■ 前半戦を終えた時点で6位クラブ史上初の「J2降格」となった名古屋はオフに多くの選手が流出した一方で多くの優秀な選手の獲得に成功した。GK楢崎、FW玉田、FW佐藤寿、MF田口といった日本代表経験者を中心にJ2の中では屈指の戦力を揃えることに成功した。川崎Fで実績を積んだ風間監督の招聘にして「優勝候補の一角」と評価されていたが前半戦を終了した時点で10勝7敗4分けで勝ち点「34」。6位とやや不本意な成績で終えた。
巻き返しが期待された後半戦の最初の試合はホームの徳島戦(H)だったが0対2の敗戦。ここ6試合で1勝5敗と苦しんでいる。ここに来て名古屋と同じJ1からの降格組である湘南と福岡が順調に勝ち点を伸ばしており、名古屋との差が広がりつつある。ここまでの22試合で35得点/32失点。得失点差は「+3」のみ。まだ20節あるのでまだまだ先は長いが、今シーズンの至上命題だった自動昇格はちょっと厳しくなってきた。
過去のプレーオフを振り返ってみると番狂わせが非常に多かった。2012年は大分、2013年は徳島、2014年は山形、2015年は福岡、2016年はC大阪がJ1昇格を勝ち取ったがシーズン前に「自動昇格候補」と言われていたチームがプレーオフを勝ち抜いて「J1昇格」を決めたのは2016年のC大阪くらい。不本意ながらプレーオフに回って「ラストチャンス」を生かしてJ1昇格を勝ち取ったケースは本当に少ない。
■ 「結果」と「構築」と「育成」結局、プレーオフで生き返るチャンスはあるが、やはり、その可能性は相当に低い。「J1復帰」が至上命題となる名古屋のようなチームは「6位以内」ではなくて「2位以内」を目指さなければいけないが厳しい状況になりつつある。最近は負けが込んでいるのでサポーターのフラストレーションが溜まっていると思うが「J2であればもう少し楽に勝利をつかむことが出来るだろう。」と多くのサポーターは考えていたと思う。
今シーズンの名古屋は当然のことながら「J1復帰」というミッションを果たさなければいけないが、その上で「パスサッカー」というこれまでとは違った新しいサッカースタイルの構築にも挑戦しており、さらに最近の風間監督は若い選手を育てることにもトライしている。直近の徳島戦(H)は高卒ルーキーで19才のMF深堀を初めてスタメンで起用してきたが、MF杉森、MF青木亮、DF宮原なども積極的に起用している。
ずっと天才と期待されてきたMF杉森が殻を破りつつあるのは今シーズンの名古屋の最大の収穫と言えるが、やはり、スタイルを植え付けつつ、若手も育てて、なおかつ、結果も残すというのは至難の業である。数年前までのJ2であれば上位と下位の戦力差(=クラブ力を含む)が大きくてJ1からJ2に降格してきた規模の大きいクラブは先(=J1復帰後)を見据えた戦いをしてもある程度以上の結果を残すことはできた。
2008年の広島が最大の成功例である。このときの広島はペトロヴィッチ監督の元、DF槙野やDF森脇やMF高萩など若手がJ2の舞台で躍動。チームとしてもしっかりとした土台を作ることができた。圧倒的な強さで2008年のJ2を制覇して、その後、森保監督の元で3度の日本一に輝いたことは今さら言うまでもない話であるが、今のJ2は群雄割拠。先を見据えて戦いながら、なおかつ、2位以内を果たすのは相当に難しい。
■ 変化が必要な風間八宏監督もちろん、長い目で見守ることも大事なことで、土台をしっかりと築くのはどんなチームでもどのカテゴリーのチームでも共通する大事なことではある。決して疎かにすることはできないが、J1で躍進しているC大阪を例に出すと「J1復帰」を果たしさえすれば、オフ期間中に有力選手を何人かは獲得できるし、主力の流出は阻止することができるし、優秀な監督を招聘しやすくなるので監督交代という手も打ちやすくなる。
逆に地道にスタイルを構築しようとしても昇格に失敗したらオフには主力級の選手が流出してゼロあるいはイチからのスタートを強いられる可能性が高まる。結局、今のJ2で二兎や三兎を追ったとしたら何1つ成果が上がらない可能性の方が高い。土台作りは非常に大事なことで、若手を育てることも大事なことではあるが、もう少しだけリアリスティックに勝利を追い求める必要があるのではないか?と思う。
「ここ最近の名古屋の戦いぶり」ならびに「夏の補強の動き」ならびに「最近の風間監督の選手起用」を見ると風間体制で名古屋がJ1昇格の切符を勝ち取る絵が想像しにくくなってきた。シーズン当初からそれなりにボールは回っていて、点も取れていたので開幕から4カ月ほどが経過した今、開幕当初のチームと今のチームを比較してチーム自体が着実に前進しているか?というと何とも言えないところである。
このままだと「1年でのJ1復帰」は難しいし、来シーズンも同じようにJ2で煮え切らないシーズンになる可能性の方がはるかに高いと思う。川崎FのようなJ1屈指の戦力を持っているチームを率いてJ1の優勝争いに加わることと名古屋のようにJ2屈指の戦力を持っているチームを率いて「J1昇格」というミッションを達成することは仕事としては別物だと思う。「J1復帰」のためには風間監督自体の変化が必要だと感じる。
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