と第3局の間に、藤井は初タイトル棋聖を獲得していた。これでこの番勝負は、初タイトルの史上最年長対史上最年少の番勝負となった。果てしない苦難の末にタイトルを手にした木村に、彗星のごとくタイトルまで上り詰めた藤井が挑む。同じタイトル1期でも全く対照的であり、意味が違う。将棋神様がどこかで筋を書いているとしたら、将棋神様が憎い。

戦型は矢倉。先手番の藤井が、土居矢倉に雀刺しという温故知新の構想を披露する。盤上を転換する角が輝いている。改めて、恍惚とするような構想力である。またしても藤井の攻めを木村が受け止める展開となるが、藤井の攻めは淀みなく、木村、苦しい。

はっきりと苦しい90手目。木村は自陣に銀を打った。うめき声が聞こえてくるような苦しい銀打ちである。この手を見て、中継画面を思わず凝視した。辛抱も辛抱、鬼辛抱の受けである。ここに銀を打ったところで、幸せになる未来はなかなかやってこない。それでも木村は打つ。これまでも打ってきたし、ここでも打つ。

中継を見ながら並べていた将棋盤に、木村の手つきを真似しながら何度も銀を打ち付けた。自慢できるような華麗な手ではない。しかし、これが木村の手なのだ

「これが木村一基だ」。そう念じながら、何度も、何度も打ち付ける。報われてくれ。幸せになってくれ。まずは一つ、返してくれ。

木村の執念の粘りに引きずられたのか、藤井が終盤に一手寄せを誤る。辛抱を続けてきた木村に巡った最終盤の大チャンスであるしかし、そこから木村が優位を掴む手は相当に見えづらく、難解だった。突然現れた勝利へのか細い糸だったが、木村、惜しくもこれを掴めない。番勝負は3連敗、あっという間のカド番となった。

2020年8月19日王位戦番勝負第4局。カド番の木村は、相掛かりに命運を託す。敗れはしたものの、第2局で優位を築いた得意戦法に全てを懸けた。

カド番とは思えないような積極的な指し回しに、藤井も一歩も引かずに応じる。激しい突っ張り合いの末に封じ手を迎えた。飛車に銀を当てられた藤井。36分の考慮に沈んだ末、次の一手を封じた。飛車を逃げるか、バッサリと斬ってしまうかというところである。そして、後者は相当に勇気がいる。

封じ手の場面、ある一手を思い出した。藤井聡太代表する一手の一つ、「△7七同飛成」。場面は異なれども、あれも飛車をバッサリと斬る手であった。鮮烈な一手が去来して、予感を巡らした。そして、翌日開かれた封じ手藤井棋聖はやはり、飛車を斬り飛ばした。

一歩も引かない突っ張り合いは2日目も続く。しかし、局面藤井に傾いていった。終盤の局面は、見れば見るほど、木村にとってどうしようもない。全てを悟った木村王位は、潔く駒を投じた。藤井王位誕生し、木村にとっての初の防衛戦の幕が閉じた。

木村から見て「0勝4敗」という星取りは、正直すぐには信じ難い。紙一重の、いや、間に紙一枚もないような攻防の中で、残念ながら木村勝利を掴むことができなかった。どこまでいっても勝利の遠かった番勝負。そこには、歴然たる「差」があるのかもしれない。しかし、木村一基王位は、初めての防衛戦となるタイトル戦で、最後まで全力で戦い抜いた。彼が初めてタイトルを獲得した時、解説会場でファンたちがそうしたように、今回も立ち上がって、全力で拍手を送りたい。

折れない心

藤井王位は、記者会見で木村の立ち振る舞いから学ぶことが多かったと述べていた。それは、偽らざる実感だったと思う。多くのタイトル戦を経験してきた木村だが、これまでは全て挑戦側。上位者として迎えるのは初めてで、しか相手自分よりも30歳近く年下の若者、加えてこのコロナ禍の中での異例づくめのタイトルである。戸惑う部分は大きかったはずだが、それを感じさせないくらい、木村の振る舞いは堂々としていた。

初めての封じ手所作に戸惑った藤井棋聖。優しく所作を示したのは対戦相手木村であった。その封じ手、通常は2通であるが、今回は3通作成することを提案したのもまた木村である。通常より多い1通は、販売し、収益豪雨災害被災地などに送ることを想定したチャリティーである

目を覆うような負け方をした後でも、感想戦リードし、記者質問にも気丈に答える。厳しい番勝負の中でも、木村他者へのまなざしを忘れない。あと一歩のところで敗れ続けてきた。苦難に満ちた将棋人生が、棋士木村一基を創っている。

感想戦の後、駒箱に駒をしまう。タイトルホルダーとしての最後所作を終えて、木村一基王位戦は幕を閉じた。47歳。あの時より、4つ年を取っている。しかし、木村一基はまた戻ってくる。苦しい手しか残っていなくても、まだ指し続ける。「百折不撓」折れない心は、木村の信念である

今度は、微塵も疑っていない。

2020-07-22

anond:20200719012111

レジェンド順位戦S級

S級1組

永世三冠以上

S級2組

永世かつタイトル20期以上

S級3組

永世称号保持者

S級4組

タイトル5期以上

カッコが付いている人は稼働していた時代が違いすぎて単純に比較できない人

S級奨励会

あと何期かでS級4組に昇格する現役棋士

タイトル戦3期で竜王戦のみ現役となっている桐山清澄九段事実上不可能なのでここに入れない。年齢や近年の実績から豊島と天彦以外は4組昇格厳しい。

藤井聡太は挑戦中の王位本戦トーナメントに残っている竜王ダッシュ三冠になれば今年中にS級奨励会に入会、更に来年これらを防衛するか王将叡王王座のいずれかを奪取でタイトル2年目でS級4組に昇格。羽生善治ですらS級4組は4年かかっているのに(それでも充分化物)!

2020-07-19

2010年7月18日世代

anond:20200718090944

id:BigHopeClasicです(元増田ではない)

ブコメの中に「10年前はどうだったんだろう」というのがあったので、ちょうど10年前のを同じ基準レーティングトップ20+A級棋士)で作ってみました。

年齢別の方がわかりやすい面もあるのでそちら基準で(名前の横のカッコ内は順位戦クラスレーティング順位です)

年齢棋士
50高橋道雄(A級/31位)
49
48谷川浩司A級/15位)
47
46
45
44
43
42
41
40佐藤康光(B1/6位)
39羽生善治名人/1位)丸山忠久A級/4位)森内俊之A級/9位)藤井猛A級/12位)郷田真隆A級/14位)
38深浦康市(B1/7位)
37木村一基A級/18位)
36行方尚史(B1/16位)三浦弘行A級/17位)
35
34久保利明A級/2位)
33
32
31
30松尾歩(B1/11位)
29山崎隆之(B1/5位)
28阿久津主税B2/13位)
27
26渡辺明A級/3位)
25
24
23広瀬章人C1/8位)戸辺誠B2/10位)
22佐藤天彦(C2/20位)
21
20豊島将之C1/19位)

タイトルホルダー

この当時の七大タイトル保有者は次の通りです。

羽生善治名人棋聖王座三冠なので不調と半ばマジ気味にネタにされてた時代ですね)/深浦康市王位:ちょうどこの時期広瀬章人王位戦を戦い広瀬が初タイトルを獲得します)/渡辺明竜王:敵なしの6連覇中)/久保利明棋王王将

アラフィフ

十七世名人谷川については多くを語る必要もないですが、50歳でA級を堅持していた高橋道雄については説明を。

昭和55年度(1980年度)は、今とはシステムが違うとはいえ1年度で8人もの棋士が四段に昇段し、かつその中で5名ものタイトルホルダー(高橋道雄、中村修島朗南芳一塚田泰明)を輩出するという将棋史上でも空前のビンテージイヤーとなりました。そこでついた名前が「55年組」です。ただ、彼らとほぼ同じ年齢の谷川浩司は彼らより4年も早くプロ入りしていたためか「谷川浩司と同じ世代」というくくり方にはされることがありませんでした。この辺は「実年齢でくくるのか」「プロ入り年度でくくるのか」というくくり方で「羽生世代」と大きく異る部分ですね(ありていにいえば「くくる側の願望や思惑」が出るところでもあります)。

さて、谷川には及ばないもの17歳18歳で早々に四段昇段した他の4人と比べると、高橋は一歩遅れて20歳で四段昇段となりました。将棋界は面白いもので、このわずかな昇段年齢の差がその後のキャリアで大きな差を生むことが知られていますが、高橋は他の誰よりも早く23歳で初のタイトルを獲得し、そしてやや早枯れの傾向のあった同期たちの中では一人熟年まで力を保ち、48歳でA級に復帰し52歳までA級にとどまりました。「棋界における世代」の一挿話として特筆した次第です。

羽生世代ポスト羽生世代

「ここから10年経っても脱落者ほとんどいねーよ!」

いやもう、さすがに呆れるしかないですよね、森内こそ順位戦から撤退してフリークラス転籍しましたが、10年後の表から名前が消えたとはいえ行方はB1にとどまっています藤井猛B2でまだまだ力強さを見せています。この分厚さと力強さが、20歳年下の豊島世代まで重い蓋になったのがよくわかると思います

アラサー

この時点ですでに、松尾山崎・阿久津(と橋本崇載)の4人は「もう若くないぞ、そろそろ一花咲かせないとあまり時間の余裕がないぞ」と言われ始めていたはずです。とはいえ、この4人でタイトル獲得どころか挑戦に届いたのさえ山崎1人、A級昇級すらままならないことになるとはまださすがに予測されていませんでした(松尾山崎A級に上がれず、橋本は1回、阿久津は2回昇級したもののすべて1年でB1に送り返されています)。それでも山ちゃんを諦めない。

20代前半

上記の通り、この年のこの直後に広瀬が初タイトルを獲得するのですが、その翌年羽生に奪い取られてしまます(なお「魂を抜かれた」のはさらにその4年後になります)。

もちろん天彦、豊島渡辺に続く新鋭としてひとかたならぬ期待はありましたけど、初タイトルはともに28歳のときでした。広瀬も含め30歳手前で「実力と実績の均衡が取れて充実の盛りを迎えた」のですが、特に豊島についてはそれでも「遅れてしまった」感はあります

そして渡辺明孤独

というわけで、10年前にさかのぼってみると、「渡辺孤独」により見えてくる部分があるのではないでしょうか。というかむしろ谷川浩司孤独」のほうが浮かんでしまうのかもしれないなこれ、とここまで書いて思いました。

2020-07-18

将棋界の現時点での世代表(プロ入り年別)

追記

元増田と同じくレーティング上位20人+A級棋士のみ(現役棋士169人中の上位22人)の集計です。

プロ入りの平均年齢(全現役棋士)は21.4歳です。

三段リーグ出来る前とか編入試験とか含んでるので三段リーグ突破限定すればもう少し低いとは思います

---

anond:20200718090944

ブコメプロ入り年別のほうがわかりやすそうという意見があったのでスプレッドシートでLEFT JOIN + CONCATする練習も兼ねて作った。

ソース将棋棋士一覧 - Wikipedia

プロ入り年棋士プロ入り時の年齢)
1985羽生善治 (15歳2月)
1986
1987佐藤康光 (17歳5月)
1988
1989
1990丸山忠久 (19歳6月), 郷田真隆 (19歳0月)
1991深浦康市 (19歳7月)
1992三浦弘行 (18歳7月)
1993久保利明 (17歳7月)
1994
1995
1996
1997木村一基 (239月)
1998
1999
2000渡辺明 (15歳11月)
2001
2002
2003
2004
2005広瀬章人 (18歳2月)
2006糸谷哲郎 (17歳5月), 佐藤天彦 (18歳8月)
2007豊島将之 (16歳11月)
2008稲葉陽 (19歳7月)
2009永瀬拓矢 (17歳0月)
2010菅井竜也 (17歳11月), 佐々木勇気 (16歳1月)
2011
2012斎藤慎太郎 (18歳11月)
2013千田翔太 (18歳11月)
2014
2015
2016佐々木大地 (2010月), 藤井聡太 (14歳2月), 大橋貴洸 (24歳0月)
2017
2018
2019
2020

将棋界の現時点での世代

レーティング上位20人+A級棋士

年齢棋士
50佐藤康光
49羽生善治丸山忠久郷田真隆
48深浦康市
47木村一基
46三浦弘行
45
44久保利明
43
42
41
40
39
38
37
36渡辺明
35
34
33広瀬章人
32佐藤天彦
31糸谷哲郎稲葉陽
30豊島将之
29
28菅井竜也
27永瀬拓矢斎藤慎太郎大橋貴洸
26千田翔太
25佐々木大地佐々木勇気
24
23
22
21
20
19
18
17藤井聡太

藤井聡太渡辺明豊島将之永瀬拓矢

現在の四強。

タイトル戦もほぼこの四人で回している。

藤井は既に大山康晴中原誠羽生善治といった「時代支配者」の系譜に連なることが確定している感がある。

40代

いわゆる羽生世代と、そのすぐ下の世代

30代後半から40代前半にかけてが大きく空白になっているあたり、羽生世代による長きに渡る支配の爪痕がうかがえる。

ただし羽生世代ももう50歳、さすがに衰えは否めないか

30代

羽生世代に対して孤軍奮闘していた渡辺を筆頭に、現在キャリアピークを迎えた脂の乗った棋士たち。

天彦・広瀬・糸谷らは「平成チャイルドブランド」と呼ばれた世代(もともと「チャイルドブランド」と呼ばれたのは羽生世代である)。

また豊島・糸谷・稲葉は「関西若手四天王」とも呼ばれた。

これまでは羽生世代に押さえ込まれ、ようやく自分たちの出番だと思ったら下から藤井が登場。

やはり渡辺の言うとおり、悲しきかな谷間の世代ということか。

20

次代を担うであろう若手グループ。といってもほとんど20代後半である

いまのところ永瀬が頭一つ抜けた感があるが、今後はまだ分からない。

藤井別にして、このグループが数年後には棋界の中心となる。

20代前半の有力棋士を挙げるなら増田康宏・近藤誠也・本田奎といったあたりだが、現時点で藤井に対抗できている感じはしない。

10

現在、全棋士含めても10代は藤井聡太しかいない。

羽生善治場合は同世代ライバルが多くいたが、藤井一人勝ちを収めるのだろうか?

anond:20200718001048

渡辺明は19歳で結婚して奥さんと息子と暮らすリア充フットサル競馬ぬいぐるみetc.とやたら多趣味で交友関係も広い。

真に孤独な戦いを貫いているのは豊島将之竜王名人コロナから他の棋士との研究会ほとんど行わず、自宅で専らコンピュータを用いて将棋研究をしていると言われている。

中2で三段になるもの渡辺藤井と違って中学生棋士にはなれず16歳でプロ入り。強い強いと言われながらタイトル挑戦に4度連続で失敗して5度目の挑戦で初獲得。

豊島?強いよね」でネット民ネタにされ、つけられたあだ名は「きゅん」。

コーヒーをこぼされたりカメラの前で一時間正座させられたりと不幸なアクシデントエピソードも多い。

はてブでも渡辺とは格が違うなるコメントに100以上も星をつけられてしまった。

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/95a8141405ad0b4e8953b10cc23abaa4

それでも彼は今、谷川羽生の前の天才)・羽生・森内(羽生最大のライバル)と並ぶ最強の称号竜王名人をもって将棋界の頂点に君臨している。

藤井を退けるとしたら彼であろうと豊島ファンは信じている。

2020-06-20

藤井聡太七段と少年漫画展開と過密日程

17歳の俊英・藤井聡太七段が将棋8大タイトルの1つ「棋聖」への挑戦権を史上最年少で獲得し、更にその第1局を熱戦の末に制したことで史上最年少タイトル獲得への期待がにわかに高まっています

COVID-19の影響で藤井七段も他の棋士たち同様かなりの過密日程を強いられていますが、その直近対局予定がかなりアツいことになっているのでご紹介するべく筆を執りました。

棋士レーティングについて

2018年3月にレートトップ10入りを果たし、その後もトップ10を維持してきた藤井七段ですが、実は今年4月自身初の1位に浮上しています。今期は彼にとってレート1位で迎える初めてのシーズンとなります

将棋棋士ELOレーティング トップ102020/6/19)
順位棋士段位レート今年度増減前年同月比
1藤井聡太七段19622167
2渡辺明三冠棋王王将棋聖1941-6-35
3永瀬拓矢二冠(叡王王座1940866
4豊島将之竜王名人1935 77
5羽生善治九段186018-20
6千田翔太七段1848623
7斎藤慎太郎八段1822635
8菅井竜也八段1821-2910
9佐々木大地五段18091925
10木村一基王位1802107

レート1900台が4人もいるのはかなり珍しい気がします。

実際今の将棋界はこの上位4人を中心に回っていると言っても過言ではありません。

第91期棋聖

本戦トーナメント
2020/2/29 〇 vs 斎藤慎太郎七段(現A級八段)
2020/3/31 〇 vs 菅井竜也七段(現A級八段)
2020/6/2 〇 vs 佐藤天彦九段A級・前名人

一次予選・二次予選を勝ち上がった藤井七段は16人から成る決勝トーナメント進出斎藤七段・菅井七段を連破します。この2人はこの年の順位戦で全棋士上位10しか所属できない「A級」への昇級を果たした若手のトップ棋士たちです。

藤井七段は続く準決勝佐藤九段撃破。彼もA級棋士の1人であり、前「名人」保持者です。

本戦トーナメント決勝(挑戦者決定戦)
2020/6/4 〇 vs 永瀬拓矢二冠(B級1組・レート3位)

迎えた挑戦者決定戦では永瀬二冠と対決。

永瀬二冠はそのストイック研究姿勢から軍曹」の愛称で親しまれていましたが、最近複数タイトルを獲得したことで「中尉」に昇進したそうです。(二冠で中尉なのか…)

永瀬二冠はかつてabemaTV非公式戦「炎の七番勝負」で藤井四段(当時)に唯一の黒星をつけた強敵ですが、公式戦では初手合い。相掛かりから形勢不明の終盤戦を藤井七段が制し、初タイトル挑戦・タイトル挑戦最年少記録を更新しました。

番勝負タイトルマッチ
vs渡辺明三冠A級・レート2位)
2020/6/8 〇 第1局
2020/6/28 第2局

そして迎えた初のタイトルマッチ将棋タイトル戦は和服で対局に臨む慣習がありますが、挑戦決定から開幕まで4日しかなかった藤井七段はスーツ姿で対局。今期日程の過密ぶりを象徴しています

第1局は相矢倉(初タイトル戦の開幕局で相矢倉純文学!)。

混戦模様のまま突入した終盤戦で見事な読み切りを見せた藤井七段が先勝。初めてとは思えない落ち着きぶりです。きみほんとに17歳か…?

棋聖戦は五番勝負なので3先です。第2局は藤井七段の和服が間に合うそうで、加えて先手番の渡辺棋聖がどのような作戦を用意してくるのか楽しみです。

33竜王

ランキング戦3組 決勝
2020/6/20 対局中! vs 杉本昌隆八段(師匠

藤井七段の過密日程は続きます本日6月20日も対局中です。相手師匠杉本八段!

竜王戦は参加棋士が上位から1組~6組に分けられ、それぞれの上位棋士決勝トーナメント進出する仕組み。杉本vs藤井師弟対決は2018年3月以来2度目。勝った方が決勝トーナメント進出というビッグマッチです。

杉本八段も通算8期にわたって1組で戦った経験のある実力者とはいえ行方九段菅井八段ら強敵を破っての決勝進出は素晴らしい快挙です。

第61期王位

白組リーグ
2020/2/18 〇 vs 羽生善治九段
2020/3/20 〇 vs 上村亘五段
2020/3/24 〇 vs 菅井竜也八段
2020/4/10 〇 vs 稲葉陽八段
2020/6/13 〇 vs 阿部健治郎七段
5勝0敗 1位

王位戦は少し特殊な棋戦です。

予選を勝ち抜いた棋士たち(+シード棋士)は「紅組」「白組」の2組に分かれて総当たり戦を行い、各組の1位同士が挑戦権を懸けて戦います

予選を勝ち抜き白組リーグに参加した藤井七段は5戦全勝で1位。

一方、紅組リーグにも全勝で1位となった棋士がいました。それは…。

挑戦者決定戦
2020/6/23 vs 永瀬拓矢二冠(5勝0敗・紅組リーグ1位)

つい先日棋聖戦の挑戦権を争ったばかりの永瀬二冠です。

藤井七段は20日に上記竜王戦3組決勝、永瀬二冠は21日に叡王防衛戦第1局(vs 豊島竜王名人)を21日に戦った直後となります

双方過密日程の中、藤井七段の連続挑戦なるか、永瀬二冠がリターンマッチを制すか、期待がかかります

第79期順位

B級2組 1回戦
2020/6/25 vs 佐々木勇気七段(連勝記録ストッパー

更にその2日後、藤井七段は順位B級2組の1回戦に登場します。過密すぎる。

将棋最高峰タイトル名人」を目指す上で避けては通れない重要な戦い。相手佐々木勇気七段。ところでこの名前に見覚えありませんか?

記憶力の良い方ならピンと来たはずですが、佐々木七段(当時五段)はかつて藤井七段(当時四段)の連勝記録を29でストップした男です。そうです、あの眼力の強い男です。

お互い段位が七段となり、2度目の対局。藤井七段にとってはリターンマッチです。

そしてこの戦い、もう一つ見どころがあって…

第78期順位戦(前回)

C級1組(上位2名がB級2組へ昇級)
1位 10勝0敗 藤井聡太七段
2位 9勝1敗 佐々木勇気七段

前回の順位戦、藤井七段は10戦全勝でC級1組からB級2組へと昇級を果たしました。

C級1組からは上位2名が昇級できますが、その時に2位だったのが佐々木七段です。

こういう背景を踏まえると、藤井七段だけでなく、佐々木七段にとっても、ついでに将棋ファンにとってもアツい展開が期待できるのではないでしょうか。

竜王戦3組決勝、abemaTVで中継中!

サッカー将棋も突然過密日程で再開するから両方のファンとしてはめちゃくちゃ忙しい…。

ファンも忙しいですが最も負担がかかるのは当然競技者なので、競技者の皆さんが適切なケアを受けられるよう祈るばかりです。

杉本八段 vs 藤井七段の師弟対決が行われている竜王戦3組決勝の中継はこちら!師匠気合和服です!

なお、解説の1人に最年少タイトル挑戦記録を藤井七段に更新されたばかりの屋敷伸之九段がいらっしゃいます

https://abema.tv/now-on-air/shogi

Twitter

https://twitter.com/Shogi_ABEMA

以上、ご確認のほどよろしくお願いいたします。

2019-05-09

将棋

豊島将之って人格好いいわね

佐藤天彦よりもアタシの好みだわ

応援するわ!

ところでアタシはチンこしゃぶり名人よ!

豊島ちゃん名人になったらアタシとも対局してくれないかしら?


みたいな時事ネタを書く仕事無い?

2018-12-27

羽生善治九段で学ぶ将棋棋士の段位・肩書き

去る12月20日・21日に行われた第31竜王戦番勝負第7局は広瀬章人八段の勝利に終わり、

4勝3敗で広瀬八段が羽生善治竜王から竜王」のタイトルを奪取しました。

これに伴い無冠となった羽生善治氏の肩書きが「九段」となることが連盟から発表されました。

なんで肩書きでこんなに騒ぎになっているのか?と訝っている方や、

そもそも仕組みが分からんという方のために、将棋棋士の段位・肩書きの付け方について解説していこうと思います

オタクなので門外漢の素朴な疑問に早口長文で答えてしまう)

肩書きの付け方・基礎編

以前も増田で書いたような気がするのですが、将棋棋士の段位は四段からスタートし、複数ある条件のいずれかを満たすと昇段します。

例えば四段の棋士場合

のうちいずれか1つを達成すれば晴れて五段に昇段です。

多くの棋士はこういった昇段規定に従って四段~九段の段位を肩書きとして名乗ります。なお、原則として降段はありません。

例:都成竜馬五段(2018/「順位戦C級1組昇級」により四段→五段昇段)

肩書きの付け方①

先程「多くの棋士」と書きましたが、例外があります。全ての棋士たちの中から勝ち上がり頂点に立ったタイトルホルダーたちです。

将棋界には数ある棋戦(大会)の中でも特に権威ある8つのタイトル戦があり、「8大タイトル」と称されています

これらのタイトルを勝ち取ったわずかな棋士けが段位ではなくタイトル戦の称号を名乗ることが許されるのです。かっこいい!

ただし、タイトル戦の称号肩書きとして名乗っている間(タイトルを保持している間)も昇段規定適用され続けるため、タイトルホルダーも内部的には段位があります

従って、今回の羽生九段のようにタイトルを全て失った場合、内部的に保持している段位を名乗ることになるわけですね。

例:佐藤天彦名人(「名人」保持者かつ九段
例:斎藤慎太郎王座(「王座」保持者かつ七段)

肩書きの付け方②

さて、数ある棋戦の中で上記の8大タイトルを制した者だけが特別称号を名乗るということはお分かりいただけたと思います

更にその上で8大タイトル間にも序列があり、それによって肩書きが変わることがあります

8大タイトルの細かい序列スポンサーとの契約金で決まるとされているため、契約内容によって序列は変動しますが、

基本的に「竜王」と「名人」が特に格上であり、肩書きとしても他タイトルより優先されます

以下が現時点の8大タイトル序列順)とその保持者・段位一覧です。

現在将棋界は8大タイトルを何人もの強豪棋士が分け合う戦国時代とされています

今期は豊島将之八段が王位棋聖の二冠を手にし「豊島将之二冠」と称されるようになりました。

このように、複数タイトル保持者の肩書きタイトル保持数(漢数字)+「冠」とするのが通例です。

例:羽生善治三冠2006王位王座王将を保持)
例:豊島将之二冠(2018/王位棋聖を保持)

しかし、複数タイトル保持者が「竜王」「名人」のいずれかを併せ持つ場合は「竜王」「名人」の肩書が優先されます

例:渡辺明竜王2015/竜王棋王を保持)

では「竜王」「名人」を併せ持った場合は?

一応は竜王が格上とされているので「竜王名人」と称されますが、名人戦を主催する新聞社の紙面では「名人竜王」になるとかならないとか…(大人の事情

例:森内俊之竜王名人2013/竜王名人を保持)

肩書きの付け方③:特殊事例

以上が棋士肩書きの付け方になりますが、ごく一部イレギュラーパターンがあります

「前竜王」/「前名人

将棋界の最高峰タイトルである竜王」と「名人」は、タイトル保持者が失冠してから1年間「前竜王」「前名人」を名乗る資格が発生します。

もつ最近まで知らなかったんですが、これらは準タイトル保持者として扱われ、通常の段位持ちに比べシード権など待遇も変わるそうです。

例:中原誠名人(1993)
例:羽生善治竜王(1990)

↑初タイトル竜王を失った後に名乗るも、その4ヵ月後に棋王を獲得し、以後27年間タイトル保持を続けたので超レア肩書き

永世称号

永世称号とは、8大タイトルのうち叡王を除く7つのタイトル戦において、連続または通算規定の回数以上タイトルを獲得した棋士に与えられる特別称号です。すげー難度高い実績解除みたいなもんですね。羽生九段は現行棋戦の永世称号をただ一人コンプしてます永世七冠)。

これらの永世称号原則引退後に名乗ることができますが、連盟に認められれば現役から名乗ることができます

例:中原誠永世十段(1994)
例:米長邦雄永世棋聖(1998)

【ここまでのまとめ】

将棋棋士肩書き(段位)は四段~九段だよ

・8大タイトルを獲るとそのタイトル称号肩書きになるよ

・8大タイトル複数獲った時は8大タイトル間の序列肩書きが決まるよ

・前竜王、前名人永世称号など例外あるよ

羽生善治氏のケース(2018)

さて、前置きが長くなりましたが本題です。

今期竜王戦で敗れて無冠となった羽生善治氏の肩書きには以下の選択肢があります

①「九段

②「前竜王

永世称号の襲位

九段

これが最も自然もので、実際羽生氏本人もこの現段位を肩書きとして名乗る意向とのこと。

羽生氏が九段に昇段したのは1994年ことなので、九段昇段から実に四半世紀を経て初めて名乗ることになるわけですね。

さすが将棋星人はスケールが違うぜ。

②前竜王

Twitterとか見てると「『前』などという未練がましい肩書きを望むのはバカ政治屋経営者だけ!羽生さんともあろう方が選ぶわけがない!」みたいな人がぼちぼちいたので、その手に持ってる板でググればいいのになぁって思いました。

既に述べていますが、羽生九段はかつて初タイトル竜王を失った後、次のタイトルである棋王を獲得するまでの4ヵ月間ほど「前竜王」を名乗っています

従ってこのレア肩書きが再度生まれるかどうかは(一部の)将棋ファン的にはそこそこ注目どころだったんですよ!!(そうか?)

そもそも「前竜王」の肩書きはさほどネガティブものではなく、以前はそれなりに使われていました。初代竜王島朗九段、現連盟会長佐藤康光九段竜王失冠後の1年間「前竜王」を名乗っています

(まあ敗北が前提の称号なのであんまりカッコがよろしくないというのは分かります

しかし、近年は資格のある棋士でも「前竜王」を名乗ることはなくなりました。

一説によると、1998年度に竜王名人を失い「前竜王・前名人」を名乗る資格を得た谷川浩司九段が双方を辞退し、通常の「九段表記選択したことが影響を与えているのではないかと言われています

さすが光速流は度量が違うぜ。

永世称号の襲位

原則引退後に名乗るものなので最も可能性は低かったものの、最も浪漫溢れる選択肢でした。以下、羽生九段の持つ永世称号一覧です。

称号棋戦永世称号獲得条件羽生九段の戦績
永世竜王竜王戦5連覇 or 通算7期通算7期(2連覇)
十九世名人名人通算5期通算9期(3連覇2回)
永世王位王位戦5連覇 or 通算10通算18期(9連覇)
名誉王座王座5連覇 or 通算10通算24期(19連覇)
永世棋王棋王戦5連覇通算13期(12連覇)
永世王将王将戦通算10通算12期(6連覇)
永世棋聖棋聖戦通算5期通算16期(10連覇)
永世七冠ぜんぶぜんぶとるぜんぶとった

さあ好きなのを選べ!!!

(おまけ)

名誉NHK杯選手権者」←羽生九段しか持ってない激レア称号NHK杯通算10回優勝)

国民栄誉賞」←すごい

将棋星人」←すごい?

羽生善治といえばやはり言わずと知れたレジェンドであり、無冠に後退してもなおこれほどまでに豊富肩書き候補を持つという点が、人々の厨二心もとい興味関心をかき立てて話題となっているのではないでしょうか。

だってみんなかっこいい称号とか考えるの好きでしょ?

さて、今日のところは以上です。

最後に、

広瀬章人竜王、8期ぶりのタイトル獲得おめでとうございます

羽生善治九段、七番勝負お疲れ様でした!

インターネットの片隅から両者の今後のご活躍を祈念しております

あ、はてなの皆さんには良くも悪くも本年はお世話になりました。よいお年をお迎えください。

FAQ

Q. 九段+実績加味して「十段」でいいじゃん?

実を言うと「十段」という肩書きはかつて実在しました。昔、将棋棋士の最高段位は八段だったんです。

そこにタイトル戦として「九段戦」が設立され、その勝者が称号九段」を名乗ったのですが、その後「段位としての九段」も定められ、両者が並立する時期が続きました。

その後「九段戦」は「十段戦」になり、称号十段」が生まれ、その「十段戦」が発展解消という形で最高峰棋戦「竜王戦」が生まれたのです。

こういった経緯があるため、羽生九段がすぐに「十段」を名乗れるかというと、連盟内部のみならずかつての「十段戦」主催者(読売新聞社)など関係各所との調整が必要になるので難しいかもしれません。

将来的に新たな段位として定められる可能性は無きにしも非ずといったところか。でも響きがかっこいいね!

Q. 「羽生七段」と「羽生八段」は幻に…

これは肩書きの付け方①でも述べましたが、

棋士タイトルを保持して称号を名乗っていても昇段規定適用されているので、タイトル保持中も規定を満たせば昇段します。

従って「六段から七段八段をすっ飛ばし九段へ」という認識であれば誤りです。

「七段・八段だった時期はあるが、名乗る機会がなかった」というのがより正確です。

あくまで「既に持っている九段を名乗る」のであって「無冠になったか九段昇段」ではないので。

羽生善治・昇段履歴

昇段日段位適用規定
1985年12月18日(15歳)四段13勝4敗:史上3人目の「中学生棋士
1988年4月1日17歳五段 順位戦C級1組昇級
1989年10月1日(19歳)六段竜王挑戦
1990年10月1日(20歳七段前年の竜王位獲得による昇段
1993年4月1日(22歳)八段順位戦A級昇級
1994年4月1日23歳)九段タイトル3期獲得

23九段ってのもなかなかとんでもねえですが、実は今の最年少九段昇段記録保持者は渡辺明棋王(当時21歳)です。まあ昇段規定改定も多少影響してますが。

Q. わざわざ大々的に発表しなくても…

単純に注目度が高い案件だったので話題作りもあるでしょうけど、

一発どーんと発表しておけば今後の報道における敬称表記も混乱しないのでまあよいのでは。

Q. 羽生さんほどの偉大な棋士に今更肩書きなど必要だろうか?

まあ一般的にはそれでいいんですけど、実際の棋戦運営にあたっては肩書きがそのまま棋士序列になるのでひとまずは何か決めないといかんのですよ。

例えば今回の三択①「九段」、➁「前竜王」、➂永世称号襲位の場合

序列は上から➂➁①となります。この序列に従って対局時の上座下座を決めたり、上手下手(うわて・したて)を決めたりするわけですね。

これに加えて、前竜王永世称号襲位者は一部棋戦でシード権が与えられたりもするので、連盟的には「今更肩書きなんて必要ない」というわけにはいかないんですね。

Q. 連盟発表の「羽生善治呼び捨て)」で草

連盟の内部事情はあまり分かりませんが、インターネット上では見出しネタバレを避けた説が囁かれていますね…

いやそれにしても「当連盟所属棋士羽生善治」とか単に「棋士羽生善治」とかいろいろ書きようあったでしょとは思った。

そういえば以前「団体職員」という肩書きTVクイズ番組に出演した十八世名人(当時八段)がいてぇ…一体何内俊之なんだ…

Q. 羽生さん弱くなってしまったん?

今期の彼の調子を鑑みれば今回の竜王戦、敗れはしたもの好調広瀬八段相手に最終局まで持ち込んだのはある意味驚きだなというのがいちファンとしての個人的感想です。ただ、全盛期と比べるとさすがに衰えは否めませんが、まだまだ強豪の一角であることは間違いないです。

参考に12/26時点のレーティング上位10名置いておきますね。

最年少は16歳(藤井

最年長は48歳(羽生

平均年齢は29.2歳

順位氏名年齢レート今年度増減前年同月比
1広瀬章人竜王31192793153今期絶好調で唯一の1900台と1位をキー
2渡辺明棋王34187410479昨年の不調から完全に復活
3豊島将之二冠(王位棋聖281872-7-8二冠を獲得し戦国時代を一歩抜け出すか
4永瀬拓矢七段26185211そろそろ初タイトルが欲しいところ
5藤井聡太七段16185155115みほんとに高校生?周回プレイしてない?
6羽生善治九段481837-1014将棋つよつよおじさん@無冠
7佐藤天彦名人3018345124名人3期目だがそろそろ複数タイトルも…
8千田翔太六段2418255539今期8割超の高勝率
9斎藤慎太郎王座2518182612今期は初タイトルを獲得し飛躍の年に
10稲葉陽八段301793-48-20一昨年の名人挑戦者も今期は苦戦

2018-08-30

今年に入ってからタイトル戦の先手勝率が異常

2018年 1月 7日	●	久保利明	豊島将之	○	第67期王将戦
2018年 1月27日	●	豊島将之	久保利明	○	第67期王将戦
2018年 2月 3日	○	久保利明	豊島将之	●	第67期王将戦
2018年 2月12日	○	渡辺明 	永瀬拓矢	●	第43期棋王戦
2018年 2月19日	●	豊島将之	久保利明	○	第67期王将戦
2018年 2月24日	○	永瀬拓矢	渡辺明 	●	第43期棋王戦
2018年 3月 6日	●	久保利明	豊島将之	○	第67期王将戦
2018年 3月11日	○	渡辺明 	永瀬拓矢	●	第43期棋王戦
2018年 3月14日	●	豊島将之	久保利明	○	第67期王将戦
2018年 3月20日	○	永瀬拓矢	渡辺明 	●	第43期棋王戦
2018年 3月30日	○	渡辺明 	永瀬拓矢	●	第43期棋王戦
2018年 4月11日羽生善治	佐藤天彦	●	第76期名人戦
2018年 4月19日佐藤天彦	羽生善治	●	第76期名人戦
2018年 5月 8日	○	羽生善治	佐藤天彦	●	第76期名人戦
2018年 5月19日	○	佐藤天彦	羽生善治	●	第76期名人戦
2018年 5月29日	●	羽生善治	佐藤天彦	○	第76期名人戦
2018年 6月 6日	○	豊島将之	羽生善治	●	第89期棋聖戦
2018年 6月16日	○	羽生善治	豊島将之	●	第89期棋聖戦
2018年 6月19日	○	佐藤天彦	羽生善治	●	第76期名人戦
2018年 6月30日	○	豊島将之	羽生善治	●	第89期棋聖戦
2018年 7月 4日	○	菅井竜也	豊島将之	●	第59期王位戦
2018年 7月10日	○	羽生善治	豊島将之	●	第89期棋聖戦
2018年 7月17日	●	羽生善治	豊島将之	○	第89期棋聖戦
2018年 7月24日	○	豊島将之	菅井竜也	●	第59期王位戦
2018年 8月 1日	○	菅井竜也	豊島将之	●	第59期王位戦
2018年 8月22日	○	豊島将之	菅井竜也	●	第59期王位戦
2018年 8月30日	○	菅井竜也	豊島将之	●	第59期王位戦

先手が20勝7敗。王将戦除くと19勝2敗。

2018-03-01

将棋の一番長い日

明日順位戦A級最終日です

名人挑戦が羽生竜王久保王将豊島八段か

降格するのは渡辺棋王深浦九段三浦九段行方八段か

有給休暇を取りました

追記

挑戦権争いが言葉足らずでした。5ちゃんから持ってきました

A級11回戦【浮月楼

豊島 将之八段(6勝3敗)広瀬 章人八段(5勝4敗)
久保明王将(6勝3敗)深浦 康市九段(4勝5敗)
稲葉 陽八段(5勝4敗)行方 尚史八段(3勝6敗)
佐藤 康光九段(5勝4敗)屋敷 伸之九段(2勝7敗)
渡辺棋王(4勝5敗)三浦 弘行九段(4勝5敗)


[A級成績一覧] ( )内は順位

【6勝3敗】久保(9)、豊島10

【6勝4敗】羽生(2)

【5勝4敗】稲葉(1)、広瀬(4)、佐藤康(8)

【4勝5敗】渡辺明(3)、深浦(7)、三浦11

【3勝6敗】行方(5)

【2勝7敗】屋敷(6)

【挑戦権争い(挑戦1人)】

4敗までの計6人に名人挑戦の目があります

久保利明王将豊島将之八段は、11回戦で一方が勝ち、一方が敗れれば、勝者が名人挑戦となります。両者とも勝った場合は、久保王将豊島八段が7勝3敗で並び、この2人でプレーオフが行われます

久保王将豊島八段がともに敗れた場合は、羽生善治竜王広瀬章人八段を含めた4人のプレーオフが確定。さら稲葉陽八段と佐藤康光九段も勝った場合は6人によるプレーオフとなります

なお、3人以上のプレーオフは、下位の2人がプレーオフ1回戦を行い、その勝者が上位の棋士と順に対戦していく「パラマス式トーナメント」で挑戦者を決めます。(上位・下位は順位で決まります

残留争い(降級3人)】

屋敷伸之九段の降級がすでに決まっていますさらに、渡辺明棋王深浦康市九段三浦弘行九段行方尚史八段の4人うち、2人が降級となります行方八段を除く3人は自力残留の目があります渡辺三浦戦は直接対決です。

渡辺棋王が勝った場合

渡辺棋王残留」と「三浦九段の降級」が決定。深浦九段が敗れて行方八段が勝った場合深浦九段が降級、それ以外は行方八段が降級。

三浦九段が勝った場合

三浦九段残留」と「行方八段の降級」が決定。残り1枠は深浦九段の結果次第となり、深浦九段が勝てば「深浦九段残留渡辺棋王=降級」、敗れれば「深浦九段=降級、渡辺棋王残留」。

2017-07-01

続・藤井聡太四段で学ぶ「観る将」入門

こんにちは。ほんの思いつきで書いた「観る将」入門記事https://anond.hatelabo.jp/20170623083815 )が怒涛のブクマいただきましたこと、厚く御礼申し上げます増田で1000どころか20もついたことないのに!

なるべく平易に、軽く、それでいて軽薄にならないように書いたつもりでしたが、「本当にこれで分かりやすいか?」「飯の話しかウケないんじゃないか?」などの葛藤もあったのでこの反響は素直に嬉しく思います

Twitterを見ると将棋漫画の作者様や本職の将棋ライター観戦記者の皆さんに怒涛のごとくシェアされており、極度の緊張で1日8時間しか眠れません。

さて、29連勝ですね。何が何やら分かりませんが、ともかく未知の領域です。

対局の雑感や今後の展望を語るとともに、前回の記事にいただいた質問等、私に分かる範囲でお答えしたいと思います

対局雑感

仕事の合間に中継をチラチラ見ていました。夕方頃には増田四段が勝ちやすそうな局面に見えたのですが、その後の藤井四段の角と桂を生かした反撃が鮮やかでしたね。

私のへっぽこ棋力では増田優勢に見えても、プロ的にはまだまだ難しかったということなのでしょう。

増田四段も持ち味を見せましたが中終盤にかけて藤井四段の強さが際立ったといった印象です。はてなの皆さんはもちろん増田推しでしたよね?残念でした~。

Q.将棋ことなんてわかんねえよ!そんなことより飯はどうだったんだ飯は!

竜王戦本戦比較的持ち時間が長い(各5時間)ので、昼夜2回の出前チャンスがあります

藤井四段→昼:豚キムチうどん 夜:五目炒飯品切れのためわんたんめん変更

増田四段→昼:ミニとんかつ定食 夜:ヒレカツ定食ライト(+肝吸い)

不本意な注文変更を強いられた藤井四段に対し、増田四段が気合のカツ連投で藤井四段の作戦変更を咎めていく展開となりました。

しか藤井四段が得意の麺類に切り替えて頑強に抵抗したため、最終的には増田四段にミニ+ライトという軽い打撃のツケが回ってきた格好です。

歩は将棋で最も重要な駒だが、歩のみで勝つことはできない。同様に、ジャブだけで飯対決には勝てないのだ。

ちなみに私が確認した中で藤井四段は本対局を含めこれまでに出前を22回、うち15回麺類を含むメニューを注文しています特に多いのはうどん(6回)や日本そば(6回)などの和麺であり、みそ煮込みうどんなど熱々系の注文も辞さない構えです。

これは「鍋焼きうどんも好きなのですが、熱いので、冷めるまで待っていると15分ぐらいかかる」とうな重転向した加藤一二三 九段とは対照的ですね。

前回いただいたコメント

いつも対局料とか賞金見ると将棋界のお金の回り方がよくわからなくて、スポンサーってどのくらいいてスポンサードすることでどれだけ利益があるのだろう

これはプロスポーツにおけるスポンサーと似たような話ですね。

スポーツにも囲碁将棋にも言えることですが、競技へのスポンサードは広告だけでなく文化振興という意味合いも少なからずあるので、スポンサードすることでこれくらい利益がありますというような定量化が難しい側面があります

分かりやすい例としては出版関連事業でしょうか。報道各社は主催する棋戦の観戦記等を出版したり、本紙に棋譜掲載しています。またマイナビ女子オープン主催するマイナビも棋書を多く出版しています

このような事例はスポンサードしたことによって直接的な利益を得ているとも言えるでしょう。

ちなみに日本将棋連盟の「棋戦一覧」( https://www.shogi.or.jp/match/から各棋戦の「詳細情報」を見ると主催者スポンサー)が分かります

主要タイトル戦は全国紙主催地方紙の共催が多いですね。他には囲碁・将棋チャンネルNHKなどの放送局リコーなど民間企業加古川市倉敷市など自治体主催のものもあります

日本将棋連盟収益が実際どうなってるのか気になる!という方は財務諸表https://www.shogi.or.jp/about/information_disclosure.html )などを眺めてみるのも面白いかもしれませんね。

プロ入り28連勝の棋士を5敗もさせる3段リーグかい地獄があるのか」

「あまり注目されないけど、プロ無双している藤井くん奨励会ではそれなりに負けている」

「これほどの怪物に5敗も土を付ける三段リーグが如何に地獄の魔境かってことだよな」

そうなんですよね。前回もさらっと説明しましたが、三段リーグは年に2回開催され、奨励会三段たちが各18局を戦って上位2名が四段昇段・プロデビューを果たすという地獄リーグ戦です。

これまでに60回開催されたものの未だに全勝で突破した三段はおらず、現時点では16勝2敗(5名)が最高成績です。

中には11勝7敗で辛くも昇段した者(2名)もいれば、14勝4敗という好成績を挙げながら昇段を逃した者(4名)[注1]もおり、年齢制限と相まってこの辺りも地獄とされる所以でしょう。

三段リーグで5敗してるってことは、やっぱこの連勝中に飛躍的に強くなってるってことだろうか。それともいまの三段に化け物の卵がひしめいているのか。

これはどちらとも言えるかなと思います。前回の記事でも触れましたが、棋士の力のピークは30代半ばまでとされており、例えばそれを過ぎた棋士が絶賛修行中の三段とまみえれば敗れることもあるでしょう。

新人王戦では都成竜馬三段(現四段。イケメン)が奨励会員でありながら優勝を勝ち取った例もありますインターネット対局や棋譜データベースの発達で研究障壁が下がった点も無視できません。

このあたりは現役棋士大平武洋六段のブログhttp://oohira243.blogspot.jp/2017/06/blog-post_36.html )が現場の肌感覚として参考になる気がします。

ただ、その一方で藤井四段が急速に成長しているのもまた事実だと思います。ここで彼の奨励会時代の成績を見てみましょう。奨励会ウォッチャー情報の継ぎ接ぎなので多少ずれがあるかもしれませんがご了承ください。

段級位勝敗規定
6級○○○●○○●○○○○昇9勝2敗
5級○●○○○○○●○●●○○●○●●○●●○○●●○○○●○○●○○○●○昇9勝3敗
4級○●●○○○○○○昇6連勝
3級○●●○●●●●●●B○○○A●○○○○○○昇6連勝
2級●●○○●●○●○○○●●○○○●○○●○●○●●○○●○○○○○●○●○昇9勝3敗
1級○●●○○○○○○●○○○○○昇12勝3敗
初段○●○●○●○●●●○●●●○○○○○●●○○●○休○○○●○昇12勝4敗
二段●●○●○●●●○●○○●○○○○○○●○●●○●○○○●○○○昇14勝5敗
三段リーグ○●○○○○○●○●○○○●○○●○13勝5敗・1位

通算208局132勝76敗(.634)

ご覧の通り昇級・昇段ペースはかなり早い部類ですが、プロデビュー後の彼ほど圧倒的ではない、というのはお分かりいただけるでしょうか。

3級まではあっという間でしたがここで少し足踏みをします。6連敗してるんですよ!6連敗!【アルファベットの補足:成績が悪いと「B」を取り、Bを保持した状態で再びBを取ると降段級、という仕組みです。規定の成績でA(通常の状態)に復帰します。】

初段・二段あたりが顕著ですが、昇級・昇段直後に少し黒星を重ねたのち、ぐっと勝率を上げていますカテゴリが上がるごとに成長曲線を描いてきているというわけですね。

二段で白星を重ね始めた頃から新たな成長曲線を描き始め、その勢いのまま三段リーグ突破し、プロデビューしたとすれば…?今の大ブレイクも決して不思議ではないのかもしれません。いや十分不思議だけども。

"三浦弘行九段騒動で揺れる将棋界に一時の安寧をもたらしました。"三浦九段冤罪被害者である事を今や将棋連盟も認めているのでここだけ訂正して欲しい

この件に関しては記事の本題から外れていたので詳細への言及を避けただけであり、三浦九段嫌疑をかける意図がないことは当該段落から十分読み取っていただけると思っています

したがって文章自体の訂正はしませんが、三浦九段への処分は明確に不当であったという事実はこの場で申し添えておきます。(「訂正」ではなく「補足」してほしい、という趣旨ならば理解できます。)

連勝記録が28、24、22、20、18と全て偶数になってますが何故ですか

ほんとだ……え、ほんとだ!すごい!気づかなかった!ちなみに18の下は17連勝(佐藤天彦佐藤康光丸山忠久)なのでたぶん偶然です…たぶん…。

おやつがどうのこうのいわれるのってニコニコが乗り込んできてからって印象だったけどそんなことないのかな

これはニコニコドワンゴ)がというより、インターネット環境それ自体の普及がもたらした現象であると言えるでしょう。もともと観戦記などで棋士食事話題にあがることはありましたが、

ネット中継が始まると盤上・盤外問わずあらゆる情報コンテンツとして逐一伝えられるようになりました。中でも画像情報は非常に訴求力が大きい。その流れにぴったりハマったのが食事おやつではないでしょうか。

各々の将棋スキルが観戦の満足度を左右していた将棋中継において、初心者上級者も一緒になってあれが旨そう!これが旨そう!と楽しめるものができたということは、昨今のブーム形成にとって非常に大きかったと私は思います

このあたりは観戦記者松本博文氏の記事https://cakes.mu/posts/12986 https://cakes.mu/posts/16722 )が参考になります

羽生さんの、タイトル持ち22連勝が偉業すぎる」

羽生さんの四冠時18連勝の対戦相手空前絶後

どちらも圧巻の記録ですね。四冠時の18連勝(2005~2006)を例にすると

日付勝敗先後氏名棋戦
9月10日藤井猛第64期順位戦 A級 3回戦
9月12日佐藤康光第46期王位戦 タイトル戦 第6局
9月16日佐藤康光第53期王座戦 タイトル戦 第2局
9月21日佐藤康光第46期王位戦 タイトル戦 第7局
10月1日佐藤康光第53期王座戦 タイトル戦 第3局
10月6日鈴木大介第64期順位戦 A級 4回戦
11月25日谷川浩司第64期順位戦 A級 5回戦
12月2日井上慶太第77期棋聖戦 最終予選 1回戦
12月11日中村修第55回NHK杯本戦 3回戦
12月14日郷田真隆第64期順位戦 A級 6回戦
1月12日佐藤康光第55期王将戦 タイトル戦 第1局
1月16日久保利明第64期順位戦 A級 7回戦
1月19日佐藤康光第55期王将戦 タイトル戦 第2局
1月24日先崎学第19期竜王戦 1組 ランキング戦 1回戦
1月26日佐藤康光第55期王将戦 タイトル戦 第3局
1月30日村山慈明第77期棋聖戦 最終予選 2回戦
2月1日佐藤康光第64期順位戦 A級 8回戦
2月12日谷川浩司第55回NHK杯本戦 準々決勝

NHK杯戦の日付は放送日)

竜王戦1組(全棋士上位16名のクラス

順位戦A級(全棋士上位10名のクラス

王位戦王座戦王将戦(全棋士参加棋戦を勝ち抜いた1名とタイトル防衛戦)

以上の5棋戦で驚異の14勝(!)を挙げています。ちなみにそのうち8勝を挙げた相手佐藤康光ですが、当時の彼はA級に所属し、棋聖タイトルを保持し、王位王座王将の3棋戦全てを勝ち抜いて羽生四冠への挑戦権を得た強豪中の強豪です。

その他の棋士たちも皆当時の一線級ばかりです。もう何が何だかわかりません。一体何なんだよ。将棋星人かよ。

Q.で、藤井四段の次の相手は?

次の対局は前回と同じ竜王戦決勝トーナメント2回戦!勝てば77万円!

https://www.shogi.or.jp/match/ryuuou/30/hon.html

相手佐々木勇気五段(4組予選優勝)です。ジュネーブまれ埼玉育ち、ピュアで熱い好青年です。レーティングは1779で全棋士中14位。(2017/7/1)

昨年藤井四段が最年少(13歳2ヶ月)で奨励会三段となってちょっとした話題になりましたが、実はそれまでの最年少三段記録保持者(13歳8ヶ月)が彼、佐々木勇気です。

1回戦の増田四段と同じく16歳でプロデビュー竜王戦4~6組予選は若手の登竜門であり、若手有望株はやはりデビューが早い傾向にありますね。

そうした経緯もあってか、彼自身藤井四段に対しては胸に秘めたものがあるのかもしれません。

叡王戦藤井聡太四段vs梶浦宏孝四段)では定刻前の対局室に現れて並外れた存在感を放ち話題になりました。おそらく彼は秘めてもバレるタイプですね。(参考: http://www.nicozon.net/watch/sm31378949

そしてこの二人がいつ戦うのか?という話になるわけですが…なんと明日です!

https://www.shogi.or.jp/news/2017/06/72_12.html

将棋連盟ライブの他にもニコニコ生放送AbemaTVで中継されます日曜日なので視聴者数がすごいことになりそうですね。

いい機会なので将棋よく分からない…という方も少し覗いてみてはいかがでしょうか。おすすめ時間帯はお昼前と夕方です。昼前にはどういう戦いになるかがおおよそ定まり、昼食予想でコメント欄が賑わいます

また夕方以降は一手一手が形勢を左右するスリルがあり、飯だけでない真剣勝負の一面を垣間見ることができるでしょう。

土曜日ですね

本当は昨日書き上げるつもりでしたが、プレミアム残業フライデーで無理でした。

藤井四段の連勝はいずれ止まります。それは明日かもしれないし、ひょっとしたらあと何ヶ月も続くかもしれません。それまでの間、将棋界の外をも巻き込んだ狂騒を楽しみたいと思います

ちなみに私の今日の昼食はベーコンを大量に入れたペペロンチーノでした。シンプルで奥深い棒銀のような料理ですね。では。

[注1]14勝で昇段を逃した4名は全員その後のリーグで四段昇段を果たしているため、14勝できるほど強ければいずれは上がれるとも言えます。4名の中にはあの豊島将之八段も!

2017-06-23

藤井聡太四段で学ぶ「観る将」入門

ついにやってしまいましたね。藤井聡太四段がプロデビューから負けなしの28連勝を飾ったことで将棋界のみならず大きな話題になっています

ここまでくるともう勝つ度にニュースとなり全国を駆け巡るので、嫌でも将棋話題を耳にする人も多いでしょう。

ただ将棋界・将棋プロ制度一般的にはあまり知られていない側面も多い業界です。

そこで将棋プロ制度を全くご存知ない人のためにFAQ形式で学んでいく増田を書きました。藤井四段のみならず将棋界がニュースになった時に一役買えたら何よりです。

Q.藤井くんってデビューしたてなのにもう「四段」なの?早くない?

A.

この疑問についてはプロへの道程から説明しなければなりません。

将棋プロ棋士になるには日本将棋連盟棋士養成機関・新進棋士奨励会通称奨励会」)に入会するのが最も一般的ルートです。

奨励会に入会すると、師匠推薦などで多少の上下はあります基本的には6級が与えられ、他の奨励会員たちと対局して昇級・昇段を目指していきます

ちなみに奨励会の6級はアマチュアの四段に相当すると言われています。これは地方アマ大会であれば上位を狙える棋力です。

そうして6級~1級~初段~二段と昇級昇段を繰り返し、三段に到達した奨励会員は同じく三段の奨励会員たちを集めた「三段リーグ」という地獄、もといリーグ戦に参加します。

半年をかけて行われるこの三段リーグの上位2名が「四段」に昇段し、晴れてプロデビューとなります

藤井聡太くんも上記のルートを辿って最年少で三段に到達し、三段リーグ初参加で1位(13勝5敗)となって四段昇段・プロデビューを果たしました。

まり将棋界では四段からプロ棋士キャリアの始まりなのです。

Q.っていうかそんな強いのにまだ四段なの?昇段の条件ってどうなってんの?

A.

プロ棋士の段位はレーティングのように上下しないので、確かに棋力を示すものではありますが、それと同時に積み重ねたキャリア・実績を示すものでもあるというのが私個人見解です。

したがって、今現在勝ち星を挙げているからといってすぐ段位に反映される類のものではありません。

プロ棋士の昇段規定については連盟サイトに詳しくまとめられています

https://www.shogi.or.jp/match/dan_provisions/

いきなりこんなん見せられてもよーわからんという方のために解説すると、昇段条件には大きく分けて2種類あります

【1】棋戦成績

棋戦(大会)での成績に伴う昇段です。

「〇〇戦×組昇級」「◎◎ランキング戦2回連続昇級または3回連続優勝」「全棋士参加棋戦優勝」「タイトル挑戦」などと書いてあるものです。

デビューしたての四段でも勝ち続けてタイトルマッチに挑戦すれば五段になれますし、

将棋最高峰タイトルの「竜王」に挑戦すれば七段、「竜王」奪取に成功すれば八段へジャンプアップすることも可能です。

これらの条件を達成すれば昇段に値するというのは、詳しくない方でもなんとなくお分かりいただけるかと思いますイメージとしては「J2だけど天皇杯で優勝したのでJ1に昇格!」みたいな感じです。違うか。

【2】勝数規定

段位への評価を難しくしているのがこの勝数規定存在ではないでしょうか。

「●段昇段後公式戦***勝」とあるのがそれです。

タイトルや優勝に縁がなくとも、公式戦で勝ち星を重ねればいずれは昇段が(理論上)可能です。

これはつまり勝率が.333の四段でも200敗して100勝すれば五段になれるということでもあり、純粋な強さを示しているとは言えないでしょう。

ただ、先日の加藤一二三 九段のように成績による強制引退制度がある以上、脚光を浴びることはなくとも安定して勝利を積み上げる棋士への評価軸として、勝数規定一定機能果たしていると私は考えます

ちなみに勝数規定のみで九段に達した棋士ゼロ、八段に達した棋士はこれまでにわずか6名しかいません。彼らは皆スターとなる機会は少なくとも、安定して長く勝ち続けてきた棋士たちです。

棋士の段位と実力は、上記2つの評価軸や勝率、現役生活の長さなどの要素をバランスよく取り入れたうえで語られるべきでしょう。

Q.段位については分かったが、もっと分かりやすい強さランキングとかないのか?

A.

有志のELOレーティングサイトがあります

http://kishi.a.la9.jp/

レーティング」→「棋士ランキング」と進み、現在トップ10を見てみましょう。(2017/6/22)

順位名前レート増減
1佐藤天彦名人18832
2羽生善治三冠棋聖王位王座186918
3豊島将之八段185513
4稲葉陽八段18412
5菅井竜也七段184137
6久保利明王将1834-4
7渡辺明竜王棋王1832-27
8永瀬拓矢六段1802-7
9斎藤慎太郎七段179930
10糸谷哲郎八段1784-14

このランキングであればおおよそ世間的な評価と近い結果が得られるのではないかと思います。ここ数年で羽生を除く羽生世代棋士たちが一斉に順位を下げ、若手強豪がトップ10に多く名乗りを挙げていますね。

いよいよ本格的な世代交代を感じさせるランキングです。

では藤井聡太四段のレーティング増減も見てみましょう。新人四段のレーティング初期値は1500です。

年月順位レート増減
2017年6月35169262
2017年5月49163035
2017年4月61159534
2017年3月77156125
2017年2月87153627
2017年1月9715096
2016年12月1041503-

わず半年で35位へジャンプアップしています。まあ公式通算28勝0敗なので当然ですが。

ちなみにこのサイト、対局情報のみならずレーティングに基づく期待勝率や両者の対戦成績(2001年度以降に限る)も見られるというデータ厨垂涎のサイトとなっています

盤面データを見ながら観戦するのも面白いのですが、このように棋士たち自身データを見ながら観戦するのも…こう…非常に…楽しい…です…フフ

「でもソフトには勝てないんでしょ?」とすぐ言いだす人にはこういう対人競技としての面白さがあまり理解されないのでちょっと寂しいですね…。

Q.藤井四段、強いのは分かるんだけどデビューから負けなし28連勝はちょっと話ができすぎじゃない?

A.

できすぎです。(断言)

はいえ、はてな推薦図書ヒカルの碁」をお読みになった皆さんならお分かりの通り、碁でも将棋でも各人の棋力がどの段階で成長するかはなかなか推し量りにくいものです。

碁会所巡りや洪秀英との戦いを経て短期間に急成長を遂げた進藤ヒカルのように、三段リーグからプロデビューにかけて藤井四段の棋力が更にワンランクアップしたと考えるのもさほど不自然ではないように思います

何より彼は奨励会時代から注目されていたので、先輩棋士からの教えを得る機会も多くあったのではないかと推測します。才能と環境バランス良く備わった結果が今こうして表れているのではないかなと、いちファンとしては感じています

Q.こんな大ニュースなっちゃった話題作りのために手を抜いてる棋士絶対いるでしょ…

A.

いるともいないとも断言できませんが、棋戦は基本的トーナメント方式であり、勝てば勝つほど収入(対局料)が入ります

また、藤井四段は新人なのでトーナメントの最下層からスタートです。

たとえ頂点まで勝ち進むことは難しくとも、目の前の予選1回戦・2回戦をわざわざ連盟話題作りのためにみすみす逃す棋士いるかというと…正直ちょっと考えにくいです。特に藤井四段と当たる可能性の高い若手棋士たちなら尚更です。

私も一部の棋譜をチェックしていますが、盤石な内容ばかりではないもの藤井四段自身の強さは疑いようがありません。

それに加えて本人の勢い、対局する両者へのプレッシャー、加熱する取材、それらの要素が何かしら組み合わさってこのような記録が生まれたと考える方がより自然です。

Q.羽生善治ってもっとたくさん連勝してるイメージあったわ。100連勝とか。

A.

さて、こちらは歴代連勝数ランキングです。

順位名前年齢肩書(当時)連勝数達成年
1神谷広志26五段281986~87
-藤井聡太14四段28(継続中)2016~17
3丸山忠久24五段241994
4塚田泰明22六段221986
-羽生善治21棋王221992
-山崎隆之22五段222002~03
7有吉道夫49九段201984
8羽生善治17五段181987~88
-中田宏26五段181991
-丸山忠久28八段181999
-羽生善治35四冠(!)182005
-永瀬拓矢18四段182010~11

ここから連勝記録が出やすい条件を見出していきましょう。

【条件その1】低段

上記ランカーたちの多くが四段ないし五段という低段時代に記録を達成しています

これはどういうことかというと、まあ身も蓋もないですが「強豪との対局が少ない」です。

裏を返せば「勝てば勝つほど強豪と当たる」という当たり前な事象があり、このあたりに羽生善治三冠の連勝記録が意外と伸びていない理由があるものと思われます

はいえそれでも歴代トップ10に3回もランクインしてたり、そのうち2回はタイトル保持者として強豪ばかりをなぎ倒して達成していたりと、十分ヤバい棋士ではあるんですけどね。

また、デビューから間もない低段棋士は対局相手にあまり研究されていないというアドバンテージもあるでしょう。

【条件その2】若い

合計12の連勝記録トップ10のうち、3つは10代、7つは20代で達成されています

将棋思考力を試されるゲームですが、プロとして対局を消化するのは体力勝負でもありますタイトル戦ともなれば「一人あたりの」持ち時間は3時間~6時間にも達します。

対局の度に盤の前で何時間も考え続けて勝利をもぎ取る体力、これを10何局20何局と積み重ねるためにはやはり若さが大切なのかもしれません。

実際、棋士の力のピークは20代から30代半ばであるとしばしば言われます。この数字だけ見るとアスリートに似ていますね。

そしてランキングに戻ると有吉道夫九段の49歳20連勝が光り輝いて見えます羽生四冠35歳18連勝はもはやチート

【条件その3】強い

当たり前のことですが、強くないとそもそも勝てません。以上です。

…というのもアレなので、連勝記録トップ10ランカーたちの通算勝率を並べてみました。(現役棋士のみ)

順位名前対局数勝数負数勝率最多連勝数
1藤井聡太四段282801.00028(継続中)
6羽生善治三冠191613705440.71622
11永瀬拓矢六段3372371000.70318
20山崎隆之八段8555582970.65322
29丸山忠久九段13468564900.63624
54中田宏樹八段12167224940.59418
88塚田泰明九段13207215990.54622
139神谷広志八段11645576070.47928

プロ将棋では通算勝率が6割あれば実力者とみなされることが多いです。この辺は通算対局数や個々人の主観によっても変わってきますが。

ちなみに対局数1000以上の棋士で7割勝ってるのは羽生善治三冠ただ一人です。恐ろしい恐ろしい

こうして見ると連勝記録ランカーたちは通算勝率もおおむね5割後半~7割をキープしており、また神谷八段と藤井四段を除く全員にタイトル挑戦ないしタイトル獲得経験があります

したがって、勝率の高い、強い棋士が連勝記録を出しやすいと言えるでしょう。まあそりゃあそうよね。

連勝記録が出やすい条件

【低段】【若い】【強い】

藤井四段はこの3つを兼ね備えているので、デビューから負けなし28連勝も当然の結果ですね!!(藤井連勝ストップ予想を書いた紙を破り捨てながら)

Q.テレビでやってたけど藤井くんが休憩中どんな飯食ったかとかどうでもよくない?

A.

どうでもよくないです。これはとても大切なことです。もちろん彼が出前を注文した店に殺到するような行為は厳として慎まなければなりません。

しか将棋ファンにとって「棋士食事」は一大コンテンツでもありますメインコンテンツとまで言うとさすがに過言です。

古来から将棋棋士たちは盤面のみならず食事面でもしのぎを削ってきました。その元祖と言えるのはかの加藤一二三 九段でしょう。

対局の度にうな重を平らげ、板チョコをまとめてボリボリ。近年もカキフライ定食チキンカツ定食ダブル注文で中継を沸かせ、故米長邦雄との"みかん対決"は今なお語り継がれています

上の連勝数ランキングに登場した丸山忠久九段も大食漢で知られています。一部のタイトル戦では1局に2日をかけて戦うのですが、緊迫感が最高潮に達する2日目の夕食にステーキを注文した鉄の胃を持つ男。

竜王戦の昼食ではカツカレー味噌ラーメンダブル注文を決めて健啖丸山を高らかに宣言し、三浦弘行九段騒動で揺れる将棋界に一時の安寧をもたらしました。

(一方、その裏では解説加藤一二三 九段麻婆豆腐+かに玉+中華粥を注文していた)

かの羽生善治タイトル戦で「寿司ジンジャーエール」という新手を残しています一見奇抜な組み合わせだが、ガリの生姜成分をジンジャーエールで補強しようという意欲的かつ独創的な指し回しだと話題になりました。

ちなみに、将棋棋士比較的しっかり食べる一方で、碁の棋士は少食派が多いのだとか。そういえば塔矢アキラも対局日は昼食をとらないキャラクターでしたね。

この辺はいずれどなたかにしっかりとしたデータを取っていただきたいものです。データ厨なので。

Q.次勝てば新記録なんでしょ?次の相手ってどんな人?

A.

やべーやつです。

増田康宏四段(19歳)。26歳以下・六段以下のプロ棋士三段リーグ上位者などが参加する「新人王戦」を昨年10代で優勝している期待の若手です。

プロデビューは16歳。彼も三段リーグ在籍時に藤井四段と同じ「現役中学生棋士」となるチャンスがありましたが、上位直接対決での黒星が響いて失敗。中学生棋士中学生棋士になりかけた男の対決です。

増田四段のELOレーティングは1712。藤井四段の期待勝率は47%ですがこの数字は現状あまり当てにはなりませんね。

先月単独インタビューが公開され、「矢倉(戦法)は終わりました」「("興味のある戦法は?")ないです」「("好きな将棋格言は?")特にないです」「(研究会は)行くのが面倒」「詰将棋意味ないです」

などの強烈なパンク発言話題を呼んでいます

https://book.mynavi.jp/shogi/detail/id=73003

彼はAbemaTV企画非公式戦ながら藤井四段に敗れ、「初めて年下に平手で負けた」と悔しさを露にしているため、次戦を増田四段のリベンジマッチとして観戦するのも面白いでしょう。

Q.藤井四段は次勝つとどうなるの?

A.

藤井vs増田の戦いが行われるのは将棋界で「名人」と並ぶ最高峰タイトル竜王」への挑戦権を争う竜王戦決勝トーナメントです。

https://www.shogi.or.jp/match/ryuuou/30/hon.html

から1組~6組のクラス別予選を勝ち抜いた棋士たちによる変則トーナメントで、藤井四段は一番下の6組予選で優勝、増田四段は5組予選で優勝しての参加です。

ちなみに竜王戦決勝Tは対局料が公開されていますトーナメント表に書いてある数字がそれです。

藤井四段は6組予選優勝で既に93万円を獲得しており、

決勝T初戦で増田四段に勝てば52万円を獲得します。

勝ち進んで挑戦者決定戦に進めば450万円。

挑戦者になればたとえ敗れても1,620万円、

竜王」のタイトルを奪取すれば4,320万円です。(将棋界最高額)

もう一つ言うと、竜王戦6組予選はアマチュアにも門戸が開かれています。夢がありますね。(なお、プロ並みに強いアマチュアに限る)

金曜日ですね

さて、天才たちのことばかり書き連ねていたら疲れました。

平日も残すところあと一日。われわれ凡人は今日も地に足をつけて、やっていきましょう。

2016-10-16

三浦弘行という棋士渡辺明という棋士

三浦弘行九段はどんな棋士か。

タイトル獲得経験者(通算1期)。羽生善治七冠王を崩した棋士である

顔つきは朴訥とした雰囲気が有るかもしれない。野武士という異名をとったこともある。なぜかニコ生で人気(だった?)。

棋風は攻め将棋。また研究家である

ソフト指しが疑われているA級順位戦三浦渡辺戦は角換わりの序盤早々にポンと▲4五桂を跳ねる将棋であった。前例はあって無いようなもの話題になったお陰で棋譜検索すれば簡単に見つかる。ちなみに将棋棋譜著作権は無い。素人目にはこの桂馬は、後手が△4四歩と伸ばせば簡単に取れそうであるプロから見てもそうであったらしく、順位戦渡辺はそう指した。その後は後手は期待通りに桂馬を取り、引き換えに先手は馬を作り2歩を得た。以降は10手ほど穏やかに進み、先手が戦端を開き一気に後手陣を攻め潰した。馬と歩得の時点で形勢は先手が良かったようだ。実際、今日竜王戦第一局(対丸山九段)で渡辺はほぼ同局面から△4四歩を見送りponanzaはこの選択をそんなに悪くないと評価した。

三浦の▲4五桂にはソフトによる研究が伺える。駒損して歩得と馬を主張するところがソフトっぽいと言われる。同時に三浦の棋風も伺える。端的に言えば研究将棋とはハメ手であり、毒饅頭を目の前にチラつかせる将棋なのだ渡辺はまんまと引っかかり、自然と思われる桂取りの△4四歩からほぼ一直線の流れで、気づけば形勢を損なった。

行方尚史八段は三浦を表して「局地戦になると異常に力を発揮する人」「狭いところでの三浦君の計算力はすごい」と評した*1。一見して選択肢の狭い局面誘導し、そこで相手を罠に嵌め、自身計算力を頼りに仕留めるのが得意である、というわけだ。そして三浦はこの棋風を維持するために、自身研究に加えて他の棋士研究をも吸い出してきた。圧倒的な研究量が三浦のウリなのだ

第68期名人戦(2010年)において三浦羽生善治名人(当時)に挑戦した。梅田望夫羽生善治現代」ではこのシリーズの第二局を通じて、三浦の棋風すなわち研究将棋極北について論じている。三浦はここでも羽生相手に罠を仕掛けた。当時流行横歩取り8五飛戦法の、その最新型に一撃必殺の罠を仕掛けた、のだが、この罠は関西有力若手棋士行方豊島将之現七段か糸谷哲郎現八段か、誰かは知らないが、と言う)を二晩ホテルに缶詰にして聞き出した研究の成果であると言われる。

ぶっちゃけ引く。プロから見ても引く行為であるようだ。

自分が出席しない研究会の成果をその日の夜に電話で聞き出したりもする。後日有力棋士に公に批判された。

三浦将棋脳の特性と、それを活かせる狭く罠を仕掛けやすい展開を収集する研究力・人脈、これによって三浦トップ棋士たりえた。

近年ではソフトが鬼強いので、誰でも棋力に関係なく高度な研究ができるハズだ。では三浦の強みが無くなったかというとさにあらず。現に順位戦渡辺三浦研究手▲4五桂に対応できず、自然な手に乗って形勢を損ねた。プロより強いソフトが行き渡った現代でも、三浦研究力は存分に発揮されている。

まりカンニングしなくても、三浦は十分強い。序盤は優秀な研究があるので仮にカンニングするとしたら中終盤だが、この将棋は優勢な局面から一方的な攻め将棋で終わった。カンニング必要とは、個人的には思えない。

ちなみに羽生との第68期名人戦三浦は4タコで無残に敗退した。形勢良しの将棋を勝ちきれず、善悪不明将棋手品のように負けた。

第二局で羽生三浦の罠を看破し、三浦研究の隙の隙を掻い潜り、見事勝利した。

渡辺明竜王はどんな棋士か。

中学生プロになった。20歳で棋界最高峰竜王を取った。タイトル通算17期、史上初の永世竜王資格保持者。名人挑戦者に未だなれない。

生え際は若くして後退した。歯に衣着せぬ実直な物言いも人気。

自玉を固めて細い攻めを繋げて一方的に殴るのが一般渡辺っぽいとされるが、最近はどんな将棋でも単純に強い。

研究家ソフト使用しているがソフト評価値はあんまり重用していないとも語る*2。

渡辺は単純に強い棋士である2000年以降、渡辺将棋界のトップ3以上の実力者でありつづけた。研究家であっても、三浦のような極端さは無い。

人望の厚さが伺われるエピソードも多い。佐藤天彦名人にも慕われている。

渡辺正義と公正の棋士である。ゆえに、三浦の若手搾取が許せないらしい。村山慈明現七段から三浦電話研究会の成果を根掘り葉掘り何時間も訊かれたと愚痴られた渡辺は、NHK将棋講座誌上で三浦を名指しで、質問三羽烏として痛烈に批判した。

とばっちりを受けた残り二羽の烏は深浦康市九段丸山忠久九段である深浦は「羽生善治現代」にて三浦研究将棋擁護し、丸山は今回の将棋連盟の決定に不服ととれるコメントを出した。前述の通り、丸山渡辺で開幕した今期竜王戦第一局の序盤は、件のA級順位戦三浦渡辺戦とほぼ同じ将棋であった。丸山意趣返しであるが、渡辺対策が良く封じ手時点では丸山苦戦の模様。

三浦カンニング疑惑聞き取りに、渡辺理事に混じって同席した。

5人前後三浦に負かされたと推察される棋士三浦告発したという。根拠はつまりプロ直感である正義棋士渡辺告発者の一人であり、卑劣カンニングを許せず、またタイトル戦の直接の対決者であるから聞き取りに同席したのだろう。

聞き取り聞き取りだけで終わり、証拠は一切示されないが、あるともないとも知れない。

三浦からしたら、タイトル戦の直前にタイトルホルダーが連盟を味方につけて、盤外戦術を仕掛けてきたようなものである

三浦カンニングしていたのなら、怖くて大舞台には出れないだろう。

三浦カンニングしていなくても、怖くて大舞台には出れないだろう。

まり三浦相手に連敗中の渡辺三浦竜王戦欠場に追いやったとも言える。

まさしく陣屋事件に勝るとも劣らぬ怪奇事件。なんと命名したらよいだろうか。

*1 2010年、第68期名人戦シリーズ後のインタビュー, 梅田望夫羽生善治現代」より

*2 2015年後半-2016年ごろのインタビュー大川慎太郎「不屈の棋士

2015-02-12

ポエムリアル将棋感想チラ裏

2月8日西武ドームで行われたリアル将棋ニコ生タイムシフトを見終えた。言わずと知れた羽生善治四冠と新進気鋭の豊島将之七段が対局したのだが、まず場所野球場であること、対局者はそれぞれ4時間の持ち時間を持つが、普段の対局とは異なり時間切れの場合秒読み勝負とはならずその時点で負けとなること、また直接対面せずに一塁側、三塁側に設営されたテントの中で考慮し、マイクで指し手の宣言を行い、そしてそれを合図にドライバー達がグラウンドへ駆け出し、でかでかと描かれた「将棋盤」上に配置された「駒」である車に乗り込んで目的場所へと移動することで対局を進めていくという、スケールの大きい、あえて別の言い方をすると非常に馬鹿馬鹿しい企画だ。

個人的には将棋は駒の動かし方と大まかな戦法しかからず、見る方も有名な棋士はなんとなく知ってはいものの棋戦を積極的に見ることはあまりない程度の者なので将棋の詳しい内容を語ることは難しいし、車に至っては公共交通機関の発達している都市部での乗用車利用は禁止してしまえばいい、くらいの考えを持ったことがある程度には車の所有欲がない人間である

そんな自分がこの番組に興味を持ち、最後まで見続けることになったポイントは、なぜこのような企画を立て、実行できたのか?という一点に尽きる。

今回の番組ドワンゴに並んでトヨタ主催という立場で行われた。つまり番組本質トヨタ宣伝だ。ドローン空撮を利用した壮大なオープニングからまりMCゲスト、解説の棋士が次々と入れ替わりながら途中休憩時以外ほぼノンコマーシャルで進行していくのは快適だ。ゲストは盤面の動きの多い序盤と終盤に将棋側、長考が多い中盤に車側を多く呼んでいたように思うが、盤面解説の棋士に対しても積極的に車のエピソードについても聞いていくというコンセプトで進められ、番組全体の長さは10時間を超えるものとなった。

駒となる車も、羽生側は往年のトヨタ車、豊島側は世界初量産型燃料電池車であるMIRAIをはじめとした最新のトヨタ車が選ばれ、豊島側の歩兵銀将飛車が成ったときは専用の車種に入れ替わるという演出も用意された。展開の都合上、成銀と龍王の出番はなく閉会式での紹介のみとなったが…。

陳腐表現だとは思うが、今回の番組ネット番組ならではの特性というか、地上波テレビではできないことを惜しみなく行う「良さ」を見た気がする。今回のような番組は当然ながら地上波では行えるはずもない。例え無尽蔵の予算があったとして、公共性が求められるとされる地上波放送においては10時間もの間、たった1社の宣伝のためだけの番組生放送し続けることを許す土壌がないからだ。地上波で行うとなるとたとえば1時間とか2時間の枠に圧縮され、視聴者に分かりやすいように編集され、宣伝色も薄められたものが届けられる。それはおそらくクライアントの思惑と必ずしも合致しないものになるだろう。

しかしこの番組はその逆をやり遂げた。

登場するゲストたちも、次々に「こんな企画誰が考えたんだ?」と口にした。東洋経済記事によるとドワンゴトヨタに持ち込み実現した企画とのことだが、トヨタ側の真剣な取り組み具合もその記事から見て取れるように、この番組を通していわゆる「若者の車離れ」をなんとかしたい、というトヨタの思いが強く感じられる番組作りだった。ネット番組にありがちの低予算番組とはせず、社長決裁が必要となる規模で行うほどの企画を通した担当者努力には敬意を表したい。

そういう意味番組全体を通して特に印象深かったのは、終盤戦に差し掛かったあたり、レーサーの脇坂寿一氏とトヨタマーケティングジャパン社員が登場した時間帯だ。脇坂氏がトヨタ社長豊田章男氏自らレースに出場するというエピソードを紹介したり、チャーリーチャップリンが「あなた最高傑作は何か?」と問われたとき言葉引用した「ネクスト・ワン」を会社キャッチフレーズにしているといった話、そして企画担当者の話を通して、トップをはじめとした社員達がが商品を好きであることが企業にとって強い力であるということを感じた。

本論とは外れるがピストン西沢氏の言葉も車将棋ならではといったもので興味深い。「羽生陣営玉将である二代目クラウンエンジンが冷えてしまうと大変なので、車ファンとしては定期的に動かしてほしい」。玉将はいったん駒組みが終わってしまえば終盤攻められない限り動くことはないし、実際本局でもその願いが叶うことはなかったのだが、終盤羽生玉が攻められた際に、移動中エンストをしてタイムロスを起こしてしまクラウンを見たときにはある種の痛快さを覚えた。

さて、このように自分としては今回の番組クライアントであるトヨタの思いが強く反映され、それが功を奏した画期的ものであるように感じられ、それが最後まで見続ける原動力になった。もちろん100点満点の番組だったという訳ではなく、段取りの悪いところや会場のチョイス(他に会場の空きもなかったのだろうが、吹きっ晒し西武ドーム10時間以上過ごすとか…)などの改善すべき点も見られた。トヨタの思いにマイナス方向の印象を持った視聴者いるかもしれない。もしこの番組に続編があるとしたらどうなるだろうか?たとえば「○○社vs××社」のような企画となったとき、別の意味を持つことになるだろうか。また、今後もドワンゴがまったく別の業種に対して大規模な番組企画を持ち込み、それが実現した際にどういう番組になっていくかというところについても注目していきたい。

 
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