■ ビッグスワンへ新潟のビッグスワン。2002年のW杯を開催した日本海側では最大のスタジアムであり、アルビレックス新潟のホームスタジアムである。
「ビッグスワン」については、これまで、たくさんの人から、「ビッグスワンは素晴らしいところなので、一度、行ってみてください。」というコメントをいただいており、非常に気になっていた場所である。今回、ようやく、そこを訪問することが出来た。
ビッグスワンは、上越新幹線の新潟駅から、バスで20分ほどの位置にある。新潟市は、政令指定都市になったばかりで、人口は80万人をオーバーする。
■ ホームタウンさっそく、新潟駅からシャトルバスでビッグスワンを目指すが、噂通りに、バス内の平均年齢は高い。60歳を超えていると思われるおじさんやおばさんが多く、地域密着度の高さがうかがい知れる。
多分、この人たちは、生まれてから50年以上もの間、サッカーとは何の関係も無い人生を送ってきた人だろう。それが、新潟にアルビレオが誕生し、発展していくに連れて、サッカーの磁力に引き込まれていった人なのだろう。
■ ビッグスワン4万人収容のスタジアムでほぼ満員の観衆で埋まるビッグスワンということで、いい席を確保するためにも、試合開始の2時間前に到着して準備万端!!!と思いきや、スタジアムに入ってみると、予想外に出足が鈍いように見える。バックスタンドは、まだまだ余裕があって、センターポジションを確保することが出来た。
何故かというと、アルビサポーターは、試合開始の数時間前にビッグスワンに到着しているにもかかわらず、スタジアム内には入らずに、周辺でのんびりと自然を堪能している。さながら、ピクニックである。
ビッグスワンは、日本海がすぐそばにあって、最高の自然環境に囲まれている。日産スタジアム周辺で、ブルーシートを敷いて悠長にお弁当を食べているマリノスサポーターを見つけられるだろうか???
■ 4連敗中のアルビレックスさて、試合である。
アルビレックス新潟は4連敗中。一時は3位まで順位を上昇させたが、8位にまで転落した。この試合も、MFマルシオ・リシャルデスが出場停止。さらに、CB永田とMF田中が怪我のため長期離脱中。FWエジミウソンは、怪我上がりでベンチスタートと、苦しい陣容である。GK北野。DF三田・中野・千代反田・松尾。MFシルビーニョ・本間・寺川・坂本。FW深井・矢野。
対する大宮は、現在17位。前節、横浜Fマリノスに2対0と勝利した勢いを持続させたい試合である。<4-4-2>で、GK江角。DF西村・冨田・レアンドロ・波戸。MF佐伯・小林慶・小林大・藤本。FWは、前節1ゴール1アシストの吉原と元新潟の森田。FWデニス・マルケスはベンチスタート。
■ 膠着状態の前半試合は、前半はスローな展開。両チームともなかなか前線までボールが運べずに、チャンスを作れない。
新潟は、2トップの深井と矢野の関係がいまひとつで、ともに裏を狙う場面が多く、下がってきてボールを受ける場面が皆無。左サイドハーフの坂本と左サイドバックの松尾の連携からクロスボールを上げる回数は多かったが、ひねりがなく、大宮のCBコンビにあっさりと跳ね返された。
対する大宮も、前線の吉原と森田を生かしきれずに苦戦。MF藤本がサイドに流れてタメを作ったときは、やや形になりかけたが、いかんせん攻撃にスピードがなく、単調な攻めに終始した。
■ 劇的なロスタイム弾0対0のまま前半を折り返すと、新潟は、後半頭からFW深井に代えてFWエジミウソンを投入。エジミウソンのドリブルから、ようやく突破口を見出す。
対する大宮も、MF小林大が攻撃にからみ始めてゴール前のシーンを作り始める。
後半38分に、大宮の右サイドバック西村が2枚目のイエローカードで退場になると、新潟はパワープレーで押し込む。しかしながら、なかなかネットを揺らせず、これまでかと思われたロスタイムのラストプレーで、混戦からFWエジミウソンが右足で決めて新潟が先制。そして、そのまま試合終了。復帰してきたエースの劇的なゴールで勝利した新潟は、ようやく連敗をストップ。サポーターは、久々に勝利の歓喜に酔いしれた。
対する大宮は、ロスタイムに痛い失点を喫して17位のまま。順位を上げられなかった。
■ 連敗ストップ新潟はひとまず連敗ストップとなった。しかしながら、攻撃陣はなかなか機能しなかった。ダブルボランチに入ったMFシルビーニョとMF本間は、ともにボールをキープできる選手であるが、それが災いして、ボランチで無駄なキープや横パスが多く、攻撃にスピード感を加えられなかった。
この2人は、キャラクターが似通っている。今シーズンは、MF本間がパワーアップし、中盤の核となっており、シルビーニョの存在意義は昨年と比べると薄くなっている。シルビーニョはいい選手であるが、立場は微妙である。
そして、何といっても、右サイドバックの内田潤の不在の影響が大きかった。代役の三田は守備は強いが攻撃的なセンスはなく、精度の高いクロスを供給できなかった。
新潟は、サイドバックの層の薄さは深刻である。守備面で計算のできる選手はいるが、攻撃で貢献できる選手が少ない。今シーズン、内田潤が飛躍し、坂本が左サイドバックでも好プレーを見せたのは収穫だが、いかんせん、絶対数が少ない。
ただ、逆に言うと、サイドバックをもっと強化できれば、1ランク上のチームに進化できるだろう。それだけ、中盤から前線のタレントは豊富である。サイドバックは、オフに補強したい最優先のポジションである。
■ エースとして大きな期待がかかる矢野貴章先日の鹿島戦の矢野のゴールは衝撃的だった。185cmの長身選手が、あれほどスピードのあるドリブルを見せてDFをぶっちぎってゴールをマークしたということに、この選手の持つ底知れない潜在能力を感じずに入られなかった。そして、同じような活躍が期待された大宮戦だったが、決勝ゴールにはからんだものの好プレーは見せられなかった。
気になるのは、ボールを持ったときに雑なプレーが目立ったことである。せっかく大きな体があるのだから、しっかりとDFと競ってボールを保持できれば大きなチャンスにつなげることが出来るにもかかわらず、不用意なプレーが多かった。
ビッグスワンのサポーターも、矢野に対しては、厳しくも暖かい気持ちをもって、プレーを見守って欲しい。潜在能力の高さは誰もが認めるものなのだから、もう一歩飛躍できると、日本代表でもポジションを確保できるだけのタレントなのである。
■ エジミウソン効果試合は、やはりエジミウソンという感じで、エースのゴールが連敗をストップさせた。スタメンで起用された深井も、鋭いドリブル突破からチャンスを作るシーンもあったが、やはり、エジミウソンほどの可能性のあるプレーは見せられなかった。
J1昇格以後、ずっとそういう傾向にあるが、新潟は、FWエジミウソンの出来が結果にダイレクトに反映してくる。エジミウソン自体がJ1でもトップクラスのストライカーであり、1人でも局面を打開できる選手であるから必然ではあるが、エジミウソンのいないときに、どうやって勝ち点を重ねていけるかが、依然として、チームとしての課題として残っている。
復帰戦でいきなり大きな仕事をしたエジミウソンだが、改めてその存在の大きさを感じさせた。
■ プランどおりだった大宮だが・・・大宮としては、前半のゼロゼロは、想定内だっただろう。1試合に3点・4点と量産出来るチームではないので、まずは、先制点を取られないことを前提に戦うことは、無理も無い。
ただ、後半に訪れた決定的なチャンスに決めきれず、後半38分にDF西村が退場になったことは、予定外だった。特に、西村が退場になって以降は、防戦一方になった。ここで、アウェーということもあって、ドローでOKという判断を下せればよかったが、残留を果たすためには、そこまでの余裕は無く、カウンターからゴールを狙っていく必要があった。
守備陣はよく持ちこたえていたし危なげも無かったが、最後の時間帯で、やや攻撃陣と守備陣に意識の差があって、攻めに出るべきか、守りに徹するべきか、曖昧になってしまった。
■ シンプルに大宮の中盤は、小林大・小林慶・藤本と攻撃的なタレントがそろっている。しかしながら、彼らの高い技術を生かしきれないというもどかしい試合が開幕から続いている。
ポゼッションサッカーをしようとすれば十分に可能な選手が集まっているが、どうにもこうにも、どういう形で攻撃を仕掛けていくのかがはっきりしない。新潟戦では、長身FW森田を起用したが、その森田の高さを生かそうとする意識は見えなかった。
永田を欠く状況で、ロングボールを蹴られていれば新潟としても危険な状態であったが、森田の恐怖にさらされることも無かった。もっとシンプルに攻撃してもいいのではないだろうか。
■ 残留争いJ1は残り6試合。16位の甲府と17位の大宮との差は、勝ち点「1」だけ。残り試合で、G大阪、横浜FM、柏といった上位との対戦が残っている甲府に対して、広島と横浜FCという下位チームとの対戦を残している大宮の方が、やや対戦相手としては恵まれている感じはする。
いずれにしても、第32節の直接対決の結果が最重要になるだろう。ホームの小瀬で戦えるため甲府が有利だが、予断は許さない。
■ 「4万人」の理由さて、アルビレックス新潟については、何故、あれほどの観客動員力があるのかについて、ずっと疑問に思っていた。2006年シーズンは平均38709人で、浦和レッズについでリーグ2位。J2優勝を飾った2003年の平均は30339人。2003年の記録は、おそらく、当時、一度もトップリーグ経験の無いチームの動員数としては、世界記録ではないだろうか。とにかく、圧倒的な動員力を誇っている。
J1・J2のほとんどのチームが観客動員に苦しんでいる中で、アルビレックス新潟は異例の存在である。「初期のころは、タダ券を多くばら撒いていた。」という話を聞いたことがあるが、それは、どのチームも行っていることであり、ほとんどのチームが一見さんをリピーターにすることに苦心しているのであるが、アルビはそうではない。
何故、これだけ、アルビレックスが新潟市民に受け入れられているのか?それを探ることが、今回の大きなテーマであった。
■ 「非日常的」でない空間が生み出す空気ビッグスワンは、他のスタジアムと比べて何が違うのだろうか?結論から言うと、その答えはおぼろげながら見えてきた。
もっとも強く感じたのは、ビッグスワンならびにその周辺は、「非日常的な空間」ではないということである。
スタジアムは、夢を提供する場である。多くのサポーターは、スタジアムに向かうときは、少なからず、現実社会の喧騒から逃れたいという感情をもつ。日本に存在するスタジアムの多くは、「非日常的」な空間であり、サポーターも、「非日常的」な空間を求めて足を運ぶ。したがって、たいていのスタジアムは、どこかで、「日常」と「非日常」の境目が存在する。
多くは、その境目は最寄り駅となるが、スタジアムならびにスタジアム周辺は、一種の独特な空間であり、本当にサッカーが好きな人だけが集まって来る場所であり、最寄駅のプラットホームに足を踏み入れた瞬間、張り詰めた空気を感じることがある。ある意味、特別な空間である。
しかしながら、ビッグスワン周辺には、その境界線が存在しなかった。いい意味で普通の空気が流れていた。
ビッグスワンに集まる4万人の中の多くは、そこでプロサッカーの試合が行われることに、特別なものを感じていないのだろう。だから、街中のショッピングセンターに買い物に行くような感覚でビッグスワンを訪れる。
多くのサポーターにとって、スタジアムに通うことは、義務では無いが、もはや日課であり、生活の一部であるように感じる。ちょうど、元日には初詣に行かないと、なんとなく気持ちが落ち着かないのと同様に、アルビの試合があるのにビッグスワンに行かないというのは、消化しにくいものになっている。
当初は、1000人程度だったサポーターの数が、4万人まで膨れ上がった要因が何だったのかは分からないが、とにかく、バリケードが張られていないだけに、一見さんもリピーターになりやすいし、4万人が生み出すパワーが、新しいアルビサポーターを作り出す要素になっている。
そうなると、やはり強い。
■ レッズではなくアルビレックスを目指せ!!Jリーグの多くのチームは観客動員数に苦しんでいる。浦和レッズのような熱狂的なサポーターを集められれば理想だが、それは簡単ではないだろう。だが、アルビレックス新潟のようなサポーター層をスタジアムに呼び込むのは、不可能ではないように感じる。
おそらく、アルビサポーターの半数近くは、アルビレックスの試合だけを見に来ているのではないのだろう。試合前の競技場周辺では、多くの家族連れがシートを広げて、お弁当を食べているし、川のほとりでは、ゆったりと川の流れを眺めながら自然を満喫する人もいる。
そこは、さしずめ、「Stadium」ではなく、「Park」であった。
アルビサポーターには、「サッカー観戦だけが目的である。」という人もいるだろうが、そうではない人も多いだろう。近い将来、アルビレックスが上位に進出して優勝を目指す段階になった時、もしかしたら、コアサポーターとの間に軋轢が起こるかもしれない。しかしながら、ここで論じても意味は無いだろう。
■ アルビレックスの価値今後も、アルビレックス新潟が全国区の人気チームになることはないだろう。新潟という地方都市のチームでは、どこかで限界が生じるだろう。
しかしながら、それは全く問題視する必要は無くて、着実に道を進めていくべきである。確かに、J1の18チームの中ではかなり異質な部類のチームではあるが、J1のスタンダードというものにとらわれすぎてしまうと、アルビレックスのよさを失う結果となるだろう。アルビレックスにはアルビレックスにしかない良さが、すでに十分備わっている。
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